転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3772話

 鮫川の土手に落ちていた携帯。

 普通に考えれば、それこそ誰かの落とし物だろう。

 もしこれが何でもない時に見つけた携帯なら、俺もそう判断していた筈だ。

 だが……久慈川を捜している時に見つけた携帯。

 それも以前久慈川と一緒に来た鮫川の土手に落ちていた携帯だ。

 これを見れば、もしかしたら……そんな風に思ってもおかしくはないだろう。

 そんな訳で、俺は通信機を使って美鶴に連絡をする。

 

『どうした、アクセル?』

 

 ここはいつ誰が通るか分からない以上、いつものように映像スクリーンを使った通信は出来ない。

 その為、現在俺がやっているのはそれこそ携帯として使うように、音声を使っての会話だった。

 

「そこに堂島はいるか?」

『いるぞ。堂島、少し来てくれ』

 

 美鶴が声を掛けると、すぐに堂島の声が聞こえてくる。

 映像スクリーンがあれば、堂島がいるかどうかはすぐに分かるのだろうが……今のこの状況では、堂島が本当にそこにいるのかどうかは、ちょっと分からない。

 

『どうした? アクセルからか』

「そうだ。実は現在鮫川にいるんだが、その土手に携帯が落ちているのを発見した。これが久慈川の物かどうかは分からないが、このタイミングで携帯が落ちているとなると……」

『久慈川りせの物の可能性が高い、か。だがそれだけでそうだと判断するのは難しいな。他に何かアクセルがそう思った理由があるのか?』

「何日か前に、久慈川と一緒に鮫川に来た。……ちなみにそれでも疑わしいのなら。携帯を拾って確認してみてもいいけど、どうする? 一応鑑識とかが調べると思ったから、まだ拾わないでそのままにしてるんだが」

『一応、そのままにしておいてくれ。すぐに署の方に連絡をして鑑識を向かわせる』

「助かる。……けど、この携帯が本当に久慈川のだと決まった訳じゃないぞ? もしかしたら偶然落とし物としてここにあるだけという可能性も否定出来ない」

『構わん。今は少しでも手掛かりになりそうな物があったら、動くつもりだ。アクセルは鑑識がくるまでその携帯を見張っていてくれ。それで何が分かるという訳ではないかもしれんが、それでも手掛かりは手掛かりだからな』

「わかった」

 

 そう言い、通信が切れる。

 それにしても……今更の話だが、もしこの携帯が久慈川の物だとしても、久慈川が落としてから誰も拾ってない……あるいは動かしてないとは思えない。

 いやまぁ、足立にしろ、ストーカーにしろ、もし久慈川が携帯を落としたのに気が付いたら、手掛かりをこっちに与えるよりも前に回収してるだろうが。

 そう言えばGPSとかで携帯の場所の探索とかって出来たりするのか?

 もっとも、その手の手続きをするにも要請の書類を作ったりしないといけないんだろうが。

 そしてお役所仕事だけに、そういうのも時間が掛かる訳だ。

 ……こうして考えると、GPS機能があったとして、警察がそれを確認するのはちょっと時間が掛かりそうだな。

 あるいは久慈川の両親とかがいれば、その辺も両親として出来るのかもしれないが。

 そんな風に考えていると、1台のパトカーがやってくる。

 恐らくあれに鑑識が乗ってるんだろうが、1台か。

 てっきりもっと多くが来るかと思ったんだが……無理もないな。

 久慈川の捜索以外にも、足立の捜索であったり、普通の業務をしたりする必要があるのだから、鑑識であってもそちらに駆り出されていてもおかしくない。

 ましてや、俺が見つけたのは落ちていた携帯だ。

 それが久慈川の物かどうかも、今のところはっきりと判明していないのだから。

 

「アクセルさん、堂島刑事から連絡があってきました。それで久慈川りせの携帯というのは……」

 

 パトカーから降りてきた刑事……鑑識の2人が、俺に向かってそう言ってくる。

 どうやら俺の顔については知ってるらしい。

 

「こっちだ。……ほら、そこの土手にある」

 

 そう示すと、鑑識の2人はすぐに仕事の準備を始める。

 とはいえ、写真を撮ったり、土手の状態を確認してといったことをするくらいだったが。

 

「あ、そうだ。アクセルさん。暇でしたらもう行っても構いませんよ。ここは私達に任せて下さい。こうして見ていても暇でしょうし」

「そうか? そうだな。分かった。今ここにいても特にやるべき事はないし、そうするか」

 

 あの携帯が本当に久慈川の物かどうかは知りたかったが、それについては堂島に聞けばいいだろう。

 とはいえ、もしこれが本当に久慈川の携帯だった場合、ここで何者かに連れられたという事になるんだが……どうなんだろうな。

 さっきも思ったが、早朝でも鮫川の土手にはそれなりに通り掛かる者はいる。

 そんな場所で久慈川を連れ去るのは難しいと思うんだが。

 その辺がどうなのか分からないが、とにかく今のところは鑑識に任せるしかない以上、どうしようもない。

 今夜は雨が降って、マヨナカテレビが見られるといいんだが。

 そこに映れば、取りあえず久慈川がストーカーに連れ去られたという心配はないし。

 ……ただ、昨日のマヨナカテレビに映っていた久慈川が、本物じゃなかったというのがちょっと引っ掛かるんだよな。

 シェリルがいたお陰で、久慈川のスリーサイズから本物ではないと判断されたが、そうなると久慈川がTVの中の世界に入っていないのに久慈川のマヨナカテレビが映し出されるなんてことになってもおかしくはない。

 ともあれ、そうなったらそうなったでTVの中の世界を探索して、どうにか久慈川を見つけるのを最優先にすればいいか。

 そう判断すると、鑑識にその場を任せて俺は鮫川を立ち去るのだった。

 

 

 

 

 

「さて、どうなるかだな」

 

 夜……もう少しで12時になる頃、俺は部屋の中にいた。

 視線を窓の外に向けると、そこでは雨が降っている。

 それはつまり、今日はマヨナカテレビが映し出されるという事を意味していた。

 今日は色々な場所を捜したが、久慈川を見つける事が出来なかった。

 手掛かりらしい手掛かりといえば、久慈川のファンの1人が電柱に登って丸久豆腐店の中……というより、そこに隣接している久慈川の家の中を盗撮しようとしていたのを、桐条グループの警備員が捕らえたという事くらいか。

 久慈川がストーカーに連れ去られたという可能性はまだ否定出来ないので、かなり厳しく取り調べをしたらしいが……結局関係ないという事が判明した。

 もっとも、今まで何人も盗撮してきて捕まったりしたらしいので、色々と問題にはなるらしいが

 その辺については俺からは特にどうも言えない。

 それ以外となると、鮫川に落ちていた携帯はやはり久慈川の物だったらしい。

 俺の嫌な予感が的中した形だ。

 警官達も、久慈川の携帯が見つかったという事で鮫川を中心に周囲の捜索を行ったらしいが……今のところは見つかっていない。

 足立か、ストーカーか……その答えが、これからもう数分ではっきりとする。

 そう思っていると、やがて時計の針が12時を指し……

 

『こんばんは、りせちーだよ!』

 

 映像スクリーンに久慈川が映し出される。

 前と同じビキニを着ており、その胸の大きさも前回と同じ。……つまりシェリルが見破ったように、この久慈川は偽物だという事になる。

 もっとも、偽物だとはいえ、久慈川のそっくりさんが出てるとか、そういう感じではないのだろうが。

 何しろこれはマヨナカテレビなのだから。

 

『何と、この春から私は花の女子高生になりました! 女子高生アイドルです! ……何かちょっとえっちな響きがあるよね。それで今回は、そんなえっちな女子高生アイドルになった記念として、凄い……それはもう凄い企画に挑戦します!』

 

 ワーワー、どんどん、ぱふぱふぱふ。

 久慈川の言葉と同時に、そんな音が聞こえてくる。

 いわゆる賑やかしって奴か。

 こういうのも実際に観客がやってるのではなく、TVで放送する時にそういうのを持ってきて合成してるらしい。

 いやまぁ、マヨナカテレビである時点で観客がいる筈もないが。

 ……もしかして、シャドウがこういう事をしていたりしないよな?

 

『マールキュン!』

 

 そう言い、胸の前で指を組み合わせてハートの形を作る。

 ビキニを着ている事もあってか、本物以上に大きな胸……それこそ巨乳に入るだろう胸を強調していた。

 にしても、マールキュンって……もしかして、久慈川の決め台詞とか、そんな感じじゃないよな?

 この件が解決したら、久慈川に聞いてみてもいいかもしれない。

 本人の黒歴史でなければの話だが。

 

『と、言う訳で……そろそろ今回の企画の発表をしちゃいます! 皆もきっと、この言葉を聞いた事があるよね。それはぁ……ス・ト・リ・ッ・プ! ……そう、ストリップ!』

 

 わああああああああああ!

 先程よりも大きな歓声が映像スクリーンから聞こえてくる。

 いやまぁ、もし本当に久慈川がストリップをするとしたら、ペルソナ世界において久慈川のファン達は喜び、歓声を上げるだろう。……あるいは悲しむか。

 ともあれ、歓声にしろ絶叫にしろ、もの凄い事になるのは明らかだ。

 

『んもう、ほんとうにぃ? きゃー、恥ずかしー! っていうか、女子高生が脱いじゃうのって世の中的にありなの!?』

 

 アイドルらしい……アイドルらしい? うん、とにかくそんな感じで話す久慈川。

 現在稲羽市にいる者達で、このマヨナカテレビを見ているのはどのくらいいるんだろうな。

 そんな者達にしてみれば、マヨナカテレビに出ている久慈川が本物か偽物かは分からないだけに、興奮していてもおかしくはない。

 とはいえ、それで興奮しているものの大半は、やっぱり男だろうが。

 久慈川は男だけに人気があった訳ではなく、女からも人気は高かった筈だ。

 だが、ストリップをするとなると、女が支持するかどうかは……どうだろうな。

 

『でも、やるからにはどーんと、体当たりでまるっと全てを脱いじゃおうと思ってるから、皆、お楽しみにー』

 

 その言葉を最後に、マヨナカテレビは終わるのだった。

 

 

 

 

 

「アクセル、やはり来たか」

 

 マヨナカテレビが終わって大広間に行くと、そこでは美鶴が困った様子を見せていた。

 その視線の先にいるのは、興奮しているシャドウワーカーの面々。

 勿論、その大半が男だ。

 ……大半が男という事は、つまり女も何人か興奮している側にいるという事になるのだが。

 久慈川のストリップは女には喜ばれないだろうという俺の予想があっさりと覆ってしまったらしい。

 あるいは俺が想像していた以上に久慈川のファンは熱心なのかもしれないな。

 ただ、もし久慈川の熱心なファンだったら、マヨナカテレビに映った久慈川の身体付き……特に胸の大きさから偽物だと分かってもいいと思うんだが。

 まぁ、今はそんな風に考えなくてもいいか。

 

「ああ、さすがにあのマヨナカテレビを見て、そのままって訳にもいかないしな。……こっちはこっちで、結構な騒動になってるみたいだけど」

「全くだ」

 

 俺の言葉に頷きつつも、美鶴が騒いでいるシャドウワーカーの面々を止める様子はない。

 俺が知っている美鶴なら、それこそ処刑をしてもおかしくはないのだが。

 

「それで、久慈川が足立によってTVの中の世界に連れ去られたのはこれで決まりだと思うか?」

「昨日のマヨナカテレビは顔を確認出来なかったが、今日のマヨナカテレビではしっかりと顔を確認出来た。そう考えると、恐らくそれで間違いないだろう」

 

 美鶴がそう断言する。

 美鶴もマヨナカテレビに移された久慈川が本物ではないというのは、シェリルに聞いて知っている筈だ。

 しかし、それを考えた上でもそういう風に言うのなら、美鶴の中で確信があるのだろう。

 ……実際、雪子の時の逆ナンについても、あれは雪子本人じゃなくて雪子のシャドウだった。

 巽については俺も話でしか知らないが、こちらも本人ではなかったらしい。

 その辺の状況を考えれば、やはり久慈川がTVの中の世界に連れ込まれたのは間違いないのだろう。

 

「そうか。ストーカーの仕業じゃなくて、取りあえず一安心といったところか。もっとも、足立に連れ去られたという点では、色々と不安があるのも事実だが」

 

 ストーカーに連れ去られたのなら、貞操的な意味での危険はかなり高かった。

 だが、足立によってTVの中の世界に連れ去られたとなれば……雪子の件もあるので、不安はあるが、絶対に危険だと決まった訳ではない。

 もっとも、貞操の危険と同様にシャドウによる命の危険もあるのだが。

 実際、雪子の時はシャドウによって殺されてもおかしくはなかったし。

 ともあれ、久慈川がTVの中の世界にいると判明したのなら、こっちがやるべき行動はそう難しくはない。

 雪子や巽の時のように、TVの中の世界に行って助け出せばいいだけだ。

 取りあえずストーカーの件を心配しなくなってもいいだけ、助かる。

 

「堂島に……そう言えば、堂島は? 堂島もここにいたんだよな?」

「ああ。稲羽署に電話をしている」

 

 なるほど。どうやらストーカーの件での捜索は止めてもいいと連絡をしたのだろう。

 もっとも、稲羽署の面々もマヨナカテレビについては知ってるし、捜査の手助けになるとみている者もいる筈だ。

 そちらから情報が入ってる可能性もあるが。

 ともあれ、明日からはTVの中の世界の探索をすることになるな。

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