転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3775話

 7、8、9、と順調にダンジョンを攻略する。

 7階ではちょっと強いシャドウがいて、ムラタが嬉々として戦ったが、それ以降は特に大きな出来事はなかった。

 そんな訳で現在10階に到着して休憩していたのだが……

 

「鳴上達か」

 

 俺達の後を追うようにして姿を現した面々を見て、そう呟く。

 その面々を見た堂島の眉が顰められるが、その辺は甥を思っての事だろう。

 そして俺の言葉を聞き、鳴上達もこっちに気が付く。

 来ているメンバーは、鳴上、花村、巽、雪子、里中、くま……ようは、鳴上の仲間でマヨナカテレビの一件に関わっている者達全員だ。

 

「あ、本当にいた! どうやってここに!?」

 

 花村が俺達を見て、そう叫ぶ。

 

「適当に歩いていて、そうしたらそれっぽい場所を見つけたら入ってみたのがここだったんだよ」

「うげぇ……それはまた……」

「さすが大センセーくまね!」

 

 花村が信じられないといった様子を見せるのに対し、くまの方は俺を持ち上げてくる。

 それはいいんだが……

 

「くま、お前何か変わったか?」

 

 俺が知ってるくまと今のくまは、何だか微妙に違うような気がする。

 

「そうくまか!? 実は、くま……ペルソナ使いになったくま!」

「……そうなのか?」

 

 自信満々といった様子のくま。

 鳴上を含めた他の者達も、そんなくまの様子を見ても特に何かを言ったりする様子はない。

 それはつまり、本当にくまがペルソナ使いになったということなのだろう。

 考えてみれば、くまがペルソナ使いになったという事そのものはそこまでおかしくはない。

 TVの中の世界でペルソナ使いになるには、TVの中の世界に長時間いる事によって自分のシャドウを出し、そのシャドウを受け入れる必要がある。

 するとそのシャドウがペルソナとなるのだから。

 そしてくまは、基本的にこのTVの中の世界に住んでいる。

 そうなると、くまのシャドウが出てもおかしくはない。

 かなり無理に無理を重ねた予想だが、そうでもないとくまがペルソナ使いになれるとは思わない。

 TVの中の世界にいつからいたのかとか、俺達……正確には鳴上達がTVの中の世界に入る前からいたのに、何故今になってペルソナ使いになるのか、とか。

 それ以外にも色々と疑問はある。

 疑問はあるのだが、その辺を考えた上でも今は突っ込まない方がいいだろう。

 鳴上達の戦力がアップしたのは、悪い事ではないのだから。

 

「これからは戦いに参加出来るくま!」

「……けど、ペルソナ使いになったという事は、どこかでくまのシャドウと戦ったんだよな? ここでか?」

 

 くまとの会話を一段落し、俺は鳴上に視線を向ける。

 鳴上は俺の視線に少し困った様子で口を開く。

 

「はい。その……7階でくまのシャドウが現れて……」

 

 7階と聞き、何となく納得出来てしまった。

 俺達も7階では、ちょっと強いシャドウと戦った。

 その辺の状況を考えると、恐らくこのダンジョンの7階というのは何かがある場所なのだろう。

 俺達の場合は誰もシャドウの出る条件ではなかったから、俺達のシャドウではなく、普通のシャドウの敵が出た。

 しかし鳴上達の場合はくまがいた。

 他の面々は自分のシャドウを既に受け入れ、ペルソナとしている。

 あ、でも鳴上は自分のシャドウとか関係なくペルソナを使えるようになっていたのか。

 だとすれば、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、くまではなく鳴上のシャドウが出ていた可能性もあるのか?

 

「いや、けどくまのシャドウはとんでもなかったっすよ! 俺は自分のシャドウしか見てないんで、あまり比べられないんすけど、かなり巨大な、そして不気味なくまだったんすから」

 

 巽が心の底から嫌そうな様子でそう言う。

 この様子を見ると、恐らく……いや、ほぼ間違いなく普通のシャドウとは違うシャドウだったのだろう。

 とはいえ、TVの中の世界で生きてきたくまだ。

 普通と違うシャドウが出ても、おかしくはない。

 具体的にそれがどういうシャドウだったのかは、生憎と俺には分からない。

 巽の話を聞く限りだと、かなりの難物だったのは間違いないんだが。

 

「そのくまのシャドウとの戦闘で、それなりに疲れているだろうに。一度ここを出て休憩して、後日また来るとかすればこっちも楽だったんだけどな」

「りせちーを助けるなら、俺も必要でしょ!」

「全く、花村ってこればっかり」

「ふふっ、でも千枝もそれなりにやる気なんでしょう?」

 

 花村の言葉に、里中と雪子がそれぞれに口を開く。

 ……ただ、雪子は俺と視線が合うと即座に逸らす。

 うーん……シェリルの件があってから、何だか妙に雪子から距離を取られてるんだよな。

 そんなに俺とシェリルが付き合ってるというのが許容出来なかったのか?

 ただ、以前……それこそまだ天城屋旅館に初めて来た時、ゆかりと美鶴が雪子にマヨナカテレビについて聞きに行って、2人が俺と付き合ってるって話はした筈じゃなかったか?

 雪子にしてみれば、そこにシェリルが追加されたからといって……いや、あるいはシェリルの方が理由か?

 俺とシェリルが付き合ってるのがショックだったのではなく、シェリルと俺が付き合ってるのがショックだったとか。

 言葉にすればほぼ同じ意味だが、どちらが主体になっているかで印象は大きく変わってくる。

 シェリルが世界的な歌手として有名な以上、雪子がシェリルの隠れた……そして熱狂的なファンであっても、おかしくはない。

 もっとも、それはそれで色々と違和感があるんだが……まぁ、今はその辺について考えるよりも、まずは久慈川を助ける方が先か。

 ここでの一件が終わった後で、それでも気になるのなら雪子としっかりと話をしてみればいいんだし。

 

「取りあえずくまがペルソナを使えるようになったのは分かった。そうなると、後は久慈川を助けるだけだな。……とはいえ、これだけ戦力が揃えば負ける事はないと思うが」

 

 元々……原作でのメンバーである鳴上達に加え、イレギュラーとして、俺、ムラタ、五飛、堂島がいる。

 それ以外にも、召喚魔法で狛治や刈り取る者を召喚してプラスも出来る。

 だとすれば、原作よりも戦力的に戦力が揃っているのは間違いない。

 もし久慈川の側に足立がいたとしても、対処するのは難しい話ではないだろう。

 

「そうっすね。じゃあ、行きましょうか。……あ、そう言えば、ここで話す事じゃないかもしれないんすけど、アクセルさん達の前に探偵だって名乗る奴が……その、現れなかったっすか?」

 

 さて、行くか。

 そう思ったところで、巽が不意にそんな風に聞いてくる。

 

「……探偵?」

 

 いやまぁ、このペルソナ世界にも探偵がいるというのは知っているが、いきなり何だ?

 この探偵というのは、イメージと現実が大きく離れている存在だったりする。

 探偵が主人公の小説やゲーム、アニメ、漫画……そういうのが多いからこそだろう。

 しかしそういうのとは違い、現実では基本的に浮気調査とか、いなくなったペットを探すとか、そういうのが主な仕事らしい。

 ちなみに日本では探偵だと自分で名乗れば、その時点で探偵になる事が出来る。

 それに対し、アメリカとかでは免許があるらしいな。

 探偵についての是非はともあれ、まさかいきなりここで巽の口から探偵という言葉が出て来るとは思わなかった。

 

「そうっす。俺の事件や今回の件でも動いてるみたいっすよ」

 

 言葉は文句だったが、巽の様子を見る限りだとそこまで不満を持ってるようには思えない。

 それどころか、好印象を抱いているようにすら見える。

 

「ああ、白鐘か。稲羽署の方でもちょっと問題になっていたな」

 

 巽の言葉に、堂島がそう言う。

 少し困った様子を見せる堂島。

 もしかして、何か問題のある人物なのか?

 

「堂島、知ってるのか?」

「ああ。……稲羽署に応援で来ている者達は結構な人数がいるが、その中には当然ながらうちの署長や副署長とは違う派閥の者もいる。……対抗というか、敵対というか、そんな感じの連中だな。そのような連中だけに、こっちにとってダメージになるような行動をする」

「それがその探偵か?」

「そうだ。白鐘直斗だ。知らないか? 探偵王子として有名なんだが」

「……何だその、探偵王子ってのは。いやまぁ、大体予想出来るけど」

 

 つまり、顔立ちが整っている……いわゆるイケメンの探偵という事か。

 それも堂島の様子を見る限り、顔だけではなく探偵として優秀でもあるらしい。

 

「足立の件についてはそれなりに話しているが、それでもTVの中の世界やマヨナカテレビ、シャドウ、ペルソナ……その辺については、基本的に応援の面々には知らされていない。勿論連中だって無能じゃない。何かおかしいとは思っているだろうし、いずれは知られるかもしれないが。……まぁ、知ったからといって、それを信じられるかどうかはまた別の話だが」

「だろうな」

 

 このペルソナ世界もそうだが、俺は色々な世界に関わってきた。

 その中には常識的に考えて、とてもではないが理解出来ないといった様子の世界も決して多くはない。

 生身での戦いとなると、ネギま世界とか。

 ましてや、このペルソナ世界についてはペルソナとかがあるが、それは本当に限られた者しか知らない。

 そうである以上、稲羽署に応援に来た者達がそんな話を知ったところで、冗談と思うか……最悪の場合、精神病院に行くように言われるだろう。

 だがそれが事実であるのも間違いはない。

 派閥争いで、稲羽署の署長や副署長に失点を与える為には、堂島のような稲羽署の刑事ではなく、応援に来た者達が足立を捕らえる必要がある。

 その為に用意したのが、白鐘直斗という探偵王子な訳だ。

 稲羽署の署長や副署長の失態という事であれば、それこそ足立の一件で十分だとは思うが。

 

「向こうに正確な情報を話す訳にはいかない以上、事件解決の為と言われればこちらも受け入れるしかない」

「で、その探偵王子が巽や久慈川の件で情報収集する為に鳴上達と会った……といったところか。俺もそれなりに稲羽市で動き回っているけど、そういう奴とは遭遇していないな」

 

 稲羽市は決して広い場所ではない。

 また、過疎化して人口も決して多くはないのだ。

 そのような場所である以上、俺がその探偵王子と遭遇してもおかしくはない。

 ましてや昨日は、それこそ久慈川を捜す為にそれなりに色々な場所に行ったのだから。

 

「偶然だろう。もしくは白鐘がアクセルの邪気を感じて近付かないようにしているか」

「邪気って何だ、邪気って」

 

 堂島の言葉に呆れつつ、突っ込みを入れる。

 とはいえ、実際に遭遇していない状況を考えれば堂島の言う事が間違っているとも限らない訳だが。

 だからといって俺が邪気を放つとか、そんなのはさすがに許容出来なかったが。

 

「探偵王子については分かった。……それで巽は俺にどうして欲しいんだ?」

「いや、別にどうして欲しいって事はないっすけど。ただ、気を付けた方がいいと思っただけで」

 

 少し困った様子の巽。

 うーん、これは一体どう考えればいいんだろうな。

 巽の様子を見る限りだと、やはり巽はその探偵王子に対して敵意の類は持ってないっぽいし。

 その辺については、今は特に突っ込まない方がいいか。

 

「そうか。遭遇したら気を付けるよ。……さて、とにかく今は進むぞ。鳴上達が追いついてここで話をしていたから、何だかんだと結構ここで休憩は出来た筈だ」

 

 もっとも、こちらのパーティでは堂島くらいしか疲れている者はいなかったが。

 ただ、鳴上達の方はここに来るまでにくまのシャドウと戦ったりもしたらしいので、相応に疲れていてもおかしくはない。

 その疲れも、ここでの休憩である程度は回復しただろう。

 であれば、いつまでもここにいる訳にもいかない。

 出来るだけ早く久慈川を助ける必要があるのだから。

 俺達がここで休憩してるのが原因で、久慈川が自分のシャドウに殺される……あるいは、今のところそこまで可能性は高くないと思うが、足立に襲われるという可能性もある。

 そんな訳で、現在は少しでも急いで久慈川のいる場所、そして久慈川のシャドウのいる場所に向かう必要があった。

 

「そうよ、りせちーが大変な目に遭ってるかもしれないんでしょう? なら、今は少しでも早く助ける必要があるし!」

 

 里中のやる気に満ちた声が周囲に響く。

 こうして見ると、里中も久慈川のファンの1人なのかもしれないな。

 ただ、里中がアイドルに興味があるとか、そんな風には思えない。

 ……寧ろ里中の場合、アイドルよりも格闘の選手とかの方に興味を持っていそうだ。

 それは俺が里中についてあまり知らないだけで、実は里中の中にも可愛いものが好きだったり、アイドルを好んだりとか、そういうことになってもおかしくはないと思うが。

 

「そうだな。なら、行くか。……雪子は大丈夫か?」

「え? あ、うん。大丈夫です」

 

 うーん、やっぱり雪子は……いやまぁ、今はまずその辺については考えなくてもいいか。

 とにかく久慈川を助けるのを優先した方がいい。

 そう判断し、俺達は戦力を増やして11階に向かうのだった。

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