転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3794話

「うわぁ……それはまた……」

 

 俺は天城屋旅館の大広間で、りせからそんな言葉を聞いてた。

 結局俺は美鶴と一緒に月光館学園に行ったものの、一緒に修学旅行を回るといったことはあまり出来なかった。

 いや、やろうと思えば出来たんだろうが、りせの人気を侮っていたといったところか、

 仮にも……仮にもという表現はどうかと思うが、とにかくりせはトップアイドルの1人だった。

 それだけに、りせが変装もしないで行動すれば、どうしても目立つ。

 日本人は次々に移り変わっていくニュースを見ているだけに、どんなに大きなニュースであっても、それが放映されなくなったらすぐに忘れるという者が多い。

 多いのだが、さすがにりせの場合はりせちーとして活動していた時に見た者が多かった為か、りせの存在に気が付く者が多かった。

 それだけに、今回の件ではどうしてもある程度の対処をする必要があり……りせの班、具体的には鳴上を始めとしたマヨナカテレビの関係者の面々はあまり自由に動く事は出来なかったらしい。

 とはいえ、それでもりせの知っている穴場を何ヶ所か回って、それはそれで十分に楽しめたらしいが。

 ちなみに俺は美鶴の指示で稲羽市に戻っていた。

 月光館学園で伏見と話した後は、美鶴が学生だった時にいた教師でまだ残っていた者達と話をしたりしたらしいが。

 何人かの教師はそんな美鶴の態度に戦々恐々としていたが。

 やはり今の月光館学園には、何らかの問題があるのだろう。

 ともあれ、月光館学園での一時を楽しんだ美鶴は休憩が十分出来たと判断した為に、稲羽市に戻るという選択をしたのだ。

 そんな訳で、修学旅行から帰ってきたりせからお土産を貰うついでに話を聞いていたのだが……うん。これはちょっと予想外だったな。

 具体的には、修学旅行で泊まった場所が、ラブホテル、あるいはファンションホテルとか言われるような……つまり、そういう場所だったらしい。

 いや、それは本当にいいのか?

 そう思わないでもなかったが、実際にもう泊まってしまった以上は仕方がないのだろう。

 ちなみに、何故か修学旅行にはくまも追い掛けて一緒に行ったらしい。

 俺に言えば、影のゲートで一緒に連れて行ったのにな。

 現在のくまは、立場的にはジュネスでのアルバイトという事になっている。

 東京に向かう交通費もそこから出したのだろう。

 ……ラブホテルに泊まったというのを聞いた堂島は、ちょっと怖そうだったが。

 多分、後で八十神高校にクレームが入るんだろうな。

 

「そうなのよ。全く、清純な女子高生をああいう場所に泊めるって、一体何を考えてるのかしら!」

 

 不満全開といった様子のりせ。

 とはいえ、その気持ちは分からないではない。

 というか、この件がマスコミに知られたら、それこそりせの一件もあって大きな騒動になってもおかしくはないだろう。

 ましてや、八十神高校は現在もまだ世間を賑わせている久保が通っていた高校だし。

 正確には八十神高校を退学になって他の高校に通っていたのだが……マスコミだしな。

 特に諸岡との一件は有名だったらしいので、その諸岡が殺されたという事で転校についてはなかった事にして報道するマスコミとかも普通にいそうだ。

 特にタイトルや記事の最後に『……か?』といったようにして、断言しないようにするとか。

 

「取りあえず、修学旅行が楽しく終わったようで何よりだ」

「私はアクセルさんが1日目の月光館学園にしかいなかったから、ちょっと残念だったけど。どうせなら、私達と一緒にずっと修学旅行を楽しめばよかったのに」

「そう言うけど、こっちを空ける訳にもいかないだろ」

 

 鳴上達……そしてくままでもがいなくなったという事は、当時の稲羽市ではぶっちゃけ戦力が半減していたに等しい感じだ。

 足立がそれを知る方法があるかどうかは分からない。

 だが、もしそれを知ったら……これ幸いと妙な動きを見せる可能性は十分にあった。

 稲羽市に来てからまだそんなに経っていない足立だ。

 八十神高校の修学旅行について、そして旅行には1年と2年が同時に向かうという事について、知ってるかどうかは微妙なところだが。

 ともあれそんな理由もあり、俺達は稲羽市で周囲の様子を警戒していたのだが……足立が修学旅行について情報を仕入れられなかったのか、それともいざという時の為に俺達がいたからか……足立が特に動きを見せる事はなかった。

 あるいは単純に、現在何かを企んでいてこっちに手を出すような余裕がなかったとか、そんな感じかもしれないが。

 つまり、俺達が稲羽市で待機していたのは結果的には殆ど意味がなかったという事になる。

 もっとも、もし俺達がいなければ足立が行動していた可能性も十分にあると考えると、結果論だけでどうこう言うのはどうかと思うが。

 もっとも、シャドウワーカーがいないとシャドウであったり、TVの中の世界にいる足立に対処は出来ないので、実際にはそこまで強く言ってくる事もないと思う。

 ……ああ、けどそうだな。今は堂島もいるし、鳴上達もいる。

 TVの中の世界の件だけを考えるのなら、対処するのは難しくはない……のか?

 

「それはそうだけど……でも、やっぱり折角の修学旅行だったんだから、アクセルさんとも一緒に楽しみたかったの!」

 

 そこまで慕われるのは、俺としても悪い気はしない。

 とはいえ、多分……本当に多分だけど、りせが俺を慕う中には自分が芸能界に戻る時は、シェリルと同じく桐条グループ系列の事務所でってのがありそうなんだよな。

 もっとも、りせが元いた事務所との契約が具体的にどうなっているのかは分からないが。

 もしかしたらりせが他の事務所に移籍出来ないよう、契約で雁字搦めにしている可能性もあるが……それでも桐条グループなら何とかしそう。

 芸能界というのは暴力団とかとも関係が深いと何かで聞いた事があるが、もしりせの事務所がそちらから手を回しても、さすがに桐条グループを敵に回したりは出来ないだろう。

 もしそのようなことをしたら、それこそ桐条グループの私兵集団とかが出て来そうだし。

 警備員とか。

 

「そう言って貰えると嬉しいけど、こっちも色々とあるんだよ。それは分かるだろ?」

「むぅ……それは……」

 

 りせもこっちの事情はある程度理解してくれたらしい。

 芸能界という世界を経験してるだけに、その辺についてはある程度分かってくれたのだろう。

 

「じゃあ、今度付き合ってよね」

「付き合ってって……どこにだ?」

「どこかに! もう、全く……何でそういう鈍感さで何人も恋人がいるのかしら」

 

 不満そうにしながらも、りせは立ち上がる。

 

「じゃあ、他の人にもお土産を渡したりしないといけないから、帰るね」

「それは……大変そうだな」

 

 りせの家の丸久豆腐店のある商店街から、この天城屋旅館まではそれなりに距離がある。

 それなら用事を終わらせてから、最後にここに来てもよかったと思うんだが。

 そう言うと、りせは呆れの視線を俺に向け、大きく息を吐く。

 

「全く、本当にアクセルさんは女心が分かってないんだから。これは宿題ね、宿題」

 

 そう言うと大広間を出ていく。

 宿題と言われても……

 周囲に視線を向けるが、シャドウワーカーの面々は俺の視線に気が付かないように仕事に集中する。

 あるいはそっと視線を逸らす。

 これは、俺が悪いのか?

 そんな風に思いつつ、俺にはどうしようもないので取りあえず放っておく事にしたのだった。

 

 

 

 

 

「うわ……」

 

 りせの件があってから数日後、俺の視線の先にあるTVには白鐘が映し出されていた。

 その番組内容は、典型的なインタビュー番組。

 何とかの部屋とか、そういう感じの形式のTV番組だ。

 

「やってくれる」

 

 俺と同じくTVに映る白鐘を見ていた堂島が、忌々しげに言う。

 まぁ、その気持ちは分からないではない。

 俺がその番組を見た時に出した『うわ』という声も、堂島と同じ感想を抱いたからこその言葉だったのだから。

 鳴上達は白鐘と同じ学校に通っているという事で、色々と話を聞いてはいたらしい。

 だが、さすがにこうしてTVに出るというのは、聞いていなかったと思われる。

 

「稲羽署の方で止められなかったのか?」

「無茶を言うな。以前は応援組が白鐘を雇っていたが、警視庁からの圧力で既に契約は解除したんだ。白鐘が今もこうして稲羽市にいるのは、ここで何かが起きているというのを理解していたからだろう」

「だろうな。俺が会った時もそんな感じだった。それでTVの件についても推理したと」

「伊達に探偵王子と呼ばれちゃいねえって事だろうな。実際、今まで色々な事件に関わってきたという話だったし」

 

 それなら、ニュクスの一件で出番があってもよかったと思う。

 ……いや、ニュクスの一件は別に刑事事件とかそういうのじゃなかったしな。

 もし探偵がいても、役に立つとは思えなかった。

 敢えて役立つとすれば……ストレガ関係か?

 ストレガの面々がどこで寝泊まりをしているのか分かれば、影時間云々の前に日中にでも襲撃出来ただろうし。

 もっとも、ストレガもそうだが、ニュクスの一件でペルソナ使いになった者達は現実世界でもペルソナを召喚出来る。

 もし日中に襲撃をしても、生半可な戦力ではペルソナで反撃されるだけだろう。

 考えられる可能性は、それこそ遠距離からの狙撃か。

 幸いな事に、ストレガの面々は裏の世界の住人だ。

 きちんとしたアパートやマンションに住める訳でもない。

 それこそ廃墟となっている場所を利用していただろう。

 だとすれば、狙撃とかをやっても目立たない。

 ……いや、よく考えてみれば、ストレガよりも更に探偵が必要な用件があった。

 俺が最初から何となく……というか、本能や念動力によって気にくわないと判断した幾月。

 タルタロスの一件である意味黒幕とでも呼ぶべき存在だったが、探偵がいれば幾月の裏の顔についても把握出来ていた可能性がある。

 もっとも、幾月も自分が危険な橋を渡っているというのは理解していた筈だ。

 そう簡単に尻尾を掴ませるような事はしなかっただろうが。

 とはいえ、そういうのをどうにかしてこそ、探偵の意味があるのだろうが。

 

「とにかく、これで白鐘が足立に狙われる可能性が出て来た訳だ。そうなると、白鐘に護衛を付けた方がいいじゃないか?」

「寧ろそれは、白鐘という餌で足立を釣り上げるという表現の方が正しいだろう」

「美鶴、それは……」

「白鐘本人もそのつもりでこういう事をしてるんだと思うぞ?」

 

 そう美鶴が言うと白鐘はTVの中で稲羽市での事件について言及していた。

 とはいえ、殆どの事件はこっちで解決している以上、山野真由美と諸岡金四郎の2人の件で、それも久保がもう捕まっているのだが。

 とはいえ、だからといって稲羽署では足立の捜査を止めてはいないが。

 久保の件は諸岡の一件だけなのだから。

 そもそも足立が早紀の件で一時的に捕らえたものの、逃げ出されてしまった点で稲羽署の面々にとっては絶対に捕らえる必要がある相手となる。

 そういう意味では、足立を釣り上げるという意味で白鐘がこうしてTVに出たのは悪くない流れ……なのかもしれないな。

 

「とにかく、白鐘の件で足立を捕らえる事が出来れば万々歳といったところだな。特に現実世界でなら、足立は基本的に普通の人間と変わりはない」

 

 現実世界で足立を捕らえるのが、最善の展開なのは間違いないだろう。

 とはいえ、足立もそれは分かっている筈だ。

 そうなるとやっぱり白鐘をTVの中に入れようとしている時に捕らえるのが最善となる。

 

「いっそ、白鐘に足立の件であったり、TVの中の世界について教えたらどうだ? TVの中の世界に入って貰うのは……マヨナカテレビの件を考えるとちょっと難しいとは思うけど」

 

 そもそも、マヨナカテレビは一体何がどうなって作られ、放映されているのか俺には分からない。

 あるいはそれも足立の能力なのか……いや、違うな。

 俺がマヨナカテレビの情報について知ったのは、山野真由美がマヨナカテレビに出て、それを見たから自分の運命の人だと言っていた高校生がいたからだ。

 そしてあの時はまだ足立はTVの中の世界に入っていなかった。

 ……あ、でもどうだろうな。

 早紀の件があって足立はTVの中の世界に逃げ込んだが、その前にTVの中の世界に入っていなかったという可能性は微妙なところだし。

 そんな風に思っていると、不意に通信機が鳴る。

 誰からだ? と思って映像スクリーンを展開すると、そこにはゆかりの姿があった。

 とはいえ、ゆかりがいるのは大学かどこからしく、向こうは映像スクリーンを展開していなかったが。

 

『アクセル、ちょっといい?』

「どうした?」

『実は以前言ってた学園祭なんだけど、9月の連休にあるの。それでミスコンがあるのは学園祭最後の25日なんだけど』

「それは、また……」

 

 厄介な。

 そう言おうとして止めておく。

 ゆかりは別に、俺を困らせようと思ってこのように言ってきた訳ではない事は、明らかだ。

 どうする? と美鶴に視線を向けると……

 

「構わん。ただし、25日に事件の進展があった場合はこちらを優先して貰う」

 

 そう、告げるのだった。

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