転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3796話

「予想以上に集まってるな」

 

 周囲の様子を見て、そう呟く。

 現在俺がいるのは、ミスコンの会場。

 かなり広い体育館といったところか。

 高校の体育館というよりも、市営、県営といった感じの大きな運動場だ。

 てっきりこういうのは外……それこそ野外ステージとかでやるのかと思っていたが。

 あ、でもミスコンという事を考えると、水着審査とかもあるのか。

 そうなると、まだ日中とはいえ9月も末になるのに外でというのは寒さから無理か。

 これがもう1ヶ月くらい早ければ、まだ外でミスコンも出来たんだろうが。

 とはいえ、室内でミスコンをやるというのも決して悪い話ではない。

 音響とかライトとか、そういうのを用意しやすいし。

 突然突風が吹いたり、通り雨が降ったりといったアクシデントを心配する必要もない。

 そう考えると、寧ろ室内の方がイベントは進行しやすいだろう。

 難点としては……

 

「ひ、人が多いな」

「ミスコンなんだから男が集まるのは当然だけど、何で女も結構集まってるんだよ」

 

 近くからそんな会話が聞こえてくる。

 そう、その言葉通りこの体育館のような室内でミスコンをやるとなれば、中に入れる人数が決まっているというのが大きい。

 無理に人を入れれば、それこそ身動きが出来ない程になったりして、場合によっては怪我人が出る可能性もある。

 その辺はミスコンの運営委員会も考えているのか、今はもう満杯という事でこれ以上は入らないようにしているのだが。

 それでも結構な人数が集まっているのは、さっき聞こえてきた会話の通りだ。

 これで実際にミスコンが始まって、中にいる生徒達が興奮しだしたら、体育館の中が一体どうなるのか。

 ちょっと気になるな。

 一応ミスコンを行っている者達もその辺は考えているだろうから、エアコンとかを全開にするとか、換気扇を全開にするとか、そういうのを考えていそうだが。

 そんな風に思っていると……

 

『レディース&ジェントルメーン! 今日は美の祭典、ミスコンへようこそ!』

 

 そんな声が周囲に響く。

 ステージの上を見ると、そこにはスーツを着た男が1人。

 また、ステージから少し離れた場所には審査員だろう数人の男女が座っているのが見える。

 

『美人を、見たいかぁっ!』

『おおおおおおおおっ!』

 

 司会の声に、周囲にいる者達が歓声……いや、これは寧ろ怒声か? そんな声を上げる。

 そんな声に満足そうに頷くと、司会の男は説明を始めた。

 それはミスコンの採点の仕方であったり、注意事項であったり。

 ミスコンの流れとしては、まず最初にそれぞれを紹介。

 その後、水着審査とそれぞれのパフォーマンス。

 それらを見て、審査員が点数を決めるという事だ。

 てっきり俺達のような観客にも何らかの点数を付けるという流れになるのかもしれないと思ったが、どうやら俺達は本当にただの観客という扱いらしい。

 もっとも、ミスコンで観客がいないとか……うん。盛り下がるにも程があるが。

 そんな訳で、早速ミスコンが始まる。

 ……少し早いな。

 実は時間が押しているとか、そんな感じなのか?

 ともあれ、ミスコンにエントリーされた女達が次々に紹介されていく。

 だが……それを見る俺は、拍子抜けする。

 どの女も、ミスコンに参加するくらいなのだから他人から見れば美人であったり可愛かったりするのは間違いないだろう。

 それぞれが色々な個性を持つ、顔立ちの整った者達なのは間違いない。

 間違いないのだが、こうして改めて見ると……うん。

 これはあれだな。

 俺の恋人達が全員平均をぶっちぎる程に顔立ちの整った者達が多く、そのような相手と一緒にいる事が多いので、美人に慣れてしまったという感じなんだろう。

 実際、こうしてステージの上に立っているミスコンの参加者達を見ると、恋人故の贔屓目というのを抜きにしてもゆかりが他よりも明らかに突出して美人なように見える。

 ゆかりは元々月光館学園の中でもかなりモテていた。

 だが、俺と関わった事で……より正確には俺と恋人になって抱かれる事によって、その女らしさは更に増した。

 とはいえ……まぁ、その辺は原作キャラだからというのもあるのだろう。

 それを示すように、稲羽市では雪子のような、このミスコンに出ても上位を狙えるような美人もいたし。

 ……あ、でも雪子の美貌は大和撫子風の大人しめなものだ。

 ミスコンとかで優勝したり上位に入賞するには、派手目な美貌の方が受けるだろう。

 それでも美人なのは間違いない。

 そしてりせにいたっては、りせちーとしてアイドルの活動をしていたくらいだから、ミスコンでも優勝を狙えるだろう。

 りせは雪子と違って、派手目な美貌だし。

 ただ、可愛い系の顔立ちなのでミスコンでは厳しいか?

 里中も、本人の性格からあまり女っぽくは見えないが、顔立ちは整っている。

 また、よく食べ、よく運動するというのも影響してか身体付きも十分に女らしい。

 白鐘は……まぁ、男装してるというのが特徴か。実際顔立ちも十分に整っているし。

 そんな訳で、俺が見る限りではゆかりがこのミスコンの優勝候補筆頭なのは間違いない。

 そう思っていると、紹介がゆかりの順番となる。

 参加者の中でも最後がゆかりなのは……多分、ミスコンの運営者達も優勝候補だというのが分かっているんだろう。

 

『恋人が見に来ているので、頑張りたいと思います』

 

 自己紹介が終わった後、参加者が自分の意気込みを口にするのだが……そこでゆかりの口から出たのはそのような言葉だった。

 

「おい」

 

 思わずそう呟く。

 ミスコンにおいて、恋人がいると明言するのは普通に考えてマイナスだろうに。

 実際、周囲にいる他の観客達の中には不満そうにしている者もいる。

 とはいえ、このミスコンは観客達に審査する権利……ポイントを入れたりといった権限はない。

 そしてきちんと選ばれた――本当にきちんとかどうかは俺には分からないが――審査員達が採点をする形となる。

 そういう意味では、恋人がいると断言してもそこまで大きなマイナスではないのかもしれないな。

 もっとも、ゆかりが恋人がいると断言した理由は分かる。

 男に言い寄られるのが面倒だと思っていたらしいし、その対策もあるのだろう。

 

『あ……そ、そうですか。では、その恋人に良いところを見せる為にも、頑張らないといけませんね』

 

 司会の男は何とかそう話を逸らす。……いや、これは逸らすというんじゃなくて、もっとこう……まぁ、別に俺にはどっちでもいいけど。

 とにかく、ミスコン参加者に対する紹介とインタビューを終えて、次は水着審査と同時にアピールタイムとなる。

 

『では、観客の皆さん。美の女神達がより美しくなるまで少々お待ち下さい。スクリーンに歴代のミスコンの光景を流しますので、そちらも注目して下さい』

 

 司会の男の言葉と共に、ステージの上に用意されたスクリーンに映像が流れ始める。

 歴代のとか言ってたけど、この大学における学園祭は伝統行事……とまではいかないが、それなりに長く続いていたりするのか?

 観客達はトイレに行ったり、人が密集しているここから少し出て気分転換をしたりとする者も多いが、同時にスクリーンに映された歴代のミスコンを見ている者も多い。

 さて、そうなると俺はどうするか……

 

「なぁ、ちょっといいか?」

 

 不意にそんな風に声を掛けられる。

 何だ? と思って声のした方に視線を向けると、そこには三人の男がいる。

 クチャクチャとガムを噛んでいる男と、首に花か何かの入れ墨のある男と、サングラスをしている男。

 三人に共通してるのは、殺意……とは到底呼べない、悪意の類を俺に抱いているという事か。

 

「何だ?」

「俺達、ゆかりの知り合いなんだけどよ。ゆかりがあんたに付きまとわれて困ってるって言うんだよ。悪いが、ちょっと話を聞きたいから来てくれるよな?」

 

 あー……なるほど。何となく分かった。

 この連中、多分ゆかりに言い寄ってフラれた連中だろう。

 あるいは単純に、フラれるまでいかずとも誘いを断られた連中か。

 ゆかりと一緒に堂々と学園祭を回ったのだ。

 俺とゆかりの距離感については、多くの者が見ていただろう。

 それで、俺がゆかりの恋人だというのがこの連中にも分かったらしい。

 とはいえ、それで俺に絡んでくるのは……まぁ、俺をボコボコにしてゆかりと別れさせ、そこに付け込んで口説こうとか、あるいはいっそ俺を人質にしてゆかりを呼び出して全員で襲おうとか、そういう事を考えているのかもしれないが。

 

「へぇ、それは面白い。ゆかりに相手にされない連中が、ゆかりの恋人の俺に絡んでくるのか。なら……」

「ちょっと待ったぁっ!」

 

 折角の機会だ。

 この大学の生徒でありながら、ゆかりを悪い意味で狙っている連中を片付けておくか。

 そう思い、この連中の誘いに乗ろうとしたところで、1人の男が割り込んでくる。

 その男は、俺にとっても見覚えのある男だった。

 ゆかりが先輩と呼んでいた、たこ焼きを売っていた男だ。

 ……ただし、その男の後ろには見るからにゴツい体格をした男達……身体の動かし方を見ると、何らかの格闘技をやっている者達が10人程いた。

 

「お前は……」

「すいませんね、アクセルさん。この連中が迷惑を掛けて。すぐ片付けますから、気にしないで下さい」

「な……」

 

 その言葉に、入れ墨の男が何かを言おうとするものの、それよりも前にゴツい男達が前に出た。

 男達の迫力に、入れ墨の男も、他の2人も何も言えなくなる。

 それでいながら忙しく周囲の様子を見ているのは、何とかここから逃げようとしているからか。

 だが……男達によって腕を掴まれると、逃げることも出来なくなる。

 

「お前達には色々と悪い噂があるからな。薬を使って女に乱暴したとか、酒を飲ませて乱暴したとか。……その辺り、しっかりと聞かせて貰おうか」

 

 ゆかりの先輩が鋭い視線で3人に向かってそう言う。

 その言葉に3人は見るからに動揺し始めた。

 男の言っていた事に心当たりがあるのだろう。

 

「俺の恋人の件も、お前達が関わってるって話があるしな。……行くぞ」

『うす』

 

 男の指示に従い、ゴツい男達は3人組を逃がさないように掴んで体育館から出ていく。

 

「申し訳ありませんでしたね、アクセルさん」

「あー……いや、気にするな」

 

 あの3人がこれからどうなるのかは分からないが、取りあえず俺を相手に敵対するよりはマシな未来が待っているだろう。

 もっとも、この男が言っていたような事をしてきたのなら、俺に敵対した方がまだマシだったかもしれないが。

 

「あの連中はこれからどうなるって聞いてもいいのか?」

「色々と聞いた後で警察に自首させます」

「そうか」

 

 色々というのが気になったが、それについては聞かない方がいいだろう。

 そんな俺の様子に気が付いたのか、男は軽く頭を下げると立ち去る。

 ……ちなみに、俺がこのままここにいるのは目立つので、取りあえず俺は一度体育館を出るのだった。

 

 

 

 

 

『では、最後……岳羽ゆかりさんです!』

 

 その言葉と共にステージに現れたのは……真っ赤なビキニに身を包んだゆかり。

 水着審査も最後の最後で、今までで一番の歓声が湧き上がる。

 実際、ゆかりの赤いビキニ姿というのは男の興奮を煽るのに十分な破壊力を持っていたので、俺もその気持ちは分かる。

 豊かな双丘と尻、くびれた腰。滑らかな肌。

 そんなゆかりだったが……手に持っているのは、弓。

 いや、弓?

 周囲にいる者達はそんな弓を持っているゆかりの姿に疑問を感じていた様子だったが、俺にしてみれば特に違和感はない。

 ゆかりと言えば弓なのだから。

 そしてステージの上には的も用意される。

 

『ゆかりさんは弓が得意という事でしたので、それをアピールポイントとするとの事です。もっとも、このステージの上なので、本来の弓道と比べると大分距離が近いのですが……果たして、無事に当てることが出来るかどうか!』

 

 その言葉にゆかりは弓を引き……そして、1矢、2矢、3矢と連続で射る。

 射られた矢は、その全てが的の真ん中に当たり……

 

『うおおおおおおっ!』

 

 その光景に、観客達は大きな歓声を上げる。

 ……ゆかりは平均よりも胸が大きいので、弓道着の胸を押さえる奴がないと色々と危険なのだが、それを全く気にした様子もなく連続で矢を射続けた。

 この辺はシャドウとの戦いで弓道着を着ていないからというのもあるんだろうな。

 そして、このパフォーマンスが決め手となり……

 

『優勝者は、岳羽ゆかりさんです!』

『わあああああああっ!』

 

 司会の言葉に歓声が上がる。

 とはいえ、ある意味これは下馬評通りの結果でもある。

 そういう意味では、これも予定調和なのだろう。

 

『それで、ゆかりさん。この優勝を誰に知らせたいですか? ……そう言えば、最初の紹介の時に恋人がいると言ってましたが……やはり?』

『そうですね。彼には女を見る目があった。そういう風に思って貰えれば嬉しいです。……アクセル、愛してるわ』

 

 観客の中にいる俺を見ながら、ゆかりはそう言うのだった。 

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