転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3797話

 ミスコンは、色々な混乱のうちに終わった。

 無理もないか。

 ミスコンの優勝者が俺に向かっていきなり『愛してる』とか言ったのだから。

 あの会場となった体育館には、ゆかりのファンとでも呼ぶべき者達も結構な数がいた。

 それを考えれば、あの一言が大きな騒動になる理由となるのは誰にでも分かるだろう。

 そんな訳で、俺はゆかりと合流するとその場を抜け出し……まぁ、その日は結局ゆかりと一緒にホテルで熱い夜を楽しんだ。

 ちなみにセーラー服については……うん。

 そんな訳で、楽しい一晩の後は朝になり、体力を使い果たしたゆかりをマンションの部屋にまで送り届けると、俺は影のゲートを使って稲羽市に戻ってきた。

 

「昨日は随分とお楽しみだったらしいな」

 

 不満そうな様子で美鶴がそう言う。

 当然だが、美鶴は東京にいた俺の様子を知らないから、想像からのものだろう。

 ……あるいは桐条グループの人員を使って俺とゆかりについて調べたのかもしれないが。

 ともあれ、美鶴とは最近ご無沙汰なのは間違いない。

 以前シェリルが泊まりに来た時と、ゆかりが夏休みで稲羽市に来た時……うん? そう考えると、そんなにご無沙汰って訳でもないのか?

 美鶴やゆかりはペルソナ世界に住んでいて、俺と同棲をしてる訳ではないので、そっち方面でもレモン達より頻度は低いし。

 まぁ、それでもUC世界のシーマ達に比べると上だったりするんだが。

 何しろUC世界は水天の涙とかの件を見れば分かるように、1年戦争が終わったとはいえ、それでもまだジオン軍の残党が活動してるし、日本も大きな影響力を持っているとはいえ、それでも結局シャドウワーカーという1つの組織を率いる美鶴と、女子大生のゆかりだ。

 ルナ・ジオンという国に所属するシーマ達とは、どうしても忙しさが違う。

 

「あー……それはまぁ、色々とあってだな」

「アクセルのことだから、何となく分かってはいるがな。……それより、足立の捜索にでも行ったらどうだ? もし見つけられたら、アクセルの手柄になるだろう」

 

 その言葉に、ここで美鶴にこれ以上何を言っても無駄だろうと判断して、俺は足立を捜しに行く事にする。

 元々今の状況では特にやる事もなく、出来るのはその程度の事しかないからというのも大きいのだが。

 そうしていつものように稲羽市を見て回る。

 当然ながら、こういうのに決まったルートとかそういうのはない。

 もし俺がどこにどうやって移動するのかを読まれれば、足立はそれを知った上で俺に会わないようにするだろうし。

 足立にしてみれば、普通の警察もそうだが、俺達の存在もかなり怖がっているのは間違いないのだから。

 とはいえ、それでも決まった場所に寄る事はあり……

 

「ん? 何だか随分と久しぶりだな」

 

 ジュネスの屋上でハンバーガーを購入しようとしたら、そこにハンバーガー屋の姿はなく、ホットドッグの店があった。

 そのホットドッグは、以前俺が好んで購入していた店だ。

 美味いが、高い。……あるいは、美味いから高いなのか。

 UC世界で水天の涙に関わっていた俺がペルソナ世界に戻ってきたらそのホットドッグ屋はなく、ハンガーガー屋となっていたのだが。

 

「久しぶりです。実はちょっと修行をする為に出掛けていたので」

 

 いや、修行って何だよ。

 そう突っ込みたくなったが、それがホットドッグをより美味くする為のものだというのは容易に想像出来たので、黙っておく。

 ともあれ、この店のホットドッグは好きだったので、またジュネスで営業をするようになったのは俺にとって悪い話ではないのだから。

 ……もっとも、その修行の結果か値段が100円高くなっていたが。

 

「この値上がりは、それだけホットドッグが美味くなったからか?」

「はい、そうです。特に大きいのは、やはりウインナーがより美味しくなった事ですね。その代わり、少し高価な香辛料とかを使う事になって値上げしてしまいましたが……不味いですかね?」

 

 少しばかり心配そうな様子の店主。

 味には自信があるのだろう。

 それは以前のこの店のホットドッグで十分に理解出来る。

 だが、美味くなったからといって100円の値上げは少し問題があるのではないかと思っているのだろう。

 あるいは20円とか30円くらいなら、値上げは値上げでもそこまで大きな値上げとは認識されないかもしれないが、それが100円となるとやはり大きい。

 しかし、俺はそんな店主の言葉に首を横に振る

 

「別に構わないんじゃないか? これがもっと安い値段で売っていたのなら、100円の値上げのダメージは大きいかもしれない。けど、元々この店のホットドッグは高級志向だろう? なら、そのくらいの値上げはそこまで売り上げに関係ないと思う。……もっとも、これは俺ならそう思うとの話で、実際に他の者達がどう思うのかは予想でしかないけどな」

 

 俺を平均的な客として見る事は出来ないだろう。

 何しろ俺はペルソナ世界においては桐条グループのブラックカード……使用限度額無制限のクレジットカードを使える。

 あるいはそれがなくても、それこそ空間倉庫の中には以前ギャングやらテロリストやらから奪った金塊や宝石を売る……いや、駄目か。そういうのは身分証とか必要になる。

 桐条グループに頼めば偽造の身分証……分かりやすいところだと、運転免許証とかパスポートとかか? そういうのを作ってくれるだろうが。

 あるいはいっそ、ヤクザとかそういう連中の事務所を襲って現金を奪ってくるという手段もある。

 ……うん。やろうと思えば色々と金を用意出来る以上、俺の金銭感覚は普通とは言えないだろう。

 実際、俺はジュネスの地下にあるスーパーで大量に食料とかを買ってるし。

 デパートにあるスーパーというのは、その辺のスーパーと違って高級志向の傾向がある。

 勿論それはあくまでもそういう傾向があるというだけで、絶対にそうだとは断言出来ないが。

 ただ、それでもそういう傾向にあるのは間違いないと思う。

 もっとも、それが悪い訳ではない。

 実際にジュネスのスーパーで売っている食材とかそういうのは、普通のスーパーで購入するよりも若干値段が高いものの、それは品質にも影響してるのだから。

 そういう意味では、個人的には好印象だった。

 特に牛タンがブロックで売られているのは、俺にとっても少し驚きだったが。

 

「とにかく、値段を上げた結果がどうなるのかは売り上げで判断出来るだろ。それで売り上げが落ちるようなら、もう少し何か考えればいい。……ああ、言うまでもなくその売り上げを考える時は俺からの売り上げは抜きにして考えた方がいい。俺もいつまでも稲羽市にいる訳じゃないし」

 

 現在俺が稲羽市にいるのは、あくまでもシャドウ関係……マヨナカテレビについての問題があっての事だ。

 足立を捕らえ、それでマヨナカテレビの件が解決すれば、俺は稲羽市から出ていく。

 もっとも、足立はこの事件のラスボスという感じではなく、小ボスか中ボスといった程度でしかなさそうな気がする以上、足立を捕らえてもそれで全てが解決するとは限らないが。

 そうなると、足立の裏にいる本当の敵を見つける必要がある。

 問題なのは、それが今のところ全く理解出来ていないという事だろう。

 そんな風に思いつつ、取りあえずホットドッグを大量に購入してフードコートを出る。

 フードコートで食べてもよかったのだが、何となく違う場所で食べたいと思ったのだ。

 そうして向かったのは、鮫川。

 正確にはその土手。

 土手に生えている雑草の上に座り、鮫川を見ながらホットドッグを食べる。

 ……うん。美味いな。

 値段が上がった分、以前よりも美味くなっている。

 そうして昼食を楽しんでいると、鮫川で水遊びをしている子供達の姿が見える。

 菜々子と同じくらいの年齢だ。

 小学校はもう終わったのだろう。

 ……そう言えば今日は菜々子の送り迎えは誰がやるんだったか。

 事件が起きた当初は、菜々子が足立に狙われる可能性があると考えていたのだが、今のところそんな様子はない。

 雪子、巽、りせ……久保は微妙なところだが、とにかく足立が暗躍した結果起きている事件は多数ある。

 そうなると、別に足立もTVの中の世界にずっといる訳じゃなく、それなりに現実世界に来ているのは間違いない。

 それでも身柄を確保出来ないのは、足立の能力がそれだけ高いのか、それとも刑事の能力が低いのか。

 ともあれ、そうして好き勝手に動いているのを考えると、菜々子が狙われないという可能性は決して否定出来ない。

 だとすれば、白鐘もそうだが菜々子の送り迎えもしっかりとやった方がいいのは間違いなかった。

 今では菜々子が襲われる事がなかったから、これからもその心配はない。

 そのように思うのは危機感が足りない。

 何しろ足立は、TVのある場所ならどこからでも出てくる可能性があるのだから。

 ……とはいえ、TVの中の世界からはそのTVが具体的にどこに繋がっているのかは分からないので、それを調べるには実際に一度TVの中の世界から出てみる必要がある。

 稲羽市の人口……そして建物の数を考えれば、それを全て調べるのがどれ程大変なのかは、考えるまでもない。

 昔……それこそ十数年? いや、数十年になるのか? そのくらい昔であれば、TVは一家に一台程度だったが、今となっては一人に一台、あるいは一部屋に一台といった感じだし。

 その全てをとなれば……うん。俺でもちょっと遠慮したいな。

 あるいは精神的な疲労を感じない、量産型Wやコバッタ辺りに任せた方がらくでいい。

 そんな風に思いながらホットドッグを食べ終え、ペットボトルのお茶を飲みながらそのまま土手の草むらで横になる。

 降り注ぐ太陽の光は、もう9月も末だというのに未だに夏と示しているかのような強さだ。

 しかも昼だけに、その太陽の光は余計に強い。

 それは分かっているのだが、それでもこうして横になっていると満腹感もあり……俺の意識は闇に沈んでいくのだった。

 

 

 

 

 

「ねぇ、ちょっと、アクセルさんってば」

「……ん?」

 

 身体が揺らされ、名前を呼ばれて意識が急速に覚醒していく。

 そうして目を開けると、そこにはりせの姿があった。

 

「りせ?」

「そうよ。全く、こんなところで昼寝なんてして。今は9月でも、まだ昼間は暑いのよ? そして夕方になると寒くなるんだから、風邪を引いたりしたら大変でしょう?」

「……そうだな」

 

 俺の心配をしてくれるりせに、そう返す。

 混沌精霊の俺は、風邪とかそういう心配はないが、りせはその件について知らない。

 だからこそ、こうして俺の事を心配してくれているのだから、それに対しては素直に感謝するべきだろう。

 

「それにしても……夕方か」

 

 りせに言われて周囲を見ると、既に夕暮れだ。

 普通の人間なら、こんな時間に昼寝をしていたら風邪を引いてもおかしくはない。

 特にここは鮫川の土手だ。

 川の近くというのは、どうしても普通の場所よりも冷える。

 

「そうよ。……足立って人を捜してるんじゃなかったの? それなのにぐっすりと寝て」

 

 少し怒った様子のりせ。

 とはいえ、俺が昼寝をしていたのは間違いない事実だしな。

 

「あー、うん。悪い。……それより、よくここを通るつもりになったな」

 

 鮫川の土手。

 ここはりせが足立に連れ去られた場所だ。

 俺がりせの携帯を見つけたのもここからそう離れていない場所だったし。

 そんな場所を通るのは、りせにとっても怖いんじゃないかと思ったんだが……

 

「私に何かあっても、アクセルさんが助けてくれるでしょ」

「……まぁ、それは否定しない」

 

 実際、りせだけじゃなくて他の面々でも同様に助けるのだが、その辺については言わない方がいいような気がしたので黙っておく。

 

「とにかく、いつまでもここにいたら危険だし、そろそろ帰りましょう? 私もちょうど天城屋旅館に行こうと思ってたから、丁度いいから一緒に行きましょうよ」

 

 その言葉に頷き、俺はりせと共に天城屋旅館に向かう。

 

「それにしても、事態が進展しないな。てっきり白鐘はすぐにでも連れ去られると思ってたんだけど」

 

 道路を歩きながら、そう言う。

 りせと一緒に歩いているのも影響してか、途中で出会った男達には嫉妬の視線を向けられるも、その辺についてはスルーしながら、りせと会話をする。

 そうして話ながら進むと、かなり先……混沌精霊の俺だからこそ把握出来るくらい先、天城屋旅館に続く道にとある人物の姿を見つけて足を止める。

 

「まぁ、当然か」

「え? アクセルさん。どうしたの?」

 

 足を止めた俺を見て、りせが不思議そうに聞いてくる。

 俺の言葉を聞いて疑問に思ったのだろう。

 

「りせにはまだ見えないかもしれないけど、この先……天城屋旅館に白鐘がいる。電柱の裏に隠れていて、ちょっと見つけにくいけどな」

「あのね、ここからどれだけ距離があると思ってるのよ」

 

 呆れたように言うりせだったが、俺はそれに対して口を開こうとして……

 

「うん?」

 

 白鐘のいるすぐ側に1台のトラックが停まる。

 ちょうどそのトラックによって白鐘の姿が見えなくなる位置関係だ。

 そのトラックの荷台には『いなば急便』の文字。

 何だ、天城屋旅館に荷物を持っていくにはちょっとおかしいし……そんな疑問を抱いていると、やがてトラックが発進し、その後には白鐘の姿はどこにもなかった。

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