転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3802話

「分かった。では、ムラタや五飛以外とは戦ってもいいのだな?」

 

 狛治の言葉に頷く。

 俺の隣では何が起きたのか理解出来ないといった様子の堂島の姿がある。

 無理もないか。

 俺の前には話をしていた狛治以外にも、グリと刈り取る者。そして俺が生み出した数百の炎獣の群れがいるのだから。

 ぶっちゃけ、ここにいる者達だけでこの稲羽市を攻略出来るのではないかと思えるような、そんな戦力だ。

 それを前にして……特にグリのように圧倒的な大きさを持つ存在を前にして、ペルソナとかシャドウとかでそういうのに耐性を持つ堂島であっても、それに驚くなという方が無理だった。

 

「ああ。好きなように暴れてこい。足立……このダンジョンのボスの性格を考えれば、ダンジョンの中には結構な強さのシャドウがいるのは間違いないだろうし」

 

 その言葉に狛治は笑みを浮かべる。

 

「最近では、俺も拳闘士としてだけではなく、冒険者としてダンジョンに挑んだりもしている。そんな俺にダンジョンの攻略をやらせるのか?」

「そうなのか?」

 

 俺もネギま世界の魔法世界に行った事はある。

 その時、冒険者……という表現なのかもどうかは分からないが、ダンジョンに挑んでいる者達がいるというのは知っていた。

 少し意外だったのは、狛治の性格からして拳闘士として活動するのはともかく、冒険者として活動しているというものだった。

 

「ああ。闘技場で知り合った何人かに誘われてな。それに付き合う形で最近はそっち方面でも行動している」

「へぇ……」

 

 鬼滅世界にいた時……それこそ鬼だった狛治にしてみれば、とてもではないが考えられない行動だ。

 狛治も1人で行動している間に、やはり成長しているという事なんだろう。

 

「好きなようにしてもいい。特に宝箱の中に入っているマジックアイテムとか、シャドウを倒した後で入手出来るマジックアイテムを入手出来たら、こっちもありがたい」

「任せろ」

 

 自信満々といった様子で頷く狛治。

 それを見て、次に俺は刈り取る者に視線を向ける。

 

「お前も同じだ。好きなように動いてもいい」

 

 刈り取る者は素直に俺の言葉に頷く。

 そして最後にグリ。

 

「お前は、他の者達と同じように行動は出来ないから、空を飛んで地上にいるシャドウを攻撃してくれ」

「グガァ!」

 

 グリフィンドラゴンのグリの巨体を考えれば、とてもではないが狛治や刈り取る者のように普通にダンジョンを攻略する事は出来ない。

 だが、このTVの中の世界にある稲羽市は、今までのダンジョンとは違う。

 今までのダンジョンは屋根のある場所だった。

 しかし、この稲羽市は1つの街をそのままダンジョンにしている。

 その為、空も普通に空いているのだ。

 ……もっとも、稲羽市として用意された建物には普通に天井があったりするが。

 シャドウが建物の中にいれはグリも対処出来ないが、道路にいるシャドウであればグリでも容易に攻撃出来る。

 

「じゃあ……行け!」

 

 その一言と共に、グリ、狛治、刈り取る者、そして数百匹の炎獣が稲羽市に向かう。

 最後にこの場に残ったのは、俺と堂島の2人だけ。

 

「アクセル……本当に自由に行動させていいのか?」

 

 その堂島は、日本刀を手に疑問を尋ねてくる。

 ちなみに堂島の日本刀は俺が知らない間に微妙に強化されており、今では最初に使っていた日本刀とは全く違う物を手にしていた。

 

「ああ、その辺については心配ない」

 

 これは堂島を励ます為の言葉でも何でもなく、純粋にそう思っているが故の言葉だ。

 五飛とムラタについては言うまでもなく一級品だし、召喚した狛治達もその強さは信頼出来る。

 炎獣は……基本的にある程度の大きさにして作ったが、こちらはシャドウに負けるような事があるかもしれないが、炎獣の場合は言ってみれば疑似生命体とでも評すべき存在で、本当の意味で命がある訳じゃないしな。

 それに数百匹の炎獣がいるので、一匹や二匹やられたところで……うん。

 

「心配するな。戦力的には何も問題のない面子だからな。それに……ほら、見てみればそこら中で既に戦闘が始まってるのが分かるだろう?」

 

 耳を澄ませば、どこからともなく戦闘音が聞こえてくる。

 それが誰の起こした戦闘音なのかは、生憎と俺はちょっと分からない。

 分からないが、それでもこうして戦闘が起きているという事は、既に誰かがシャドウを見つけて戦っているという事なのだろう。

 

「大丈夫なんだよな?」

 

 堂島がそこまで心配するのは、本当の意味で俺達の実力を知らないからというのが大きいんだろう。

 とはいえ、今のところシャドウミラーの全貌についてとか、あるいはホワイトスターについてとか、他の世界についてとか。

 そういうのを話す訳にはいかないのも事実。

 

「大丈夫だ。それより、俺達もいつまでもこうしてここにいる訳にはいかないだろう。ここで出遅れれば、それこそ俺達よりもムラタ達が足立のいる場所に先に到着するぞ」

 

 その言葉を聞いた堂島は、すぐに真剣な表情になる。

 堂島がここまで訓練を重ね、マヨナカテレビの中に行くといった行動をしていたのは、あくまでも足立を捕らえる為だ。

 そうである以上、それこそ自分の師匠と呼べるような五飛が相手でも……あるいは他の面々を相手にしても、足立を捕らえるという事のみについては、絶対に譲る事が出来なかったらしい。

 

「分かった、行こう」

 

 堂島はそう言い、俺と2人でTVの中の世界の稲羽市……ダンジョンを移動する事になる。

 とはいえ、数百匹の炎獣と五飛、ムラタ、狛治、刈り取る者、グリといった面々が暴れている以上、シャドウとは一切遭遇する事がないまま進む事が出来る。

 

「これは……まさかTVの中の世界でここまで戦闘がないとは……」

 

 手にした日本刀を振るう機会も、ペルソナのワダツミを召喚する機会もない堂島が、微妙な表情でそう言う。

 無理もないか。

 堂島にしてみれば、足立を捕らえる機会だ。

 それだけに、それこそ多数のシャドウと戦うだろうという思いもあったのだろう。

 だが実際にダンジョンの中を進むと、そこにはシャドウが一匹もいない。

 ……実際にはシャドウがいた痕跡はある。

 同時に戦闘痕が残っており、俺達より先行した者達がそのシャドウを倒したのだろうというのも理解出来るが。

 

「随分と楽なのは間違いないな。……うん?」

 

 堂島と話していると、何かを咥えた豹の炎獣がこっちに近付いてくる。

 それはポーションのような何か。

 恐らく宝箱の中から見つけた物だろう。

 あるいは敵を倒して入手したのか。

 その辺りは正確には分からないが、それでもマジックアイテムを入手したのは間違いないので、受け取って空間倉庫に入れておく。

 それから時折炎獣がやって来ては、手に入れたマジックアイテムを俺に渡していった。

 

「あ」

 

 そうして暫くダンジョンの中を進んでいると、不意に空を飛んでいたグリが地上に向かってカマイタチブレスを放っているのが見えた。

 それなりに広範囲に影響を与える攻撃だから、多分あそこには複数のシャドウがいたんだろうな。

 実際に見に行ったりするつもりはないが。

 

「凄いな、あれは……さっき召喚したところを見たが、あれもアクセルの召喚獣という認識でいいんだよな?」

「そうなるな」

「……あの2人と1匹だけで、アクセルはもの凄い力を持っているのか。ちなみにどこであんな怪獣を?」

「怪獣じゃなくてせめてモンスターと呼んでやってくれ。どこで入手したのかは……そうだな、堂島も今回のマヨナカテレビの一件に巻き込まれたから分かるだろうが、世の中には常識では考えられないような事もあるとだけ言っておく」

 

 実際にはグリはネギま世界……しかも本来なら現実世界に出て来られない魔法世界で契約した相手だ。

 本来なら現実世界に出て来られないのに、何故グリがこうして普通に他の世界に出て来られるのか。

 それこそ俺が血を与え、召喚の契約を結んだからこそだ。

 その辺の諸々についても、とてもではないが話す事は出来ないが。

 ただ……実際、シャドウとかの件があるのを考えると、何らかの理解出来ない存在がこの世界にいてもおかしくはないだろう。

 そのような存在がそう簡単に表に出てくるかどうかはまた別の話だが。

 話をしながらダンジョンとなった稲羽市を進み続け……やがて、周囲の光景が微妙に稲羽市と違うものになり始める。

 

「堂島、これをどう思う?」

「稲羽市……ではあるが、違う様子になってきているのは間違いないな。一体何がどうなってこのような事になったのか。それが気になるが」

 

 刑事だけあって、堂島も当然のように周囲の様子が変わってきたのには気が付いていたらしい。

 あるいは俺よりも早くその件については気が付いていたのかもしれないな。

 ともあれ、周囲の状況から色々と……本当に色々と特殊な状況になっているのは間違いない。

 

「足立の中で、何らかの意識が変わってきたのか、それとも俺達が侵入した事に気が付いてダンジョンを変えたのか」

 

 隠密も何もなく、ここまで派手に攻撃をしているのだ。

 何よりも、グリが上空を飛び回っているのを見れば、それで敵が侵入してきたと気が付かない方がおかしい。

 

「いや、だが……自分の意思でダンジョンの構造を変えるなんてことが出来るのか?」

 

 稲羽市ではなくなった場所を進みつつ、俺と堂島は会話を続ける。

 何があっても即座に対応出来るようにはしているものの、それでもシャドウが出てくる事はない。

 先に解き放った炎獣や、あるいは五飛、ムラタ、狛治、刈り取る者がここでも暴れているのだろう。

 もし足立が俺達への対処としてダンジョンを変えても、それは全く意味をなしていない。

 

「今までのダンジョンも、そのシャドウの持ち主と関係のある何かだっただろう? なら、俺達よりも長くTVの中の世界にいる足立だ。自分のいるダンジョンを変えるという事くらいは出来てもおかしくはないと思う。……まぁ、生田目の件もあるから絶対にそうだとは言えないけど」

 

 足立がTVの中の世界にいるとばかり思っていたものの、実は生田目の部屋で寛いでいたという事になれば、俺の予想は外れる。

 外れるが……足立の性格を思えば、そこまで生田目を信用するか? というのがある。

 俺と接触した時の事を思えば、生田目は精神的に決して強くはない。

 でなければ、俺がトラックを強引に止めたからとはいえ、それであそこまで錯乱状態になるとは思えないし。

 あるいは元々はそこまで精神的に弱い訳ではなかったのだが、不倫報道のせいで晒し上げられて精神的に消耗していたとか?

 可能性としては十分にあると思う。

 ともあれ、精神的に弱いのか、あるいは精神的に消耗していたのかは分からないが、足立がそんな生田目の部屋にずっと居座り続けた場合、どうなるか。

 生田目は精神的に追い詰められ、最終的には自分から警察に連絡をするという可能性も否定では出来なかった。

 とはいえ、白鐘の件を始めとして、何人もをTVの中の世界に入れる手伝いをしてきたのだから、警察に連絡をしてもそれは自首という扱いになりそうだが。

 その辺の諸々を考えると、やはり生田目の部屋に足立が居座り続けたという可能性はあまりないだろう。

 もっとも、生田目の部屋にあった複数の食器や箸を思えば、居座り続けることはしなくても、それなりの頻度で生田目の部屋に行っていた可能性はあるのだが。

 

「ダンジョンを自由に変えられるか。……厄介だな」

 

 これまでTVの中の世界にあるダンジョンを何度となく攻略してきたからこそ、堂島はそんな風にしみじみと思うのだろう。

 実際、ダンジョンの中にいる状態で自由にダンジョンの構造を変える事が出来るというのは、こっちにとってはかなり不利だ。

 ただし、こうして俺達がいる時に直接ダンジョンの構造を変えるといった事をしていないとなると……何らかのルールがあってもおかしくはない。

 そういうのがなければ、それこそ俺や堂島のいる場所をいきなり落とし穴にするとか、もしくは自分のいる場所に続く通路を作らないとか、そういうので対処してきそうだし。

 そういうのがない以上、本当の意味で好き勝手に出来るとかではないのだろう。

 とはいえ、だからといって具体的にどのようなルールがあるのかと言われれば、それをすぐに理解出来る訳でもないのだが。

 そう思いつつも、俺と堂島はダンジョンの中を進む。

 こうしてダンジョンの構造が変わっても、やはり既に炎獣を含めた先発隊はやって来ているらしく、そこら中に戦闘の痕跡がある。

 そう言えば、ダンジョンの中にはボスのいるような場所もそれなりにあると思うんだが……そういうボスとも遭遇しない。

 こちらもまた普通のシャドウと同じように、既に倒されているのだろう。

 まぁ、足立との戦いの前に堂島が消耗しないというのは、こっちにとっても悪い話じゃない。

 そんな風に思いながら進んでいると……やがて通路の終わりが見え……

 

「まぁったく……本当にしつこいな。いい加減諦めてくれないかな。ねぇ、堂島さん」

 

 通路の終わり、建物の瓦礫のように見える場所に座りながら、足立がこちらに拳銃の銃口を向けていたのだった。

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