転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3806話

 ニーズヘッグから放たれたファントムがアメノサギリに向かって進む。

 本来ならファントムはヒュドラ1基につき8基ずつ装備しており、ヒュドラの数が6基なので合計48基のファントムを最大で射出出来るのだが、今回放ったのはその半分の24基だけだ。

 ファントムの存在はニーズヘッグのメインウェポン……というのは少し大袈裟かもしれないが、T-LINKシステムを使って操縦するファントムが圧倒的な力を持っているのは間違いない。

 そのようなファントムだけに、ここで一気に全てを使うのは危険だった。

 何しろ、ニーズヘッグを出した瞬間から俺に視線を……それも強烈なまでの憎悪と殺意を込めた視線を送ってきている存在がいる。

 この憎悪や殺意を考えると、その相手は俺をこのまま逃がすつもりはまずないだろう。

 つまり、アメノサギリとの戦いが終わった後、俺に攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。

 ……ニーズヘッグを倒すのなら、それこそアメノサギリと協力してこっちに攻撃を仕掛けてきてもいいと思うのだが、それをしないのは恐らくアメノサギリと戦う事でニーズヘッグの力を見極めているのだろう。

 つまりそれは、ラスボスとでも呼ぶべき存在にとってアメノサギリは捨て駒にしても構わない程度の存在と見てもいい。

 勿論、捨て駒に出来るからといって雑魚という訳でもないのだろうが。

 ともあれ、ニーズヘッグの力を確認する為の捨て駒だろう存在だ。

 それが分かっている以上、こちらとしてもわざわざ素直にそれに引っ掛かるつもりはない。

 どうせなら罠に嵌めて、ニーズヘッグの力を低く見積もらせた方が、この後の戦いで楽が出来る。

 そんな訳で、半分のファントムをアメノサギリに向けて放つ。

 24基のうち、12基は先端にビームソードを展開してそのまま突っ込ませ、残りの12基はアメノサギリの周囲を動きながらビーム砲を放つ。

 そうしてT-LINKシステムを使ってファントムを操りながら、同時に他の武器を使っても攻撃する。

 放たれるのは、腹部拡散ビーム砲。

 アメノサギリが巨大なだけに……それでいながら、防御力は決して高くない為に、広範囲に放たれた拡散ビームはことごとくがアメノサギリの巨体に突き刺さり、そして貫通する。

 俺が思った以上に防御力が弱い……いや、違うな。

 単純にアメノサギリの身体がニーズヘッグの使う武器に対抗出来るように作られていないという事なんだろう。

 無理もない。

 このペルソナ世界において、シャドウと戦うのはあくまでもペルソナ使い達だ。

 そこに、まさか人型機動兵器を持ってくるというのは、向こうにとっても完全に予想外だろう。

 いわば、野球をやっているところに無理矢理サッカーのルールを持ち込んだかのような……あるいはオセロをしている時、突然チェスにルールが変わるかのような、そんな強引な方法。

 

「っと!」

 

 とはいえ、アメノサギリもこっちの攻撃にはかなり弱いが、だからといってこっちに反撃をしてこない訳ではない。

 マハガルダインとマハジオダイン……強烈な竜巻と雷の広範囲攻撃。

 しかし、人ならそのような効果範囲の攻撃を回避するのは不可能だろうが、ニーズヘッグはT-LINKシステムによって俺の意思通りに動くし、何より高機動型の機体だ。

 グラビコン・システムによって機体は驚く程に軽くなっており、新型のテスラ・ドライブによって機動性も高い。

 ましてや、限定的な性能とはいえヒュドラにすら簡易的なテスラ・ドライブを設置されている。

 そんなニーズヘッグだけに、広範囲に風と雷が放たれる魔法を使っても回避するのは難しい話ではない。

 

「T.T.キャノンだ、食らえ!」

 

 回避しながら、ヒュドラに設置されているT.T.キャノンを放つ。

 このT.T.キャノンはT-LINKシステムを使った武器で、放たれたビームは俺の意思通りに曲げる事が出来る。

 それを示すかのように、撃たれたビームはアメノサギリとは全く関係ない方向に向かう。

 それを見たアメノサギリは、一体何を思ったのか。

 俺が全く見当外れの方向にビームを撃ったと、そのように認識してもおかしくはなかった。

 だが……それは違う。

 いや、決して間違っていない訳ではないが、正解でもない。

 T-LINKシステムを通じて俺の意思に従い空中で曲がるビーム。

 そのビームは、そのまま真っ直ぐアメノサギリの巨体を貫き、一部だが爆散させる。

 勿論、その間もファントムによる攻撃は行われ続けているし、それを抜きにしても生身で戦っている者達の攻撃がアメノサギリに続けられていた。

 アメノサギリにとって、一撃で大きなダメージを与えるニーズヘッグの攻撃は決して無視出来るものではないが、同時にペルソナ使い達の攻撃も決して無視出来るものではない。

 特に五飛やムラタ、狛治、刈り取る者……気が付けば、いつの間にかグリまでもが戦場にやって来ている。

 他の面々はともかく、グリはちょっと問題だな。

 身体が大きければ攻撃が命中しやすいというのは、グリにも当て嵌まる。

 だが……この場合問題なのは、グリもまた空を飛んでいるという事だ。

 ニーズヘッグが戦闘において自由に飛び回るのだが、そんなニーズヘッグと同様にグリも空を飛ぶというのは……身も蓋もなく言えば、こっちの邪魔になる。

 

「グリ、お前は戦場を離れて、こっちに近付いてくるシャドウを片付けろ!」

 

 正直なところ、この状況でまだ周辺にシャドウがいるとは思えない。

 恐らくだが、このTVの中の稲羽市にいるシャドウは、生き残りが全て足立に吸収され、それによってアメノサギリとなった可能性が高いのだから。

 だが、それはあくまでも予想だ。

 もしかしたらシャドウの生き残りがいるかもしれないし、それを抜きにしてもTVの中の世界の他の場所からシャドウがやってくる可能性もある。

 今までの戦いにおいては、ダンジョンの中のシャドウはある程度その中にいる者達で完結しており、他のダンジョンから別のダンジョンにシャドウが移動するという事はなかった。

 偶然同じ種類のシャドウがいたりした事はあったが。

 それでも、今回の場合は万が一という可能性がある。

 ここが普通のダンジョンならそんな心配はいらなかったが、アメノサギリが相手だ。

 ラスボスではなく、中ボス……あるいは視線の主が裏ボスだった場合はラスボスという扱いになるかもしれないが、とにかくここで行われる戦いが特別なのは間違いない。

 グリは俺の言葉に鳴き声を上げると、ここから去っていく。

 そんなグリに向かい、アメノサギリはその眼球から雷を放つ。

 ジオダインか!?

 グリを庇うように、ヒュドラのビーム砲を放つ。

 ビームとビームが相打ちに合うというのは、俺が行ってきた戦いの中ではそう珍しい事ではない。

 だが、マハジオダイン……いや、あれは単体に対しての攻撃だと考えれば、恐らくジオダインなのだろうが、ジオダインで放たれた雷とビームでは、普通ならどのように反応するのかは分からない。

 分からないが、それはあくまでも普通のビームならではの話だ。

 ニーズヘッグは魔力属性を持っている。

 少し大袈裟かもしれないが、ニーズヘッグの攻撃はそれそのものが一種の魔法に近い攻撃方法であるという事を意味してもいた。

 それだけに、ヒュドラから放たれたビーム砲はジオダインの雷によって打ち消される。

 自分の攻撃が打ち消されたことが面白くなかったのか、アメノサギリはその一つの眼球をニーズヘッグに向ける。

 しかし、アメノサギリが何らかの攻撃をするよりも前に、先端にビームソードを展開したファントムが突っ込んでいき……ビームソードが眼球に突き刺さる。

 

『ぐがあああああああああ!』

 

 周囲に響く悲鳴。

 アメノサギリにとって……いや、それ以外の者であっても、眼球をビームソードで突き刺されれば、その痛みが想像を絶したものになるのは間違いない。

 そして眼球の痛みからアメノサギリの動きが鈍る。

 

「今だ! 全員集中攻撃しろ!」

 

 叫びつつ、T-LINKシステムを使って放った24基のファントムの全てをビームソード型にして、アメノサギリの眼球に突っ込ませる。

 例えるのなら、人の眼球に熱して赤くなった金属の串を何本も突き刺すかのような……そんな攻撃。

 自分で想像しつつ、その痛みは体験したくないと思いながらも、攻撃の手を緩めることはない。

 未だにこちらに向かって強烈なまでの憎悪や殺意を抱いている何者か。

 その何者かに対して手の内を見せるのは面白くないが、ここで一気に勝負を終わらせないと、それこそ戦いが長引いてこっちの攻撃手段を知られる可能性が高い。

 であれば、多少の手の内を晒すのは覚悟の上で、ここでアメノサギリを一気に倒してしまった方がいい。

 そのような状況で俺が選んだ武器は……

 

「ランツェ・カノーネ……発射!」

 

 ニーズヘッグは多種多様な武器を持つが、その中でも上位に位置する武器。

 ただし、メガ・バスターキャノンやブラックホール・ランチャー、フレイヤのような、最上級の威力を持つ武器ではない。

 ……そもそもここでフレイヤを使えば、それこそ鳴上達を巻き込む事になってしまうので、武器の中でもフレイヤは使いたくても使えないが。

 6基のヒュドラのうち、前方の左右に組み込まれている、ランツェ・カノーネ。

 それは武器としてはビーム砲ではあるが、その威力は間違いなく強力だった。

 それ以外にも、俺の声に従って地上にいる者達はそれぞれアメノサギリに攻撃を仕掛けている。

 目立つのは、ムラタが使っている神鳴流の奥義真・雷光剣であったり、鳴上が召喚したのだろう巨大な龍だったり。

 他の面々も最大級の攻撃をアメノサギリに向かって放つ。

 それらの攻撃はアメノサギリであっても容易に防げたり、耐えられたりするようなものではない。

 ましてや、ファントムによって眼球を貫通するような攻撃を何度となく受けているのだから。

 他の面々の攻撃によって、動きが止まったその瞬間……ランツェ・カノーネによって放たれたビームがアメノサギリの眼球を飲み込み……

 

『あ……る……じ……』

 

 聞こえてきたその声が最後となり、次の瞬間アメノサギリは爆散するのだった。

 ……これ、足立生きてるのか?

 そう思ったが、アメノサギリの身体を構成していた大量のシャドウが消滅した結果、地面には足立が倒れており、その胸が微かにだが上下しているのを確認出来るのだった。

 

「ふぅ……取りあえず足立は何とかなったか」

 

 倒れている足立に駆け寄る堂島を見ながら、そんな風に呟く。

 俺個人の意見としては、足立が死んでも構わない。

 ……いや、これから足立を待っている処遇を考えれば、ここで死んだ方が足立にとっては幸福だとすら思ってしまう。

 まぁ、堂島は足立を捕らえる為にここまでやって来たのだ。

 それを思えば、この展開はおかしな事ではない……のか?

 とはいえ、出来れば堂島に声を掛けたり、あるいはゆっくりと休ませて貰いたいとは思うのだが……

 

「全員、気を抜くな。まだ戦いは終わっていない」

 

 外部スピーカーでそう言う。

 その言葉に驚いたのは、鳴上達だ。

 すぐにそれぞれ武器を構え、いつ戦闘になってもいいように構える。

 この咄嗟の反応は、やはり今まで多くの戦闘を経験してきたからだろうな。

 そして堂島も俺の言葉を聞いて素早く立ち上がり、日本刀を構える。

 

『ちょっと、アクセルさん。それどういう事!? 私の方でも特に他に敵がいる様子はないわよ!?』

 

 りせの焦ったような言葉。

 そして他の面々もまた、そんなりせの言葉を聞いていたのか戸惑った様子を見せる。

 だが……そんな面々とは違い、五飛、ムラタ、刈り取る者、狛治は決して油断をしない。

 この面々は鳴上や堂島と違い、俺が今までどんな戦いを潜り抜けてきたのかを知っている。

 そして俺が戦いの中でどのような力を発揮してきたのかも。

 だからこそ、俺の言葉を疑うことなく、そしていつどこから敵が現れてもいいように構えているのだろう。

 

「このTVの中の世界の稲羽市に入った時から、俺達……いや、俺には憎悪や殺意の視線が向けられていた。当初は足立やアメノサギリの仕業かとも思ったんだが、こうして戦えばそれが違うのはすぐに分かる。それに……アメノサギリも自分よりも上の存在がいるという事を匂わせていただろう? 恐らくそいつ、このマヨナカテレビの件の真の意味でのラスボスとでも呼ぶべき存在が、俺に憎悪や殺意の視線を向けていた者の正体だ」

 

 正直なところ、何故俺がそこまで憎悪されているのかは分からない。

 あるいは……本当にあるいはの話だが、俺と同じく転生してきた者がいて、その人物がこの事件の原作について知っていたから。

 つまり、俺が介入した結果、原作通りにならないのが面白くなかったとか、そういう可能性もあるのか?

 そう思ったが、今まで俺以外の転生者に会った事がない以上、可能性は低いか。

 そんな風に思っていると……

 

「私の視線に気が付いていたのか。大いなる母の仇である以上、そうでなくては困るがな」

 

 不意にそんな声が周囲に響いたのだった。

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