転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3807話

 その声が周囲に響いた瞬間、俺の中の念動力が危険を察知する。

 それにT-LINKシステムが反応し、ニーズヘッグは素早くその場から移動し……そしてニーズヘッグのいた場所に巨大な雷が落ちた。

 ジオダインか。

 回避しながらその光景を確認し、そう思う。

 ジオダインはジオ系……つまり雷系の魔法では最強の魔法だ。

 いや、以前有里の話を美鶴経由で聞いたところによると、本当の意味での最上級の魔法はダインとかそういう名前ではなく、別の名前がついてるらしいが。

 ただし、それはあくまでも特殊な……ゲーム風に言うのならユニーク個体が使う魔法だとかそういう話だという事らしいので、一般的な意味ではやはりジオダインがジオ系の単体攻撃としては最強の魔法で、ジオ系の広範囲攻撃の魔法で最強なのがマハジオダインという認識で間違いはない。

 そんな風に思いつつ、T-LINKシステムを使って敵の存在を把握する。

 

「食らえ!」

 

 T-LINKシステムによる反応のあった場所に向けて、腹部拡散ビーム砲と頭部ビームバルカンを発射する。

 広範囲に攻撃出来る拡散ビーム砲や、連射性能の高いビームバルカンを使ったのは、T-LINKシステムによって察知した敵の大きさがアメノサギリのように大きな存在ではなく、人間程の大きさだったからだ。

 それなら、今の武器選択が相応しい。

 腹部拡散ビーム砲は勿論、頭部ビームバルカンで放たれるビームも戦車くらいなら容易に貫くだけの威力を持ってる。

 人間が当たれば、それこそ一瞬にして消滅してしまうだろう。

 だが……

 

「ちっ、無理か」

 

 T-LINKシステムで感じた敵の反応がそのままなのを理解し、吐き捨てる。

 とはいえ、俺も今の攻撃で本当に倒せるとは思っていなかった。

 もし倒せたらラッキー程度には思っていたが。

 何しろ敵は、恐らく……いや、間違いなくアメノサギリよりも上位の存在だ。

 そんな相手が、広範囲だが威力は弱い――あくまでもニーズヘッグの他の武器と比較してだが――腹部拡散ビーム砲や頭部ビームバルカンで死ぬとは思えなかったのだから。

 

「君の存在は許されない」

 

 先程もそうだったが、聞こえてくる声は不思議なことに俺の耳に直接入ってくる。

 普通ならニーズヘッグのシステムを通して外の声が聞こえる。

 あるいは何らかの能力を持っているのなら、テレパシーとか念話とかそんな感じで頭の中に直接声を届けるといった事も可能だろう。

 だが、この相手……俺に敵対している奴の声は、不思議なことに直接俺の耳に入ってくるのだ。

 一体何がどうなってそのような事になってるのかは、生憎と分からない。

 分からないが、それでも何らかの俺には分からない手段を使っているのは間違いなかった。

 そして……ここで始めて、コックピットの映像モニタにT-LINKシステムの反応があった相手の姿を確認出来る。

 見た目は、ひ弱そうな男。

 あるいは軽そうな男といった感じか?

 ただし、白い……シーツか何かのように見える布で身体を覆っているのが、不思議と違和感がない。

 それによって、ひ弱そうな男がどこか幻想的な雰囲気すら持っていた。

 ……ただし、その目にあるのは神秘的とか幻想的とかそういう者ではなく、それこそ俺に向けられる強烈なまでの憎悪と殺意。

 そんな男を見れば、このTVの中の稲羽市に入ってから感じていた視線の持ち主が誰なのかは容易に想像出来る。

 というか、さっき自分で視線に気が付いた云々と言っていたし。

 

「何故だ? 俺はお前と会った事はない。そうである以上、そこまで恨まれる覚えはない。それにお前の母親を殺したりもしていない」

 

 いやまぁ、実はあの男が俺達と同じくどこか別の世界からやって来ていて、そこで俺に自分の母親を殺されたとかだったら分からないでもないんだが。

 ただ、その可能性はない……訳ではないが、恐ろしく低い。

 それこそ、限りなく0に近いくらいには。

 

「ああ、確かに殺してはいないだろう。だが……永久の眠りにつかせた以上、それは私にしてみれば死んだのと同じだろう。数年前……全てのシャドウの母と戦い、勝利したのが君だというのは、分かっている!」

 

 そう言い、空を……宇宙を、そしてそこにあるだろう月を見上げる男。

 そして男の言葉から、俺は何を言ってるのか分かった。

 シャドウの母……それは以前俺が関わり、ゆかりや美鶴と、そして月光館学園の面々と出会った一件。

 そう、全てのシャドウの母と呼ばれる存在。それは……

 

「ニュクスか」

「その通りだ」

 

 今までの会話から分かっていたが、どうやらあの男は俺の声がしっかりと聞こえているらしい。

 別に外部スピーカーを使っている訳ではなく、コックピットの中で言葉を発しているだけなのだが。

 ……相手がシャドウだとすれば、今更か。

 そんな風に思うと同時に、俺がTVの中にある稲羽市に来た時から憎悪と殺意の視線が向けられていたのには納得出来た。

 そして何より、その憎悪と殺意がニーズヘッグを出した瞬間に増大したのは……俺がニュクスと戦った時、ニーズヘッグを使っていたからだろう。

 つまり、ニーズヘッグと俺という組み合わせは、あの男にとって母親の仇という事になる。

 俺に向ける視線にあれだけの憎悪と殺意が込められるのは、自然な成り行きだったのだろう。

 とはいえ、この男が言うように俺はニュクスを倒した訳ではない。

 もしニュクスを倒していれば、このペルソナ世界における月は消滅していただろう。

 何しろ、ペルソナ世界の月こそが、全てのシャドウの母たる存在……ニュクスなのだから。

 つまり、この男もシャドウそのもの……あるいはシャドウと関係のある存在なのだろう。

 具体的にどのような存在なのかは分からないが。

 

「母なる存在ニュクスの仇、その力は先程の戦いで確認させて貰った。その力が強力なのは間違いないだろう。私の作り出したアメノサギリを相手に、無傷で勝利したのだから」

 

 それは違う。

 そう突っ込みたくなったが、それは止めてT-LINKシステムに意識を集中させる。

 アメノサギリとの戦いにおいて、こちらが無傷で倒せたのは……こう言ってはなんだが、アメノサギリの戦略が間違っていたからというのが大きい。

 あの男に命じられたアメノサギリは、俺の……というより、ニーズヘッグの力を引き出すのを最優先にしていた。

 その結果、アメノサギリの攻撃対象は基本的にニーズヘッグに固定されていたのだ。

 それによって鳴上達のように生身で戦っていた者達に対する攻撃は、非常に頻度が低かった。

 その上、ニーズヘッグは高機動型で、T-LINKシステムがあり、バリアの類も多数ある。

 アメノサギリにとって、ニーズヘッグは相性が最悪の相手だったのは間違いないだろう。

 ましてや、アメノサギリの身体はペルソナとかそういうのには対処出来るように作られていたかもしれないが、ニーズヘッグの武器に抵抗出来るようなものではなかったのも大きい。

 そういう意味では、アメノサギリをあのような作りにしたこいつの失策と言えるだろう。

 まぁ、ニュクスの一件を知ってはいても、具体的にニーズヘッグがどのような力を持っているのかといった事は分からなかったのだろうが。

 このペルソナ世界は、基本的に生身で戦う世界だ。

 そうである以上、UC世界とかのようにニーズヘッグが具体的にどのような能力を持っているのかは分からなかったのだろう。

 

「我が名はイザナミ……母たるニュクスの仇として、汝を殺す者」

 

 そう言った瞬間、男……イザナミは光り始め……

 

「ファントム!」

 

 それを見た瞬間、T-LINKシステムを使ってファントムを射出し、同時にT.T.キャノンを放ち、ヒュドラのビーム砲とランツェ・カノーネ、腹部拡散ビーム砲を一斉に発射する。

 放たれた一撃は、見るからに真の力を発揮しようとしていたのだろうイザナミに、次々と命中する。

 先端がビームソードとなったファントムが突っ込んでいき、あるいは先端からビーム砲を放つ。

 ヒュドラのビーム砲と腹部拡散ビーム砲のビームが次々とそのイザナミの身体に命中し、次の瞬間にはランツェ・カノーネから放たれた強力なビームが飲み込む。

 T-LINKシステムによって操作されたT.T.キャノンのビームが、大きく弧を描いて回り込み……その身体を光に飲み込む。

 

「さて、どうだ? これで死ぬとは思えないが……」

 

 次に何が起きてもすぐ対処出来るように準備をしつつ、複数のビームに飲み込まれたイザナギの姿を確認する。

 向こうが真の力を発揮したり、あるいは変身したり……そんなことをしようとしているのは明らかだった以上、わざわざ相手が強くなるのを待つ必要はない。

 アメノサギリの時は、足立が次々にシャドウを吸収するのを見ていたが、それについては堂島から頼まれていたので、大人しくパワーアップするのを見ていたというのが正しい。

 しかし、イザナミについてはそういう必要がないので、容赦なくパワーアップの途中に攻撃させて貰った。

 にしても……イザナミの様子を探りつつ、疑問を抱く。

 俺が戦ったニュクスは、ギリシャ神話に出てくる神だ。

 それに対して、イザナミはその名前からして日本の神。

 まぁ、神の中には別の国に渡るに従って別の神になるというのは珍しい事ではない。

 分かりやすい例だと、日本では有名な七福神。

 その七福神の中でも食べ物や金について司る、大黒天。

 この大黒天というのは、インドのヒンドゥー教の破壊神シヴァ神であるというのを、以前……俺がネギま世界に行った時、綾瀬から教えて貰った記憶がある。

 あの当時、綾瀬はバカレンジャーの一員だったが、それはあくまでも自分に興味のない勉強はしたくないからという理由だったんだよな。

 つまりそれは、興味のある勉強では非常に熱心に勉強するという事で、大黒天とシヴァが同じ存在であるというのも、何かの機会に綾瀬から聞いた内容だった。

 そんな風に考えていると……

 ドクン、と。

 TVの中の世界が脈動する。

 それはアメノサギリが現れた時も同様だったが、今の脈動は明らかにアメノサギリの時よりも上だ。

 

「だよなぁ……」

 

 その脈動に、思わず呟く。

 何しろ、イザナミは明らかにこの事件のラスボスだ。

 パワーアップの途中に攻撃したとはいえ、それで倒せる程甘い相手ではないだろう。

 ……もっとも、今の武器もそれぞれニーズヘッグの武器という事で、魔力属性が付与されており、その辺のシャドウなら微かに触れただけで消滅してもおかしくはないのだが。

 

「許さん……許さんぞ、貴様……」

 

 おどろおどろしいというか、地の底から響く声というか、そんな声が聞こえてくる。

 相変わらず、どうやってこっちの耳にその声を届けているのかは分からない。

 だが、今はそれよりもイザナミの様子を確認することが先だった。

 

「うわぁ……」

 

 ニーズヘッグの攻撃によって生じた煙が次第に晴れていき……すると、そこには、ニーズヘッグと同じくらいの大きさの何かがいた。

 ただし、それは先程のイザナミとは全く違う……とても人とは思えない外見をしている。

 何と言うか……アンデッド? あるいは邪悪な存在? そんな表現が相応しい外見。

 無数の腕を持つ巨大な下半身に人間サイズの赤い骸骨の上半身という表現が相応しいだろう外見。

 

「この伊邪那美大神の姿を見せた以上、アクセル・アルマー、そして他の者も決して生かして返す訳にはいかない。霧の中に包んでくれよう」

 

 伊邪那美大神と名乗った存在は、そう言うと強烈な殺気を向けてくる。

 向こうにしてみれば、恐らくこの姿を見せるのは予想外だったのか……いや、俺がニュクスを倒した――正確には眠らせた――のを知っている以上、それはないか。

 

「俺を殺すか。出来るものならやってみるといい」

 

 外部スピーカーでそう言うが、UC世界での戦いと違って、伊邪那美大神の攻撃は魔力が込められている。

 それもラスボスらしく、結構な強さの魔力が。

 そういう意味では、伊邪那美大神の俺を殺すという表現も決して不可能な事ではないのだろう。

 ……ただ、俺を殺す手段を持っているというのと、実際にそれで俺を殺せるかというのはまた別の話なのだが。

 

「その言葉……後悔するな」

 

 伊邪那美大神は、その言葉と共に巨大な下半身にある腕の一本を大きく振るう。

 それを見た瞬間、俺はT-LINKシステムを使って機体制御を行い、その場から離れる。

 一瞬前までニーズヘッグのいた場所を中心に、広範囲に雷が放たれる。

 マハジオダイン。

 その攻撃は決して弱いものではない。

 それこそラスボスが使うに相応しい威力と範囲を誇っていたが……

 

「こっちの機動力についてこられないのは、どうだろうな。……ファントム!」

 

 ニーズヘッグはその小柄な外見であったり、ヒュドラを含めて全身に多数のスラスターがついていたり、何より俺が人間ではないので耐G能力とかそういうのを気にしなくてもいいという事もあり、圧倒的な高機動性を持っている。

 あるいはそういう性能を持っていても手動で操縦するのなら僅かな差でダメージを受けるかもしれないが、T-LINKシステムによる操縦は、普通に操縦するようなロスはない。

 そんな風に思いつつ、俺はマハジオダインを回避しつつファントムを伊邪那美大神に向かって放つのだった。

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