転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3817話

「へぇ、あれがブルワーズのMSか。……微妙だな」

 

 映像モニタに表示されたMSは、ずんぐりむっくりといった表現が相応しい、そんなMSだった。

 その外見から、防御力は高いのだろう。

 ただ、俺は基本的に防御するのではなく、回避する戦闘スタイルだ。

 そうである以上、あのMSはあまり好みではない。

 もっとも、そのMSの動き自体はかなり滑らかというか、人間臭いというか……なるほど、あれが阿頼耶識システムの力か。

 

「あのMSは?」

「は、はい。あのMSはマン・ロディというMSです。ブルワーズのMSはクダルが使っているガンダム・グシオンの他はあれだけです」

「ちょっと待て。……ガンダム?」

 

 MSを使っていた以上、ここがガンダム系の世界だというのは理解していた。

 だが、まさかいきなりガンダムが出てくるとは。

 もっとも、ガンダムのある世界ではガンダムは別に1機だけではない。

 複数のガンダムがある以上、ブルワーズがガンダムを持っていてもおかしくはないのだろう。

 

「はい。ブルワーズが行動しているこの辺りで見つかったガンダム・フレームで、紆余曲折あってブルワーズが所有する事になりました。阿頼耶識がなくても動けるように、コックピットを換装してますが」

「待て」

 

 その言葉に、俺にMSの説明をしていた男の口が止まる。

 ガンダム・フレームとか、また俺の知らない情報が出て来たが……今、その辺は後回しだな。

 今はまず、ブルワーズを完全に手に入れることが最優先だ。

 

「ガンダム・グシオンとかについては後回しでいい。あのマン・ロディとかいう機体の説明を簡単に頼む」

「分かりました。あのマン・ロディは厄祭戦の時に開発されたロディ・フレームを使ったMSです。可能な限り装甲を厚くしてあるので、防御力という点ではかなりのものです。また、スラスターの数もそれなりで、重装甲でありながら機動性も悪くありません。ただ、重装甲で高機動という矛盾した能力を持っているので、その影響で燃料消費量が多く、活動時間は短いです」

「……そうか」

 

 ガンダム・フレームやロディ・フレームといった事から考えると、恐らくこのオルフェンズ世界のMSはフレームに装甲や動力を組み込んでいくタイプなのだろう。

 この辺はUC世界のMSとは少し違うな。

 UC世界のMSは、基本的にモノコック構造という奴で、装甲で自重を支えている感じだし。

 それとは違う形でMSが発展しても、おかしくはない。

 あるいはUC世界のMSも技術発展を続けていけば、いずれはフレーム構造になるのかもしれないな。

 

「MSとかについての詳しい説明は、後で……ブルワーズを全て俺の物にしてから、改めて聞く。とにかく、今はあのマン・ロディというMSがブルワーズの主役だというのを知っただけでいい。さて、それじゃあ通信を……」

「その、アクセルさん。向こうから通信が」

 

 通信を送れ。

 そう言おうとした俺の言葉を遮るように、通信を担当している男がそう言ってくる。

 どうやら予想通りMSが出撃した事で、一体何があったのかと聞いてきたらしい。

 

「アクセル、私達はどうすればいい?」

 

 マーベルの言葉に、取りあえずシーラと一緒に映像モニタに映らない場所に移動するように言う。

 向こうも海賊だ。

 こっちにマーベルやシーラといった美女がいるのを見れば、それこそ計算よりも欲望が勝り、こちらに攻撃してきてもおかしくはない。

 そうなったらそうなったで、こっちも相応に対処すればいいだけだが、そうならないに越した事はない。

 

「それと狛治と刈り取る者も同様に隠れてろ」

 

 狛治と刈り取る者は、マーベルやシーラとは違った意味で衝撃が強い。

 この2人が向こうに見つかると、一体どうなる事やら。

 逆上して襲ってくる……といった事にはならないと思うけど。

 狛治は少し不満そうにしながら、刈り取る者は素直に隠れる。

 この辺は性格が出てるよな。

 狛治の場合は、ネギま世界で普通にあの状態のままで生活している事もあり、隠す必要があるのか? といった風に思っているのだろう。

 

「通信、出ます」

「それと同時に、この通信を船内にも流します」

 

 ブリッジクルー2人の言葉に頷くと同時に、映像モニタに強面の男の顔が映し出される。

 

『お頭、MSを一体何で……誰だ、てめえ』

 

 最初は神妙に聞いてきた男だったが、そこに映し出されたのがブルックではなく俺……向こうにしてみれば、初めて見る男だと判断したらしく、訝しげな……いや、半ば敵意を感じさせる様子で聞いてくる。

 

「俺はアクセル・アルマー。このブルワーズを乗っ取った者だ」

『ああ? ……本気で言ってるのか、てめえ』

 

 最初、俺の言葉が理解出来ないといった様子の男だったが、やがて剣呑な視線を俺に向けてくる。

 だが、映像越しで何か出来る筈もない。

 ……いや、あるいはこの男がブルワーズの中で強い求心力でも持っていれば、こっちのブリッジにいる者達に命令は出来たかもしれない。

 しかし、この様子を見る限りでは、今のところそんな様子はないらしい。

 

「本気だ。俺がここにいるのが何よりの証拠だろう?」

『お頭をどうした?』

「俺に逆らったから死んだよ。そんな訳で、現在このブルワーズを率いているのは俺だ。一応言っておくが、俺に逆らうようなら今そっちに向かっているMSを敵に回す事になるぞ」

 

 その言葉に、男は睨み付けてくる。

 

『てめえ……』

「俺に従うか、もしくはブルワーズを出ていくかは、好きにするといい。ただし、出て行く場合は当然だが強襲装甲艦や輸送艦、ましてやMSは置いていって貰うぞ」

『なら、俺がもっといい選択肢を教えてやるよ。お前をぶち殺して俺がブルワーズを率いる』

 

 そう言う男の表情は、俺に対する敵意もあるが、それ以上に欲望の色がある。

 先程まではブルックを殺したという俺を憎んでいる様子だったが、それは今となっては違うのだろう。

 自分で口にしたように、俺を殺して自分がブルワーズを率いるという事を考えたのだろう。

 実際、それは悪い話ではない。

 この男ももう1隻の強襲装甲艦の艦長を任されていたと考えれば、ブルックにとってはクダルとはまた別の意味で信頼出来る優秀な部下だったのだろうし。

 ……もっとも、それでもブルックの部下だったという事は、優秀ではあるがブルック以上にはなれなかったのだろう。

 あるいは本人はブルック以上の能力を持ってはいても、クダルを従えているブルックを相手にしてはどうにもならないと思ったのか。

 ともあれ……

 

「そうだな。それは良い考えだ。ただし、お前と敵対したのが俺でなければ……実現出来ればの話だが」

 

 結局のところ、それにつきる。

 この男がどうしようとしても、それを実現出来るかと言えば否だ。

 

「軽く脅すように言え」

 

 その言葉に、ブリッジクルーの1人が出撃している昌弘達に通信を入れ……すると次の瞬間、マン・ロディの1機が強襲装甲艦のブリッジの前に行き、手にしたマシンガンの銃口を向ける。

 

『貴様……』

 

 当然ながら、向こうでもブリッジに銃口を突きつけられたのが分かったのか、映像モニタの男は苛立たしげに言う。

 MSという戦力を出されれば、向こうにとっても反撃は難しい。

 当然向こうの強襲装甲艦にもMSは搭載されているが、阿頼耶識システムで動くMSは当然ながらヒューマンデブリの子供達しか操縦出来ない。

 この状況でもしMSを出撃させたとしても、すぐこちらに降伏すると考えるのは間違いない。

 実際にどうなのかというのは、正確なところは分からない。

 ヒューマンデブリの中には、これまでの教育で大人に逆らえないと思っている奴もいるだろうし。

 だが、この場合重要な意味を持つのはあくまでも大人が……もっと具体的には、現在映像モニタに映っている男がどう思うかだ。

 そして今の様子を見る限り、とでもではないがこの男がヒューマンデブリを信じてMSを出すといった事をするとは思えない。

 この辺はブルックがMSは率いるクダル以外はヒューマンデブリだけに使わせていた弊害だな。

 今回はこっちにとって幸運な結果になったが。

 

「さて、それでどうする? この状況になっても負けを認めないのなら、ブルックと同じく殺すしかないが」

『く……好きにしろ!』

 

 結局男はそう叫び、負けを認めるのだった。

 

 

 

 

 

 もう1隻の強襲装甲艦の艦長が負けを認めてから数時間。

 その間、ブルワーズの海賊達には考える時間を与えておいた。

 これからどうするのかを決めるようにと指示を出して。

 俺から出せる選択肢は2つ。

 ブルックや降伏を選択した男に示したのと同じく、このままブルワーズ……名称はシャドウミラーに変える予定だが、とにかく俺の下で働くのを承知するか、あるいは組織を抜けるか。

 ただし、ブルワーズを乗っ取ったが、海賊としては働かないと宣言しておいた。

 ……もっともブルワーズのような宇宙海賊がいたら、そいつらを襲撃するかもしれないとは言っておいたが。

 

「さて、どのくらいの人数が残ると思う?」

 

 俺はブリッジクルーに用意させた部屋でマーベルやシーラと話していた。

 一応海賊とはいえ、格上の存在であったり、商人とやり取りをする必要がある以上、応接室はあったらしい。

 ちなみにここにいない狛治は既に召喚を解除し、俺は無事だというのと諸々の状況をホワイトスターに知らせるように伝言を頼み帰っている。

 刈り取る者は、言うまでもなく影に戻った。

 

「どうかしらね。半分……いえ、3割くらい残ればいいんじゃない?」

「マーベルは少し楽観的ではないですか? 私はよくて2割だと思いますが」

 

 マーベルとシーラの言葉に、そんなものかと思う。

 とはいえ、実際にそのくらいの数がいれば小さいながらも組織を運営する事は出来る。

 そして昌弘から連絡を貰ったが、もう1隻の方にいるヒューマンデブリのパイロット、それに輸送艦にいるヒューマンデブリ達も、新しい組織に残るというのは決めてくれた。

 ……決めてくれたどころか、寧ろもの凄く感謝をされているというのが正しい。

 好都合すぎないか? とも思ったが、ヒューマンデブリ達にしてみれば使い捨ての消耗品としてではなく、ヒューマンデブリから解放してくれるというのは、それだけで感謝される事だったらしい。

 そんな訳で、MSとそのパイロットは十分残るのだ。

 もっとも、ヒューマンデブリから解放されたからとはいえ、昌弘達をMSパイロットとして使うのは、あまりいい気はしないが。

 昌弘のように10代半ばくらいの年齢なら……まぁ、MSパイロットをやってもおかしくはない。

 だが、ブルワーズにおいては10歳くらいの子供もMSパイロットとして使ったりもしているらしい。

 何しろ阿頼耶識システムがある以上、そんな子供であっても普通にMSを操縦出来るのだから。

 とはいえ、それでも10歳くらいでMSを操縦するというのはブルワーズでもそれなりに珍しいが。

 何しろ、幾らMSを操縦出来るとはいえ、それでも10歳くらいなのは変わらない。

 戦闘という行為そのものを怖がり、戦闘中にパニックになってもおかしくはない。

 そうなると、MSは撃破されるなり、鹵獲されるなりしてしまう。

 海賊としては中堅のブルワーズだが、だからこそMS1機の価値というのはそれなりに……それなり以上に大きい。

 寧ろブルワーズにしてみれば、使い捨ての消耗品であるヒューマンデブリよりもMSの方が重要性が高いだろう。

 そう考えると、やはりわざわざそんな小さな子供にMSパイロットをやらせるというのが間違いだろう。

 

「とにかく、何をやるにしてもMSパイロットはいた方がいい。後は……メカニックの面々がどうなるか、か」

「そうね。整備は重要だわ。特に今回のような場合は」

 

 実際に自分でもオーラバトラーに乗っていたマーベルだけに、俺の意見には素直に賛成する。

 MSにしろオーラバトラーにしろ、整備が出来ないと短期間ならともかく、長期間の運用は難しい。

 そうなると、やはりそういう人員も必須だろう。

 

「とにかく、組織の規模が小さくなるのは間違いない。後は具体的にどのくらい小さくなるかだな」

 

 輸送艦は運用したいが、最悪もう1隻の強襲装甲艦は使わなくても構わない。

 海賊が使っていた以上、ネズミやゴキブリがいるので、もし空間倉庫に収納する時は……スライムとかを使って一度綺麗に掃除してからだな。

 あるいはどこかの組織に売ってしまってもいい。

 問題なのは、海賊だったブルワーズと付き合いのある組織……それも強襲装甲艦を買い取るとなると、やはり海賊の可能性が高い事だろう。

 そういう海賊からは、寧ろこっちが襲撃して物資とかを奪おうと思っている以上、わざわざ戦力を渡すという事は考えていない。

 そんな風にマーベルやシーラ達と会話をしつつ、俺はブリッジクルーから渡されたコンピュータ……正確にはそこに入っている、この世界の歴史について調べていく。

 

「厄祭戦か」

 

 そう、その厄祭戦こそがこのオルフェンズ世界において、歴史の転換点と呼ぶべきものだった。

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