転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3829話

「アクセル、あのノブリスという男……悪しきオーラ力の持ち主だと理解していますか?」

 

 ノブリスとの通信が終わり、俺達は方舟と呼ばれる場所に向かっていた。

 方舟というのは、火星の衛星ダイモスを利用した共同宇宙港だ。

 UC世界のソロモンやア・バオア・クー、ルナツー、フィフス・ルナ、そしてペズンといったように小惑星を使った施設と考えれば分かりやすい。

 もっとも、フィフス・ルナ以外は基本的に軍事施設なのに対し、方舟はあくまでも宇宙港だ。

 ……とはいえ、当然ながら普通ならそのような宇宙港を俺達が使える筈もない。

 何しろ今はもう海賊を止めてシャドウミラーという新たな組織になったのだが、それでも元ブルワーズだったのは変わらない。

 しかも武闘派としてそれなりに名前が知られていた以上、強襲装甲艦や……場合によっては輸送艦も、知られていてもおかしくはないのだから。

 ましてや、方舟があるのは火星のすぐ側。

 同じように火星の側にはギャラルホルンの火星支部とも呼べるアーレスがある。

 普通に考えれば、そのような場所にシャドウミラーが堂々と入る訳にはいかない。

 だが、ノブリスの力があれば違う。

 ギャラルホルンとまともにぶつかることなく方舟を使えるのは、ノブリスの力のお陰だ。

 この事からも、ノブリスがギャラルホルンに相応の影響力を持っているのは間違いない。

 

「悪しきオーラ力……ドレイク程ではないにしろ、油断のならない奴だというのは分かってるよ」

 

 俺がノブリスを信頼も信用もしていないのと同様に、ノブリスもまた俺達を信頼も信用もしていないだろう。

 単純に、金になるから協力してるだけだ。

 それはつまり、俺達が持ってきたエイハブ・リアクターや未知のフレームについてはノブリスにとってもこのような事をするだけの価値があるという証でもあった。

 また、それとは別に火星に俺達の拠点となる場所を用意するというのも引き受けた。

 これもノブリスにしてみればそこまで気にする必要のない程度の……それこそついででどうにか出来るものだったのかもしれないが、俺達にとっては……いや、俺にとってはこれ以上ない展開であるのも間違いない。

 何しろ火星に土地を貰えれば、すぐにでもゲートを設置出来るのだから。

 

「そうね。色々と胡散臭い相手ではあったけど、ドレイク程じゃないわね」

 

 マーベルも俺の言葉に同意するように言う。

 良くも悪くも、ドレイクはスケールの大きい野心家だった。

 だが、ノブリスは悪しきオーラ力の持ち主かもしれないが、それでもドレイクには及ばない。

 年齢的な問題もあるのかもしれないが。

 

「そうですね。ですが、悪しきオーラ力の持ち主なのは間違いありません。決して彼に心を許すようなことはしないで下さい」

「分かってるよ。まぁ、今のところ向こうにしてみれば、俺達は幾つもある金儲け候補の1つでしかない。テイワズとの仲介という点では大きいのだろうが」

 

 ノブリスが火星では有数の武器商人であるのは間違いない。

 だが、テイワズは木星の周辺を支配している複合企業……いわゆるコングロマリットだ。

 そんなテイワズとノブリスでは、どうしても影響力に違いは出る。

 しかし、今回俺達が持ち込んだエイハブ・リアクターの売買において、ノブリスは仲介という立場ではあるがテイワズに対して相応の態度を見せられるのだ。

 エイハブ・リアクターというのは、現在ギャラルホルンでしか製造出来ず、そういう意味では非常に希少な存在なのだから。

 ……もっとも、シャドウミラーでこれを採用するかと言われれば、微妙なところだが。

 半永久機関であるというのは大きな意味を持つが、エイハブ・リアクターを起動させれば、それだけで自動的にミノフスキー粒子やNジャマーのような効果が発揮する。

 それを防ぐには、火星のハーフメタルを使うしかない。

 だからこそ、使いにくいのだ。

 技術班ならエイハブ・リアクターを改良して、電子機器とかに影響が出ないようにとか出来るかもしれないが……時流エンジンとかブラックホールエンジンとか、そういうのが普通に存在する以上、わざわざエイハブ・リアクターを改めて使うのはどうかと思う。

 他に使えるのは、重力関係だろう。

 ブルワーズが有している強襲装甲艦や輸送艦の内部で重力があるのは、エイハブ・リアクターの効果によるものだ。

 そういう使い方ならそれなりに使い道はあるかもしれないが……いや、どうだろうな。

 他の国ならともかく、シャドウミラーの場合は重力系の技術はかなり発展している。

 宇宙艦における重力についても、マクロス世界での技術を参考に1Gの重力を満遍なく広げ、普通に生活出来るようになっているし。

 うん、こうして色々と考えてみると、エイハブ・リアクターはこのオルフェンズ世界だからこそ使い道がある動力炉なんだろうな。

 

「ともあれ、ノブリスは俺達との取引に乗った。そうである以上、後は俺達が上手く立ち回ればいい。……交渉は政治班に任せればいいしな。マーベルとシーラは、それこそホワイトスターと繋がったら他の恋人達と会う事になるんだし、そっちを心配していた方がいいんじゃないか?」

 

 俺の言葉に、マーベルとシーラは少し戸惑った様子を見せる。

 2人共、俺が複数の恋人を持っているのは知っている。

 知ってはいるが、それでもこうして改めてその点について話すと、色々と思うところがあるのだろう。

 ……あるいは夜の件で援軍を欲しているとか、そういうのもあるかもしれないな。

 何しろ……うん。俺達がこのオルフェンズ世界に来てから、既に10日程が経過している。

 その間に俺達の部屋となったベッドでは当然そういう行為も行われている訳で……

 うん。久しぶりのマーベルとシーラとの夜は激しかったとだけ言っておく。

 

「アクセル。何か妙な事を考えてませんか?」

 

 シーラが俺を見て、不意にそんな風に言う。

 夜に鳴き声を上げている時とは全く違う、聖少女や聖女王と呼ばれるに相応しい凜々しさで。

 

「いや、別に妙な事は考えてないから、心配するな。とにかく火星に拠点を作ってしまえば後はこっちのものだと思ってな」

 

 嘘は言っていない……と思う。

 いやまぁ、実際には色々とグレーな感じだが。

 とにかく今の状況でやるべき事が拠点にゲートを設置する事で間違いはない筈だし。

 そんな風に思っていると、通信が入る。

 これ幸いと、シーラの疑惑の視線を意図的にスルーし、通信を受け取る。

 

「どうした?」

『方舟への着艦が完了しました。手続きの方はこちらでやっておきましたが、構いませんか?』

「やっておいてから構わないかと聞くのはどうかと思うが、構わない」

 

 この副官は本当に拾い物だったな。

 もっとも、有能であると同時に何らかの考えはあるんだろうが。

 それが例えば、方舟の職員からの賄賂を貰ったりとかなら、別に困らない。

 ……普通なら、こういう時は方舟を使う俺達が賄賂を送るんだろうが、今回俺達はノブリスの客人という扱いだ。

 実際に方舟を使う際の料金もノブリスが支払っているし。

 そしてノブリスはテイワズと比べると影響力は小さいかもいしれないが、火星においては非常に大きな影響力を持っている。

 そんなノブリスに、もし自分達の対応をした方舟の従業員の態度が悪かったと言った場合、どうなるか。

 そして逆に、待遇が良かったと言えばどうなるか。

 ちょっとした金銭で後者を選べるのなら、それを選ぶというのはおかしな話ではない。

 その辺でちょっとした臨時収入を得るくらいなら、副官の男の役得と思って問い質したりはしない。

 やりすぎれば、こちらも相応の措置を取るが。

 ただ、今まで多くの者と会ってきた経験からすると、この手のタイプは己の分というのをしっかり分かっていて、そういう意味では問題がないんだよな。

 

『では、地上に降りるのはどのくらいの人数にしますか? 護衛も必要でしょうし』

「そうだな。……子供組から何人か連れていくか」

『は? えっと、その……本気でしょうか? MSに乗るのならともかく、生身での戦いとなると……』

 

 戸惑うのは分かる。

 阿頼耶識によって、MS……あるいはMWを操縦するのなら、大きな力を持つだろう。

 だが、生身での戦いとなると、阿頼耶識は何の意味もない。

 そして純粋な身体能力となると、やはり大人の方が有利なのだ。

 身体能力以外にも戦いの経験とかもあるだろうし。

 しかし、それが分かった上で俺は頷く。

 

「こっちの主力は基本的にMSでの戦いだ。なら、どういう連中がMSに乗ってるのかを見せておきたい。それに、多少は息抜きもさせてやりたいしな」

 

 ブルワーズから解放された子供組だが、ヒューマンデブリとして扱われてきたのは間違いない。

 恐らくだが、宇宙海賊をしていたのもあって外に出てゆっくりとする事はなかっただろう。

 そうである以上、これからは火星での行動も多くなるのだから、その辺に慣れておいた方がいい。

 とはいえ、ブルワーズで使っていたMSは俺のガンダム・グシオンを含めて基本的に宇宙用なんだよな。

 火星で行動するのなら、その辺についても戦力をどうにかする必要があるんだが。

 ノブリスからMSを買うか?

 いや、それは難しいか。

 そもそもMSという時点で非常に貴重品だ。

 そうである以上、買おうと思ってもそう簡単には買えないだろう。

 MSの動力炉として使われているエイハブ・リアクターがギャラルホルン以外でも購入出来れば、そしてフレームを作れれば、MSももっと増えるんだろうが。

 今はそのような事が出来ない。

 テイワズでフレームが作られているらしいが、それはテイワズだからだ。

 それ以外の者がMSを手に入れるなら、それこそ俺が見つけたみたいに厄祭戦の時に使われたのだろうMSの残骸を見つけ、それを修理する形で作る必要がある。

 ……それはつまり、エイハブ・リアクターとフレームがあればMSを作れるという事にもなるのだが。

 やっぱり海賊狩りとかをして、それでMSを入手した方がいい気がしてきた。

 となると、やっぱりシャドウミラーの仕事は傭兵とかにした方がいいのか?

 それもアリアドネとかを使わない、高密度デブリ帯を通る商船とかの護衛をするといったように。

 もっとも、アリアドネを使わないで移動するというのは、後ろ暗いところがある証拠だ。

 具体的には、密輸とかそんな感じの。

 それはそれで、マーベルやシーラが嫌がりそうではあるんだよな。

 

『アクセル様の話は分かりました。ですが、子供だけを連れてとなると、侮られます。現在の火星はかなり貧しい。勿論ノブリスのような豊かな者もいるでしょうが、多くの者は貧しいのです。そうなると当然治安が悪くなります』

「つまり、子供組だけを連れていけば侮られて襲われると?」

『はい。それに、アクセル様だけではなく、恋人の2人も連れていくのですよね? なら余計に襲われる可能性が高いかと』

 

 あー……うん。だろうな。

 マーベルもシーラも、美女という表現が相応しい。

 そうなると、やはり襲ってくる奴がいてもおかしくはないか。

 

「分かった。なら、そっちの方で見た目で侮られない奴を何人か選んでくれ。ただし、好戦的な奴は駄目だぞ。トラブルが起きないように護衛として連れていくのに、護衛がトラブルを起こしたりしたら面倒なだけだ」

 

 ノブリスと会うだけなら、護衛は特に必要ないだろう。

 だが、ノブリスに用意して貰う俺達の拠点を考えると、治安の悪い場所……あるいはそこまではいかないが、治安がそこまで良くない場所に行く可能性はある。

 いっそ炎獣で護衛を……とも思ったが、ノブリスにはそっちについては秘密にしておいた方がいいような気がするしな。

 組織を纏める為に、シャドウミラーの面々には俺が人間ではないという行動は見せたものの、ノブリスがそれを知ればどうなるか。

 取りあえず自分の金儲けの為に俺を手元に置こうとするだろう。

 ……いや、そのくらいなら可愛いもので、場合によっては俺を研究しようとする筈だ。

 そうなれば当然だがこっちも向こうの好き勝手にさせる訳にはいかないので、相応の対処をする。

 そうなるとノブリスとは敵対関係になり、組織の運営にも影響が出てくる。

 とはいえ、ゲートを設置すればどうとでもなる話なので、そういう意味ではノブリスに俺の特殊性を知られても構わないのだが。

 

『分かりました。性格的に問題のない者を呼んでおきます』

 

 そう言い、通信が切れる。

 

「さて、そんな訳でマーベルとシーラも出掛ける準備をしてくれ。……まぁ、そこまで準備らしい準備はないだろうけど」

 

 マーベルもシーラも、ジャコバ・アオンの力によって俺と一緒にオルフェンズ世界に転移してきた。

 当然だが日用生活の品とかもない訳で……うん。着替えとかも以前何かの拍子に空間倉庫に入っていた奴がなければ、かなり面倒なことになっていただろう。

 その辺の日用品とかを買ってもいいかもしれないな。

 そう言うと、やはり買い物は嬉しいのか、マーベルとシーラはそれぞれ嬉しそうに笑みを浮かべるのだった。

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