転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3831話

「それにしても、まさかブルワーズを乗っ取るなどということが出来るとは思わなかったよ」

 

 ノブリスとの会談が始まってから10分程。

 ソファに座ってノブリスの相手をしているのは、俺とマーベル、シーラの3人。

 それ以外の子供組や大人の護衛2人は、壁際に立って待機している。

 ちなみにノブリスの方も3人程護衛を用意しているが、隣の部屋に10人近くいるし、天井にも数人、壁の中にも数人護衛が待機していた。

 とはいえ、俺は別にそれを責めるつもりはない。

 何しろ俺達とノブリスは今日会ったばかりだ。

 それも通信で話したのが1度で、直接顔を合わせて話すのはこれが初めて。

 そのうえ、俺が乗っ取ったのは武闘派として有名なブルワーズ。

 武器商人のノブリスにしてみれば、恐らく自分の船が襲撃された経験があってもおかしくはない。

 そうである以上、こうして俺達と会談を行うのに護衛を用意するのは当然だろう。

 ……ただ、ノブリスにとって計算外だったのは、俺の実力か。

 まさか気配を察知するという能力をフィクションだけではなく、本当に使えるとは思ってもいなかったのだろう。

 このオルフェンズ世界は科学技術が発達した世界だ。

 そうである以上、気配を察知するといった事が本当に出来るとは思っていなくてもおかしくはないが。

 

「最初はそのつもりはなかったんだけどな。ただ、クダル……ブルワーズのMSを指揮していた奴がこっちを攻撃してこようとしたから、反撃して成り行きでそうなった感じだ」

「はっはっは。成り行きで海賊を乗っ取るか」

 

 豪快に笑うノブリス。

 俺の行動がノブリスにとって想定外のものだったので、それが気に入ったのだろう。

 

「とにかくそんな訳で、俺としては海賊をそのまま続けるつもりはない。あるいはもし海賊を続けるにしても、その場合は民間人ではなく海賊を狙いたいと思う。……ただ、個人的には傭兵団……いや、PMCと言った方が分かりやすいか? そんな感じで活動していきたいと思う」

「ふむ。だが……その割には今回はエイハブ・リアクターの仲介を頼んできたようだが?」

「何をするにしても、ある程度纏まった金は必要だろう。それに現在俺達が所有してるのは、いずれも宇宙用の機体だ。地上で活動するには、別の戦力が必要となる」

 

 ガンダム・グシオン、マン・ロディ、ガルム・ロディ。それ以外にもMWもか。

 基本的に現在所有しているのは、宇宙での運用を前提にしてる。

 勿論地上でも使えない事はないんだろうが、それでもパフォーマンスを完全に発揮出来るかと言われれば、それは否だ。

 生身での戦闘も……ノブリスの護衛を見れば、需要がない訳ではないだろうが。

 

「しかし、アクセルも知っているだろうが、MSというのはそう簡単に入手可能ではない」

「だろうな。けど、宇宙用MSを地上でも使えるように改修するのはどうだ? それに武器商人のノブリスなら、地上で使えるMWも取り扱っているんだろう?」

「……MWはともかく、MSの改修は難しい」

 

 そう言うノブリスだったが、さてこの言葉は本当なのか、それとも必要以上に手札を見せたくない為の嘘なのか。

 それは俺にも分からなかったが、オルフェンズ世界におけるMSの扱いを考えると、本当なような気がするな。

 

「その辺をどうにかしてくれると嬉しいんだけどな」

「……考えておこう」

 

 前向きに善処するとかの玉虫色の返事ではなかっただけ、望みはあるのか?

 

「取りあえずその件はいいとして……君達の拠点となる場所についてだ。幾つか候補はあるが、一番向いているのはやはりこのクリュセの郊外だろう」

 

 そう言い、ノブリスは護衛の1人に視線を向ける。

 すると護衛の男は懐から地図を取り出し、テーブルの上に置く。

 今時紙の地図って……いや、オルフェンズ世界ではそれが普通だったりするのか? あるいは単純にノブリスの趣味か。

 ともあれ、ノブリスはテーブルの上に置かれた地図の一ヶ所を指さす。

 

「ここなら、儂が所有するが使っていない建物がある。拠点……傭兵やPMCが拠点として使うには十分な広さや、ある程度の設備も揃っている」

「何でそういう建物を所有してるんだ……ってのは、聞かない方がいいのか?」

「聞いても構わんが、色々とあってとしか言えんな」

 

 傭兵やPMCとして活動する上で、十分に使える組織。

 普通に考えれば、武器商人だからこそなんだろう。

 一体何に使われていたのか、聞きたいような、聞きたくないような。

 そう思いながら地図を見てみると、ノブリスの示した場所からそう離れていない場所……とはいえ、地図である以上実際にはそれなりに離れているのだろうが、そこにCGSと書かれているのに気が付く。

 

「ノブリス、このCGSというのは何だ?」

「うん? ああ、気が付いたか。これはクリュセ・ガード・セキュリティという警備会社の本社だ」

「警備会社? ……一応聞くが、それは本当に警備会社だよな? 実は警備会社の名前をしてはいるものの、傭兵やPMCとかだったりしないよな?」

「さて、難しいところだ」

「おい」

 

 ノブリスの、いかにも裏がありそうだといった様子の言葉に思わず突っ込む。

 

「いや、表向きはMWしか所有していないのは間違いない」

「表向きって言う時点で何かあると隠してないか? そもそも、普通の警備会社にMWは必要なのか?」

「何を言っている。当然必要だろう」

 

 俺の言葉に呆れた様子でノブリスが言う。

 うん? これは……多分、認識の違いだな。

 俺は警備会社と聞いて、普通の……人がやるような警備会社を想像していた。

 具体的にはアイドルのコンサートなり、公的な会議の場の警備であったり、少し変わったところでは要人のボディーガードだったり。

 だが、ノブリスの様子を見る限りでは違うらしい。

 まぁ、そんなにおかしな話ではないのか?

 

「そういうものか。けど、そのCGSは近くに俺達がいるのは好ましくないと思うんじゃないか?」

 

 警備会社という名目であっても、ようは武装組織だ。

 それもノブリスの話を聞く限りだと、MWは結構所有してるらしいし。

 ましてや、表向きはという事は、MSも所持している可能性が高い。

 ……待てよ? 話の流れからして、もしかしてそのCGSにこの世界の原作の主人公がいたりしないか?

 オルフェンズ世界に転移してきた時は、あるいは子供組の誰かが主人公かとも思ったのだが、何となく違うような気がする。

 そうなると、どこかにこの世界の主人公がいる筈だ。

 もっとも、CGSに主人公がいるかどうかというのは、実際に確認した訳ではない以上、不確定の情報……どころか、そうであって欲しいという俺の願望でしかないが。

 

「思うかもしれないが、その辺はこちらで連絡を入れておけば問題はない。どうする? こちらとしてはすぐに使える場所、それも武装している者達が使う場所として最善なのはここだ。他にも幾つか候補はあるが、大なり小なり欠点がある」

 

 ノブリスの様子を見る限りだと、出来れば俺達にはこの場所を使って欲しいらしい。

 何を狙っての事なのかは、俺にも分からなかったが。

 あるいは、俺達とそのCGSを衝突させたいのか? とも思ったが、そうする理由は分からない。

 無理矢理理由を考えるとなると、俺達を殺して所有しているMSやMW、何より強襲装甲艦2隻と輸送艦1隻を奪いたいとか。

 もしくは、火星の情報は分からないが、CGSが何かノブリスに恨まれるような事をしたのか。

 それ以外にも他にも何か俺達には分からないような何らかの理由でノブリスが俺達とCGSをぶつけたいと思っている理由はあるかもしれない。

 

「つまり、ノブリスとしてはそのCGSの近くにあるという建物を使って欲しい訳か」

「アクセルの要望に一番相応しい場所なのは間違いない」

 

 そう告げる言葉の一体どこまでを信じたらいいのやら。

 とはいえ、CGSにこの世界の主人公がいる可能性がある以上、ここで断るという選択肢はないか。

 

「分かった。そこでいい。ただ、CGSの方には話を通しておいてくれ。向こうが何も知らない状況で俺達の存在を知り、それによって敵対関係になるのはごめんだしな」

「構わんよ。なら、すぐにでも行動に移るとしよう。儂が直接行く余裕はないから、部下と一緒に行かせよう。ついでに、施設の案内もさせる」

「分かった。そっちがそう言うのなら、話は早い」

 

 こうして即座に決めてもいいのかどうかは分からないが、ここで下手に時間を使えば、それはノブリスのメリットとなりそうなので、即決する。

 何しろこの火星はノブリスのホームグラウンドだ。

 ノブリスが何かを仕掛けようとすれば、それは容易に叶うのだから。

 

「では、すぐに用意させよう。それにしても、まさかここまで即決して貰えるとは思わなかったよ」

「よく言う」

 

 ノブリスの称賛の声を聞きつつ、俺はそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

「ここがあんた達が使うって事になる建物だ。悪くないだろう?」

 

 そう言うのは、あの部屋でノブリスの護衛をしていた男の1人。

 この男の案内で、俺達はバスに乗ってここまでやって来たのだ。

 ノブリスの屋敷に行く時に乗った高級車とは違ってバスなのは、もうお客様ではないという証なのか、それともこっちの人数を考えての事なのか。

 ともあれ、男が何かこっちに不利益になるような事をしてる訳ではない以上、問題はない。

 

「そうだな。悪くない建物だ」

 

 建物については、ここに来るまでに男からある程度の説明があった。

 2階建ての建物で、地下室もある。

 建物の素材は頑丈で、相応の防御力もある。

 ……もっとも、それはあくまでも相応ので、MSは勿論MWの攻撃も防ぐ事は出来ないらしいが。

 傭兵にしろPMCにしろ、ここに拠点を築いた場合は何らかの防御設備が必要になるだろう。

 

「アクセルさん、これ一応MSとかも出られるような大きさになってるみたいです」

 

 昌弘が建物に併設されている倉庫を見て、そう言う。

 その言葉に倉庫の方に視線を向けると、確かにMSでも入る事が出来る大きさなのは間違いなかった

 

「電気や水道といったライフラインの方は?」

「問題ない。もしアクセル達がここを拠点として使い始めたらすぐにでもその辺には対処をすると言われている」

 

 黒服の男の言葉からすると、生活する上での問題はないか。

 とはいえ、クリュセの郊外にあるという事は食料の調達とかは結構面倒だ。

 買い物に行くのは時間が掛かりそうだな。

 影のゲートを使えば、その辺は対処出来そうではあるが。

 ただ、そうなると買い物は毎回俺が行かないといけないんだよな。

 それはそれで面倒臭い。

 

「食料を運んで貰うといった事は出来るのか?」

「こちらではそこまでやらないが、そういう商売をやっている店を紹介する事は出来る」

 

 つまり、金はこちら持ちか。

 ノブリスにしても、そこまで俺達の面倒を見るつもりはないらしい。

 まぁ、それはそれで自然な流れかもしれないが。

 

「そうか。じゃあ、本格的に必要になったらそういう店を紹介して貰うかもしれない」

 

 そう言い、俺達は建物の中を見て回る事にする。

 ノブリスが以前この建物を何に使っていたのかは分からない。

 しかし、特に汚れている訳でもなかった。

 勿論、それなりに埃が溜まっていたりはするので、きちんと使うつもりなら掃除とかをしっかりとする必要があるのも事実だろうが。

 いっそスライムを使って掃除をした方がいいか?

 火星にいるのかどうかは分からないが、ネズミやゴキブリ、それ以外にも色々な虫がいるかもしれない。

 元ブルワーズの者達ならその辺についてもあまり気にしないだろうが、マーベルやシーラはその辺を気にするだろう。

 マーベルはともかく、シーラは元女王という事で……いや、寧ろ元女王だからその辺についてはあまり知識がなく、それ故に怖がらないという可能性もあるのか?

 まぁ、どのみちそういうのがいない方がいいのは間違いないので、スライムを使っての掃除はした方がいい。

 もっとも、本格的にスライムを使って掃除をするよりも前に、まずは隠しカメラとか盗聴器とか、その手の物がないのかどうかをしっかりと確認する必要はあるが。

 そうではないと、安心してこの建物を使う事が出来ないし。

 ノブリスがこの建物を譲ってくれた……うん? 譲ってくれたんだよな? 貸したとかだったら、家賃とか支払わないといけないと思うが。

 もし賃貸であっても、今はまだちょっと家賃を支払うのは難しい。

 仕事が軌道に乗れば、その辺もどうにか出来るだろうが……それが具体的にいつになるのかは、生憎と分からない。

 ともあれ、俺達に使うように言ってくれた以上、何らかの仕掛けがあっても俺は驚く事はない。

 

「その、アクセルさん。ちょっと建物の中を見てきてもいいですか?」

「ああ、構わない。……構わないよな?」

 

 念の為に護衛の男に尋ねると、素直に頷く。

 

「構わん。この建物はもうアクセル達の拠点なんだしな。ただ、CGSに挨拶に行くから、あまり長い時間はとれんぞ」

 

 男の言葉に頷くと、それを見た子供組は建物の中に向かうのだった。

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