「……え? 俺が、ですか?」
昌弘は、まさか自分がシーラにそのように言われるとは思っていなかったのか、戸惑った様子でそう告げる。
ただ、そこには戸惑い以外にも恐れの色があった。
……無理もないか。
俺が自分で言うのもなんだが、最初にゲートを起動しようとした時に受けた予想外の激痛で暴れた結果、周辺はかなり悲惨な状態になっているのだから。
普通に考えれば、人が暴れた程度で地面にここまで大きな穴が生み出されたり、まるで刃で斬り裂いたようにはならない。
それでも、暴れた時に純粋に身体能力によるものだったので、この程度なのだが。
もし本当に俺が混乱していた場合、白炎がそこら中に撒き散らかされていただろう。
不幸中の幸いなのは、暴れている状態なので炎獣を生み出すような余裕はなかった事か。
「ええ。貴方が」
「……分かりました」
繰り返しシーラが昌弘の仕事だと言うと、それを聞いた昌弘は数秒の沈黙の後で頷く。
これはちょっと予想外だった。
俺の暴れっぷりを見ただけに、てっきりもっと怖がるかと思ったんだが。
昌弘はゲートの前まで移動すると、俺の方を見る。
「アクセルさん、いいですか?」
「ああ、構わない。やってくれ」
その言葉と同時に、昌弘はマーベルから教わった操作を行おうとし……
「ぐがっ……があ……」
再度襲ってくる激痛。
まるで身体の内部から骨や内臓を無理矢理削られているような、そんな激痛。
混沌精霊の俺の身体は、魔力で構成されている。
そういう意味では骨や内臓の類はない。
だが、混沌精霊になる前……人間だった時の事は覚えている。
その為、こういう表現も出来る。
それこそ痛みに耐えながらこんな馬鹿な事を考えられるくらいには。
やがて再び俺の内部から痛みが消える。
「……どうだ?」
せめてもの救いは、痛みが消えるとなると一瞬前までの激痛が何だったのかと思うくらいに痛みが消える事だろう。
……それもあって、本当に痛みがあったのか忘れてしまうくらいなのだから。
普通の状態になったので尋ねてみるが、昌弘……ではなく、マーベルが首を横に振る。
そう言えば、子供組は殆ど字も読めないんだったか。
何しろ勉強とかをする前にヒューマンデブリとして売りに出されたのだから。
全員が全員そうだとは限らない以上、ある程度は読み書きが出来る奴がいてもおかしくはないが……取りあえず、5人の子供組は全員が読み書き出来ない。
「駄目か。……不味いな」
「いえ、そうではないかもしれません」
「……シーラ?」
俺の呟きを聞いたシーラは、そんな風に言ってくる。
「今までの一連の行動によって、アクセルに纏わり付いている悪しきオーラ力……いえ、それに似た何かは、僅かにですが弱まっています。恐らく、その何かは己を消費してアクセルがゲートを設置出来ない……もしくは、この世界から出るのを防いでいるのでしょう」
「それは、また……喜んでいいのか、悲しんでいいのか、分からないな」
「恐らくですが、アクセルの魔力が莫大だからこそ、そのような事になっていると思われます」
「つまり……何度もゲートの起動が出来るように繰り返せば、その度に俺の周囲にある悪しき何か……いや、呪いは減っていくって事か?」
「そうなります。もっとも、今の3回の件の様子を見る限りでは、長い目で見ないといけないでしょうが」
「取りあえず、時間を掛ければ呪いを解除出来るというのを悟っただけで十分だよ」
理由が不明なまま、ホワイトスターに戻れないという訳ではないので、そういう意味では助かった。
だが、俺が意図的にゲートを起動するのが無理なら、例えばマーカーを使ってホワイトスターからオルフェンズ世界に来て貰うというのはどうなんだ?
それに同じような効果を持つ……いや、ゲートが科学の力なのに対して、召喚魔法は魔力を使っているという意味では、こっちの方が露骨に呪いに反応しそうだが、それでも召喚魔法は特に問題なく使えている。
他にも気になるとすれば、ゲートのシステムXNは無理でも、ニーズヘッグのシステムXNはどうかという事か。
こっちは後で試して見る必要があるな。
とはいえ、この施設は何らかの手段で見張られている可能性がある以上、それは無理か。
宇宙港に行って、船の中でニーズヘッグを出してシステムXNが使えるか試してみるか。
とにかく、狛治を召喚出来るという事は狛治経由で取りあえずレモン達に現在俺がどのような状況なのかを知らせられる。
これは大きい。
俺の方では無理でも、レモン達の方でならこの呪いについてどうにか出来るかもしれないし。
とはいえ、狛治を呼ぶのは建物の中でだな。
……ゲートを設置したのに、何を言ってるのかと言われそうな気もするが。
「取りあえず、建物に戻るぞ。色々と気になるところはあるだろうが、今日はゆっくりと休んでくれ」
そう言い、俺はゲートを空間倉庫に収納する。
ゲートをホワイトスターと……正確にはホワイトスターにあるシステムXNと同期させようとすると、俺の魔力に反応して呪いが消耗する。
それは分かったが、さすがにあの痛みを自分から何度も……それこそ何十回、何百回、あるいは何千回といったように繰り返したいとは思わない。
とはいえ、それをしないと呪いが解除出来ない以上、やるしかないのも事実だが。
ただ、どこでやるかだな。
今日みたいに建物の外でやると、ノブリス……もしくは俺達の建物からそう離れていないCGSから偵察にやって来た奴に、俺の行動を見られる可能性がある。
かといって、建物の中だと俺が激痛によって暴れた場合、被害が大きすぎる。
となると、いっそこの建物から離れた場所……見つかっても問題がない場所にするべきか?
とはいえ、そうなればそうなったで、もしホワイトスターと繋がった場合、それはそれで面倒な事になりそうなのがちょっとな。
うーん……この辺は一体どうするべきか迷う。
それについては、後で決めよう。
そう判断すると、俺は格納庫に向かう。
「え? あれ、アクセル。部屋に戻らないの?」
ちなみに、この建物の部屋でも俺とマーベルとシーラは同じ部屋だ。
当然ながら3人一緒である以上、この建物の中でも一番広い個室だが。
シャドウミラーを率いるのが俺である以上、その辺については問題ないだろう。
現在宇宙にいる連中がこの建物で生活するようになった時、女が欲しいとか思うかもしれないが……まぁ、そういう時はクリュセにある風俗店とかに行けばいいだろう。
「ああ、狛治を召喚するけど、どうせなら広い場所の方がいいだろうし。こっちの状況を知らせて貰おうと思ってな」
「ああ、なるほど。……じゃあ、頑張ってね」
いや、頑張るって何を?
一瞬そう思ったが、実際狛治にはホワイトスターにいるレモンとかにこっちの状況を色々と説明して貰う必要が……いや、いっそ手紙にした方がいいか?
もしくは、映像データを送った方がいいのか。
やっぱり一番無難なのは手紙か。
そう思ったが、召喚魔法で呼び出した存在はその世界から直接何かを持って帰るのは無理だったと思い出すと、結局伝言で頼む事にするのだった。
「どうした、アクセル。また何かあったのか?」
召喚魔法で呼び出した狛治は、俺を見て不思議そうに尋ねてくる。
呼び出されたのが格納庫で、すぐに戦いがある様子でもないので、そのように疑問に思ったらしい。
「ああ、何かあった。……それも特大の何かがな」
「……何? 具体的には?」
俺の真剣な表情を見た狛治が、真剣な様子で尋ねてくる。
狛治にとっても、俺がそこまで言うような何かについてはすぐに思い浮かばないのだろう。
「ペルソナ世界での伊耶那美大神との最後の戦い……奴が何をしたのか覚えているか?」
「アクセルをペルソナ世界から追い出したのだろう?」
「それも正解だが、それだけだと半分だ。本当の正解は、俺をこの世界に飛ばし、出られないように呪いを掛けた、だ」
より正確には、俺がいたのはあの黒い空間で、俺をこのオルフェンズ世界に転移させたのはジャコバ・アオンっぽいのだが……まぁ、俺がここにいる以上、それは気にしなくてもいいだろう。
最悪、俺はあの空間にいて、伊耶那美大神の呪いによってあの空間から出られなかったという可能性もあるのだから。
そう考えると、俺はマーベルやシーラとの合流以外にもジャコバ・アオンに助けられたという事になるのかもしれない。
「この世界から出られない? それは本当なのか?」
「ああ、ゲートを使って試した。正確には、呪いが発動すればする程に俺の魔力によって呪いが減っていくらしい。それを思えば、いずれは呪いも解除出来るのは間違いない。間違いないんだが……それをやると、とんでもない激痛があるんだよな」
冗談でも何でもなく、俺が混沌精霊になってから一番大きなダメージが今回の呪いによるものだろう。
それだけ厄介な呪いなのは間違いなかった。
「それは……」
狛治も俺の言葉に呪いがどれだけ厄介な存在なのかを理解したのだろう。難しそうな表情を浮かべる。
「そんな訳で、いつホワイトスターに戻れるか分からない。ただ、マーカーをこっちに設置しておくから、レモンの方でそのマーカーのあるこのオルフェンズ世界を見つけて、こっちに来てくれるように言ってくれ」
「それは分かった。だが、ゲートを使おうとすると、それだけの激痛を感じるのだろう? そうなると、マーカーを設置するのも同じではないのか?」
「それは……」
狛治の言うように、ゲートを起動するのは無理だった。
だとすれば、同じ世界を渡る技術に関係するマーカーもそうなのではないか。
そう判断すると、それを一度試してみる必要があった。
「試してみるから、ちょっと待ってくれ」
狛治にそう言い、空間倉庫からマーカーを取り出し……
「あ、駄目だな」
起動させる前に、これは駄目だとすぐに分かった。
先程の痛みによって念動力が勘として教えてくれたのか、あるいはもっと別の理由からなのか。
生憎とそれは分からなかったが、それでも俺の本能がそれは正しいと言っている。
「駄目なのか?」
「ああ。やる前に分かった。……とはいえ、これは試せば試す程に呪いが弱まっていく以上、試すしかないのも事実だが。……行くぞ」
狛治にそう言い、軽く深呼吸をしてからマーカーを起動する。
「がぁっ……」
ゲートの時よりは小さいが、それでも激痛と呼ぶに相応しい痛みが身体に生まれた。
自分でも気が付かないうちに苦悶の声を口にしてしまう。
そのまま痛みに耐える、耐える、耐える、耐える。
ピーッという、エラー音がマーカーから響くと同時に、ゲートの時と同様身体の中にあった痛みは一瞬にして消えた。
まるで夢から覚めたかのような、そんな感じで。
「ふぅ……駄目か」
予想はしていた。していたが、それでもやはり今の状況には思うところがあるのも事実。
「大丈夫か?」
初めて俺が呪いに苦しめられているところを見た狛治が、心配そうに聞いてくる。
無理もないか。
狛治の知ってる俺は、それこそ無惨との戦いでも無傷で対処出来るだけの実力者だったのだから。
「ああ、問題ない。……けど、これは……いや、丁度いいな。後で試してみるか」
「アクセル?」
「何でもない。ちょっと試してみたいと思っただけだ。……マーカーもやっぱりエラーか。この様子だと、多分俺がマーカーを使うんじゃなくて、別の誰かがマーカーを使っても、呪いが発動するんだろうな」
「……なら、どうする?」
「そっちについては、俺が呪いを解除……というか、消すのを頑張るしかない。マーカーが駄目となると、ニーズヘッグも恐らく無理だろうし。そんな訳で、手掛かりは何もないが、何とかレモンにこの世界を特定して行き来出来るようにして欲しいと伝えてくれ。後は、ペルソナ世界の方がどうなったのかも聞いてきてくれると助かる」
「分かった。それは任せろ。通信機を使えばすぐに連絡出来るし、いざとなったらフェイトに頼んでもいい」
江戸時代生まれの狛治が通信機とかを普通に使ってるというのは、改めて考えると少し違和感があるな。
とはいえ、シャドウミラーに所属した以上、通信機を使いこなせないとどうにもならないんだが。
実際、狛治と同じく鬼滅世界からホワイトスターにやってきた面々も、通信機とかは普通に使ってるし。
そんな訳で俺は伝言を狛治に任せて召喚を解除する。
「さて、次はこっちだな」
狛治との会話の中で思い浮かんだ事。それは俺のステータスだ。
以前PPを使ったのはいつだったか。
それはちょっと忘れたが、とにかく最近はPPを使う事はなかった。
その為、PPが結構貯まっている。
なら、そのPPを使ってSP……つまり魔力を上げれば、呪いの克服が多少は楽になる可能性があった。
そんな訳でステータスを確認すると、現在のPPは2520。
これを全部……いや、切りのいいところで2500を一切の躊躇なく、SPに振る。
何しろ今の状況でPPの使い道は特にないしな。
こうして、俺のSPは一気に1000上昇し……現在のSPは3003となるのだった。
アクセル・アルマー
LV:45
PP:20
格闘:313
射撃:333
技量:323
防御:323
回避:353
命中:373
SP:3003
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1864