転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3839話

「じゃあ、これで完成ということで、引き渡しは無事に終わったと思っていいか?」

 

 俺の呪いについて判明してから数日……拠点となる建物は何とか完成し、俺はノブリスの部下と話していた。

 

「ああ、色々と助かった」

「ノブリス様からの指示があったからだ。……これにサインを頼む」

 

 男に書類を渡され、それを一通り見て特に問題がないと判断すると、サインする。

 これにて、建物の件についての取引は無事に終了となる。

 

「それと、テイワズとの取引についてはどうなってるか聞いてるか?」

「いや。ただ、ノブリス様でも相手がテイワズとなると、簡単にどうこうは出来ない。恐らくもう少し時間が掛かると思う」

「そうか。まぁ、そっちは予想通りだからいいけど、MWの購入の件は? 阿頼耶識対応型と標準の奴」

「そっちは標準の方は近いうちにある程度数を揃えられると聞いている。だが、阿頼耶識は……どうだろうな。入手するにしても、まだ少し時間が掛かる筈だ」

「ノブリスでもか?」

「……そうだ」

 

 阿頼耶識というのが、オルフェンズ世界においては忌むべき存在として認識されているのは知っている。

 だが、ブルワーズやCGSでもそうだったが、少年兵として使うには非常に便利なのは間違いない。

 もし阿頼耶識がなければ、それこそ最初からMSの操縦方法を習得する必要があるのだから。

 そうなると、少年兵だからこそ時間が掛かるだろう。

 ましてや、ヒューマンデブリを含めて少年兵の大半は文字を読めないのだから。

 説明書とかを読むのも苦労するだろう。

 その辺の事情を考えると、阿頼耶識対応のMWとかはそれなりにあってもおかしくはないと思うが。

 そもそもコックピットを換装するだけでいい筈だし。

 とはいえ、ここでノブリスに対する不満は口にしない方がいいか。

 この男がどこまでノブリスに忠誠を誓っているのかは分からないが、それでも今の俺達とノブリスとでは、どっちを選ぶのかは微妙だし。

 

「分かった。まぁ、そっちは出来るだけ急いでくれればいい」

 

 阿頼耶識対応のコックピットなら、子供組の能力を最大限に引き出せる。

 だが同時に、阿頼耶識非対応の通常のコックピットなら……MWはMSよりも操縦は簡単なので、何とかなると信じたい。

 あるいは地上組に回された大人達にMWを任せるか。

 PMCとして活動するとなると、一応正式に企業という扱いになる以上、給料とかもどうにかしないといけないのか。

 テイワズとの商談が纏まるまでは、その辺は誤魔化すか……もしくは、空間倉庫に入っている宝石辺りで誤魔化すか?

 まぁ、実際には食料とかをきちんと渡しておけば、金が入るまでの間は我慢するような気もするが。

 何しろ俺に従えないという奴は、既に組織を抜けている。

 もっとも、俺に従って組織に残った者でも、延々と給料なしの生活を続ければ離れていくだろうから、その辺についてはやはりどうにかした方がいいのは間違いない。

 

「では、私はこれで失礼する」

 

 そう言い、男は車に乗ってクリュセに戻っていく。

 ちなみに男が乗っていたのは、この前のようなバスではなく、普通の車だ。

 そしてバスは現在格納庫の中にある。

 あのバスは一応ノブリスからの贈り物らしい。

 あるいはそういう形をとってはいるが、エイハブ・リアクターを売った金から天引きされるのかもしれないが。

 そんな風に思いつつ、俺は振り向く。

 そこにはマーベル、シーラ、子供組、護衛役の2人が揃っている。

 

「さて、これでいよいよPMCシャドウミラーの始まりだ。……とはいえ、最初はどこから仕事を持ってくるかだな。その辺は、一度宇宙港にいる全員も含めて会議を行うか」

「会社の登録については、どうなってるの?」

「ノブリスの方で対処して貰ってる」

 

 俺の答えに、マーベルは……そしてシーラも呆れの視線を向けてくる。

 特にシーラの呆れの視線は強い。

 悪しきオーラ力の持ち主と、シーラはノブリスを認識している。

 そんな相手に借りを作ってるのだから、シーラにしてみれば色々と思うところがあって当然だろう。

 とはいえ、何しろ俺達……具体的には、シャドウミラーを率いる俺、マーベル、シーラの3人は揃って戸籍、オルフェンズ世界風に表現するのならIDがない。

 そしてこのオルフェンズ世界においてIDがないという者は、それこそヒューマンデブリという扱いになってもおかしくはない。

 護衛の2人とか、あるいは宇宙港にいる連中ならIDの類を持っているかもしれないが、元ブルワーズという事を考えると、その辺はあまり公にしたくない。

 そんな訳で、起業をするのに一番いいのはノブリスに頼る事なんだよな。

 幸い……という表現はどうかと思うけど、オルフェンズ世界の火星は法律とかその辺もかなり緩い。というか、まともに機能していない。

 それこそ発展途上国とかと同じくらいの、あるいはもっと悪い印象だ。

 それだけに、本来なら起業するにはしっかりとした手続きが必要だったり、書類を出したり、場合によっては賄賂を送ったりする必要があるのだが、その辺はノブリスの力であっさりとどうにかなった。

 暮らす上では色々と問題もあるのだろうが、それによって恩恵を受けている以上はどうとも言えないな。

 そんな風に思いつつ、その日の夜は空間倉庫から取り出した料理で簡単なパーティを行うのだった。

 

 

 

 

 

「さて、これで全員だな」

 

 パーティをやった日から数日……現在、拠点には多くの者達が集まっていた。

 宇宙港……というか、船で待機していた連中も最低限の人数を残して、それ以外は全員がこの拠点に集まっていた。

 その者達も通信を使って会議に参加している。

 

「これから行うのは、シャドウミラーがPMCとしてどう活動していくかという話だ。言うまでもないが、俺達はPMCとして行動するのはこれが初めてだ。ノウハウの類もないし、信用も低い」

 

 何しろ元ブルワーズだけあって、強面の奴が多いしな。

 PMCとして活動すると考えれば、それは決して悪い事だけではないんだが。

 ただ、それでも第一印象が決して良くないのも事実。

 また、顔見知りはそれこそノブリス達くらいしかいない。

 後は……一応CGSも顔見知りに入るのか?

 ただ、CGSのマルバはノブリスに対しては媚びへつらっていたが、俺達に対しては表面上は友好的に接しながらも、明らかに侮っていた。

 部下の中にもこっちを明らかに気に入らないといったハエダのような奴もいたしな。

 参番組の面々は昌弘の兄の昭弘がいたり、オルガがこっちと友好的……とまではいかないが、それでも敵対しようというようには見えなかった。

 それに参番組を率いているという意味でも、オルガがこのオルフェンズ世界の原作の主人公っぽいんだよな。

 そういう意味では参番組とはそれなりにやっていけそうだが、この場合問題なのは参番組は明らかにCGSの中で捨て駒の消耗品……つまり、ブルワーズにおけるヒューマンデブリと同じように使われていたんだよな。

 そんな訳で、CGSの中で参番組の影響力は決して強くはない。

 もっとも、阿頼耶識の件を考えると純粋な戦闘力としては、明らかに参番組が上なのだろうが。

 まさか、CGSの全員がクダルのように生身でも阿頼耶識を持つ相手と戦える実力があるとは思えないし。

 

「そんな訳で、PMCとして活動するにもまずは金、金、金となる。MSを買うのは難しいが、MWは必須だ」

「アクセル様、それならマン・ロディを地上用に改修するというのはどうでしょう?」

 

 久しぶりにこうして生身で対面する副官の男の言葉に、他にも何人か頷いている。

 実際、それは俺も考えないでもないが……

 

「MSを改修するのにも、金が必要だろう? 一応エイハブ・リアクターの売却が成功すれば結構な金になるけど、それは一時的なものだ。……そんな訳で、この中の結構な人数には高密度デブリ帯に戻って再度エイハブ・リアクターを確保して貰う」

「それは……その、いいのですか? 以前は……」

「ああ。以前は却下した案だな。けど、あの時と今とでは後ろ盾の有無で大きく違う。折角ノブリスが後ろ盾になってくれている以上、それを使わない手はない」

 

 個人的にはノブリスは信頼も信用も出来ないとは思っている。

 しかし、それはここで口に出さない。

 多分大丈夫だとは思うが、もしかしたらこの中にはノブリスの手の者が接触してきて引き抜いたり、酒を飲ませて情報を引き出そうとする対象に選ばれかねないし。

 

「けど、そうなると……後ろ盾とか関係ない相手が攻撃してくる可能性もありますが」

「その時は反撃してもいい。元々ブルワーズは武闘派の海賊として知られているんだ。そうである以上、相手が攻撃をしてきても迎撃は出来るんじゃないか?」

「……やります」

 

 俺の言葉にそう答えたのは、大人達……ではなく、昌弘。

 他の子供組も、そんな昌弘の言葉に同意するように頷いていた。

 

「との事だ。……とはいえ、相手が誰であっても攻撃しろとは言わない。危険だと思ったら、エイハブ・リアクターの回収を止めて、火星に戻ってくればいい。エイハブ・リアクターの回収、あるいはMSの残骸の回収については、あくまでも出来ればでいい。現状において、既に最低限の収入は確保されている。今回頼むのは、あくまでも追加の収入があれば色々と便利だからというのが大きいしな」

 

 もしどうしてもエイハブ・リアクターを確保するのが難しいのなら、俺が動いて収入を確保すればいい。

 具体的には……そう、火星の治安が悪いという事は、マフィアとかそういうのがいる筈だ。

 もしくは素行の悪い傭兵とか。

 そういう連中の拠点に忍び込み、金目の物を奪ってくるというのは、俺にとってそう難しい事ではない。

 実際に今まで同じような事は何度もやっているし。

 呪いの影響で異世界間の移動は出来ないが、魔法が普通に使えるというのは大きいよな。

 

「それと、これは少し事情が違ってくるが、書類仕事とかが出来るような奴がいた場合、給料が増えるし、色々と優遇されるというのを覚えておいてくれ。……まぁ、そういうのが出来る奴はあまりいないだろうが」

 

 ブルワーズとして海賊をしていた時、書類仕事とかそういうのはどうしていたんだろうな。

 元海賊だけに、荒事の類は得意なんだろうが。

 見た感じ、書類仕事とかが出来る奴はそんなに数はいない。

 一番の有力候補は副官の男だが、この男には俺の代理として色々と動いて貰う必要があるし。

 うーん、こうなると……もしホワイトスターと繋がっていれば、エリナ辺りを呼びたいんだが。

 現状では政治班で働いているエリナだが、元ネルガルの社長秘書をやっていただけあって、政治よりも会社の経営とかそっちの方にも強い。

 PMCの運営とか、それなりに興味を持つと思う。

 ……もっとも、政治班はぶっちゃけシャドウミラーの中で一番忙しい部署だ。

 もしゲートが繋がっていてホワイトスターと行き来が出来ても、そう簡単にPMCの経営は難しいだろう。

 ただ、ホワイトスターと繋がれば量産型Wが使えるというのは大きい。

 書類仕事とかも問題なく出来るし。

 

「やっぱりそんなに人数はいないか」

 

 優遇されると聞き、何人か手を挙げて立候補している。

 だが、それはあくまでも何人かだ。

 書類仕事専門の事務職員は、出来れば確保したいな。

 今はまだ本格的にPMCとして動いてないので問題ないが、これが急がしくなったりしたら……かなり悲惨な事になるだろう。

 そうならない為にも、どうにかして事務員を確保する必要がある。

 とはいえ、それはそれで難しいのも事実。

 何しろこの火星では、そもそも文字を読めたり計算出来ない奴とかがかなり多いのだから。

 あるいは計算は出来ても足し算と引き算のみだとか。

 勿論、クリュセで働いているような連中なら、その辺の問題はクリア出来る者は多いが、そういう連中はそれだけで一種の技能という扱いになっていてもおかしくはない。

 そんな者達が、PMCに就職したいかと言えば微妙なところだろう。

 ……もっとも、PMCと一口に言っても色々な種類がある。

 俺達みたいにまだ会社として運営が始まったばかりの者達であったり、CGSのようにそれなりに成功している者達であったり、中には信頼性も高い大きなPMCだってあるだろう。

 そういう意味では、同じPMCであっても一概に同列に扱う訳にはいかない。

 シャドウミラーに雇用されるのは嫌でも、大きなPMCになら雇用されたいと思う者もいる筈だ。

 CGSは……どうなんだろうな。

 この前行った時に俺達を出迎えたのは、ハエダを始めとする書類仕事……いや、事務仕事は出来ないような面々だけのように思えた。

 単純に表に出てこなかっただけなのか、あるいはそうは見えないがハエダ達は実は事務仕事が出来るのか。

 そんな疑問を抱くが、とにかくまずはどうにかして事務要員を雇う事を考える必要があるのは間違いないという結論に達し、その後も諸々と会議は続くのだった。

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