転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3841話

「えー……これ、マジか……」

 

 目の前の光景に、俺の口から出た言葉だ。

 自分でもまさかこんな言葉を出すとは思わなかったが、それだけ目の前の光景は予想外だった。

 息を荒くしているものの、それでもまだそれなりに余裕があるのが、昌弘を始めとした子供組。

 そんな昌弘達よりは少し疲れた様子を見せているが、動くのに問題ないといった様子なのは大人組。

 そしてまだかなり余裕を残してるのが、CGSの参番組。

 とはいえ、参番組の中にはまだ小さな子供達が多いので、そちらはかなり疲れている様子を見せていたが。

 ここまではいい。参番組が一番余裕あるというのは少し驚いたが、CGSとして働いていた経歴が長いのを考えると、それは理解出来る。

 だが……壱番組と弐番組。

 CGSの大人組と呼ぶべき連中は、何人もが地面に転がって激しく呼吸している。

 とてもではないが、すぐに立ってまた訓練を行うと言っても、それに従ったりは出来ないだろう。

 

「これは、また……」

 

 俺の隣にいたノブリスの部下が、驚きと呆れの混ざった声で呟くのが聞こえてくる。

 たった10kmのジョギングでこれなのだから、その気持ちも分からないではない。

 ノブリスの部下にしてみれば、本来なら俺が模擬戦でどれだけの実力があるのかを見る為にここまでやってきたのだ。

 なのに、まさかその前の準備運動でCGSの大人達がここまで疲れるとは思っていなかったのだろう。

 恐らく、CGSもブルワーズと同じだったんだろうな。

 危ない事、面倒な事、疲れる事……そういうのは全部参番組、つまりはスラム街出身の連中やヒューマンデブリに任せて、自分達は楽な事ばかりをしていた。

 勿論、ブルワーズ程に酷使はしなかったと思うが。

 それでもこの様子を見る限りだと、ちょっとどうかと思う。

 

「その、これはですな。警備員として働く上で、体力はそこまで重要ではないので……その、実戦になればきちんと実力を発揮出来ますとも」

 

 マルバは慌てたようにそう言ってくる。

 マルバにしてみれば、ノブリスの部下の前でこういう光景を見せてしまった事は、顔を潰されたようなものだろう。

 また、俺に対しても侮っていたのに、この結果では納得出来ない筈だ。

 参番組はしっかりと鍛えられているので、そういう意味では最低限の面子は保ったのかもしれないが。

 

「取りあえず、休憩するか。CGS側を見ていると、すぐに次の訓練は出来ないだろうし。まさか準備運動で休憩することになるとは思わなかったけど」

「ぐ……頼む」

 

 悔しげな様子で、マルバは俺の言葉に頷くのだった。

 

 

 

 

 

「これ、どうぞ」

 

 そう言い、コップが差し出される。

 渡してきたのは……オルガだったか。参番組を率いている男だ。

 

「悪いな」

「いえ。それより……礼を言わせて下さい」

 

 オルガの口から出たいきなりの言葉に、疑問を抱く。

 

「何にだ?」

「あれですよ、あれ」

 

 オルガが視線を向けた先には、地面に座って話をしている昌弘と昭弘の兄弟がいた。

 どちらも嬉しそうに笑っているが、一体何を話してるのやら。

 混沌精霊の力を使えば、何を話しているのかは聞き取れるだろう。

 だが、それは野暮でしかない。

 

「別にそっちに礼を言われるようなことじゃないだろう? こっちも、昌弘が兄と話が出来て喜んでるんだし」

「それでもですよ。昭弘は俺達の中にいるヒューマンデブリのリーダー格みたいな奴なんですが、それが弟と再会出来てから大分明るくなって、それで参番組の雰囲気も良くなったんですよ」

「そういうものか」

 

 そう返しつつも、オルガの言ってる事は分からないでもない。

 渡されたコップ……中は水だったが、それを飲みながらそう思う。

 ヒューマンデブリというのは、使い捨ての奴隷のような存在だ。

 あるいは生まれた時からそういう境遇なら違ったかもしれないが、ヒューマンデブリというのは元々は普通に生活していた者達だ。それも大半が子供。

 そうである以上、自分達の境遇に絶望して暗くなってもおかしくはない。

 そんな中で、ヒューマンデブリを率いているような人物……昭弘が、生き別れの弟と会ったのだ。

 まだ俺が直接会話をした事は最初にCGSに行った時にちょっとくらいしかないが、それでも決して多弁な人物ではないのは分かる。

 そんな人物が嬉しそうにしているのだから、他のヒューマンデブリ達も多少はそれに感化されてもおかしくはない。

 そういう意味で、参番組の雰囲気も以前よりは多少マシになったのだろう。

 

「まぁ、お前達も色々と大変そうだし、少しは雰囲気が良くなったのなら、それはそれで構わない」

 

 一応俺はこのオルフェンズ世界におけるPMC、シャドウミラーの社長という立場だ。

 つまり、立場的にはマルバと同じ。

 マルバにしてみれば、それが面白くないのだろう。

 自分よりもかなり年下の若造が、ノブリスの後ろ盾で自分と同じ立場になっているってのが。

 だからこそ、本来なら俺の相手は自分でしなければならないのに、オルガに任せて自分はノブリスの部下と話している。

 ……もっとも、その気持ちも分からないではないが。

 何しろ、準備運動のジョギングで大人がこの有様だ。

 ノブリスの部下……火星だけではなく、圏外圏全体で強い影響力を持っているノブリスの部下に、CGSの情けないところを見られてしまったのだから、何としても誤魔化す必要があるのだろう。

 それが成功するかどうかは別の話として。

 

「ははは。そうですね。では、俺はこの辺で失礼します。他の連中の様子も見てこないといけませんし」

 

 そう言い、オルガは立ち去る。

 それを見送ってから、俺は皆から離れた場所にいるマーベルとシーラに近付いていく。

 聖戦士として鍛えられたマーベルは、相応に身体能力が高い。

 あるいは気の一種であるオーラ力を使い、微妙に身体強化をしてるのかもしれないが。

 そんなマーベルはジョギングも全く問題はなかったが、シーラの方は元女王という立場で、そこまで鍛えられてもいない。

 そもそもシーラはシャドウミラーにおいては事務員として働いて貰うつもりなので、今回のジョギングもかなりスローペースで走っていた。

 その為、息は多少荒くなっているものの、壱番組や弐番組の者達のように地面に倒れたりはしていない。

 

「向こうも事務員は訓練に出てないんだから、シーラが出る必要はなかったんだぞ?」

「それはそうかもしれませんが、そうなると女はマーベルだけになるでしょう?」

 

 そう言われると、俺も反論は出来ない。

 なるほど。女がマーベルだけなら、肩身が狭いか。

 それにCGSの中にはマーベルにちょっかいを出してくる奴もいるかもしれないし。

 薄らと汗を掻いたマーベルは、健康的な色気を放っている。

 それでいながら、俺やシーラとの夜の行為もあって強烈なまでに女の艶を感じさせるのだ。

 勿論、下手な男が言い寄ってきてもマーベルなら即座に断るだろう。

 力ずくできても……まぁ、1人や2人程度なら問題なく対処出来る。

 しかし、そうならないようにするのが最善なのも事実。

 そして1人よりは2人でいる方が、ちょっかいを掛けられにくい。

 ……もっとも、こうしてみる限りでは壱番組、弐番組の双方共に限界まで体力を使ってる以上、そういう事はないと思うが。

 

「シーラの場合は運動不足の解消という意味もあるんでしょう?」

「……それは否定しません」

 

 マーベルの突っ込みに、シーラはそう返す。

 うん、どうやらマーベルに妙なちょっかいが掛けられないようにという以外にも、きちんと今日の訓練に参加した理由はあったらしい。

 そんな風に話している間に時間が経過し……

 

「次の訓練に移るぞ」

 

 休憩はもう十分だろうと判断した俺は、そう告げる。

 その言葉に、シャドウミラーの面々と参番組はすぐに立ち上がったが、CGSの残りの面々は何とかといった様子で立ち上がる。

 そうして次は模擬戦……ではなく、まだ体力が完全に回復していない状況から見ても、少しは猶予をやろうという事で射撃の訓練となったのだが……

 

「マジか……嘘だろ……」

 

 誰かがそう言う声が聞こえてくる。

 まぁ、無理もないか。

 俺が撃った銃弾は、その全てが標的……それもど真ん中に1mmも外れる事なく、同じ場所に命中したのだから。

 これはステータスの射撃と命中の数値、それ以外にもガンファイトのスキルを習得しているのだから、そうおかしな話ではない。

 MSとかに乗っていなくても、ステータスは俺の能力となるのだから。

 

「あ、あいつ……走ってなかったから、体力にまだ余裕があるんだ!」

 

 今度叫んだのはハエダだな。

 どうやら俺がここまで凄腕だというのは信じられない……信じたくないらしい。

 もっとも俺がジョギングに参加していないのも事実なのだが。

 マルバやノブリスの部下と、今回の訓練の打ち合わせをやっていたし。

 そんな訳で俺の番が終わって他の面々も銃を撃っていくのだが……まぁ、そこそこ?

 俺のように高い命中精度はないが、他の面々もそれなりに命中させている。

 俺を驚かせたのは、CGSの壱番組や弐番組の面々もそれなりに高い命中精度を誇っていた事か。

 あくまでもそれなりでしかないが、ジョギングの件で呆れていただけに、これはちょっと予想外の光景だった。

 CGSで働くだけの事はあると、そう思った方がいいのだろう。

 

「ん?」

 

 そんな風に思っていると、参番組の中でも年長……10代半ばから後半くらいの男が銃を撃っているのが見える。

 その腕は、そこまで悪くないように思えた。

 しかし、多くの者の注意が向けられていると知ると、狙いを定めるのに時間が掛かるようになった。

 本人がそれを意識してるのかどうかは分からないが、恐らく緊張をすると実際に狙ってから撃つまで時間が掛かるタイプなのだろう。

 

「なあ、あいつは何て名前なんだ?」

「え? ああ、シノの事?」

 

 俺が尋ねたのは、偶然近くを通りかかった三日月。

 この三日月の射撃の腕は、CGSの中でもトップクラスだった。

 ……いや、シャドウミラーの面々を入れても、トップクラスなのは間違いない。

 そういう意味では、やはりエースなのだろう。

 阿頼耶識を使った操縦ではなくても、生身でもかなりの戦闘力を持つ。

 その身体も小柄ながら、昭弘には劣るものの、かなりの筋肉がついているし。

 

「シノか。……本人に自覚があるのかどうか分からないが、あまり戦闘には向いてないだろうな」

「……何? 俺の仲間の事、馬鹿にするの?」

 

 俺の呟きが聞こえたのか、三日月がこっちに強い視線を向ける。

 とはいえ、俺が見た感じでは緊張すると狙いを付けるのに時間が掛かるのを見ると、雑魚を相手にした時はともかく、強敵を相手にした時は無駄に時間を使って結局狙いが成功しない……そんなタイプに見える。

 

「別に馬鹿にした訳じゃない。ただ、俺ならどうでもいい敵の時は使うが、大事な戦いには使わないというだけだ」

 

 別に俺はシノを馬鹿にしようとして、このような事を言ってる訳ではない。

 実際、見た感じではその他大勢……いわゆる雑魚を相手にするには、それなりに使えそうな感じがするのも事実。

 ただ、重要な場面で使う事は出来ない。

 そのように思っているだけだ。

 

「俺は阿頼耶識がないけど、阿頼耶識ってのは基本的に機体を自分の身体のように使うんだろう? それは操縦をする上では大きなメリットだが、同時にデメリットでもある。具体的には生身の時の癖が機体の操縦に如実に出るとかな」

「それは……」

 

 三日月は俺の言葉に自分でも思うところがあるのか、少し落ち着く。

 そんな三日月を見て、俺は改めて口を開く。

 

「繰り返すようだが、別に俺はあのシノという男を貶すつもりはない。……まぁ、マーベルやシーラ達を見る目に思うところがない訳ではないが」

 

 シノはかなり女好きらしく、それはマーベルやシーラに向けられる視線にも表れている。

 ただ、ハエダのように粘着質な好色の視線という訳ではないのが救いか。

 それにそういう視線を向けはしているものの、実際に何か行動に移す訳でもないし。

 マーベルとシーラは、共に美女と呼ぶに相応しい外見をしている。

 CGSのような男所帯であれば、目を奪われるな、欲情するなという方が無理だろう。

 そんな訳で、その件については俺も特に責めるつもりはない。

 壱番組、弐番組からはそんな2人と親しい俺に嫉妬の視線を向けてくる者もいるが、その視線については優越感さえ覚える。

 

「まぁ、視線の件はともかく。シノに重要な作戦を任せるという選択肢は俺にはない。ただ、それはあくまでも使いようだし……そもそも、俺とCGSは別の会社である以上、俺が指示をするとか、そういう事は決められないだろう」

 

 そう言うが、個人的にCGSが将来的にどうなるのかは分からない。

 個人的には先行きがかなり不透明だとすら思う。

 何しろ、マルバの様子を見る限り決して有能なようには見えないし。

 そして壱番組、弐番組の大人達の様子を見れば……

 そうなると、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、将来的にCGSはシャドウミラーに吸収合併されるような事になるかもしれない。

 そんな風に思うのだった。

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