転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3849話

 会議を行う場所に到着すると、俺は素早く車から降りる。

 そしてクーデリアの乗っている方の車のドアを開ける。

 これ……やっておいて今更の話だが、本来ならフミタンの仕事じゃないのか?

 あるいは会議を行う場所に用意されている人員とか。

 いやまぁ、これも護衛の仕事だと言われれば、俺もはいそうですかと頷くしかないのだが。

 何しろ、いつどこから誰が襲ってくるのか分からないのだから。

 一番怪しいのは、やはりギャラルホルンだろう。

 植民地となっている火星の現状をどうにかするというのは、火星に住んでいる者にとっては悪くない話だが、支配している経済圏……更にはその経済圏の上位組織であるギャラルホルンにとっては、決して面白くはないのだから。

 そんな中で、クーデリアのような若くて美人な女が会議において発言をするのだ。

 ギャラルホルンにしてみれば、余計な事はするなと、そのように思ってもおかしくはないだろう。

 

「ありがとう。……何だか少し照れますね」

 

 車から降りたクーデリアは、その言葉通り薄らと頬を赤くしている。

 クーデリアの立場と美貌なら、それこそ今まで数えられない程に男から言い寄られていたと思うんだが。

 大学を飛び級で卒業する程に頭が良く、家は金持ちで本人は美人で身体付きもかなり女らしい。

 性格は……正義感がちょっと強いとは思うけど、決して悪辣ではない。

 ここまで揃っていて、男に言い寄られた事がないというのは……あ、これはもしかして、完璧すぎて男からは高嶺の花と思われており、それ故に口説かれてなかったとか?

 あるいは……ああ、フミタンが口説こうとしていた男達を防いでいたのかもしれないな。

 フミタンがクーデリアから1歩距離を置いた接し方をしているのは間違いないが、それでもクーデリアを好意的に思っているのは間違いない。

 そんなフミタンだけに、余計な男をクーデリアに近づけさせないようにするというのは、そうおかしな話ではないと思う。

 

「そうか? クーデリアならこういうのは慣れてると思ったけどな」

「それはそうですけど……」

 

 そう言いつつ、クーデリアは俺の手を握って車から出る。

 フミタンは車を駐車場に運んでいく。

 

「取りあえず中に入るか。外にいたら、いつ狙われるか分からないし」

「そうですね。中でフミタンを待ちましょう」

 

 クーデリアは俺の言葉に異論がないらしく、素直に頷いて建物の中に入る。

 そうして少し話をしながら、フミタンが来るのを待っていたのだが……

 

「やあ、クーデリアさん。よく来てくれたね」

「アリウムさん……」

 

 声を掛けてきた男を見て、クーデリアはそう呟く。

 この様子を見る限りだと、恐らくクーデリアの知り合いなのだろう。

 ただし、決してクーデリアが好ましいと思っているような相手ではないようだが。

 どういう関係なのかは分からないが、アリウムと名乗った男は笑みを浮かべながら……そしてまるで周囲にいる他の者達に見せつけるように、クーデリアと会話を始める。

 

「どうだね? 何を話すべきか、しっかりと考えてきたかな?」

「はい。アリウムさんのお陰で、今回の会議に参加出来るようになった事は、私にとっても嬉しいです。この好機を逃すことなく、自分の思った事を素直に口にしたいと思います」

「そうか、そうか。君は私の教え子の中では一番優秀だ。頑張ってくれ」

 

 そう言い、アリウムと呼ばれた男は去っていく。

 何人かの取り巻きを率い、近くにいた他の者達に声を掛けていた。

 あの様子を見ると、恐らく今回の会議を行った者達の中でも相応の影響力を持つのだろう。

 

「知り合いか? というのは、聞くまでもないか」

 

 周囲に怪しい動きをする者がいないか確認しながら、クーデリアに尋ねる。

 護衛である以上、妙な動きをする奴がいたら、警戒しておく必要がある為だ。

 

「ええ。その……私がこの道に進もうと決意したのはあの人のお陰です」

 

 この道に進むというのは、既に火星の状況をどうにかする事を、将来の道として決めているという事なのだろう。

 クーデリアの年齢を考えると、将来を決めるのは早すぎると思わないでもないが……本人がそれでいいと考えているのなら、そこは別に突っ込む必要はないか。ただ……

 

「その割には、あの男をあまり好んでいないようだったが?」

 

 将来を決めたという意味では、恩師という扱いでもおかしくはない。

 その割には、今の態度は疑問だった。

 

「あの人のお陰で私がこの道に進んだのは違いありません。そういう意味では感謝しています。ですが、シーラさんを始めとした、シャドウミラーの人達と話す事が多くなると……そう、表現は悪いですが、アリウムさんの言葉は薄っぺらく感じるのです」

「あー……なるほど」

 

 何となくクーデリアの言いたい事が理解出来た。

 恐らくだが、あのアリウムという男は口は上手いのだろう。

 だが、それは口が上手いだけで実際に行動を起こしていない。

 あるいは行動を起こしていても、それは小さいものでしかないといったところか。

 それと比べると、シャドウミラーの面々は実際に自分が行動してきた事なので、その言葉には真実味がある。

 この差は、小さいようで大きい。

 特にシーラは、大国と呼ばれるナの国の女王だった人物だ。

 そのような人物の言葉と、口が上手いだけの男の言葉

 その2人の言葉を聞き比べてしまえば、どうしても後者の者の言葉は薄っぺらく感じられるだろう。

 クーデリアにとって、シーラ達との話はそれだけ大きな意味を持っていたということなのだろう。

 そんな風に思っていると、車を駐車場に置いてきたフミタンが姿を現す。

 

「お待たせしました」

 

 いつものように冷静に……というか、感情を表情に出すようなことがないまま、フミタンがそう言う。

 

「では、控え室に行きましょう。幸い、今回の会議に参加する全員にそれぞれ控え室は用意されているようですし」

 

 そんなクーデリアの言葉に俺も賛成する。

 何しろ誰かがもしクーデリアを狙おうとするのなら、ここのように人の多い場所の方が向いているだろうし。

 勿論、控え室にいるからといって絶対に安心な訳ではない。

 例えば爆弾を仕掛けたり、あるいは換気口から毒ガスの類を流したりといったように。

 だが、その辺については何かあっても俺が対処出来る。

 いやまぁ、それを言うのならこの状況で銃弾が撃たれたりしても、俺はそれなりに対処出来るのだが。

 ただ、その場合は俺の力を大勢に見せる事になるので、それがあまり好ましくはない。

 俺の本当の力……普通の人間以上の力については、それこそまだシャドウミラーの面々しか知らないのだから。

 あ、でもそうだな。CGSとの模擬戦において俺が20人程を相手に圧勝したのは、ノブリスやCGSなら知ってるか。

 とはいえ、あれは別に特に何らかの特殊な力を使ってる訳じゃないんだよな。

 そんな訳で、俺達はクーデリアの為に用意された控え室に向かう。

 ただ、その控え室はそこまで広いという訳ではない。

 元々クーデリアは別に今回の会議の主役という訳ではないのだから、仕方がないが。

 クーデリアが今回の会議に参加するというのは、それなりに知られている事ではあるのだろう。

 だが、それでもクーデリアが会議のメインという訳でないのも事実。

 それこそ、多分あのアリウムとかいう奴が会議の主役……もしくはそこまでいかずとも、主要人物といった感じになるのだろう。

 

「今日の会議はそこまで大きな会議なのか?」

「そうね。TVも入るという話ですし、多くの人に私達の主張を知って貰うには良い機会かと。……ただし、その為に会議が狙われる可能性があるのかもしれないけど」

「その割には、護衛らしいのを連れている奴はそんなに多くなかったな」

 

 この建物に入った時、そこには結構な人数がいた。

 だが、そこには護衛らしき者は……いない訳ではなかったが、それでも人数は少ない。

 アリウムも、取り巻きはそれなりに連れていたものの、護衛はいなかった。

 ……まさか、俺に実力を察知させないような護衛が実はアリウムの周囲にいたとか?

 さすがにないか。

 MSやMWの操縦技術という意味でならともかく、このオルフェンズ世界に生身の戦いで俺に実力を見抜かせないような腕利きがいるとは、到底思えない。

 

「……そう言えばそうですね。一体、何故でしょう?」

「それを言うのなら、それこそノブリスが何でクーデリアだけに護衛を付けようとしたのかというのも、少し疑問だが。そもそも、ノブリスとクーデリアはどういう関係なんだ?」

「以前も言いましたが、パーティで少し話をしたくらいです」

「となると、結局ノブリスが何で俺にクーデリアの護衛をするように雇ったのか、それが分からないな。単純に考えれば、ノブリスがクーデリアを気に入ってるとか?」

「何故?」

「まぁ……考えられるのは……」

 

 そこで一旦言葉を止めて、クーデリアを見る。

 美人と呼ぶに相応しい顔立ちと、十分に大人の女と呼ぶに相応しい身体を。

 そんな俺の視線に気が付いたのだろう。クーデリアは意図せず自分の胸を隠す。

 ……それによって、豊かな双丘が押し潰され、余計にその存在が強調されているんだが、どうやら本人は気が付いていないらしい。

 

「えっと、ありません。私がパーティで聞いた話によると、ノブリスさんは特にそちら方面については特定の人物を持たないという事です。……アクセルと違って」

 

 あ、これはどうやら俺とシーラとマーベルの関係については知ってるな。

 別に隠している訳でもないので、シャドウミラーで色々と話を聞いていたのなら自然とその辺についても耳に入るか。

 何しろ俺達は3人で1部屋だ。

 普通に考えれば、俺達がどういう関係なのかというのは想像しやすいだろう。

 もっとも、オルフェンズ世界の火星においては一夫多妻はそう珍しい事ではないので、問題がないと言えばないのだが。

 クーデリアにしてみれば、自分が尊敬する、あるいは憧れるか? そんなシーラと俺がそういう関係なのが、どう反応したらいいのか分からないのだろう。

 一夫多妻が珍しくないとはいえ、クーデリアがその件についてどう思っているのかというのは、また別の話だし。

 

「そうなると、ノブリスは一体何でそこまでクーデリアに拘るんだろうな。……単純に将来性を見込んでの事か?」

 

 俺にはこの世界の原作についての知識がないので、具体的に何がどうとは分からない。

 分からないが、恐らくクーデリアは重要キャラなのだろうというのは予想出来る。

 ここまで属性てんこ盛りと考えれば、そうでない筈はない。

 あるいは原作の主人公の1人……という可能性もあるのか。

 そんなクーデリアだけに、ノブリスがクーデリアの素質を見抜いた……というのは十分に有り得る。

 それにノブリスは武器商人だ。

 クーデリアの行動によって火星で騒動が起きて、それによって武器が売れるようになるというのは、望むところだろう。

 多分、これが一番大きいんだと思う。

 

「とにかく、今はまず今回の会議を成功させることを最優先に考えた方がいいな。ノブリスが何を考えているのかまでは俺にも分からないけど、恐らくろくでもない事なのは間違いないだろうし」

 

 その言葉に、クーデリアが微妙な表情を浮かべる。

 クーデリアにしてみれば、ノブリスが何を考えて自分に援助してくれるのかはあまり想像したくないのだろう。

 クーデリア自身は、決して争いを望んでいる訳ではない、

 平和主義という表現は少し大袈裟かもしれないが、そんな感じなのは間違いない事実。

 それだけに、自分の為に騒動が起きるのは決して好ましくは思っていない。

 ただ、それだけではないのもまた事実。

 火星の為に、ヒューマンデブリの為に、そしてスラム街の貧しい者達の為に。

 そのような者達の為になるのなら……そう思えば、自分の行動を止めるつもりもないのは、俺から見ると好ましい。

 そんな風に思いながら、クーデリアやフミタンと20分程話をしていると、誰かがこの部屋に近付いてくる気配を感じる。

 護衛として何か行動を起こすべきか?

 そう思ったが、近付いてくる相手には殺気の類がないので、取りあえず問題ないだろうと判断しておく。

 そしてノックされる扉。

 ノックされた瞬間、一瞬だがクーデリアが驚いた様子を見せる。

 普段ならともかく、今日は俺が護衛としている為に、もしかしたらという思いがあるのだろう。

 

「失礼します。クーデリア様。そろそろ会議が始まるのですが、準備は大丈夫でしょうか?」

 

 クーデリアが中に入るように言うと、今回の会議を行うスタッフの1人だろう男がそう言ってくる。

 殺気の類がなかったから問題ないとは思っていたが、どうやら予想通り刺客とかそういう相手ではなかったらしい。

 

「ええ、問題ありません。では、すぐに行きますので」

「お願いします」

 

 そう言い、頭を下げたスタッフは部屋を出ていく。

 

「では、行きましょう」

「取りあえず大丈夫だとは思うけど、俺も会場に行くから何かあったら守る。安心して発言しろ」

「ありがとうございます」

 

 俺の言葉にそう返し、クーデリアは笑みを浮かべるのだった。

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