転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3850話

「私は火星の貧しい人達と接する事によって、色々と知ることが出来ました。今の火星は歪んでいると。地球の植民地のままではいけないと。私はその解放の為に、これから頑張っていきたいと思います」

 

 そう言い、クーデリアの演説が終わる。

 クーデリアの話した時間は、大体5分程。

 クーデリアの前にも何人か話していたが、それらは10分以上もの大演説を行っていた。

 ただ……話しているのが美人のクーデリアというのもあるのだろうし、クーデリアが持つ一種のカリスマ性もあるのだろう。

 他の者の半分……場合によってはそれ以下の時間しか話していないのに、この会議に参加した者達の中には恐らくクーデリアの前に話した者達の言葉は何も残っていないだろう。

 実際、クーデリアをこの会議に参加するように行動したアリウムですら、驚きと嫉妬の表情を浮かべている。

 アリウムにしてみれば、クーデリアは……表現は悪いが、一種の客寄せパンダのように思っていたのだろう。

 その客寄せパンダを上手い具合にコントロールし、それによってこの会議における自分の地位を上げる。

 そんな事を考えていたようだが、実際にクーデリアが演説をすると、客寄せパンダどころではなかったのだ。

 それこそ自分達が客寄せパンダのような扱いになってしまったといったところだろう。

 

「お嬢様……」

 

 俺の近くでクーデリアの演説を聴いていたフミタンが、感無量といった様子で呟く。

 普段はあまり表情を変えないフミタンだったが、今は嬉しそうにしている。

 その目には喜びの涙が浮かんでいた。

 そんなフミタンに、空間倉庫から取り出した――ポケットから出したように見せ掛けて――ハンカチを渡す。

 

「……ありがとうございます」

 

 フミタンの感謝の言葉に頷きつつも、俺は会議場の様子を確認する。

 今のところ、何か妙な行動をするような奴はいないな。

 まぁ、ここでクーデリアに向かって何らかの攻撃をしたら、その時点で大きな失点……それも取り返しのつかない失点となる。

 迂闊にクーデリアを攻撃するような事は……ギャラルホルンとかならそういうのを無視してやりかねないか?

 ともあれ、クーデリアの演説は終了し……その後も、特に何かが起きたりはせず、無事に会議は終了するのだった。

 

 

 

 

 

「ちょっと聞いた話だと、クーデリアの演説の生中継の評判がもの凄くよかったらしいぞ」

 

 会議が終わり、クリュセに戻る途中。

 車の中で俺はクーデリアに向かってそう言う。

 その言葉に、クーデリアは恥ずかしそうに頬を赤く染める。

 

「そんな、私はただ一生懸命気持ちを伝えただけで……」

「だからこそ、なんだろうな。下手に聴衆受けとかそういうのを考えていなかったから、生中継を見ている方も新鮮な気持ちでクーデリアの演説を聴いたんじゃないか?」

 

 下手に演説慣れをしていないからこそ、クーデリアの人気は高かったのだろう。

 勿論それ以外にも、クーデリアの美貌とかが関係しているのは間違いないだろうが。

 そう考えると、一種のアイドル的な存在……いや、象徴的な存在として認識されたのか?

 

「そうだと嬉しいんですが。……とにかく、今日の演説で多くの人が火星の状況について理解してくれたのなら、私としては満足です」

「それは間違いなく認識しただろうな。今は一種のにわかファンが多いかもしれないが、このまま活動を続けていけば、そういう連中も本気で火星の事を考えるようになると思うぞ」

「だと、いいのですけど」

「クーデリアの……」

「アクセル?」

 

 途中で言葉を切ったのを不自然に思ったのか、クーデリアがそう尋ねてくる。

 だが、俺の視線はこの車の少し後ろを走っている車に向けられていた。

 随分前から俺達の車の後ろを走っている。

 ……いや、それだけであれば偶然という事も考えられるだろう。

 だが、殺気を発し始めたとなれば、話は別だ。

 

「クーデリア、この車は防弾だったな?」

「え? フミタン?」

「はい、防弾仕様です。……アクセル様、もしかして?」

「正解だ」

 

 フミタンも俺の問いで一体何が起きているのかを理解したのだろう。

 微かに表情を厳しくする。

 

「どうしたの?」

 

 そんな中で事情を理解出来ていないのは、クーデリア。

 危機感が薄い……と思わないでもなかったが、クーデリアにしてみれば、まさか本当に自分が狙われるとは思ってもいなかったのだろう。

 俺が護衛をしているのも、ノブリスが俺に恩を着せる為だとか、そんな風に思ってもおかしくはない。

 実際、クーデリアは今まで特に護衛が必要になるような事はなかったのだから。

 それだけに、まさか本当に自分が狙われるとは思ってもいなかったのだろう。

 

「襲撃だ。……どこの連中なのかは分からないが」

「え?」

 

 俺の言葉に、クーデリアは最初理解出来ないといった表情となる。

 だが、すぐにその言葉の意味を理解し、真剣な表情となる。

 

「どこにいるの?」

「後ろの車だ。さっきから俺達をずっと追ってきている。……MSじゃなかっただけマシか」

 

 現在、俺達はノアキスからクリュセに向かっている途中だ。

 つまり、街中ではなく荒野を走っている訳で……そうなると、街中では使えないMSでも使える。

 とはいえ、MSを使えば真っ先に疑われるのは、当然ながらギャラルホルンとなる。

 そうなると、ギャラルホルンにとっても面倒な事になるだろう。

 勿論、ギャラルホルンの影響力を考えれば、その事実を隠蔽したり、もしくは誰かが何かを言ってきても無視することは出来る。

 しかしリスクやリターンを考えた場合、結局のところ自分達でクーデリアを殺すとリスクの方が大きくなると判断してもおかしくはない。

 そんな訳で、もしギャラルホルンがクーデリアを殺そうとしても、MSを使う事はないと思う。使っても、それこそMW程度だろう。

 これはあくまでも俺の予想なので、場合によっては実は全く的外れな事を考えている可能性もあるが。

 

「追ってきているって……それだけで、私を狙ってると判断は出来ないでしょう? それこそ、偶然かもしれないじゃない」

「そう思いたい気持ちは分かるけど……違うな」

 

 ここで殺気とかそういう風に説明してもいいんだが、多分理解出来ないだろうし、納得もしないだろう。

 あるいはクーデリアが漫画とかそういうのを読んでいれば分かるかも?

 そう思いつつ、俺はフミタンに声を掛ける。

 

「窓を開けてくれ。先手を……避けろ!」

 

 先手を打つ。

 そう言おうとしたそのタイミングで、後ろから来ていた車の窓が開き、銃弾が放たれる。

 サブマシンガンだな。

 自分の乗っている車が動いており、標的の車も動いている以上、自分の技量に余程の自信がなければ、とにかく大量に弾を撃って命中する確率を上げた方がいい。

 幾ら防弾の車でも、絶対に安全とは限らない。

 俺の指示に従い、フミタンは車を蛇行させる。

 撃たれた弾丸が何発か車に命中する音が聞こえてくるが、取りあえず問題はないらしい。

 

「きゃあっ!」

 

 クーデリアが悲鳴を上げる。

 お嬢様育ちのクーデリアだ。

 自分が実際にこうして襲撃を受けるとは思っていないのだろう。

 それでもパニックになって騒いだりしないのは助かる。

 

「クーデリア、取りあえずどこかに掴まっていろ!」

 

 蛇行運転をしている時にどこにも掴まっていないのは危険なので、そう指示を出す。

 俺の言葉を聞いたクーデリアは、何を思ったのか俺の身体に抱きついてきた。

 それも力一杯。

 いやまぁ、掴まってろと言われて一番近くにあった……いたのが俺だったのだろうが。

 これが普段なら、クーデリアの年齢以上に豊かな双丘が押し潰される感触を楽しめるのだが、さすがに今この状況でそんな事は出来ない。

 

「しょうがない。そのまま掴まっていてもいいから、身体を揺らすなよ! フミタン、窓を!」

 

 クーデリアは取りあえずそのままにしておく事にして、車を蛇行運転しているフミタンに指示を出す。

 すると、すぐに俺の近くにあった窓が開く。

 服の内側から取り出したように見せつつ、空間倉庫から取り出した拳銃を窓の外に出し……

 パン、と。

 軽い音が周囲に響く。

 上半身を乗り出したりしたのではなく、あくまでも手だけを出しての射撃。

 普通なら、とてもではないが命中しないだろう。

 だが俺の場合、PPによって命中と射撃の数値が双方共にかなり上昇している。

 それだけに、俺が撃った銃弾は1発で襲撃してきた車のタイヤの左前輪に命中し、次の瞬間には車はバランスを崩してあらぬ方向に進み……そして横転する。

 ちっ、ステータスの撃墜数が上がらなかったという事は、あの車に乗っていた連中はまだ生きてるな。

 もっとも、あの勢い……時速150km程の速度で走っていたのが横転したのだ。

 さすがに無傷という事はないだろう。

 

「どうする? あの連中を捕らえて口を割らせるか?」

「いえ、襲撃犯があの1台だけとは思えません。それこそMWが来る可能性もあります。そうなったら、防弾処理をしたこの車でも危険ですから……アクセル様、ここからだとシャドウミラーの拠点の方がクリュセにあるお屋敷よりも近いと思います。そちらに向かっても構いませんでしょうか?」

「俺達の拠点に? ……そうだな。それが一番手っ取り早いか」

 

 クリュセに逃げ込んだところで、MWを使った襲撃をされれば、それこそ周辺の被害は大きくなる。

 そうならないようにするには、やはりクリュセの中ではなく、外……周辺に何もない荒れ地で戦った方がいいだろう。

 もっとも……

 

「けど、俺達の拠点にはまだMWはないぞ?」

 

 銃火器の類は既に結構な量があるが、MWについては今回の護衛の依頼が終わった後での話となっている。

 ……勿論、いざとなれば俺の魔法であったり、それこそ場合によってはサラマンダーやミロンガ改を出して戦うといった事も出来るのだろうが。

 だが、それは本当にあくまでも最後の手段だ。

 MWは勿論、MSでもない人型機動兵器……そんな存在が知られれば、面倒な事になるのは間違いないのだから。

 もっとも、襲ってきた連中を全滅させて口封じをし、クーデリアやフミタンにはサラマンダーやミロンガ改については話さないようにして欲しいと言えば問題はなくなるだろうが。

 クーデリアは自分の命の恩人について蔑ろにするような奴じゃないし、フミタンはクーデリアがそう頼めば、問題ないだろう。

 ただし、襲撃をしてきた連中を全滅させたとしても、それを観察しているような存在もいるかもしれないので、もし本当にサラマンダーやミロンガ改を使うとなると、その辺にも注意する必要があるだろう。

 とはいえ……そうならないのが一番楽なのだが。

 

「それでも、街中で騒動を起こすよりはいいかと。……出来ればアクセル様には、今回襲撃してきた相手に大きなダメージを与えて、お嬢様を襲うのは割に合わないと思わせて欲しいのです」

「なるほど。向こうが金を貰って襲ってきている以上、その報酬を上回るダメージを与えられると襲撃を諦める可能性があるか。……ただ、ギャラルホルンが相手だった場合は、それで退くとは限らないぞ?」

「そうでない事を祈っています。それで、どうでしょう? シャドウミラーの拠点に向かってもよろしいでしょうか?」

 

 その言葉に、まだ俺の身体に抱きついているクーデリアに視線を向ける。

 クーデリアも、既に襲撃が終わったのは理解しているのだろうが、それでも今はまだ身体が震えて俺から離れられないらしい。

 人生で初めて――かどうかは分からないが――命を狙われたのだから、幾ら気丈なクーデリアでも、このようになってもおかしくはないか。

 

「そうだな。そっちの方がクーデリアも安心するか。……取りあえずもう襲ってきた連中は撃退したから、怯える必要はないぞ」

 

 そう言い、俺の身体に抱きついているクーデリアの肩を落ち着かせるように軽く叩く。

 

「……え、あ」

 

 そこでようやくクーデリアは、自分が俺に抱きついていたのに気が付いたのだろう。

 慌てて離れようとするが、まだ襲撃のショックから完全に抜け出せてはいないらしく、身体を離そうとしても離せない。

 

「えっと、その……あれ?」

「ほら、落ち着け」

 

 そう言いつつ、クーデリアが離れるのを待つが、緊張のあまりかそれも難しい。

 これはちょっと緊張を解してやった方がいいか。

 

「俺としては、クーデリアの身体の感触を十分に楽しめるから、もう少ししっかりと……それこそ、胸を押し付けるように抱きついてくれても構わないぞ?」

「え? きゃあっ!」

 

 そこでようやくクーデリアは自分がどんな体勢なのかに気が付いたのだろう。

 その豊かな双丘を俺の身体にこれでもかと言わんばかりに押し付けているという、そんな光景を。

 そして襲撃された恐怖よりも羞恥の方が勝ったのか、クーデリアは慌てて俺から離れ……そして責めるような視線を向けてくる。

 

「アクセル……」

「いや、そういう視線で見てきてもな。俺に抱きついてきたのはクーデリアだろう?」

 

 そう言うと、不満そうにしながらもクーデリアはそれ以上何も言えなくなるのだった。

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