転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3854話

「じゃあ、アクセル。よろしくね」

「クリュセまでだろう? 多分もう大丈夫だろうし、市街地に入るまではMWもついてきてくれるんだ。そういう意味でも大丈夫だと思う。……だよな?」

「任せてくれよ!」

「アクセルさんは恩人なので、しっかりと守らせて貰う」

 

 俺の言葉に、シノと昭弘がやる気満々といった様子で言う。

 シノは守る対象が俺……というよりも、フミタンも入っているからというのが大きいだろう。

 もっともフミタンに言い寄っていたシノだったが、結局フラれたのだが。

 本人はその辺、あまり気にしていないらしい。

 そして昭弘は、昌弘と話を出来たという事もあってか俺に恩を感じているらしい。

 ……まぁ、それを抜きにしても、シャドウミラーを率いている俺が死んだりすれば、弟の昌弘が路頭に迷うというのもあるんだろうが。

 最悪CGSに引き取って貰うというのもあるが、CGSでのヒューマンデブリの扱いを見れば……ブルワーズに比べれば大分いいが、それでもシャドウミラーと比べると天と地程の差があるのも事実。

 そんな訳で、昭弘としては弟の為にも俺をしっかりと守りたいと思っているのだろう。

 

「ああ、頼む。……マーベル、シーラ。多分大丈夫だとは思うが、俺がいない間にここに誰かが攻め込んできたら、その時は指揮を頼む。最悪、この拠点は放棄してもいいから」

「任せて。ようやく手に入れた場所なんだから、守ってみせるわ」

「ええ、ここについては私達に任せて、アクセルはクーデリア達を頼みます」

 

 マーベルとシーラがそれぞれそう言ってくる。

 ちなみに、そんな俺にシノが羨ましそうな視線を向けていた。

 フミタンとの件もあったし、それだけ羨ましく思ったんだろうな。

 もっとも、フミタン本人はシノに対して脈も何もなかったようだったが。

 

「さて、じゃあ……行くか。フミタン、車の運転は任せるぞ」

「はい。アクセル様はお嬢様をお願いします」

 

 本来なら、俺が車を運転するという手段もあった。

 オルフェンズ世界の車は普通の車と違わないので、運転に難しいところはない。

 そして俺が運転すれば、それこそMWどころかMSに襲撃されても倒す……のは無理でも、逃げ切るくらいは出来る。

 しかし、そうなるといざという時にクーデリアを守る護衛として動くのは難しくなる。

 その為、車の運転はフミタンに任せ、俺はクーデリアの護衛に専念する事になったのだ。

 俺が護衛に専念していれば、それこそMWの襲撃があっても対処出来るし。

 

「大丈夫だ。クーデリアは俺が守る」

「……全く」

 

 何故かフミタンが若干の呆れと共に呟く。

 何だ? 今のどこにそんな要素があった?

 そんな疑問を抱くも、今はまずクリュセに戻るのを優先した方がいい。

 ただ、個人的にはもう襲撃はないような気がするんだよな。

 何しろ、俺達は1度襲撃されている。

 それが既に失敗しているのだ。

 最初の……言ってみれば一番襲撃が成功しやすい時に失敗している以上、再度の襲撃が成功するとは到底思えなかった。

 あるいはMSやMWを用意したのなら、話は別だが。

 ともあれ、俺達は車に乗り込む。

 前後には昭弘とシノのMWが護衛についた状態で、クリュセに向かって出発するのだった。

 

 

 

 

 

「結局何も起きずに到着しましたね」

 

 驚き、呆然、拍子抜け。

 そんな様子でクーデリアが呟く。

 車の前方には、クリュセ。

 拠点を出発してから、結局俺達は一度も襲撃を受けないままクリュセに到着したのだ。

 これは嬉しい事だし、そうなってくれればいいと思っていた。

 思っていたが、それでもまさか……という思いがそこにあったのも事実。

 

「そうだな。正直、絶対にまた襲撃があるとは思っていたんだが」

「はい。お嬢様が無事で何よりでした」

 

 俺の言葉に、車を運転していたフミタンがそう返す。

 フミタンにしてみれば、襲撃をされなかったというのはそれだけ安堵したのだろう。

 

「ともあれ、一応護衛はこれで終了……か? それとも、クリュセにあるクーデリアの家にまで送った方がいいか?」

「そう、ですね。クリュセの街中でそのような襲撃をすれば、すぐにギャラルホルンが飛んでくるでしょう。……普通なら、ですが」

 

 意味ありげに呟くフミタン。

 どうやら、フミタンも今回の襲撃がギャラルホルンの手の者である可能性があると、理解しているのだろう。

 MSもMWも使っていないものの、だからそれがギャラルホルンの仕業ではないとは限らない。

 それこそ、そのように思わせる為にMSやMWを使わなかった……いや、俺が知ってる限りのギャラルホルンの情報だと、基本的にギャラルホルンの者達はプライドが高い。

 というか、火星の住人を植民地の人間として見下しているというのが正しいのか。

 だからこそ、そんな相手を攻撃するのにMSやMWを使うのならともかく、自分達が直接車に乗って襲撃するというのは避けたいだろう。

 となると、考えられるのはギャラルホルンの影響力を使って火星にいる後ろ暗い組織……マフィアやギャングの類を動かすといったところか。

 あくまでもこれは予想だ。

 最初に襲ってきた連中は、やっぱりこっちで確保して尋問をすればよかったな。

 とはいえ、俺の力を表沙汰に出来ない以上、もし捕虜からこれがギャラルホルンからの仕事だと聞いても、対処は出来ないのだが。

 あるいは俺がこっそりとギャラルホルンのお偉いさんに接触して、脅すとかありかもしれないが。

 いっそ、そうした方が手っ取り早いのか?

 もしそれをやれば、今回の襲撃がギャラルホルンの仕業でも、あるいは違っても、向こうとの伝手を作れるのは大きい。

 現状、俺達の後ろ盾はノブリスだが、そのノブリスの性格を考えるといつ切り捨てられてもおかしくはない。

 だからこそ、何かがあった時でもすぐ対処出来るようにしておいた方がいい。

 ……ゲートが無事に起動して、ホワイトスターと繋がれば、もうそういうのを気にする必要はないんだが。

 

「アクセルさん、取りあえずCGSの2人は返して、アクセルさんだけが車で屋敷まで護衛をという事でどうでしょう? 勿論、屋敷に戻ったら会社までお送りしますので」

「ああ、そうしてくれると助かる。じゃあ、俺は昭弘達に帰ってもいいと言ってくるな」

 

 戻るだけなら、それこそ影のゲートを使えば一瞬だ。

 一瞬なのだが……それはそれで問題があったりする。

 いや、見つからなければ問題はないのか?

 ともあれ、無難なのはやはり車とかで送って貰うことか。

 あるいは車じゃなくてバイクとかなら、俺だけなのでそのまま転移しても……発信器とか、メーターのチェックとかで、怪しまれるか。

 そんな風に思いつつ、俺は車を降りる。

 すると、そんな俺の姿に気が付いたのだろう。

 すぐに2機のMWが俺に近付いて来た。

 

「護衛はここまででいいから、お前達はCGSに戻ってくれ。マルバには前もって連絡をしておいたから、恐らく問題はないと思う」

 

 そう言いはしたが、マルバはともかくハエダの性格を考えると、この2人が妙な因縁をつけられる可能性もある。

 まぁ、マルバにはこの件がノブリスとの一件に関係していると説明してあるので、もしハエダが昭弘やシノに何かをしようとしたら、それこそマルバが止める……と思いたい。

 

『いえ、気にしなくてもいいですよ。お陰で昌弘に会えましたし』

『そうそう、俺もフミタンと会えたし』

 

 いや、昭弘はともかくシノは口説くのを失敗してるだろうに。

 もっとも今回の一件でシノとの関係が改善したのは悪い話じゃないが。

 もしあのままシノとの関係が悪化したままだったら、今後面倒な事になっていたかもしれないし。

 そういう意味では、こうしてシノを連れてきたのは間違いではなかったのだろう。

 

「分かった。じゃあ、戻ってくれ」

 

 俺の言葉に、2機のMWはCGSに向かって移動を始める。

 そんな2機を見送ると、俺は車に戻る。

 

「さて、じゃあいよいよクーデリアの家だな。……代表首相の家だ。大きいんだろうな」

「それは……」

 

 俺の言葉に、微妙な表情を浮かべるクーデリア。

 自分が恵まれすぎていると、そんな風に思っているのだろう。

 実際、それは決して間違いという訳ではない、

 だが……クーデリアがこうして恵まれていたからこそ、火星の為に立ち上がるといった行動に出たのを思えば、それは決して悪い事だけではないだろう。

 

「別に現状を恥じる必要はないだろ。今の状況を活かして現状を変える。クーデリアがやってるのはそういう事だろう? なら、それを誇れよ」

「アクセル……その、ありがとう」

 

 笑みを浮かべるクーデリア。

 それこそ満面の笑みという表現が相応しい。

 

「別に気にするな。火星の状況が少しでも良くなるのなら、火星に暮らす俺にとっても悪くない事だし」

 

 これは半分冗談だが、半分本気だ。

 何しろ俺達が火星に暮らしてるのは間違いない。

 そうである以上、火星の生活環境が良くなるのは、それこそ喜ぶべき事なのだから。

 

「……ええ、そうね」

 

 それだけを言うと、クーデリアはそれ以上何を言うでもなく黙り込む。

 俺はそんなクーデリアを一瞥すると、襲ってくる相手がいないかと周囲の様子を確認する。

 クリュセに入った以上、大丈夫だとは思う。

 だが、俺の予想通りにギャラルホルンが襲撃の犯人だった場合、その依頼――あるいは命令――をこなす者達にしてみれば、自分達の後ろ盾にはギャラルホルンがいると考え、そうである以上はクリュセの市街地で堂々と襲撃してもいいと思うかもしれない。

 とはいえ、それをギャラルホルンが本当に認めるかどうかは、また別の話だが。

 やらせておいて、実は知らない。依頼や命令などしていないと言ってもおかしくはない。

 勿論、実際に襲撃をしてきた場合、その連中はいざとなったらギャラルホルンが自分達を助けてくれると思っているので、かなり思い切った行動に出てもおかしくはない。

 そんな訳で、俺は念の為に周囲の状況を警戒しない訳にはいかなかった。

 とはいえ、こうして周囲を警戒しても結局襲撃の類は何もなく、俺達は無事にクーデリアの家……屋敷に到着するのだった。

 やっぱりかなりの豪邸だな。

 代表首相という立場にあるだけの事はある。

 もっとも、その娘のクーデリアには色々と思うところがありそうだが。

 

「では、アクセル様。今日はありがとうございました」

「別にそこまで丁寧に挨拶をする必要はないと思うけどな」

 

 玄関というには豪華すぎる場所で車が停まると、フミタンが俺に向かってそう言ってくる。

 

「いえ、もしアクセル様がいなければ、襲撃によってどのような被害を受けていたのか分かりません。アクセル様は勿論ですが、アクセル様を紹介してくれたノブリス様にも感謝しませんと」

「そうね。フミタンの言う通りだわ。もし私だけだったら……アクセル? どうしたの?」

 

 フミタンの言葉に思う事があったのだが、どうやらその表情の変化をクーデリアに見抜かれたらしい。

 

「いや、何でもない。無事でよかったと思っただけだよ」

 

 違う。

 いや、勿論そのように思っていないとは限らない。

 だが俺が考えていたのは、ノブリスの件だ。

 偶然ノブリスがクーデリアについて知っていて、偶然俺と知り合いになり、それで俺を護衛につけたら偶然襲撃があった?

 偶然が1つや2つなら、まだ納得出来たかもしれない。

 だが、偶然が3つ……あるいは俺が気が付いていないだけで、もっと他にも偶然があったとしたら、それはどうなるか。

 それは間違いなくただの偶然ではなく、偶然を装った必然と言ってもいいだろう。

 だとすれば、今回の件は……もしかして、襲撃者の後ろにいたのはギャラルホルンではなく、ノブリス?

 けど、何故?

 ノブリスにしてみれば、わざわざクーデリアを襲撃する意味などない筈だ。

 勿論、ノブリスだけが知っている情報というのはあるだろうし、それを俺達に知らせていないだけという可能性もある。

 だが、あの襲撃は下手をすればクーデリアは死んでいた。

 いや……それはちょっと違うのか?

 あの会議において、クーデリアはかなり注目されるようになったものの、そのようになるとまではノブリスも分からなかった筈だ。

 そうなると、クーデリアが襲撃されるという事態そのものが必要だった?

 その襲撃でクーデリアが死んでもいいといったような……いや、出来れば生きていた方がいいと判断したから、俺を護衛に付けたとか?

 だが、何故わざわざそんな事をする必要がある?

 ノブリスの性格を考えれば、その襲撃が自分に利益があったからこそやらせたんだろうが……だからといって、それが具体的にどんな利益になるのかと言われても、俺には分からない。

 ノブリスが武器商人だからといって、まさかあの襲撃で使った武器の補充を襲撃してきた連中に売る為というのは、さすがに手間暇の方が多くて利益は小さすぎるだろうし。

 駄目だな。

 ちょっと考えても分からない。

 さすがに気紛れでああいう事をさせたとも思わないから、もし本当にノブリスが裏で糸を引いていたとしたら、何かあると思うんだが。

 そんな風に考えつつ、俺は車で拠点まで送って貰うのだった。

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