転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3855話

 クーデリアの護衛を終えて数日……

 

「うわ、またクーデリアさんが出てる」

 

 食堂にあるTVを見た昌弘が、そう呟く声が聞こえてきた。

 その声にTVの方に視線を向けると、確かにそこにはクーデリアの姿がある。

 会議……今ではノアキスの7月会議と呼ばれるようになったあの会議の場で演説をしているクーデリアの姿だ。

 ちなみに画面は当然のようにクーデリアが中心となっているが、何度か画面には俺とフミタンの姿も映っていた。

 クーデリアがTVに取り上げられるのは毎日だ。

 正直なところ、何か意図的なものを感じるのだが……気のせいか?

 単純に、クーデリアをTVに出せば視聴率が上がるというのもあるんだろうし、それが目当てだと言われれば、そういうものかと納得するしかないが。

 これはノブリス、ギャラルホルン、どっちの仕業なのか。

 あるいは俺が知らないそれ以外のものが動いたのか。

 その辺は分からないが、とにかくクーデリアはこの件もあって最近忙しく動いてる。

 ノアキスの7月会議の前は、毎日のように……というのは少し大袈裟かもしれないが、それでも結構な頻度でこの拠点にやってきていたんだが、最近ではかなり頻度が落ちてるし。

 

「元気でやってるようですね」

 

 俺の隣に座ったシーラが、TVの映像を見ながら言う。

 先程は会議の時の演説の様子だったが、今はインタビュー映像が流れていた。

 シーラの言う通り、クーデリアは疲れを感じさせる様子がない。

 とはいえ、女というのは化粧で化ける。

 中には疲れを隠す為の化粧とかもあるらしいから……本当に大丈夫なのかどうかは、分からないが。

 もっとも、フミタンがいる以上、クーデリアも無理はしない……いや、出来ないだろうが。

 

「そうだな。あっという間に駆け上がっていったし、こういうのをシンデレラストーリーと言うんだろうな」

「それは、以前マーベルから聞いた事があります。ですが、クーデリアの場合はそれとは違うのでは? 元々裕福だったようですし」

 

 言われてみればそうか。

 まだ10代半ばなのに、飛び級で大学を卒業しようとしているし、親は代表首相。

 そう考えれば、確かにクーデリアのシンデレラストーリーというのは、少し違うかもしれないな。

 もっとも、本人がどう思っているのかは、また別の話だが。

 

「とにかく、後はクーデリアが頑張るだけだ。俺達はエイハブ・リアクターの売買と、未知のフレームを調べて貰うというテイワズとの取引待ちだ」

 

 特に俺が見つけた未知のフレームは、シャドウミラーのメカニック達でも分からなかった代物だ。

 そう考えると、あのフレームは大きな価値を持つ。

 それこそガンダム・フレームとも違うという話だったし……個人的には売るんじゃなくて、こっちのMSとして使いたい。

 出来るかどうかは分からないが。

 

「そうですね。シャドウミラーの者達に給料を出すという意味でも、今回の取引は成功させる必要があります」

 

 元ナの国の女王をしていたシーラの口から給料という言葉が出るのは、未だに新鮮な驚きがあるな。

 とはいえ、現在のシーラはシャドウミラーの事務員である以上、慣れる必要があるんだろうが。

 これで宇宙に出れば、強襲装甲艦の艦長としても活動出来るんだが。

 

「そっちの方は、上手くいくと思っているよ。テイワズにしてみればエイハブ・リアクターは幾らでも欲しいだろうし」

 

 何しろエイハブ・リアクターは、現在ギャラルホルンでしか製造出来ない。

 ……テイワズはMSのフレームを製造出来るんだし、エイハブ・リアクターの実物も大量にあるのだから、作ろうと思えば作れるような気がするんだが。

 あるいは作れるけど、作ってしまうとギャラルホルンから目を付けられ、場合によっては全面対決になってしまうので作らないだけなのか。

 いや、けどテイワズの本拠地があるのは木星だろう?

 なら、エイハブ・リアクターを作ってもそうそうギャラルホルンに知られたりはしないと思うんだが。

 あ、いや。でもエイハブ・リアクターには固有の振動だったかがあって、ギャラルホルンは製造しているのでそれを把握してるとか何とかあったな。

 そうなると、もしテイワズがエイハブ・リアクターを製造する技術を入手したとしても、ギャラルホルンはすぐにそれが自分達で製造したエイハブ・リアクターではないと分かるのか。

 だとすれば、やっぱりテイワズがエイハブ・リアクターを製造するのはちょっと難しいだろうな。

 

「そう。ならいいのですが」

「どうした? 何かあるのか?」

「何かがあるという訳ではなく……いえ。そうですね。胸騒ぎのようなものでしょうか」

「シーラがそう言うと説得力あるな」

 

 シーラの場合、ただの女の勘というだけではなく、オーラ力を使った勘とかであってもおかしくはない。

 とはいえ、具体的に何が起きるのか分からない以上、対処のしようがないのだが。

 何かが起きるという事で、心構えを出来るのが唯一の救いか。

 そんな風に思いながら、俺は食堂のTVを見るのだった。

 

 

 

 

 

「ようやくか」

『待たせたようだが、こちらとしてもかなり急いだのだがな』

 

 俺の言葉に、ノブリスがそう言ってくる。

 まぁ、ノブリスにしてみれば自分の仕事を貶されたと思ってもおかしくはない。

 

「それでもかなりの時間が経ったのは間違いないだろう?」

『普通に考えれば、テイワズと……それもNo.2との取引を成立させられるにしては、大分短い時間なのだが』

「No.2と言ったって、実際にはその部下だろ? No.2の張本人が出て来る訳じゃない」

『なら、別の相手を探すか? 勿論、その場合はこちらでは関与しないが』

「いや、出来るだけ早く取引は終えたいから、そんなつもりはない。……それで、取引は宇宙で直接という事でいいんだよな?」

 

 エイハブ・リアクターや未知のフレーム、それ以外に俺達が使っているMSやMWは、全て宇宙港に停泊している強襲装甲艦にある。

 その為、何かあった時……本当に万が一だが、取引の最中に何者かの襲撃を受けた時とか、そういう時に対処する戦力は宇宙用の物しかない。

 勿論、可能性としては低い。低いのだが……何しろノアキスの7月会議の一件があったしな。

 あの件も結局誰が襲撃をしてきたのかは分かっていない。

 個人的にはギャラルホルンとノブリスのどちらかだと思うんだが。

 ただ、証拠がない以上、意味がないんだよな。

 いや、意味がない訳じゃないが、今はまだノブリスの後ろ盾が必要な状況だ。

 そうである以上、もしそうだとしても口には出せない訳で。

 ……もっとも、その代わりという訳ではないが、ゲートが繋がってノブリスの後ろ盾が必要なくなったら、その時は相応の対応をさせて貰おうと思うが。

 

『うむ。向こうもそれを飲んできた。いや、飲んだというより、向こうにとってもその方が好都合だったのだろう』

「エイハブ・リアクターとかの受け渡しだしな。火星でやると、妙なちょっかいが入る可能性もあるが」

 

 もっとも、それを言うのなら宇宙でも夜明けの地平線団のような海賊がちょっかいを出してくる可能性も高いのだが。

 何しろ、エイハブ・リアクターというのはお宝だ。

 海賊にしてみれば、自分達で集めるよりは誰かが持っている物を奪う方がいいのだから。

 

「幸いな事に、高密度デブリ帯に行っていた連中も戻ってくるって話だから、場合によってはエイハブ・リアクターが増えるかもしれないな」

『だが、向こうが今回使える金は決まっている。下手に追加のエイハブ・リアクターを出した場合、それこそ他のエイハブ・リアクターの値段を下げて、追加のエイハブ・リアクターも持っていくかもしれんぞ?』

「テイワズのNo.2というのは、そういう事をするのか?」

『する。……これが普通の企業ならそのような事はしないし、出来ないだろう。だが、テイワズは普通の企業ではない。裏の組織としての顔も持つ』

 

 いわゆる、マフィアとかそういう感じか。

 それについては、情報で既に知っている。知っているが……

 

「だからといって、こっちもそれに従う気はない。となると、追加でエイハブ・リアクターを入手しても、それを相手に知られるような事はないようにしないと駄目か」

 

 そうなると、問題なのは戻ってきた連中に口止めをしておく事だ。

 向こうが情報収集をした場合、口止めをしておかないとその件を容易に話してしまいそうだし。

 残った連中の中には、その辺についてあっさりと口を滑らせるような奴がいてもおかしくはないんだよな。

 

『そうなるな。頑張るといい。……テイワズとの取引の現場には、こちらからも人を出す。恐らくは大丈夫だと思うが、問題は起こさないで欲しい』

「俺も問題なく取引が終わることを祈ってるよ」

 

 そうしてノブリスとの通信が終わり……それから数時間後、まるでタイミングを計っていたかのように、再び通信が入る。

 ただし、そちらはノブリスからの再度の通信ではない。

 それは高密度デブリ帯から戻ってきた者達からの通信だった。

 

『アクセル様、良い報告と悪い報告がありますが、どちらから報告した方がいいでしょうか?』

 

 通信に出たのは、副官の男。

 しかもこの聞き方……以前、夜明けの地平線団と遭遇した時にも聞いたな。

 

「まさか、また夜明けの地平線団と遭遇したとかじゃないよな?」

 

 以前の夜明けの地平線団は、元ブルワーズの連中の口車に乗って俺達に絡んできた。

 抜け駆けして、自分達だけでガンダム・グシオンを奪おうとしていたので、本隊に俺達が戦った一件が知られるような事はなかった。

 とはいえ、結構な数のMSが行方不明になっている以上、何かがあったとは思っているだろうが。

 何しろ、MSはこのオルフェンズ世界において非常に高価だ。

 それが何機もいきなりなくなったのだから、例え大海賊と呼んでもおかしくはない夜明けの地平線団であってもそれなりに痛い損害だろう。

 ……マーベルが奪ったガルム・ロディは、エイハブ・リアクターから向こうに知られてしまうので、あまり表沙汰として使えないよな。

 また、夜明けの地平線団の活動を考えると、もしかしたらギャラルホルンにもあのガルム・ロディが夜明けの地平線団で使われていたと知られてしまう可能性があった。

 その辺の状況を考えれば……うーん、どうにかした方がいいな。

 そう思いつつ、俺は副官の言葉を待つ。

 

『いえ、さすがに夜明けの地平線団との遭遇はありませんでした。ただ……エイハブ・リアクターを見つけてそれを運んでいるところを他の海賊に見られたそうです』

「その海賊と戦いになったとか?」

 

 夜明けの地平線団との一件を考えると、こっちが見つけたエイハブ・リアクターを奪おうとしてもおかしくはない。

 

『いえ、そこまではいきませんでした。こちらの戦力が多いと判断したのか、最終的には向こうが撤退しましたので。……ただ、これから高密度デブリ帯でエイハブ・リアクターを集めるとなると、同じような事が起きる可能性が高いかと』

「まぁ、それについては仕方がない。元々そういう風に考えていたしな。……だからといって、愉快かと言われればそうでもないけど。ただ、悪い報告というのがそれなら、俺が思っていたよりも悪くはなかったな」

 

 それこそ夜明けの地平線団と正面からぶつかったとか、こっちのMSが撃破されたとか、強襲装甲艦や輸送艦が破壊されたとか、そういう事を言われるのかと思ったのだが……他の海賊と遭遇したのはともかく、睨み合い程度で終わったのは俺としても悪くない結果ではある。

 

『それで、良い報告ですが……新たに4基のエイハブ・リアクターを確保しました』

「そうか、よくやった」

 

 俺が探索に協力した時は、何だかんだと10基のエイハブ・リアクターを確保した。

 しかも俺が見つけた未知のフレームにあった奴を抜きにしてだ。

 ……もっとも、その中には夜明けの地平線団の連中のMSもあるのを考えると、実際には見つけたエイハブ・リアクターの数は今回とそう違わないのだろうが。

 元々高密度デブリ帯でエイハブ・リアクターを見つけるというのは、運が大きな要素を占める。

 そういう意味では、最初にそれなりの数を確保出来たのは悪くない結果だったのだろう。

 俺の場合、決して幸運ではないし。

 とはいえ、女運という意味ではこれ以上ない程にいいが。

 何しろ文字通りの意味で違う世界まで俺を追ってきてくれるマーベルやシーラがいるし。

 それに凛や綾子も同様か。

 ともあれ、エイハブ・リアクターを追加で入手出来たのは嬉しい出来事だった。

 

『はい。それで、こちらのエイハブ・リアクターはテイワズに売るのですか?』

「将来的にはそうなるかもしれないが、今回は10基だけだ。ただ、話してみて相手が問題のない取引相手なら、追加で話を持ち掛けてもいいかもしれないな」

『もし問題のある相手なら?』

「予定していた通りの取引だけで終わりだな。エイハブ・リアクターは別にテイワズ以外にも売れるし」

 

 取りあえず俺の空間倉庫に収納しておけば問題はないだろう。

 そう思いつつ、俺は副官との打ち合わせを続けるのだった。

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