転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3862話

「で? 何でクーデリアがここに?」

 

 クーデリアは、現在の火星においてはかなりの有名人だ。

 それこそアーブラウだけではなく、他の勢力の植民地でも。

 ノアキスの7月会議におけるクーデリアの存在感は、それだけ凄かったのだ。

 それだけに、そんなクーデリアがまさかこの大会に……それこそフミタンだけではなく、護衛の類も連れずにいるのは疑問だった。

 そんなクーデリアがいれば、当然ながら目立つ。

 そんな訳で、あの騒動でもかなり人目を集めていたので、あそこから離れて俺はクーデリアと話していた。

 

「その……ちょうどお休みだったので。シーラさんから今日の事を聞いていたから……」

「そういう理由か。てっきり仕事で来たのかと思ったんだが。……けど、フミタンはどうした?」

「迷子の子供がいたので……」

「……うん。まぁ、クーデリアらしいな」

 

 クーデリアの性格を考えれば、そういう事をしてもおかしくはない。

 だからといって、フミタンだけで迷子の子供の世話をさせたりとかは、どうかと思うが。

 

「お嬢様」

 

 噂をすれば何とやら。

 フミタンが姿を現す。

 

「アクセル様、お嬢様を助けてくれてありがとうございます」

 

 そう言い、こっちに向かって一礼するフミタン。

 この様子だと、さっきの一件については聞いているらしい。

 あの件を見ていた者に聞いたのか、それとも実はフミタンが離れた場所で見ていたのか。

 その辺は俺にも分からなかったが、とにかくフミタンがあの一件を知ってるのは間違いないらしい。

 

「フミタン、あの子供は?」

「両親を見つけたので、そちらに」

「そう。それならいいけど。……それにしても、この大会にここまで人が集まるとは予想外でしたね」

「独立の為には、戦力が必要。そのような話をしている人が何人かいました」

「そう……」

 

 フミタンの言葉に、残念そうな様子のクーデリア。

 革命の乙女と呼ばれているクーデリアだが、それは決して戦いを好むという訳ではない。

 それだけに、戦力がどうこうという話はあまり好ましいものではないだろう。

 とはいえ、それでもシーラから色々と教えを受ける事によって、時には力が必要というのは理解している。

 バイストン・ウェルにあったナの国も、決して戦いを好んでいた訳ではなかったが、それでも結局は戦いに参加するような事になったし。

 

「ともあれ、フミタンも合流したんだ。いつまでもここにいると、またさっきのような奴に絡まれる可能性があるから、俺達の場所に行かないか?」

「そうですね。……お願い出来ますか?」

「フミタンもそれでいいか?」

「はい。お嬢様をそのままにしておくと、色々と問題を起こしそうなのです」

「ちょっ、フミタン!? まるで私がトラブルメーカーのような事を言わないで!」

「ですが、私が離れていた短い時間に、アクセル様に助けられるような事があったのでは?」

「う……それは、その……」

 

 フミタンの言葉に、反論が出来ないクーデリア。

 実際に絡まれていただけに、何とも言えないらしい。

 

「ともあれ、行くぞ。俺もいつまでも拠点を空けておく訳にはいかないし」

 

 その言葉に、クーデリアやフミタンも素直に頷くのだった。

 

 

 

 

 

「アクセル、一体どこに……クーデリア? フミタンも? 一体何でここに?」

 

 シャドウミラーの拠点となっている場所に戻ってくると、マーベルが不満そうに俺に向かって何かを言おうとしたものの、俺がクーデリアとフミタンを連れているのを見て驚きの表情を浮かべる。

 まさか、クーデリアとフミタンがここにいるというのは、予想外だったのだろう。

 

「会場であってな。俺達の応援に来てくれたらしいから、ここに連れてきた」

「……大丈夫なの?」

 

 マーベルが口にした大丈夫なのというのは、クーデリア達がここにいて大丈夫なのかという事だろう。

 何しろ、ノアキスの7月会議の帰り道に襲撃された件もある。

 また、今となっては革命の乙女として有名になった以上、誰が何を理由にちょっかいを出してきてもおかしくはない。

 マーベルもそれを心配しているのだろうが……

 

「俺達の拠点にいるのなら、取りあえず問題はないだろう。もし何かをしようとする奴がいても、ここでならやりにくいだろうし」

 

 そう言うが、だからといって完全に安心という訳ではないのも事実。

 何しろ、以前襲ってきた連中の正体については、今もまだ分かっていないのだから。

 しかも、車は横転させたが、それで死んでいないのは俺のステータスの撃破数を見れば明らかだった。

 ……こういう時、俺のステータスって便利だよな。

 相手が死んだかどうか、しっかりと確認出来るのだから。

 ともあれ、この拠点にいれば絶対に安全……とまでは言わないが、それでも他の場所にいるよりも安全なのは間違いない。

 

「一応言っておくけど、この拠点からは出ないようにな。俺達が模擬戦をやってる時に何かあっても、こっちでは対処するのが難しいし」

「ええ、分かりました。ここでなら、アクセル達の戦いを見る事が出来ますし」

 

 そうクーデリアが言ったのは、拠点には模擬戦を見られるように大型のモニタが用意されているからだろう。

 大会側にとっては、参加するチームのメンバーにはしっかりとフォローをするという事らしい。

 実際にはモニタではなく直接見た方がいいんだろうが、MWでの模擬戦という事を考えると、近くで見ていれば流れ弾とかで怪我をする、あるいは最悪死人が出る可能性もある。

 模擬戦で使われるのはペイント弾だが、生身の人間がペイント弾に当たれば普通に怪我をする程度の衝撃はある。

 そうである以上、基本的に生身で見るのは禁止されていた。

 中にはそれでも構わないという者もいるらしいが……大会の運営委員はそれを認めていないので、自己責任となる。

 これが地球……俺の知っている地球なら、自己責任とはいえ、それで死んだら大会の運営に支障が出たりするんだが、このオルフェンズ世界の火星は植民地で治安が良くないという事もあり、その辺については特に問題なかったりする。

 なので、自己責任ではあるが、モニタ越しではなく直接見るのも可能な訳だ。

 

「それで、アクセル。賭けはどうなったのですか?」

 

 俺とクーデリアが話をしていると、シーラがそう尋ねてくる。

 俺が賭けの受付を捜しに行ったのは、シーラから賭けについての情報を入手したからだったので、シーラとしてもその辺は気になっていたのだろう。

 

「ああ、問題なく賭けられた。とはいえ、賭けたのはシャドウミラーの勝利……全てに勝利して優勝をするという結果だけどな」

「それはまた……普通なら、無謀としか言えませんね」

「仕方がない。俺達が負けるのに賭けたら、それこそ八百長で勝手に負けるかもしれないんだし」

 

 勝つのはどうか分からないが、負けるのはそう難しい話ではない。

 なら、負けるのに賭ければ、まず勝利出来る。

 

「そうでしょうね。……とにかく、勝利に賭けたのなら問題はないでしょう。シャドウミラーの活動資金が増えるのは良い事ですから」

「ちょ……ちょっと待って下さい。その、賭けるって……」

 

 俺とシーラの言葉を聞いていたクーデリアだったが、そこで我に返ったのか、そう聞いてくる。

 クーデリアにしてみれば、今の話は色々と予想外だったのだろう。

 

「別におかしな話ではないだろう? これだけ大きな大会だ。賭けとかがあってもおかしくはない」

「いえ、それはそうですが……今の話を聞く限り、お小遣いを賭けるといった程度の話ではないのでしょう? 活動資金というくらいですから……」

 

 革命の乙女として名前が知られ、それによって火星の現状を変えようと活動しているクーデリアだ。

 そうなると、やっぱり活動資金とかそういうのについても詳しくなるのだろう。

 

「そうだな。結構な金額なのは間違いない」

 

 具体的な金額については、言わないでおく。

 とはいえ、クーデリアの隣にいるフミタンは何となく予想出来たようだが。

 クーデリアは、何だかんだとお嬢様育ちだ。

 そんなクーデリアの補佐をするフミタンだけに、こういうのにもある程度は詳しいのだろう。

 

「そんな金額……負けたら、どうするんですか?」

「負けないから問題ない」

「いえ、ですから……それでも、絶対ではないでしょう?」

 

 そう言ってくるクーデリアだが、その辺は仕方がないか。

 クーデリアは俺達が具体的にどのような力を持っているのか、分からない。

 それこそ俺が今までどれだけの戦いを潜り抜けてきたか。

 あるいは、マーベルが聖戦士としてどれだけの戦いを潜り抜けてきたか。

 そして、昌弘達がブルワーズにおいて使い捨てとして扱われながらも、生き延びてきた経験。

 それらの実績を考えれば、そう簡単に俺達が負けるとは思わない。

 もっとも、ヒューマンデブリとして使われていたのは、昌弘達だけじゃない。

 見た感じでは、阿頼耶識の手術を受けた者達もそれなりにいるみたいだし。

 そういう連中は、CGSと違って本気で優勝を狙っているのだろう。

 

「絶対だ」

 

 クーデリアに向かって、そう断言する。

 阿頼耶識の手術を受けた者達がいても、だからといって俺が負ける事はない。

 マーベルも十分な強さを持っている。

 ……最悪、本当に最悪、俺とマーベルだけで優勝を狙う事も出来るだろう。

 

「アクセル……」

「お嬢様」

「っ!? べ、別に何でもないわ。その……アクセルがそこまで自信満々なら、私もこれ以上は何も言いません。その言葉に相応しい強さを見せて下さい」

 

 何故か薄らと頬を赤くしたクーデリアだったが、フミタンの言葉で我に返ったらしく、慌ててそう言ってくる。

 何なんだろうな?

 そんな疑問を抱いていると……

 

「アクセル、そろそろ私達の順番のようよ。模擬戦の会場にMWを移動させるようにと指示が来たわ」

 

 マーベルの言葉でクーデリアの件は取りあえず置いておく。

 

「分かった。……話は聞いていたな。全員、模擬戦の会場まで移動するぞ。この大会、優勝するのは俺達だ。シャドウミラーの名前を知らしめるには、これ以上ない機会だという事を覚えておけ。それと賞品のMSも欲しいしな」

 

 その言葉に、シャドウミラーの面々はそれぞれ声を上げる。

 どうやら士気を上げる事には成功したらしい。

 それを確認してから、俺は自分のMW……パーソナルカラーで赤く塗られているMWに向かう。

 

「アクセル!」

 

 そんな俺の背中に掛けられる声。

 振り向くと、そこにはクーデリアがいてこっちをじっと見ていた

 

「その……頑張って下さいね」

「任せろ。さっきも言ったが、俺の勝利は絶対だ。何なら、クーデリアも賭けてきてもいいぞ?」

「それは止めておきます」

「だろうな」

 

 革命の乙女として名高いクーデリアだ。

 そんなクーデリアが賭けをしていると知られれば、それはそれで面倒なことになるだろう。

 まぁ、そういうゴシップの効果がどこまであるのかは分からないが。

 ただ、独立運動を苦く思っている者達にとっては、クーデリアを責める理由の1つにはなるだろう。

 

「じゃあ、俺達の応援をしておいてくれ」

 

 そう言い、俺はMWに乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

 模擬戦の舞台となる場所は、まさに荒野と呼ぶべき場所だ。

 聞いた話によると、決勝だけは廃墟となった場所で行われるらしいが、それ以外は全て荒野で行われるらしい。

 ただ、荒野と一口に言ってもそこには多くの違いがある。

 ずっと同じ場所でやっていれば、ペイント弾の付着であったり、その場所に慣れたり、あるいは何らかの罠を前もって仕掛けるといったイカサマをしたりする者もいる。

 何しろこれは、正々堂々と行われる競技という訳ではなく、あくまでもMWを使っている会社が行うトーナメントなのだから。

 しかも勝利すればMSを2機貰えるのだ。

 MSの価値を思えば、勝利する為にどのような手段を使ってもおかしくはない。

 そんな訳で、この大会では荒野を使うが、その荒野は幾つかある。

 そんな場所の1つに、現在シャドウミラーは来ていた。

 

「全機、聞いてるな。まずはこの1回戦だ。1回戦では、まずトーナメントの空気に慣れるのを優先しろ。子供組は生きるか死ぬかの戦いではないというのを忘れるな。大人組は、まずMWでの戦いに慣れろ」

『あら、アクセル。それじゃあ、私はどうすればいいの?』

「マーベルは……まぁ、好きなように行動すればいい。お前なら、特に何も言わなくても、しっかりと結果を出すだろ。……ともあれ、まずは俺が指揮をする。こっちが危なくなったら、俺が出るから心配はするな」

 

 俺が指揮を執るというのも、珍しいよな。

 シャドウミラーでの戦いの時は、基本的に指揮はコーネリアに任せているし。

 だからこそ、コーネリアは実働班を率いるという立場にいるのだから。

 ……まぁ、以前乗っていたグロウセイヴァーにしろ、今のニーズヘッグにしろ、機体性能が突出しすぎているからというのが、その理由だったりするが。

 後は俺が魔力や気を使った攻撃でないとダメージを受けないというのもあるが。

 

『模擬戦……開始』

 

 ちょうどそのタイミングで、模擬戦開始の合図がくるのだった。

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