転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3863話

「マーベルは大人組を率いて右側の岩のある方に向かえ。子供組はマーベル達が行動してから30秒経過後に左側から回り込め」

 

 模擬戦が始まったと同時、俺はそう命令しながら後方で待機する。

 本来なら指示をしながら敵に向かって突っ込むといったことをしてもいいのだが、折角の大規模な模擬戦だけに、訓練としての効果も期待したい。

 勿論、優勝賞品のユーゴー2機も入手はしたいので、そういう意味では本当にピンチになったら参戦するが。

 マーベルを大人組につけたのは、大人組は阿頼耶識ではなく普通の操縦システムでの操縦なので、そのフォローの為だ。

 ……それ以外にも、マーベルもガルム・ロディのようなMSを使った戦いなら昌弘達に勝るだけの実力を持っているが、MWでの模擬戦となると、やはりまだ慣れていない。

 勿論、マーベルや大人組も、時間があればMWに乗って操縦訓練をしていたので、操縦が下手だという訳ではないのだが。

 

『敵と遭遇。戦闘に入るわ』

「敵の数は何機だ?」

『4機ね。こっちと同数よ』

「それはまた。そうなると、残り6機はどう出るか。俺達と同じように分散しているというのが分かりやすいが……」

『とにかく、倒すわね』

「任せる」

 

 まさかこっちと同じ機数で遭遇するとは思わなかった。

 とはいえ、これは別に向こうがこういうのを狙っていた訳ではなく、偶然こういう形になった事だろう。

 

『アクセルさん、敵と遭遇、数は2機。撃破しました!』

 

 続けて昌弘からの報告。

 早いな。

 そうも思ったが、エース級……とまではいかないが、それなりの操縦技術を持つ昌弘達が5機で相手が2機だ。瞬殺されるのはおかしくないか。

 けど……そうなると、相手は阿頼耶識ではないのか?

 俺達の拠点で阿頼耶識を使える子供達を見たが、別に全ての組織で阿頼耶識を使っている訳ではない。

 いや、そもそもの話、このオルフェンズ世界において阿頼耶識……に限らず、機械の身体とかそういうのは忌むべき存在と認識されている。

 火星は地球から遠く離れた圏外圏なので、その辺の忌避感も地球程に強くはない。

 だが、それでも忌避感はあるのだ。

 実際、CGSでも阿頼耶識の手術を受けた者達を宇宙ネズミと呼んで馬鹿にしているし。

 壱番組や弐番組が参番組を粗末に扱っているのは、その辺も理由があるのだろう。

 また、ブルワーズでもそうだった。

 それこそCGSよりも酷い扱いを受けていたくらいだ。

 そう考えれば、火星においても阿頼耶識を使うのはやはり好まれないだろう。

 好まれないが、それでも有用である以上は嫌悪感を我慢して使っているといったところか。

 だが、その嫌悪感が我慢出来なければどうなるのか。

 当然ながら、阿頼耶識を使わない。

 

「子供組は、そのまま進め。敵の数が多いようなら一度退け」

『敵の数が多くても、この程度の実力なら対処出来ますけど』

 

 昌弘のこの言葉は、遭遇した敵をあっさりと撃破したからというのが大きいのだろう。

 少し積極的というか、無謀なようにも感じるが……ブルワーズでMSのパイロットとして何度も戦いを潜り抜けてきた昌弘達だ。

 倒せるというのなら、任せてみてもいいか。

 それにこれはどのみち模擬戦だ。

 そうである以上、失敗しても死ぬような事はない……訳ではないが、その可能性はかなり低いのも事実。

 なら、そのくらいの挑戦はさせてやってもいいのかもしれない。

 

「分かった。なら、やってみろ。ただし、本当にどうしようもなくなったら援軍の要請を忘れるな」

『ありがとうございます!』

 

 嬉しそうに言い、通信が切れる。

 ……もし子供組が大きな被害を受けても、最悪俺とマーベルがいれば優勝は出来ると考えれば、どうとでもなるか。

 そんな風に思いつつ、俺は周囲の様子を探る。

 見た感じ、特に問題があるようには思えず……

 

『アクセル、敵の本隊を発見。どうすればいいのか迷ってるみたいよ?』

 

 マーベルからの通信が入る。

 なるほど。向こうにしてみれば、まさかこっちがそこまで強いとは思わなかった訳か。

 何しろ、シャドウミラーという聞いた事のないPMCが相手だ。

 普通に考えれば、出来たばかりのPMCである以上、そこまで強くないと思うのはそうおかしな話ではない。

 

「分かった。なら、子供組とタイミングを合わせて攻撃してくれ。これは初戦だ。時間を掛けてはいられないだろう」

『分かったわ。……あ、ちょっと待って。2機がアクセルのいる方に向かったけど、どうする? こっちで処理しようか?』

 

 相談している間に向こうも動きを見せたらしい。

 どうするか。

 一瞬迷ったが、マーベルの言葉を否定する。

 

「いや、ここは俺がやろう。パーソナルカラーのMWに乗ってるんだ。この模擬戦を見ている者達に、こっちの実力を見せておけばいい」

『……いいの? 賭けてるんでしょう? ここでアクセルが実力を見せたら、オッズの問題で儲けが少なくなるかもしれないわよ?』

「誤差だろ、この程度」

 

 優勝するまで、その全てをシャドウミラーの優勝に賭けているのだ。

 そうである以上、ここで俺が多少活躍してもオッズの変動はそこまで大きくはないだろう。

 それよりは、シャドウミラーの……そしてそれを率いる俺の名前を上げておいた方が、この先も色々と利益は大きいだろうと判断した。

 そんな訳で、俺はこちらに向かってくるというMWの方に向かって進む。

 模擬戦のフィールドはそこまで広い訳ではないので、すぐにこちらに向かってくるMWの姿を確認出来た。

 そしてこちらが確認出来たという事は、向こうからも確認出来る訳で……先手必勝とばかりに弾丸を撃ってくる。

 挨拶代わりの一撃なのか、そこまで狙いは正確ではない。

 MWを動かし、弾丸の雨を縫うようにして回避しながら距離を縮める。

 俺のMWが通りすぎた後の地面に、ペイント弾が命中してペイントを撒き散らかす。

 自分達の攻撃が命中しないのに動揺したのか、2機のMWの動きが鈍る。

 向こうにしてみれば、2対1である以上は自分達の方が有利だと思っていたのだろう。

 だが、実際には銃弾の雨の中を全く被弾せずに近付いてくる俺の存在が理解出来なかった、と。

 伊達でパーソナルカラーに塗ってる訳じゃないんだよ。

 そう思いつつ、俺は距離を詰め……その2機とすれ違うように移動しながら、マシンガンを2発撃つ。

 どちらもがMWの動力炉……水素エンジンのある場所に命中して撃墜判定となるのだった。

 

 

 

 

 

「さて、まずは1回戦突破だな」

 

 模擬戦が終わって拠点に戻ってくると、MWから降りてそう言う。

 

「こっちにも被害はなかったし、上々の滑り出しね」

 

 俺と同じくMWから降りたマーベルが、笑みを浮かべてそう言う。

 俺達の中で一番危険だったのは、やはり阿頼耶識が使える訳でもない大人組だ。

 その大人組も、マーベルのお陰で特に被害らしい被害……被弾とか、そういうのはない。

 この辺は1回戦の結果としてはマーベルが言うように上々の結果だろう。

 

「随分と弱かったけど、1回戦の相手は弱小の会社だったのか?」

「会社の規模だけで考えれば、私達に言われるような事じゃないと思うけど。……それに、曲がりなりにもMWを10機用意出来たんだから、それなりの規模なのは間違いないんじゃない?」

「どうせなら、もっと強い敵と戦いたかったな」

 

 そう思うのは、やはり強敵と戦った方が訓練としては大きな意味を持つし、何より賭けのオッズの問題がある。

 これが2回戦、3回戦といったように上がっていけば、シャドウミラーの実力も理解されるので、オッズはどうしても下がっていくだろう。

 だが、1回戦ではまだ誰もシャドウミラーの実力を知らない。

 敢えてシャドウミラーの実力を知ってるとなると、CGSくらいか?

 ノブリスも知ってるが、さすがにノブリスほどの大物がここで賭けに参加したりはしないだろうし。

 そんな訳で、まだこちらの実力を誰も知らない1回戦。

 そこで戦う相手が強敵であれば、オッズは余計に俺達が大きくなっていた筈だった。

 しかし、実際に戦ったのはそこまで強くない相手。

 まぁ、それでもオッズはそれなりに大きくなっていたとは思うけど。

 

「おめでとうございます、アクセル。凄かったですよ」

 

 マーベルと話していると、クーデリアがやってきてそう言ってくる。

 とはいえ、クーデリアは革命の乙女と呼ばれてはいるものの、本人は決して争いを好んではいない。

 それでも今回は本物の……命懸けの戦いという訳ではなく、あくまでもルールのある模擬戦という事、そこまで嫌そうな様子ではない。

 

「喜んで貰えて何よりだよ。とはいえ、まだ1回戦だ。この後もまだかなりの戦いがあるのを考えると、気を引き締めないとな。……整備を頼む」

 

 近くを通りかかったメカニックにそう言っておく。

 今回は特に機体に負担になるような動きはしていないが、それでも整備をしておくに越した事はない。

 メカニックは俺の言葉に頷き、機体の整備を始める。

 

「それにしても、何故アクセルのMWだけ赤いのでしょう?」

「いわゆる、パーソナルカラーだな。俺がここにいるぞと、周囲に知らせる為のものだ」

「何故そのようなことを? 目立つと狙われるのでは?」

「だろうな。それは間違いない。けど、俺が狙われるということは、俺以外に向けられる攻撃が少なくなるという事でもある。そうなれば、こっちが有利になるだろう?」

「……アクセルが集中して狙われている時点で、有利だとは言えないと思いますが」

「俺に攻撃が集中しても、当たらなければいいだけだ」

「当たらなければって……それでも、多くの者に狙われては危ないのでは?」

「その辺は俺の技量によるな。そして俺の技量は……そうだな、これはちょっと自慢になってしまうけど、かなり高い」

 

 一応これでも遠慮しての表現なんだよな。

 PPやレベルアップによって高められた俺の操縦技術は、それこそ一般人に比べると圧倒的なまでに差があるのだから。

 

「そうなのですか?」

「ああ。それこそ、俺ならMWでMSに勝てるくらいにはな」

「そんな事が……?」

 

 この言葉は、クーデリアではなくフミタン。

 軍事関係についてはそこまで詳しくないクーデリアと違い、フミタンはそれなりにMSやMWについての知識も持っているのだろう。

 そしてMSの頑丈さを理解しているからこそ、俺の言葉が素直に信じられなかったらしい。

 もっとも、精神コマンドを使えばナノラミネートアーマーとか、普通に無視出来るのだが。

 それについては言えないので、黙っておくが。

 

「やろうと思えば出来ると思う。実際に試してないから、絶対とは言えないけど」

 

 MWとMSの戦力差を考えれば、俺の言葉は到底信じられなくてもおかしくはない。

 だが、それでも恐らくは問題ないと思っているが。

 

「そんな訳で、俺を倒すどころか、攻撃を命中させるのも、そう簡単ではない訳だ」

「……それが本当なら信じられるのだけど」

 

 心配そうに言うクーデリア。

 フミタンも、俺の言葉がどこまで事実なのか分からないといった様子を見せている。

 一応先程の模擬戦でも、2機のMWを相手に勝利したんだが。

 あの程度では駄目だという事なのか。

 

「とにかく、これからの戦いを見ていれば、俺の言ってる事が間違いではないと分かる筈だ」

 

 まだ1回戦。

 そうなると、優勝するまでは結構な数の模擬戦を繰り広げる必要がある。

 だからこそ模擬戦を進めるに連れてクーデリアやフミタンも俺の戦いについて心配しなくなる……と思う。

 

「アクセルがそこまで自信満々で言うのなら、取りあえず次の模擬戦を楽しみにさせて貰うわね」

「そうしてくれ。クーデリアが応援してくれれば、俺も勝利を求められるしな」

「な……い、いきなり何を言うんですか!」

 

 別に顔を赤くして怒らなくてもいいと思うんだが。

 実際、応援をされるとそれに応えたいと思うのは、そんなにおかしな話ではない。

 クーデリアはあまりそういう機会がないから、少し分かりにくいのかもしれないな。

 

「……アクセル、何か妙な事を考えてませんか?」

「いや、何でもない。とにかく、これからの戦いも勝利して優勝するから、見ていてくれ」

 

 そう言う俺の言葉に、クーデリアは少し考えた後で頷くのだった。

 

「ちょ……アクセルさん! 大変です!」

 

 クーデリアやフミタンと話していると、大人組の1人が引き攣った表情を浮かべつつ走ってくる。

 

「何があった?」

 

 考えられる可能性は幾つかあるが、その中でもやはり大きな問題となるのは、賭けの関係か?

 1回戦の勝利で俺達の強さを理解し、だからこそ優勝させないように何らかの邪魔をしてきたとか。

 ノブリスが後ろ盾にいるというのは、向こうにも既に知らせてある以上、そう簡単にそういう事をするとは思えない。

 思えないが……もしかしたら、俺が予想していた以上にオッズが俺達に有利、つまり高くなっていて、それを見た賭けの胴元が何かを考えたのかもしれないな。

 そう思っていたのだが……

 

「タントテンポが出場してます!」

 

 大人組が口にしたのはそういう言葉だった。

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