転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3864話

 タントテンポというのが何なのか分からなかったが、詳しく話を聞いたところ、月にある裏組織……一種のマフィアやギャングといったような感じらしい。

 月というのはアリアンロッド艦隊という、ギャラルホルンの中でも最精鋭と呼ばれている戦力の拠点となってる場所なんだが……まぁ、そういう場所であってもどうにか出来るだけの実力、あるいは世渡りの上手さとか、そういうのがあるのだろう。

 月の組織が何故火星に?

 そうも思ったが、輸送とかそういうのもやってるらしい。

 つまり、その関係で火星に来たところ、ちょうどそのタイミングでトーナメントが開かれるという事で参加したのか?

 いや、締め切りそのものは少し前だったから、飛び入りって訳ではないのかもしれないが。

 ともあれ、タントテンポという組織が大会に出場しているというのは、かなり大きな知らせだったらしい。

 というか、正式にはタントテンポではなく、そのフロント企業というか、息の掛かった企業が参加していたんだが、それについては問題がなかった。

 火星でも普通に活動している組織らしいし。

 だが、タントテンポの本部……月からやって来た連中が、MWの模擬戦に興味を持って、それで半ば割り込む形で出場したとか。

 元々参加を予定していた企業にしてみれば、本部から来た相手である以上、断る事も出来なかったらしい。

 そして大会に参加していたどこかの誰かが、タントテンポの組織の人間が参加しているという事で、その件が知られたとか。

 ちなみに大会的には、特に問題はないらしい。

 ……本当に規約的に問題がなかったのか、タントテンポという組織の大きさに忖度したのか、あるいは参加したタントテンポの者達が賄賂でも送ったのか。

 その辺は俺にも分からなかったが。

 とはいえ、俺にしてみればそんなのは関係ない。

 トーナメントの位置的に、決勝までいかなければタントテンポと戦わないし。

 ……そんな訳でトーナメントを勝ち進み……

 

「いよいよ決勝か」

『そうね。5人残ったのは……まぁ、いい方じゃない?』

 

 マーベルの通信に、途中で失格になった者達を思い浮かべる。

 大会が進むに連れて、やはりと言うべきか大人組から最初に脱落していった。

 だが、阿頼耶識を使える子供組から脱落者が出たのは、準決勝での相手が汚い真似をした為だ。

 簡単に言えば、暇な時間に屋台とかを楽しんでいた子供組だったが、その時に準決勝の相手が子供組の存在に気が付き……そして自分達は大人。相手は子どもとなればやる事は決まっている。

 ましてや、その会社はかなり乱暴な者が揃っており、色々ときな臭い噂を持つ者達でもあったのだから、尚更だ

 そして子供組は、阿頼耶識があってもMWやMSがなければ、結局ただの子供でしかない。

 ブルワーズにいた頃から、自分が生き残る為に鍛えてはいたし、昭弘から色々と話を聞いて鍛えてもいた。

 だが、それでも相手はMWとかを使った荒事をこなすような者達だ。

 死なないのは勿論、骨折もなく、打撲程度だったのは幸運だったのだろう。

 阿頼耶識というのは、ある意味でT-LINKシステムに似たような感じで動かすらしい。

 それはつまり、怪我をしていればそれが機体の動きにでも出る訳で……結果として、子供組の中で何人か撃破扱いになってしまった。

 もっとも、当然だがそんな感じで喧嘩を売られてこっちも黙っている筈がない。

 模擬戦はペイント弾を使った戦いだが、だからといって相手にダメージを与える方法はある。

 相手の動きをコントロールし、それによってバランスを崩させるなり、転ばせるなりさせればいい。

 普通なら無理でも、戦場での経験とPPを使ったステータスによって俺の操縦技術は超一流と呼んでもいい程のものにまでなっており……まぁ、結果として俺達の準決勝の相手は、大怪我を負う事になった訳だ。

 ちなみに白炎を使ったりとか、影槍を使ったりとか、そういう事は一切していない。

 普通にMWを操縦しての模擬戦だったし、向こうが操縦ミスをして怪我をしたという流れなので、当然ながら俺に後ろめたい事はない。

 ましてや、俺達が準決勝を勝った……というより、相手が負けた事で多くの者が喜んでいるのを見れば、俺は何も悪くない。

 そんな訳で、現在は決勝な訳だ。

 決勝は廃墟となった街を使った模擬戦。

 ちなみに決勝の相手のタントテンポも、決勝までで3機減って残り7機となっている。

 意外な事に……本当に意外な事に、タントテンポという組織の力を使うでもなく、普通に実力で勝ち上がってきたらしい。

 タントテンポの模擬戦をモニタで見た限り、そういう風に見えた。

 これはちょっと意外だったのも事実。

 準決勝の相手が相手だったので、てっきり組織の力を使って勝ち上がってきたのかもしれないと思ったが。

 もっとも、結局タントテンポの相手と話したりはしていないので、向こうがどのような考えを持ってるのかは分からないが。

 もしかしたら、タントテンポが遭遇した中にも俺達のように妨害工作があっても勝ち残るような者達がいないとも限らないのだから。

 そんな風に思っていると、タントテンポ側のMWが1機、俺達の側に近付いてくる。

 模擬戦の開始はまだである以上、いきなり攻撃を仕掛けて来るとか、そういう事ではない筈だ。

 となると……このパターンだと、俺達とちょっと話をしたいといったところか?

 そんな訳で、俺も出る。

 

『ちょっと、アクセル。大丈夫なの?』

 

 マーベルの心配そうな声は、やはり準決勝の一件があったからだろう。

 

「心配するな。既にこの街中の光景は映像として配信されている筈だ。そうである以上、ここで何かをやったりとかは出来ないだろう」

 

 あるいはそれを承知の上でも何かを仕掛けて来るといった可能性もあるかもしれないが。

 ただ、それはそれで面白い。

 とはいえ、タントテンポはそれなりに歴史のある組織らしいし、面子とかそういうのを大事にするらしい。

 なら、こういう場所でわざわざ見え見えの何かを仕掛けて来たりはしないだろう。

 そんな訳で、俺はマーベルにそこで待っているように言い、自分のMWで前に出る。

 すると、こっちに近付いてきていたMWが動きを止め……へぇ。

 扉を開き、中から男が姿を現す。

 まさかこの状況でMWから降りるとは思わなかったな。

 降りてきたのは、金髪の優男……に見えるが、その身体がしっかりと鍛えられているのは見れば分かる。

 何より、暴力の雰囲気を自然と身に纏っている。

 恐らく、タントテンポの中でもリーダー格の存在なのだろう。

 そんな相手がこうして姿を見せた以上、こちらとしてもMW越しに話をする訳にはいかない。

 いや、普通ならそうしてもおかしくはないだろうが、俺がこの大会に出場してるのは、MSを目当てにしてというのもあるが、同時にシャドウミラーの名前を広く知らしめる為というのもある。

 だからこそ、こういう場面で怯えていると周囲に思われるようなことは出来なかった。

 そうなれば容易に動かせる相手と認識されて、妙な連中が寄ってこないとも限らないし。

 そんな訳で、赤く塗られたMWから降りる。

 すると向こうの男は驚きの表情を浮かべる。

 まさか、こうもあっさりと俺が降りてくるとは思わなかったのだろう。

 

「さて、わざわざ模擬戦開始前にこうしてやってきたんだ。何か理由があってのことだろう?」

「……ああ。シャドウミラーとかいったか? 俺も火星にはそれなりに来ることが多いが、初めて聞く名前だったからな。しかも、腕利きがここまで揃ってるのも珍しい」

 

 そう言い、笑みを浮かべる男。

 好意的でありながら、好戦的。

 そんな笑みを浮かべた男に俺は好感を持つ。

 これまでのタントテンポの様子からそれはないと思っていたが、それでも万が一にもタントテンポに優勝を譲れとか言ってきたら、どうするべきかと思ったからだ。

 勿論そんな事があっても優勝を譲る気はなかった。

 なかったが、それでも色々と面倒な事になっていたのは間違いない。

 そのような心配をしなくてもよくなったのは、俺にとっても決して悪いことではなかったのだから。

 

「そう言って貰えるとシャドウミラーを率いる立場として、嬉しいな」

「やっぱりお前がシャドウミラーを率いてるのか。……ああ、詳しい話をする前に自己紹介をしておく。俺はジャンマルコ・サレルノだ」

「アクセル・アルマーだ」

 

 そうして自己紹介を終えると、ジャンマルコは俺を見て、獰猛な笑みを浮かべる。

 

「模擬戦でお前のこれまでの戦い、見せて貰ったぞ。まさか、あそこまで腕の立つ奴が火星にいるとは思わなかった」

「そう言って貰えると、俺も頑張った甲斐があったな」

「……お前、MSは? 阿頼耶識もなしにあれだけMWを使えるのなら、それこそMSを使っても強いんじゃないか?」

「それは否定しない。ただ、俺のMSは宇宙用でな。地上では使えない」

 

 あるいは地上用に改修すればいいのかもしれないが、生憎とシャドウミラーのメカニックはそこまでの腕はない。

 それにガンダム・グシオンがどういう形のMSなのかを考えれば、もし地上用に改修しても地上で使うのは……うん。難しいと思う。

 重装甲なのはいいが、それはあくまでも宇宙だからこそ使えるのだ。

 もし地上で使おうとしたら、それこそろくに動けないと思える。

 

「ちっ、そうなのか。それなら、どうだ? この大会が終わったら宇宙で俺と模擬戦をしないか?」

「お前と……?」

 

 最近はずっと地上にいたし、宇宙に上がったのもテイワズとの取引の時で、ガンダム・グシオンを使ったりはしていなかった。

 そういう意味では、操縦訓練的な意味で模擬戦はやってもいいんだが。

 

「そうだな。なら、これから行われる決勝でお前達が勝ったら、MSの模擬戦を引き受けてもいい」

「へぇ……優勝を譲ったらとかじゃないんだな」

 

 興味深げな視線を俺に向けるジャンマルコ。

 まさか、今のようなことを言われるとは思っていなかったらしい。

 

「当然だろう。そんな八百長で手に入れた勝利に何の意味がある? そもそも、俺達シャドウミラーがこの大会に参加したのは、優勝賞品のMSが欲しかったのもあるが、名前を知らしめるのが目的だ」

「MSって……ユーゴーだぞ? 別に悪いMSじゃないけど、それでもそこまでして欲しがる物か?」

「宇宙用のMSはあるけど、地上用のMSはないんだよ。何かあった時の為に、地上用のMSを入手しておくに越した事はない」

「革命の乙女か」

「……月の組織にしては、火星の情報にも詳しいようだな」

「はんっ、あれだけ大々的に扱っておいて、その情報を入手出来ないと思ってるのか?」

「ああ、そう言えば一応名目はタントテンポじゃなくて、タントテンポのフロント企業だったんだな。そっちからの情報か」

「そういう事だ。……もっとも、火星では革命の乙女はかなりの人気で、TVに出る事も多い。別に意図的に情報収集をしなくても、普通にTVを見ていればその辺についての情報は入手出来るけどな」

「うん。まぁ、それは否定しない」

 

 クーデリアの名前は、俺が当初予想した以上に急速に広がっていた。

 一種、熱狂的と呼ぶに相応しいくらい、クーデリアに心酔してる者が多いんだよな。

 正直なところ、それはどうかと思わないでもないんだが……まぁ、そういうものだと納得するしかないのも事実。

 とはいえ、俺がノアキスの7月会議でクーデリアの護衛をしたというのは、そこまで詳しく知られている訳ではないのも事実。

 勿論、警備業界の者達にはノブリスとの関係もあって知られているのかもしれないが。

 

「それで、ユーゴーが欲しい訳だ。……いや、そうだな。もしこの決勝でお前が勝っても、俺とMSの模擬戦をやって勝利したら、ゲイレールを1機やるよ。どうだ?」

「それはまた……いいのか?」

 

 ゲイレールというのは、現在ギャラルホルンで使われているグレイズの1世代前のMSだ。

 その為、現在ギャラルホルンで使われているグレイズと比べると性能は劣るものの、それでもユーゴーとかと比べると性能は上だ。

 

「勿論、構わないさ。俺はタントテンポの中でもそれなりの地位にいる。ゲイレールの1機程度なら、何とかなる」

 

 そう断言するジャンマルコ。

 タントテンポがこの大会に参加していると聞いてから集めた情報によると、タントテンポというのはそこまで大きな影響力を持つ組織じゃなかった筈なんだが。

 木星の拠点を持つテイワズと違い、月はギャラルホルンの中でも最精鋭として名高いアリアンロッド艦隊の本拠地の筈だし。

 そんな場所に本拠地のあるタントテンポが、そこまで高い影響力を持つとは……いやまぁ、ジャンマルコがタントテンポの中でも高い地位にいるのなら、あるいは?

 

「どうする? ここまで条件を揃えたんだ。逃げるなんて事はしないよな?」

「そのゲイレールというのは、地上でも使えるんだよな?」

「ああ、勿論」

「分かった。なら引き受けよう」

 

 俺はジャンマルコからの挑戦を了承するのだった。

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