転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3867話

『じゃあな』

「ああ。エイハブ・リアクターの取引の件はよろしく頼む」

『おう。任せろ。もっとも、うちはアリアンロッド艦隊が近くにいるから、あまり派手な事は出来ないがな』

 

 そう言い、ジャンマルコからの通信が切れる。

 約束通り模擬戦が終了した後、ゲイレールを俺達に譲渡すると、ジャンマルコはこのまま月に戻るらしい。

 本来ならもう少し余裕があったらしいが、月の方で何らかのトラブルがあったって話だ。

 それで急遽月に戻る事にしたらしいが……よくその状況で俺と模擬戦をやろうと思ったな。

 月でトラブルがあったっていうのは、朝の時点でもう知っていたらしい。

 なのに、それでもこうして模擬戦を行ったのは……それだけジャンマルコは俺と模擬戦をやりたかったのだろう。

 その辺には、昨日のMWの大会での勝敗も関わっているのかもしれないが。

 

「さて、じゃあ戻るか、ユーゴーが届けば、これでMSは3機。PMCとしても十分活動出来るようになる」

「そうですね。ですが、そうなるとこれからどこから依頼を受ける形になるのでしょう?」

 

 副官のその言葉に、少し考えてから口を開く。

 

「取りあえず、昨日の大会で優勝した結果MWを使った戦闘では強いと知られた筈だ。そうなると、そこから依頼をしたいと思う奴もいるだろう」

 

 CGSのように、本当に実力のある者達を出場させなかった。

 MWよりもMSを重視している。

 そんな理由によって、あの大会で優勝したから火星で最も強い……とは思わない。

 だが、それでも1番ではなくても上位に位置するとは思ってくれただろう。

 だからこそ、それを考えれば俺達に依頼したいと思う者もいる筈だった。

 そう説明すると、副官は納得した様子を見せる。

 そして俺達は無事に火星に戻るのだった。

 

 

 

 

 

「アクセルさん、MS来ましたよ!」

「……ようやくか」

 

 ジャンマルコとの模擬戦が終わってから、10日程。

 ようやくMWの大会で優勝した賞品のMSが届いたらしい。

 ゲイレールはジャンマルコに勝利したその場で入手出来たのに対し、ユーゴー2機は俺が予想した以上に遅い到着だった。

 多分だが、大会の主催者がどうにかして俺達にMSを渡さなくてもいいようにしようと考えていた……そんな風に思うのは、俺の気のせいという訳でもないと思う。

 ただ、ちょっと調べればシャドウミラーの後ろにノブリスがいるのは分かる。

 それによって、MSを渡さないという選択肢はなかったのだろう。

 賭けの一件と同じような結論になった……といったところか。

 ともあれ、MSとなると高級品だ。

 それを受け取る以上、俺が直接渡してきた連中を出迎える必要があるのは間違いなかった。

 そんな訳で、俺は拠点の外に出ると……そこにはMS運搬用のトレーラーが2台あり、どちらもその荷台にはユーゴーがそれぞれ1機ずつあった。

 

「えっと、貴方がシャドウミラーの代表でしょうか?」

 

 ユーゴーの様子を見ていると、そんな風に声を掛けられる。

 声のした方に視線を向けると、何故か気の弱そうな男が1人。

 えっと……?

 てっきりもっと居丈高な奴が来るのかと思っていたんだが。

 ちょっと予想外だったな。

 ここで俺と揉めて、それならMSを譲渡しない……そんな風に話を持っていくのではないかと、そう思ったのだが。

 

「ああ、シャドウミラーの社長をしているアクセルだ」

「よかった。では、あちらがシャドウミラーに譲渡されるMSとなります。……問題ないようでしたら、こちらにサインをお願いします」

 

 そう言い、書類を渡す男。

 俺はその書類を受け取ると、素早く目を通す。

 ユーゴーの動作確認は問題がない事は確認してあるが、それでも何か問題があった場合は2日以内に連絡をすれば、修理してくれるらしい。

 とはいえ、それはつまり3日目以降に問題が発生したら、それはこちらで修理しないといけないという事になるが。

 こういうのはよくあるけど、それでも2日以内というのは少し期間が短すぎないか?

 向こうにしてみれば、手っ取り早くこっちと縁を切りたいとか、そういう風に思ってもおかしくはないが。

 ともあれ、2日以内ならこれから乗ってすぐに確認すればいい。

 ゲイレールの方は、もうそれなりに動かして問題がないというのは確認されているので、ユーゴーの動作確認に集中出来るな。

 とはいえ、このユーゴーも阿頼耶識ではなく普通に操縦するタイプなんだよな。

 となると、これをチェックするのは俺とマーベルか。

 あるいはノブリスに連絡をして、コックピットの換装をして貰うか?

 実際、MWは半分が阿頼耶識対応のコックピットにして貰ったし。

 何よりMSを使うとなると……うん。

 2機は俺とマーベルで使うとして、残り1機は誰が使うかなんだよな。

 普通のコックピットなら大人組なんだろうが、阿頼耶識のパイロットがいる事を考えると、子供組を使わないのは勿体ない。

 そうだな。やっぱり後でノブリスに頼んでみるか。

 幸いな事に、MWの大会で優勝した事によってシャドウミラーの名前は広く知られる事になった

 ノブリスにとって、俺達はまだ利用価値がある以上、多分問題なく受け入れてくれる筈だ。

 駄目だったら……まぁ、その時はその時で、何か考えるとしよう。

 そんな風に考えつつ、サインを書いた書類を返す。

 

「ありがとうございます。それで、MSは向こうの格納庫に運べばいいでしょうか? それとも、ここで?」

「いや、格納庫に頼む」

 

 そう言うと男は頷き、格納庫にMSが運び入れられる。

 その後、軽く挨拶をすると大人しく男は立ち去った。

 うーん、もしかしたら何か企んでいるのかもしれないと思ったんだが。

 俺の予想が間違ったか?

 あるいは……

 

「メカニックはちょっと集まってくれ!」

 

 倉庫の中に俺の言葉が響く。

 メカニックの多くは入ってきたMSを見ていたので、俺の声が聞こえないという事はなく、すぐに全員が集まった。

 

「どうしました、アクセルさん?」

「見ての通り、この前のMWの大会の賞品としてMSが届いた。ただ、何か不具合があった場合は2日以内に連絡をしなければ、それ以降はこっちで対処する必要がある。そんな訳で、このMSに何かおかしなところはないか調べて欲しい」

「分かりました。では、早速調べてみましょう」

 

 メカニックは俺の言葉に即座に頷いて、他の者達を呼んで調べ始める。

 とはいえ、何人かは面倒臭そうな様子だったが。

 無理もないか。

 MSのおかしな場所を調べるとなると、それこそネジの1本まで……というのは少し大袈裟かもしれないが、とにかく詳細に調べる必要がある。

 そうである以上、かなり細かい場所まで調べる必要があるのは間違いない。

 こういう時、コバッタとか量産型Wがいれば便利なんだが……いない以上、ここで何を言っても仕方がない。

 結局のところ、俺が出来るのは……

 

「腹が減ったらこれでも食ってくれ」

 

 差し入れとして、あんパン、クリームパン、チョコパンといった菓子パンを纏めて置いておく。

 とはいえ、何気にこの手のパンは結構消耗が激しい。

 子供組とかが好きだから、仕方がないが。

 今はまだ、これまで買っておいたパンがあるので問題はないが……その点でも、出来るだけ早くホワイトスターに行きたいところだな。

 

「ありがとうございます!」

 

 俺が頼んだメカニックの男が、感謝の言葉を口にする。

 それを聞きながら、俺は軽く手を振って格納庫を出るのだった。

 

 

 

 

 

「そうか。問題がないのならいい」

 

 ユーゴーが来た翌日、調査を終えたメカニックの報告を受ける。

 

「それにしても、あの契約書を作った奴はうちに思うところがあるようですね。かなり無理をしないと、MS2機に異常がないかどうかを調べるのは難しかったですよ」

 

 そう言うメカニックは、かなり疲れた様子を見せていた。

 仕方がない。

 MWを使った訓練とかも普通に行われているのだ。

 その中でユーゴーを……しかも2機におかしな場所がないかどうかの確認をしたのだから。

 給料には少し色をつけた方がいいかもしれないな。

 

「そうか。取りあえずMSが普通に使えるというのは助かった。向こうも露骨に嫌がらせをしたりは出来なかったようだし」

「そうですね。まぁ、アクセルさんにそういう事をしたら、仕返しが怖かったんでしょう。何しろMWの大会で優勝するだけの実力者ですから」

「一応優勝したのはチームであって、俺だけじゃないんだが」

「それでも、アクセルさんの実力が突出していたのは間違いないでしょう。もの凄く目立っていましたし」

「それは否定しない」

 

 何しろ、基本的にMWというのは装甲に色を塗ったりはしないし。

 多分だけど、MSのナノラミネートアーマーの件があるから、エイハブ・リアクターではなく水素エンジンで動いているMWには色を塗るという認識がなかった……んだと思う。

 まさに、コロンブスの卵。

 いや、これはちょっと言いすぎか?

 あの大会に出たMWの中にはパーソナルカラーでMWを塗っている者はいなかったが、いるところにはいてもおかしくはないし。

 ともあれそんな訳で、俺の赤く塗られたMWはかなり目立った。

 ましてや、ただ目立っただけではなく、その実力も十分に発揮したし。

 1機だけで複数の敵を倒したり、タントテンポという大きな裏組織の幹部、ジャンマルコが乗っているMWを倒したりもしたのだから。

 ……もっとも、後者の件については俺の強さがどうこうではなく、タントテンポの幹部を相手に忖度しないで勝利したという事が目立ったのかもしれないが。

 俺にしてみれば、忖度をする必要はないと思っていた。

 何しろ、優勝すればMSが2機入手出来るのだから。

 また、それ以外にもジャンマルコがそれを望まなかったというのもある。

 

「あの大会で目立ったから、これからは依頼も多くなると思う。そうなると、MWや……場合によってはMSを使ったりする事になるかもしれないから、そのつもりでいてくれ」

 

 火星を植民地にしているのは、地球にある四つの国だ。

 地球から離れているだけに、それなりにトラブル……それこそ紛争に近い状況になる事も多くはない。

 それだけに、あの大会で力を見せつけたシャドウミラーを雇おうとする勢力が出てきてもおかしくはない。

 

「分かりました。……取りあえず、今日はゆっくりさせて貰います」

「そうしてくれ。疲れが溜まったら、それが理由で仕事にミスをする可能性もあるし」

 

 メカニックが疲れて仕事にミスをするというのは、一般的に考えて悪夢だ。

 俺の場合は物理攻撃が無効なので問題はないが、他の面々はそうでもない。

 普通に物理攻撃でダメージを受ける以上、MWやMSの整備にミスは許されなかった。

 

「そうですね。そういうのはメカニックとして絶対に許されませんし」

 

 そう言った男は、俺に一礼して部屋を出ていく。

 恐らく他のメカニック達に、しっかり休めと言いに行ったのだろう。

 それを見送ってから、俺はマーベルから提出された書類を見る。

 そこに書かれているのは、子供組、大人組の訓練の成果だ。

 誰もが真剣に訓練を続けているお陰で、今のところ全体的に能力……というか、記録が伸びている。

 以前俺が持っていた、相手のステータスを見る能力があれば、それで具体的にどのくらいの能力が伸びているのか分かりやすいし、場合によってはそれを公表する事で訓練をしている面々のやる気のアップにも繋がったのかもしれないのだが。

 人によっては多少違うかもしれないが、やはり自分の鍛えた分だけ直接能力値が上がるといったことになれば、それは非常に分かりやすい。

 実際に自分の目で数値が伸びているのを見られるだけに、やる気は出るだろう。

 勿論、中には自分の能力が思ったより上がらず、それでショックを受けたり落ち込んだりする者もいるかもしれないが……その辺については、仕方がない。

 というか、今の俺ではそういうのが出来ない以上、そんな事を考えても意味はないんだが。

 そんな風に考えていると、通信が入る。

 俺以外に誰もいないので、俺が通信に出ると……

 

『アクセル、少しよろしいでしょうか?』

 

 映像モニタには、真剣な表情のクーデリアの姿があった。

 クーデリアが連絡してくるのは、そう珍しい話ではない。

 だが、こうして真剣な表情を浮かべるとなると、ただいつも通りにちょっと連絡をして世間話をしようとしている訳ではないのだろう。

 

「何だ?」

『少し、相談したい事がありまして』

「何か問題があったのか?」

 

 革命の乙女として有名になったクーデリアだ。

 それこそ何らかのトラブルに巻き込まれても不思議ではない。

 あるいは、ストーカーの類か。

 

『実は……もしかしたらですが、アーブラウの代表とハーフメタルの取引について、話をすることが出来るかもしれません』

「……は? それは本当なのか?」

『はい。ノブリスさんが色々と手を打ってくれまして』

「あー……なるほど」

 

 そう頷くが、圏外圏ではなく地球のアーブラウの代表だろう?

 ノブリスでもコンタクトを取れるのか?

 そんな疑問を抱く俺に、クーデリアは言葉を続ける。

 

『それで、なんですが。……地球までの護衛を行ってもらえないでしょうか? ノブリスさんの紹介で、CGSにはその依頼を頼んでるのですか』

「それは、また……」

 

 予想外の言葉に、俺はすぐ返事をする事が出来なかった。

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