クーデリアから色々と聞いたところによると、CGSにクーデリアの護衛を頼むというのはノブリスの提案だったらしい。
もっとも、ノブリスが押し付けたとかそういう訳ではなく、ヒューマンデブリやスラム街出身の子供達から話を聞きたいといったような風に言ったところ、ノブリスが勧めたのがCGSだったらしい。
ヒューマンデブリというだけなら、シャドウミラーにもいる。
ただ、シャドウミラーのヒューマンデブリはブルワーズ時代ならともかく、今は普通に暮らしている。
それこそ、他の場所にいるヒューマンデブリ……例えばCGSにいるヒューマンデブリと比べると、比べものにならない程に優秀な者達が。
だからこそ、クーデリアは自分の知らない……本当の意味でのヒューマンデブリやスラム街の少年兵から話を聞きたかったのだろう。
まぁ、クーデリアの性格を思えば、それは悪くない。
他にも、現在高密度デブリ帯にエイハブ・リアクターを探しに行ってる為に、現状のシャドウミラーには使える軍艦がないというのも大きい。
いや、正確には強襲装甲艦を1隻残しているが、ブルワーズ時代からそのまま使ってるので、大規模なメンテの作業中なんだよな。
既に作業が始まっているので、それを中断するのは難しい。
CGSには強襲装甲艦が1隻あるらしいからというのも、ノブリスがCGSに護衛を頼むように言ったのも影響してるのだろう。
で、CGSだけでは不安というのもあって、こっちにも連絡をしてきた訳だ。
「ともあれ、詳細について聞かせて欲しい」
『分かりました。では、これからそちらに向かいますね』
「いや、別に通信で話してもいいんだが。というか、忙しいんじゃないのか?」
元々、クーデリアはノアキスの7月会議の一件から革命の乙女として有名になっていた。
だが、その上で今度はハーフメタルの貿易に関して地球のアーブラウに行くのだ。
そうなると、前もってやっておかないといけない事も多数あるだろう。
大学は飛び級でこの前卒業したって言ってたから、その辺は問題ではないと思うが、それでも大学の知り合いだったり、他にも色々な知り合いにきちんと話をする必要はある筈だ。
だからこそ、俺達に依頼をするにしろ、わざわざここにまで来なくても、通信で説明をすればいい。
そう思ったのだか、クーデリアは首を横に振る。
『いえ、この件は大事なことなので、しっかりとアクセルに話したいのです。それに……こうして通信ではなく、直接会って話したいという思いもありますので』
「直接会って?」
『あっ、いえ。その……シーラさんとは、ここ最近しっかりと話していなかったので、そういう意味です。変な勘違いはしないで下さい』
「……勘違い?」
『いえ、何でもありません。その、とにかく久しぶりですが、そちらに行きますね。いいですよね?』
「まぁ、クーデリアが来たいと言うのなら、別に反対するつもりはないけど」
クーデリアは子供組にも人気があるし。
何しろマーベルは戦闘訓練で自分達よりも強いので、子供達もどうしても気後れしてしまう。……単純に、マーベルの性格に生真面目な一面があるというのも大きいが。
そしてシーラは、持っている雰囲気が違う。
元女王……それもバイストン・ウェルという、半ばファンタジー世界の大国の女王だったのだから、それは仕方がないのだろうけど。
そんな2人と比べると、クーデリアは優しい。……あるいは甘いと表現してもいいのかもしれないが。
とにかくそんな訳で、子供達にも好かれているし、それが分かっているからか、クーデリアも子供達を好ましく思っている。
ああ、なるほど。クーデリアがここに来るのは、そういう意味で癒やしを求めてという一面があるのかもしれないな。
『では、すぐに行きますね』
そう言い、通信が切れるのだった。
「あれじゃない?」
「見覚えのある車だし、そうだろうな」
マーベルの言葉に、こちらに近付いてくる車……俺も以前乗った事がある車を見て、そう告げる。
フミタンが運転しているのは、恐らく間違いないだろう。
わざわざこうして外にまで出迎えに来たのは、特に何か理由があっての事ではない。
いや、クーデリアが地球に行く際の護衛についての話である以上、色々と聞いておきたいという思いがあったからなのは間違いないが。
それなら、別に無理に外に出て聞く必要はない。
それこそ建物の中で待っていれば、普通に聞けたのだ。
結局のところ、何となくというのが正しいのだろう。
あるいはどこかでクーデリアがまた誰かに襲われないかと思ったのかもしれない。
とはいえ、クーデリアも……というか、フミタンもその辺は分かっているらしく、あの車は完全な防弾になっている。
銃弾の類は勿論、ちょっとしたミサイル程度なら防ぐらしい。
MSとかは勿論、MWとかが相手であったりした場合は、かなり厳しいだろうけど。
そんな風に考えていると、俺達の側までやってきた車が停まる。
扉が開き、出て来たのはクーデリア。
運転席からは、フミタンが降りてくる。
「その……まさか、こうして出迎えてくれるとは思っていませんでした。もしかして、何かあったのですか?」
「いや、特に何かあった訳じゃない。ただ、何となく暇だったからというのが理由だな」
「それは……喜べばいいのかしら?」
「まぁ、好きにすればいいと思うぞ。それよりも、中に入ってくれ。早速色々と話を聞かせて欲しい」
「分かりました。その……フミタンは子供達の相手をしていても構わないでしょうか?」「お嬢様?」
クーデリアの言葉に、フミタンが意表を突かれたようにそう言う。
普段無表情のフミタンとは思えないくらい、驚きの表情を露わにしていた。
「いいのよ、フミタン。フミタンも子供達の事を気にしていたでしょう?」
「……分かりました。お嬢様がそう仰るのであれば。アクセル様、マーベル様、お嬢様をお願いします」
深々と頭を下げるフミタン。
フミタンにしてみれば、ここでクーデリアを俺達に預けても、特に問題はないと判断したのだろう。
実際、ここで何かクーデリアに問題が起きるとは考えられない。
あるいはクーデリアがここにいると知れば、ノアキスの7月会議の時に襲ってきた連中が襲撃してくるという可能性がない訳でもなかったが……いや、それはちょっと無理があるが。
とにかくそんな訳で、クーデリアがここにいても特に問題ないと判断されるのはそうおかしなことではなかった。
「話も決まった事だし、じゃあ、中に入るか」
俺の言葉に他の面々も頷き、中に入るのだった。
「それで、依頼の件についてだが……地球に行ってアーブラウの代表とハーフメタルの貿易の件で話し合いをする。その依頼には俺達シャドウミラーの他に、CGSも合同で行う。基本的にはそういう形でいいんだよな?」
「ええ。ここで私とアクセルの意見が一致すれば、すぐにでもCGSに連絡をする事になるわ。何か他に問題はある?」
「そうだな。問題というか、考えないといけないことは色々とあるが、それでも基本的にはそれで問題ないと思う」
個人的には、高密度デブリ帯に向かっている連中が戻ってくればシャドウミラーだけで対処が可能だと思う。
思うのだが……恐らく、原作の流れからしてCGSが地球に行くのは大きな意味を持つ筈だ。
絶対に原作を遵守しなければならない……とは、俺も思わない。
だが、CGSというか参番組のオルガが主人公である可能性が高い以上、そのオルガが地球に行く事によって、原作では何らかの大きな力を入手している可能性は十分にあった。
だからこそ、ここでCGSと行動を共にしないという選択肢はない。
……マルバは社長だからともかく、ハエダは実働部隊である壱番組を率いているので、そう考えるとハエダも一緒に行く事になるんだろうが、邪魔にしかならないような気がするが。
まぁ、クーデリアとの付き合いの深さであったり、戦力的な問題を考えると俺達が主導権を握る事になるのだろうから、そういう意味ではそこまで気にする必要はないのだが。
あ、でも移動は恐らくCGSが持っている強襲装甲艦を使ってになるから、CGS側にも結構な発言権はありそうだな。
ただ、高密度デブリ帯で俺達が派遣している2隻と合流すれば、その辺も変わるだろうが。
それにアリアドネのある航路を使えないとなると、当然ながらアリアドネのない場所……つまり、高密度デブリ帯を通る必要がある。
あそこは慣れていない者にとっては非常に通りにくく、道案内とかが必須になる。
しかし、シャドウミラーは元ブルワーズだ。
そしてブルワーズは高密度デブリ帯での海賊行為を生業にしていた。
ブルワーズからシャドウミラーになって、かなりの人数が消えたのは間違いない。
だが、それでも残っている面子の中には高密度デブリ帯の中を通る方法を知っている者がかなりいる。
そういう意味でも、CGSから主導権を握れるのは間違いなかった。
「とにかく、色々と打ち合わせは必要だしな。その辺についても話すとしよう」
俺の言葉に、クーデリアは素直に頷くのだった。
「で、この依頼についてだが……まずこれは言っておくが、正直なところ俺としては受けてもいいと思う」
「本当ですか!?」
まさかいきなり俺が依頼を受けるとは思わなかったのか、クーデリアが驚いた様子で言う。
実際、普通に考えればこの依頼はかなり難易度の高い依頼だ。
何しろ、革命の乙女と称されるクーデリアを地球まで連れていくのだ。
アーブラウの代表はクーデリアと交渉するのを受け入れたものの、ギャラルホルンにしてみればそれは決して受け入れられないだろう。
何しろ、もしここで火星の……それもアーブラウの植民地となっている場所だけがハーフメタルの貿易についての交渉に成功した場合、当然ながら他の国の植民地でも同じ待遇を求めて行動するのは間違いないのだから。
このオルフェンズ世界において、力を司るギャラルホルンにしてみれば、その件による混乱は決して許容出来ない。
何が何でも、クーデリアが地球に到着するのを止めようとするだろう。
つまり、ギャラルホルンと正面からぶつかる事になる訳だ。
そしてこの世界において、ギャラルホルンとぶつかるのは自殺行為に近い。
それこそ普通ならシャドウミラーというPMCが潰れる未来しか想像出来ないだろう。
「ああ、本当だ。ギャラルホルンと正面からぶつかるのは危険が大きいが、それでもメリットがない訳ではない」
何よりも大きなメリットは、ギャラルホルンと正式に敵対をすれば向こうの基地からMSを奪うという手段が解禁されるという事だろう。
今までは、ギャラルホルンのMSを奪った場合、動力炉となるエイハブ・リアクターから発せられるエイハブ・ウェーブの固有周波数によってそれがどこにあったエイハブ・リアクターなのかというのがすぐに知られるという心配から、俺が得意としているMSの奪取が出来なかった。
……まぁ、MSを奪ってもそれを空間倉庫に収納しておけばいいだけなので、やろうと思えば出来たのだろうが。
ただ、もしやるにしても、シャドウミラーというPMCが出来てからすぐそのような事が起きると、シャドウミラーが疑われる可能性がある。
そうならないようにする為には、数ヶ月……出来れば年単位の時間は欲しい。
さすがにそれだけの期間がすぎれば、俺達が怪しまれないだろうし。
もっとも、その辺を心配しなくてもいいような事態になっているのだが。
ともあれギャラルホルンと敵対する以上、手段を選ぶ必要はない。
そしてCGSと組むのも、この世界の原作の主人公……多分オルガなんだろうとは思うが、そのオルガを味方に引き入れる事で、戦力的にも大きな意味を持つ。
とはいえ、CGSが所有しているのは全てがMWだ。
ガンダム世界である以上、恐らくオルガもガンダムに乗るんだろうが……どこからガンダムを入手するんだろうな。
もしかして、実はブルワーズからガンダム・グシオンを奪って、それで初めてガンダムに乗るとか、そういう事はないよな?
……まぁ、その辺については後で考えた方がいいか。
今の状況ではどうしようもないし。
ともあれ、魔法という存在について知らない……知っていても、それこそ空想上のものでしかないと思っている者達にしてみれば、魔法を使ってギャラルホルンの基地に侵入し、MSを奪うというのは難しい話ではない。
とはいえ、影のゲートはあくまでも影が繋がっている場所でしか使えない。
火星にある基地には侵入出来るが、火星におけるギャラルホルンの本拠地とも呼べるアーレスは火星の静止軌道にあるので、影のゲートを使っての転移は無理なんだよな。
そうなると、宇宙港の方舟から生身で移動してアーレスに向かうとかしないといけないんだが……それはそれで結構面倒な事になる。
さすがに見つかる可能性が高いし。
ともあれ、地上にある基地は襲撃出来るので、それだけでも十分なメリットがあるのは間違いなかった。