ギャラルホルンと敵対するのは、デメリットが多いがメリットも多い。
それこそハイリスク・ハイリターンだろう。
……ただ、俺の場合は実はそうでもなかったりする。
魔法を使ってある程度どうとでもなるし、MSの戦いも得意だ。
何より奥の手として、試してはいないが恐らくナノラミネートアーマーや高硬度レアアロイのフレームであっても破壊出来るだろう威力を持つS-11ミサイルを使えるミロンガ改や、こちらはほぼ確実にナノラミネートアーマーを無効化する……いや、そもそもナノラミネートアーマーがその存在を想定していない重力波砲を使えるサラマンダーがある。
また、今は呪いでどうにも出来ないが、解呪が成功すればゲートを起動させてホワイトスターと繋がる事も出来る。
いや、そもそも解呪が成功すればニーズヘッグを自由に使えるようになるので、それこそ相手がガンダムを出してきても対処するのは難しくなかったりする。
……とはいえ、だからといって大きな仕事である以上、引き受けるには相応の報酬が必要となる。
「シャドウミラーがこの仕事を引き受けるのはいい。けど、俺達とクーデリアが近い関係だからといって、報酬を有耶無耶には出来ないぞ?」
「それは……分かっています。ですが、このような依頼は前代未聞で、どのような報酬を支払えばいいのかも分かりません。そんな訳で単刀直入に聞きますが、どのような報酬を支払ったらこの依頼を引き受けて貰えるのでしょうか?」
「そうだな。……シーラ、どう思う?」
俺としては、やはりMSとかエイハブ・リアクターとか、どうしてもそっち関係を考えてしまう。
なら、この手の件に詳しい……そして何より、シャドウミラーの事務員を纏める立場のシーラなら、どう思うのか。
そう思って尋ねると……
「ハーフメタル利権が無難でしょう」
「……え?」
シーラのその言葉は、クーデリアにとっても意外だったらしい。
意表を突かれたクーデリアという、珍しい姿を見る事が出来た。
だが……ハーフメタルの利権か。考えてみれば、それは決して悪い話ではない。
そもそもハーフメタル……正式には火星ハーフメタルだが、これはこの世界特有の物質だ。
つまり、ナデシコ世界のC.C.であったり、マブラヴ世界のG元素とか、そういう感じのその世界特有の物質はホワイトスターにあるキブツでも作れない。
つまり、この世界特有の金属であるハーフメタルを入手するには、この世界から入手するしかないのだ。
……もっとも、ハーフメタルの特徴というのはエイハブ・リアクターから発せられるエイハブ・ウェーブの電波障害効果を防ぐというものだ。
そしてシャドウミラー……PMCの方ではなく、ホワイトスターの方では、エイハブ・リアクターを動力炉として使うつもりはない。
確かにエイハブ・リアクターは、頑丈で半永久機関というメリットもあるが、ぶっちゃけブラックホールエンジンの方は完全な永久機関だし、しっかりと研究をされているという意味でも、使いやすい。
わざわざエイハブ・リアクターを使うつもりがない以上、ハーフメタルはそこまで必要という程でもないんだよな。
勿論、今はまだそんなに使い道がなくても、研究の結果相応に使い道が出てくる可能性はある。
それこそ他の世界の何らかの物質と組み合わせる事によって、全く別の効果を持つ何かとなる可能性は十分にあるのだから。
その辺の状況を考えると、やはりハーフメタルの利権に食い込むようにはしておきたいのも事実。
それにホワイトスターのシャドウミラーにとってはあまり使い道のないハーフメタルだが、このオルフェンズ世界においては非常に大きな意味を持つのも事実。
そして呪いの解呪が具体的にいつ出来るのか分からない以上、ハーフメタル利権に食い込んでおけば、PMCを運営する上で大きな意味を持つだろう。
「ハーフメタル利権、ですか。……それは今は私の一存では決められません。ですが、そうですね。その辺りにシャドウミラーを組み込めるのなら、全力でそれを後押しします。それでどうでしょう?」
「いいのか? そこまでの約束をして」
クーデリアの言葉は、言わば口約束でしかない。
これが普通の相手であれば、そう簡単にその言葉を信じるような事はないだろう。
だが、それがクーデリアとなれば、話は変わってくる。
クーデリアとはまだそこまで長い付き合いではないものの、それでもクーデリアの性格については十分に理解している。
つまり、もしここでクーデリアが口約束をしても、それを破るような事は絶対にしないと断言出来る程度にはクーデリアを信じていた。
勿論、クーデリアがそういう約束をしたからといって、実際にその機会があった時に他の者達にそれを拒否される可能性も否定は出来ない。
出来ないが、クーデリアの性格を考えれば、その時に駄目だった場合はハーフメタル利権の代わりに何か別の報酬を支払ってくれるだろう。
そういう意味でも、シーラの提案はそう悪くはない。
「構いません。アクセル達の手助けがなければ、私は地球に行く事も出来ないのですから。その為に必要なら、手間暇を惜しむつもりはありません」
「……そうか」
クーデリアの俺を見る目には、強い意志がある。
自分の言葉を決して曲げない、そんな強い意志が。
「アクセル、私はクーデリアに任せてもいいと思います。貴方はどうですか?」
「そうだな。まぁ……クーデリアに任せておけば、特に問題はないと俺も思う」
「……ありがとうございます。ですが、本当にそのように決めてしまっていいのですか?」
こちらがその条件で依頼を引き受けると言っているのだから、素直にそれを受け入れればいいのだが……ここで改めてこうして聞いてしまうのが、クーデリアらしいところなのだろう。
俺にしてみれば、そういうクーデリアだからこそ信じられる一面があるというのも、事実なのだが。
「いいんだよ。こっちの利益にもなるんだから、安心しておけ」
火星にあるギャラルホルンの基地から奪うMSやMW……いや、いっその事、地球に行ってからギャラルホルンの本拠地から最新鋭のMSを奪ったりした方がいいか?
火星でそういうのをやると、そういう事があったと地球に報告されそうなのがちょっと不安だが。
そう考えると、火星にあるギャラルホルンの基地でMSを奪うといった事はしない方がいいのか?
けどそうなると、俺達がクーデリアを連れていく時に間違いなく襲撃があるだろうし。
「ありがとうございます」
「俺達の件はそれでいいとして、CGSには連絡をしたのか?」
「いえ、これからとなります。まずはアクセル達に連絡を取ってからと思っていましたので」
そう言うクーデリアの言葉に、それもそうかと納得する。
今回の件……俺達にとっては悪い話ではない。
いや、寧ろハーフメタルの利権に絡む事が出来るだろうし、堂々とギャラルホルンを敵に回すという事で、大きなリスクとリターンがあるのは事実だが、それでもリターンの方が大きいだろう。
しかし、それだけに原作に対する影響も考えないといけないのも事実。
そして……恐らく、本当に恐らくの話だが、この一件からが原作だろうと思える。
もしかしたらノアキスの7月会議が原作の始まりかとも思ったんだが。
原作では、CGSが会議に出席したクーデリアの護衛をするという意味で。
実際に会議の帰りに襲われた件を考えると、余計にそう思う。
ただ……それでも、襲撃その物はMSやMWではなかった
ガンダムの世界である以上、やはりMSが出てくるのが前提と考えてもおかしくはないと思う。
「ギャラルホルンを相手にする可能性がある以上、CGSもMSを用意した方がいいんだけどな」
「それは……難しいのでは?」
「難しいな」
クーデリアの言葉に即座にそう返す。
この世界において、MSを手に入れるというのはそう簡単な事ではない。
ノブリス辺りに金を積めば、もしかしたらどうにかなるかもしれないが……さすがにノブリスも、そう簡単にMSを売るといった事はしないだろう。
ましてや、俺達はこれからギャラルホルンと敵対する可能性が高い。
そうなると、もしノブリスから手に入れたMSでギャラルホルンと戦ったりしたら、ノブリスにとっても色々と不味いだろう。
ノブリスは圏外圏で大きな影響力を持つ武器商人だし、ギャラルホルンにも賄賂を送って影響力を確保している。
だが、それはあくまでも限界があるのも事実。
大々的に動いた場合、それによってその影響力でどうにかなる以上の騒動になれば、どうしようもない。
そしてギャラルホルンと正面からMS戦を行うとなれば、当然ながらノブリスの影響力以上の騒動になるのは間違いないのだ。
そんな訳で、ノブリスからMSを入手するのは難しい。
となると……やっぱり地上にあるギャラルホルンの基地からMSを盗んで、それを使うか?
いや、阿頼耶識対応のコックピットにする必要があるし、それはそれでちょっと難しいんだよな。
うーん、この場合はどうするべきか。
もう少し時間があればどうにかなるんだが、今はその時間がないのが問題だしな。
ギャラルホルンにとって、阿頼耶識は忌むべき存在。
それだけに、MSは阿頼耶識とかを使わない普通の操縦方法なんだよな。
ガンダム・グシオンとかと同じように。
まぁ、その辺について相談するだけでもCGSに顔を出してもいいか。
ぶっちゃけ、ノブリス経由の依頼である以上、CGSとしては余程の事がなければこの依頼を断ったりは出来ないだろうし。
「とにかく、MSの件についてはマルバに話を聞いてもいい。金でどうにかなるのなら、それに越した事はないし」
マルバはそれなりに長い時間、この業界にいる。
それだけ伝手もあるという事だ。
もしかしたら……本当にもしかしたらの話だが、マルバの伝手でMSを入手出来る可能性もない訳ではない。
……いや、こういう風に言ってる時点で無理だとは思うけど、
ただ、それでも可能性は0ではない訳で。
「これからCGSに行って、クーデリアの依頼の件について色々と話すつもりだけど、その時にMSを購入出来る伝手がないかどうか聞いてみるか」
「無理でしょう」
俺の言葉を即座にそう切り捨てるのは、シーラ。
「何か理由があるのか?」
「隣にある武装集団ということで、CGSについては色々と調べておきました。ですが、その中でCGSがMSを扱っている相手と取引を行ったことはありません」
「けど、MWはあるんだろう? MSとMWの両方を扱っている相手と取引をしてる可能性も……」
「ないとは言いませんが、かなり低いでしょう」
そう言うシーラの様子を見ると、多分駄目なんだろうなと思ってしまう。
「まぁ、それでも……もしかしたら、どうにかなるかもしれないだろう?」
「アクセルがそう希望するのなら構いませんが、恐らく無駄になると思いますよ」
シーラがそう言うが、マルバならきっとやってくれる。
そう思ったものの、壱番組や弐番組の存在を思い出せば、その期待も急速に萎んでいく。
とはいえ、マルバは曲がりなりにもCGSという警備会社を作り、それを今まで運営してきた手腕がある。
本人の性格はともかく、能力は……戦闘能力ではなく、事務能力とかそういうのは高い可能性がある。
というか、あって欲しいな。
「俺としては、そうならないように祈ってるよ。……それよりもノブリスからの仕事というのは、もうCGSの方に伝わっているのか?」
「はい。そちらについては伝わっている筈です。ですが、その件について色々と説明をする必要がありますので」
「分かった。なら、余分な手間は掛からないな」
マルバにこれがどういう仕事なのかとか、何を目的としているのかとか、そういう説明をしなくてもいいのは助かる。
もっともマルバの性格を考えれば、それを知った上で説明しろとか言ってこないとも限らないが。
何しろ、マルバにしてみれば本来ならこの依頼は受けたくない筈だ。
だが、ノブリスを通しての依頼となると、マルバには到底断ることが出来ない。
もしCGSがもっと大きな……それこそ火星の中でも最大級の規模の会社であったりすれば、あるいはノブリスからの依頼に対してもNoとはっきり言えるかもしれない。
しかし、CGSは決して大きな警備会社ではない。
いや、MWをかなり持っているので、弱小という訳でもないが……中堅といったところか。
それだけに、ノブリスには到底逆らえない。
しかも、クーデリアがCGSにも話を持っていったのは、ヒューマンデブリやスラム街の少年兵と接して、話を聞きたいというのが理由なのだから。
マルバにしてみれば、そんなので自分達を巻き込むなと思うのは自然な事だろう。
「シーラ、CGSに連絡をしてくれ。これから依頼者を連れていくと」
俺の言葉にシーラは頷き、CGSに対して連絡を入れるのだった。