転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3870話

 俺達……正確には俺とクーデリアとフミタン、シーラの四人がCGSに到着すると、そこで待っていたのは苦々しい表情を浮かべたマルバの姿だった。

 ちなみにマーベルはいない。

 子供組と大人組と共に訓練を行っている筈だ。

 

「よく来たな」

 

 俺達……というか俺を見て、そう言うマルバ。

 ただし、そこには歓迎の色はない。

 口では『よく来たな』と言ってはいるが、実際のところは『よくも来られたな』とか『よくものうのうとやって来たな』とか、そんな風に言ってるように思えた。

 マルバとしては、とてもではないが俺を受け入れるといった事はしたくないのだろう。

 

「ああ、仕事の件だしな。大体の概要についてはノブリスから連絡が入ってるな? 詳細について詰めたい」

「ふんっ、中に入れ」

 

 そう言い、俺達はCGSの中に入る。

 ……そう言えば、今日はハエダがいないな。

 もしかしたら、ハエダが無能だというのをようやくマルバも理解したのか?

 ハエダは一応CGSのNo.2という立場にはなっているものの、実際は無能もいいところだ。

 体力もそこそこ、生身での戦闘も弱い、MWを使った戦闘も参番組にはとうてい敵わないといった具合に。

 それだけに、マルバが切り捨てたとしても納得は出来るのだが……どうしたのか聞いてみた方がいいのか?

 そう思ったが、CGSの中を進んでいるとそこにはオルガを殴って悦に浸っているハエダの姿があった。

 

「おい、マルバ。客が来ている時に、ああいうのを見せるのはどうなんだ?」

「知るか。ただでさえ、今回の仕事は面倒臭いってのに……いや、そうだな。ハエダ、その辺にしておけ。俺と一緒に来い。オルガはビスケットやユージンを連れて俺の部屋まで来い。仕事だ」

「社長? ……ふんっ、運が良かったな!」

 

 その言葉と共に、オルガの腹を殴るハエダ。

 

「ぐっ!」

 

 まさかこの状況で更に追加の1発があるとは思ってなかったのか、オルガは顔を苦悶に歪める。

 ハエダは模擬戦で見たように決して強くはない。

 だが、このCGSにおいてはマルバの次に権力を握っているのは間違いなく、またある程度は鍛えている身体付きだ。

 その割には持久力がなかったけど……まぁ、それはそれだ。

 単純に大人で身体が大きいというだけでも、オルガ達に与えるダメージは大きい。

 そんなハエダが思い切り腹を殴ったのだから、オルガが痛みに呻くのは当然だった。

 

「大丈夫か?」

「すいません、アクセルさん。お見苦しいところを……」

 

 ハエダがマルバと共に先を歩いているのを見て、オルガにそう声を掛ける。

 オルガは怪我らしい怪我はしていない。

 いや、打撲とかそういうのはあるだろうが、骨折とかそういうのにはなっていないというのが正しいか。

 

「気にするな。参番組とは色々と縁があるしな」

 

 これは嘘でも何でもなく、単純な事実だ。

 やはり一番大きな縁は、昌弘の兄の昭弘の件だろう。

 それが切っ掛けとなって、それなりに参番組に関わるようになったのだから。

 他にもシノの件であったり、三日月の件だったりと色々あるが。

 他にも、オルガが恐らくこの世界の原作の主人公だろうという思いがあるのも、参番組を気にしている理由だろう。

 

「そうですね。……じゃあ、俺はビスケットとユージンを捜してきますので。失礼します」

 

 そう言うと、頭を下げてその場から離れていく。

 

「大丈夫でしょうか、あの人。……何故あのようなことが?」

 

 俺の隣で様子を見ていたクーデリアが、心配そうな様子でそう聞いてくる。

 無理もない。クーデリアにしてみれば、このCGSにも自分の護衛と地球までの案内を頼む予定なのだから。

 自分で言うのもなんだが、シャドウミラーの子供組に対する扱いがまともな分、今のハエダとオルガの件はクーデリアにとってショックだったのだろう。

 

「結局のところ、ヒューマンデブリだったり、スラム街出身だからだろうな」

 

 オルガのようなスラム街出身の者達は、ヒューマンデブリと比べると扱いはいい。

 とはいえ、実際にはそんなに扱いに差はないのだが。

 それでも、多少……本当に多少ではあるが、扱いがいいのは間違いなかった。

 

「そんな事……」

「これもまた、火星の現実だ。それくらいは分かっているだろう?」

「……はい」

「ほら、いつまでもこうやってないで行くぞ。置いていかれると、面倒な事になりかねない」

 

 具体的には、この建物のどこか入ってはいけない場所に入ったとか、そういう因縁をつけられかねない。

 俺としてはそういうのはごめんなので、マルバ達に置いていかれる訳にはいかなかった。

 クーデリアと共にマルバ達を追う。

 ハエダはマルバと話ながらも、何度もこちらに視線を向けてくる。

 ……ただし、その視線は俺に向けられている訳じゃない。

 シーラやフミタン、そしてクーデリアにも向けられていた。

 当然ながら、その視線にあるのは好色な色だ。

 ハエダにしてみれば、シーラ、クーデリア、フミタン……3人全員が男の欲望を掻き立てる存在なのだろう。

 もしここにマーベルがいたら、恐らくマーベルにもそういう視線を向けていたのだろうと思う。

 全員が全員、美人なのは否定しない。

 そういう思いを抱く事もあるだろう。

 とはいえ、それを隠そうともしないのに呆れる。

 ただでさえ、『男のチラ見は女のガン見』という風に言われるくらいだ。

 当然ながらシーラ達も自分がハエダにどのような視線を向けられているのかは理解しているだろう。

 ハエダが小賢しいところは、マルバと話している時はそちらにきちんと視線を向けている事だろう。

 マルバがハエダから視線を外した時に、シーラ達を見ているのだ。

 ただ……クーデリアは仕事を依頼しにCGSまで来たんだが、その依頼人に対して露骨にそういう視線を向けるのはどうなんだ?

 クーデリアにしてみれば、CGSで重要なのはヒューマンデブリやスラム街出身の少年兵達なので、ハエダにはあまり興味がないのだろうが。

 そんな風に考えている間に、俺達はマルバの部屋に到着する。

 

「入ってくれ。この部屋の中で詳しい話を聞かせて貰おう」

 

 そうマルバが言い、俺達は部屋の中に入る。

 そして俺達……俺、シーラ、クーデリア、フミタンの4人はソファに座り、マルバは執務机に座る。

 ハエダは不満そうな様子でマルバの近くに立つ。

 自分だけ立っているのが、不満なのだろう。

 とはいえ、それでも自分よりも上の立場にあるマルバに逆らう気はないのか、不満そうな表情を浮かべていても、実際に何かを言うような事はなかったが。

 

「さて、それで依頼についてだが……」

 

 マルバの視線を受けたクーデリアは、真っ直ぐな視線を向けながら口を開く。

 

「私の地球までの護衛となります。大体についてはノブリスさんから聞いていると思いますが」

「そうですね。他にも、ヒューマンデブリ達から話を聞きたいとか?」

「そちらについては……その、あくまでもついでと思って貰えれば」

「ついで? ……まぁ、それは構いませんがね」

「ありがとうございます。それで、地球までの航路についてですが……」

「案内人については、こちらで用意出来ますので」

「え? その、案内人……?」

 

 クーデリアの言葉に、マルバは分かりやすく溜息を吐く。

 それは、何も分かっていないお嬢様に現実を教えるといった様子なのは間違いなく、その視線がハエダに向けられる。

 ハエダはマルバの視線を受けて、自慢げに口を開く。

 

「お嬢様は分からないかもしれませんがね。火星から地球に行く場合、普通ならアリアドネというのがある航路を通る必要があります。ですが、貴方のような危険人物……あくまでギャラルホルンにとってですが、そういう人物を乗せていては、その航路は通れません。つまり、アリアドネのない航路を通る必要があります。それは高密度デブリ帯と呼ばれる場所で、案内人がいなければ到底通ることは不可能なんですよ」

 

 自慢げに言うハエダだったが、それを聞いていたクーデリアは困った様子でこっちを見てくる。

 その辺についての説明は、既にクーデリアにしてある。

 しかし、ハエダはそれを知らないからこそ、こうして自慢げに言ってるんだろう。

 マルバの方は、最初ハエダと同じく得意げだったが、自分達の言葉に特に驚いた様子もなく……それどころか、全く普通の様子を見せている俺達を見て、疑問の表情を浮かべていた。

 

「ハエダ、その辺にしておけ」

「社長?」

 

 この状況がおかしいと思ったらしいマルバの言葉に、不思議そうな様子で尋ねるハエダ。

 だが、マルバはそんなハエダの様子を無視し、こちらに……というか、俺をじっと見てくる。

 

「アクセル、お前は何を知っている?」

「何をというか……そうだな。この件についてはお前も知らなかったんだろうし、仕方がない。一応その辺については口止めをしておいたし」

 

 実際には昌弘から昭弘に、そこから参番組には情報が流れていてもおかしくはないのだが、その辺については昭弘達が俺達に恩義を感じているので、情報を流してなかった……といったところか?

 それだけ昭弘が俺達に感じている恩義は強いのだろう。

 

「出来たばかりのPMCが、この前のMWの大会でいきなり優勝した。それを不思議に思った事はなかったのか?」

「ああ? ……ふんっ」

 

 自分が1回戦で負けた時の事を思いだしたのか、ハエダは不愉快そうに鼻を鳴らす。

 とはいえ、マルバの方はそんなハエダとは違い、疑問……いや、疑惑か? そんな視線を向けてくる。

 

「それが今回の依頼に関係していると?」

「そうなる」

「具体的には?」

 

 さて、どうするべきか。

 俺達の正体……というか、元ブルワーズであるというのを話すのは、別に構わない。

 だが、マルバやハエダ、特にハエダなんかはこっちに思うところがあるのは間違いなく、だからこそ俺達の弱みになるという話をすれば、嬉々としてそれを広めてもおかしくはない。

 そんな事をすれば、俺達の後ろ盾になるノブリスから一体どんな目に遭わせられるのか。

 それを理解出来ない。

 いや、最初のうちはそれを理解しているのだろうが、俺達に……俺に対する苛立ちからその辺のことをすっかりと忘れてもおかしくはかった。

 あるいは、そういうことがあってもどうとでもなると考えるのか。

 

「それを教えてもいい。だが……」

 

 そこで言葉を止め、俺はマルバの後ろで待機しているハエダに視線を向ける。

 するとハエダも自分に視線が向けられているのに気が付き、苛立ち交じりの視線をこちらに向けていた。

 

「何だ? 俺には教えられないってのか?」

「そうだ」

「な……て、てめえ……」

 

 まさかきっぱり断言されるとは思っていなかったのか、ハエダは絶句する。

 ハエダは顔を赤くしながら前に出ようとし……

 

「分かった」

「社長!?」

 

 ハエダはマルバの言葉に納得出来ないといった様子を見せるものの、マルバは続けて口を開く。

 

「いいから、大人しく部屋を出ていろ。もしお前に話してもいいことだと分かったら、話す」

「……分かりましたよ」

 

 不機嫌そうなのを隠しもせず、廊下に出るハエダ。

 ……いや、本当に何でマルバはあんな奴を腹心の部下として使ってるんだ?

 実はああ見えて、書類仕事を片付ける手際が凄かったりするのか?

 まさかな。

 以前ちょっと聞いた話だと、ハエダは書類仕事とかもオルガとかに任せているらしいし。

 

「ハエダは出て行ったぞ。それで? 一体何を聞かせてくれるんだ?」

 

 マルバのその言葉は、つまらない内容だったら承知しないと、そう言ってるように思えた。

 いや、実際にそのように思っているのだろうが。

 

「そうだな。詳細に説明する……のは面倒臭そうだし、単刀直入に言うか。火星と地球を結ぶ高密度デブリ帯の中で活動していた、ブルワーズという海賊を知ってるか?」

「知っている。幸いうちは被害を受けてはいないが……待て。ここでそのような事を話すだと? それはつまり……」

「正解。いや、正解かどうかは分からないから説明すると、シャドウミラーというのは俺がブルワーズを乗っ取って、問題のある連中は追放するなり殺すなりして、作った会社……PMCだ」

「……それは、冗談とかではなく?」

「ああ、正真正銘真実の内容だな」

 

 俺の言葉に、マルバは頭を抱える。

 もしかしたらノブリスにその辺について聞いているのかもしれないと思ったが、どうやら何も聞いていなかったらしい。

 そうなると、もしかしたら早まったか? という思いがない訳でもなかったが、アリアドネを通らず地球に行こうとするのなら、道案内は俺達が出来ると示す必要があった。

 それに……マルバはハエダとは違う。

 俺達の後ろ盾にノブリスがいるときちんと理解している以上、こちらを排除するような動きを見せればノブリスを敵に回すのだ。

 ……それ以外にも、元ブルワーズというのを知った以上、武闘派として有名だった海賊を敵に回すという事を意味してもいる。

 そう考えれば、マルバが迂闊な行動をするとは思えなかった。

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