転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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番外編143話 次のアプサラス

 アクセルがペルソナ世界から追放されて、オルフェンズ世界で活動している頃……UC世界のハワイにおいて、ギニアスは目の前にある自分の努力の結晶……正確にはその途中経過なのだが、その機体を見て、満足そうに笑みを浮かべていた。

 

「おめでとうございます、ギニアス様」

「ああ、ノリス。そう言って貰えると私も嬉しいよ。それにしても、技術の進歩というのは凄いものだな。……とはいえ、これはまだ技術試験機でしかないが」

 

 ノリスの言葉に、ギニアスは満面の笑みを浮かべてそう言う。

 技術の進歩と口にしてはいるが、実際にその技術の進歩を遂げたのはギニアスの天才的な頭脳だ。

 勿論、ギニアスだけで行ったのではないが。

 アプサラスⅢは、ルナ・ジオンが唯一地球に持つ領土であるハワイの象徴とも呼ぶべき存在だ。

 空を飛び、圧倒的な巨体とジャブローの岩盤ですら撃ち抜けるだろうという確信のあるメガ粒子砲。

 そんなアプサラスⅢだが、当然ながら弱点もある。

 具体的にはその巨体によって敵の攻撃を回避するのが難しい事だろう。

 当初の予定と違って、メガ粒子砲を撃つ時にミノフスキークラフトを足のように下に伸ばすといった必要はなくなったが、それがなくても十分なまでにアプサラスⅢは大きい。

 そして大きければ、敵に狙われやすくなる。

 とはいえ、アプサラスⅢの装甲はルナ・チタニウム合金製で非常に防御力が高い。

 実弾が相手なら、完全ではないにしろ圧倒的な防御力を誇る。

 だが……1年戦争において、ビーム兵器が登場した。

 ビームライフルにビームサーベル。少し変わったところではビームマシンガンにビームスプレーガン。

 それ以外にも、1年戦争中に開発されたビーム兵器は数多い。

 そして強固な防御力を持つルナ・チタニウム合金製の装甲であっても、実弾はともかく、ビーム兵器は防げない。

 結果として、次のアプサラス……アプサラスⅣを作るに辺り、必要なのはビーム兵器をどう防ぐかという事だった。

 そんな中で考えられる方法は幾つかあるが、最終的には2つに絞られる。

 その1つが、ビグ・ザムが使っていたIフィールドを搭載する事。

 幸い、ビグ・ザムの残骸はアクセルが入手し、その情報はルナ・ジオンにも共有されている。

 また、ビグ・ザムのコンセプトを継承したゼロ・ジ・アールというMAがアクシズからアクセルに献上され、それにもIフィールドが搭載されていた。

 それによって、Iフィールドの解析はルナ・ジオンの兵器メーカーであるディアナで行われている。

 また、ニュータイプ研究所のアルテミスにおいても、ニュータイプ用の兵器研究にIフィールドは大きく期待されていた。

 

「そういう意味では、やはりアプサラスにもIフィールドを組み込むというのがいいのだろうが……しかし、問題なのはアプサラスⅢはただでさえ電力を大量に消費している」

 

 ギニアスは呟きつつ、視線の先にあるMAに視線を向ける。

 

「ですが、アプサラスⅢはゾックの動力炉を改良した物を積んでおり、電力的に余裕はあったのでは?」

「ノリスの言いたい事も分かる。だが、ただでさえアプサラスⅢは強力なメガ粒子砲があり、ミノフスキークラフトを安定させて飛ばせる必要もあった。その上でIフィールドを組み込むとなると……不可能ではないが、アプサラスⅢ以上に巨大になってしまっただろう。MAである以上、MSのように一定の形にしなくてもいいのは間違いないが、だからといって無闇に大きくするのも問題だ。だからこそ、私はIフィールドではなく……つまり、敵の攻撃を耐えるという意味ではなく、当たらないといったMAを目指した」

 

 そんなギニアスの言葉通り、視線の先にいるのはアプサラスⅢと比べるとかなり小さい。

 アプサラスⅡよりは若干大きいが、アプサラスⅢよりは明らかに小さいのだ。

 ミノフスキークラフトも、アプサラスⅡと同じ位置に一個だけとなっていた。

 アプサラスⅢのような巨体では、ビームライフルによる一撃が命中すれば、それだけで致命的な損傷になる。

 だからこそ、被弾面積を少なくするといった方法をギニアスは選んだ。

 それだけではない。

 ただ小さくするだけなら、それこそアプサラスⅡで出来ていたのだ。

 このアプサラスは、アプサラスⅢよりもかなり小さくなったのだが、それでいながら攻撃力という点ではアプサラスⅢのレベルを維持……いや、若干上がってすらいる。

 また、アプサラスⅢで可能だった拡散メガ粒子砲についても、同様に……いや、それ以上の数に拡散させることが出来た。

 また、機動力や運動性という意味でも、アプサラスⅢを上回っている。

 ……もっとも、その巨体を考えれば機動性はともかく、運動性はないよりはマシといった程度でしかないのだが。

 元々、アプサラスは弾丸軌道により、地球のどこからでもジャブローに近付き、大型メガ粒子砲を使ってジャブローを破壊するといった目的だった。

 その途中でアクセルに接触した事により、ジャブロー攻略用MAという目的はなくなったが。

 しかし、それでもそのような目的である以上、運動性はともかく、機動性は高いに越した事はない。

 

「さて……」

 

 新型のアプサラスを見て満足したギニアスは、通信のスイッチを入れる。

 

「アイナ、準備はどうだい?」

『お兄様、準備は完了しました』

「そうか。では、運用試験を始めてくれ」

『はい。……リプサラス、起動します』

 

 アイナの言葉に従い、アプサラスについているギャンの……正確にはギャン・クリーガーの頭部のモノアイが光る。

 アプサラスⅢまでは、ザクの頭部を使っていた。

 だが、ザクの頭部では能力的に満足出来なくなってきた事もあり、このリプサラスの頭部には現在ルナ・ジオン軍の最新鋭MSであるギャン・クリーガーの頭部が使われていた。

 なお、リプサラスというのは、正式にはReアプサラスであり、その名前を省略したのが、リプサラスとなる。

 アイナが操縦するリプサラスは、ミノフスキークラフトによって浮き上がる。

 このミノフスキークラフトの性能も、アプサラスⅢの時と比べると技術の進歩によって性能が上がっている。

 

「アイナ、異常はないか?」

『はい。今のところ全てのデータは正常です』

「そうか。では、飛行を始めてくれ」

『分かりました』

 

 リプサラスはアプサラスらしく空中に浮かぶ。

 それを見たギニアスは、嬉しそうな笑みを浮かべる。

 勿論、今日のテストを行うよりも前に、リプサラスに問題がないかどうかは、何度もテストをしているので、心配はあまりなかった。

 あまりなかったが、リプサラスが新兵器である以上、何が起きるのか分からないのも事実。

 そういう意味では、わざわざアイナがテストをする必要もない。

 それこそ、量産型Wに行わせてもいいのだ。

 いいのだが……アイナは自分がやると言い張り、こうしてリプサラスのテストを行う事にしたのだ。

 ギニアスとしては、妹を思う兄心から素直にアイナの言葉に頷くことは出来なかった。

 また、ノリスも親心から同様に思ったが……それでも、アプサラス系のMAについて一番詳しいのが自分だとアイナに言われれば、それを否定することは出来ない。

 事実、ギニアスはリプサラスを開発はしたものの、それはあくまでも開発だ。

 乗って操縦出来るかと言われれば……出来ない事はないだろうが、だからといってアイナよりも上手く操縦出来るかと言えば、否だ。

 ノリスもその適性はMSで、MAの操縦は上手くはない。

 いや、実際にはその辺の一般パイロットよりも優れてはいるのだが、それでもアイナには敵わない。

 オールドタイプ最強の1人と称されるノリスであっても、MAの操縦技術ではアイナに負けるのだ。

 それだけアイナはMAの操縦を得意としているという事なのだろう。

 

『お兄様、リプサラスは特に何も問題なく飛んでいます』

「そうか、では、これから標的を出すから、メガ粒子砲のテストを行う。サポートプログラムは問題ないか?」

『サポートプログラム……はい。チェックしてみましたが、何の問題もありません』

 

 アプサラスⅢでもマルチロックオン機能はあったが、それを十分に使うには相応の技量が必要となる。

 このプログラムはアプサラスⅢの時も実装されていたが、リプサラスのサポートプログラムはそれをより洗練させたものだ。

 そのお陰で、アプサラスⅢの時よりも素早く、そして確実にマルチロックオンが可能となっている。

 大型メガ粒子砲についても、幾つものプログラムによって補正されており、リプサラスになって、一番進化したのはその辺りのプログラムだろう。

 それを示すように、ギニアスやノリスが見る映像モニタでは、リプサラスの大型メガ粒子砲が標的を一瞬にして飲み込んでいた。

 この大型メガ粒子砲も、プログラムによって出力の調整が出来るようになっていた。

 最大出力では山を貫通するだけの威力を持つが、そこまで威力が必要ない時は、威力を落として代わりに連射性能を上げる事も出来る。

 現在はアイナによって、次々と連射される大型メガ粒子砲。

 連射とはいえ、その一撃は十分にMSを撃破……どころか、消滅させてしまうだけの威力を持つ。

 それこそ連邦軍のマゼラン級の主砲以上の威力を持っている。

 それからもリプサラスのテストは続けられ……

 

「アイナ、これでテストは終了だ。操縦してみてどうだった?」

『率直に言えば、操縦しやすいですね。アプサラスⅢは勿論、アプサラスⅡと比べても運動性が高いのは非常に助かります』

「そうか。……そうなると、やはり次のアプサラスはこのリプサラスをベースにした方がいいな」

 

 自分の言葉に満足そうな様子のギニアス。

 アプサラスⅣを作る上で、ギニアスとしてはリプサラスをベースに開発したいという思いがあった。

 だが同時に、Iフィールドの件を考えるとアプサラスⅢ……あるいはそれ以上の大きさにするという選択肢もあったのだ。

 リプサラスはアプサラスⅢと比べて小型化した結果、動力炉やミノフスキークラフトの数も減った。

 減ったが、そこは技術力を上げる事によって対処した。

 だが……それならアプサラスⅢをベースにして、リプサラスに使った動力炉やミノフスキークラフトを使えば、電力的に余裕もあるので、Iフィールドを搭載出来た可能性もある。

 あるのだが、それを許容すると際限なく大きくなってしまうという欠点もあった。

 ギニアスにとって、それは好ましくない。

 その為、リプサラス案になったのだが。

 そんなギニアスの考えが正しかったのだと証明された形だった。

 

「良かったですね、ギニアス様」

「そうだな。このアプサラス計画……アイナの為にも、そしてサハリン家の為にも絶対に成功させてみせる」

 

 サハリン家の復興を目的として、ギニアスはルナ・ジオンに……いや、シャドウミラーについた。

 実際にはそれ以上に、ギニアスの身体の治療こそが目的だったのだが。

 ともあれ、そんなギニアスやアイナの目論見は見事に当たり、ルナ・ジオンにおいてサハリン家というのは名家として知られている。

 ましてや、地球に唯一存在するルナ・ジオンの領土を任されているのを思えば、サハリン家がどれだけ信頼されているのかは明らかだった。

 もっとも、中にはそんなサハリン家を妬み、月ではなく地球に隔離されているといったように言う者もいたが。

 コバッタや量産型Wによって不穏分子はすぐに捕らえられるものの、言論の自由はある程度保証されているので、このくらいの事は問題ない。

 一定の範囲を超えると、また話は別だったが。

 ともあれ、サハリン家はルナ・ジオンにおいてかなりの影響力をもっているのは間違いない。

 また、自分達からシャドウミラーに近付いたという点もあり、シャドウミラーに近い存在としても知られていた。

 

「そうですね。サハリン家の為にも……ただ、サハリン家の為というのであれば、ギニアス様の結婚の問題もありますね」

「……ここでそれを出すのか」

 

 まさか、ノリスがここでその件について口にするとは思っていなかったのだろう。

 ギニアスは不満そうに眉を顰める。

 とはいえ、ギニアスもノリスの言いたい事は分かっていた。

 以前……シャドウミラーに接触する前なら、ギニアスは数年も保たずに死んでいただろう。

 だが、今のギニアスはシャドウミラーの治療によって健康的な肉体となっている。

 だからこそ、サハリン家の当主としての仕事……具体的には、後継者を用意する必要もあった。

 

「私の子供ではなく、アイナの子供でもいいだろう」

「それでもいいかもしれませんが、後継者の問題を抜きにして、ギニアス様には幸せになって貰いたいのです」

 

 そう言うノリスの表情が真剣だったからだろう。

 ギニアスはいつものように問答無用で却下するのではなく……

 

「ふんっ、そういう相手がいたら考えてもいい。ただし、私と馬が合う者が必須だがな」

 

 そう言うのだった。

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