転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3886話

 阿頼耶識対応のコックピットをどうやって入手するのかについては、結局すぐには決まらなかった。

 まぁ、ギャラルホルンと敵対をすると考えると、そう簡単には取引出来ないだろうし。

 もし取引をする場合も、普通に取引をするのではなく、奪われたという形にして、その後で報酬を何らかの方法で支払う……そんな風にしないといけないだろう。

 あるいは、いっそ宇宙海賊を襲撃するとか。

 ブルワーズを見れば分かるように、宇宙海賊にとってヒューマンデブリというのは安価に手に入れられる戦力だ。

 阿頼耶識の手術は必ずしも成功するとは限らないので、海賊をする上で購入したヒューマンデブリ全てが使い物になる訳ではない。

 だが、戦場に出て来るヒューマンデブリは、基本的に阿頼耶識の手術を受けているのは間違いない事実。

 つまり、海賊のMSやMWを確保すれば……いや、それはそれで難しいか。

 MS戦においては、コックピットを潰すのが手っ取り早く勝利をする事に繋がるのだから。

 そうなると、最善なのは俺が海賊の母艦に潜入し、まだパイロットが乗る前のMSやMWを空間倉庫で奪うか、もしくはいっそブルワーズでやったみたいに艦長を殺してその海賊をそのまま乗っ取るとか。

 クーデリアを乗せて地球に行く時、もし海賊に襲われたら試してみよう。

 そんな風に思う俺の視線の先では、グレイズのコックピットが取り外されている。

 CGSのメカニックを纏めている雪之丞が指揮を執っているが、クランクがそんな雪之丞に多少なりともアドバイスをしていた。

 クランクはあくまでもギャラルホルンの中でも実働部隊……MSパイロットの1人でしかないが、それでもMSの構造とかそういうのにはそれなりに詳しい。

 雪之丞はともかく、他の手伝っている子供達よりはメカニックとして有能だし、雪之丞の知らない事も知っていたりする。

 その逆に、クランクの知らない事を雪之丞が知っていたりもするのだが。

 そんな訳で、クランクの協力とバルバトスで一度試しているだけあって、コックピットの換装はかなり順調に進んでいる。

 ただ、バルバトスのガンダム・フレームの場合はエイハブ・リアクターが2基あるのに対して、グレイズ・フレームの場合……いや、ここはガンダム・フレーム以外と表現すべきか? とにかく、グレイズ・フレームはエイハブ・リアクターの搭載数は1基だ。

 だからこそ、バルバトスでは問題がなかったコックピットの換装も、グレイズでは上手くいくかどうか分からないというのが正直なところだったりする。

 そういう意味でも、グレイズで試してみるのは重要だった。

 ……クランクが来た時、まだコックピットの換装が行われていなかったのは、幸運だったな。

 いやまぁ、もし換装が始まっていても、最悪空間倉庫に入っているサラマンダーやミロンガ改を使ったり、もしくは影のゲートで一度シャドウミラーに戻ってゲイレールを持ってくるといった手段もあったが。

 

「アクセルさん、ちょっといいですか?」

「うん? 何だ?」

 

 コックピットの換装作業を眺めていると、不意にそう声を掛けられる。

 そう声を掛けてきたオルガに尋ねると、オルガは真剣な表情で口を開く。

 

「俺達は今までCGSと活動してきましたが、これから俺達だけで活動する以上、CGSという名前を変えるべきだと思いましてね」

「そうか? ……まぁ、そうだな。CGSというのは、あくまでもマルバが作った会社だ。お前達が独自に動くとなると、別の名前にした方がいいかもしれないな。それで、どういう名前にするんだ?」

「鉄華団、そう名乗ろうかと」

「てっかだん……鉄の火の団か?」

「いえ、鉄の華の団です。決して散る事のない鉄の華という意味で付けました」

「鉄華団か。……悪くない名前じゃないか?」

 

 CGS……クリュセ・ガード・セキュリティと比べると、鉄華団の方が分かりやすくて悪くない名前だと思う。

 

「ありがとうございます。それで……その、これから先もシャドウミラーと業務提携をお願いしたいんですが」

「別に構わないぞ」

「……」

 

 あっさりと業務提携について受け入れると、オルガは沈黙する。

 多分、ここまであっさりと俺が業務提携を受け入れるとは思っていなかったんだろう。

 とはいえ、俺としてはオルガの提案を受け入れないという選択肢はない。

 まず第1に、この世界の主人公と思われる三日月がいる。

 合同訓練の時にシノの件で少し雰囲気が悪くなったが、そのシノの件もある程度解決した今は、取りあえず関係はそこまで悪くはない。

 ただ、主人公である以上は、三日月を中心にして原作が進んでいく訳で、その時の事を思えば業務提携をして行動を共にしていた方が色々と介入しやすい。

 第2に、単純に腕のいい者達が揃っているというのがある。

 CGS時代からも、実質的な戦力は参番組だった訳で、その参番組が鉄華団として行動するのなら、企業としてもかなり優秀なのは間違いなく、そういう意味でも業務提携はシャドウミラーに利益がある。

 第3に、シャドウミラーに所属する子供組の感情的な問題がある。

 子供組……特に昌弘にとって、兄の昭弘がいる鉄華団は非常に大きな意味を持つ。

 また、昭弘以外の年長のヒューマンデブリは、同じヒューマンデブリという事もあって、友好的な関係を築いている。

 そんな鉄華団を切り捨てるような事をすれば、大きく士気が下がる……どころか、最悪シャドウミラーを離脱してもおかしくはない。

 後は単純に、俺がオルガ達を気に入っているというのもあるな。

 

「そこまで絶句することはないだろう? 俺達にとってもCGS……いや、鉄華団は頼りになる相手だと判断してるんだ。実際、グレイズのコックピットの換装とかはうちだと出来ないしな」

 

 そういう事をする必要がなかったというのが大きいので、必要があればいずれ出来るようになるとは思うが。

 

「ありがとうございます。……それこそコックピットの換装の件は、そのお陰でうちも運転資金が暫くの間はどうにかなりそうです」

 

 そう言い、頭を下げるオルガ。

 別にそこまで気にする必要はないと思うんだが。

 それこそ、俺にしてみればギャラルホルンの基地から奪ってきたMSだから、最悪換装の際に壊しても、それはそれで問題ない。

 最悪、またどこかの基地に侵入してグレイズを奪ってくればいいんだし。

 

「気にするな。……ちなみにMSについてだが、これから地球に行く上でバルバトスだけだと、鉄華団的にはちょっと問題がないか?」

「え? いや、それはそうですけど……新しくMSを購入する予定はありませんよ?」

「グレイズを何機か融通しても構わないが、どうする?」

「……」

 

 俺のその言葉は、オルガにとって完全に予想外だったのか、黙り込む。

 無理もないか。

 オルガに……というか、このオルフェンズ世界の住人にとっての一般的な常識から考えれば、こうも簡単にMSを渡すといったような事を言うとは思わなかったのだろう。

 

「アクセルさん、それ……本気で言ってるんですか?」

「それなりに本気なのは間違いない」

「冗談だったらよかったんですけどね。……でないと、本気ですか? と……いや、正気ですか? と聞きたくなってしまうんですがね」

 

 そう言いつつ、オルガは俺を鋭い視線で見てくる。

 今まではともかく、俺がMSを渡すという事で一体何を考えているのか分からなくなり、警戒しているのだろう。

 

「生憎……あるいは幸いか? 取りあえず本気だよ。ただ、別にこれは何の意味もなく言ってる訳じゃない。知っての通り、シャドウミラーにもそれなりに腕利きのMSパイロットがいるが、それはあくまでも昌弘達……ようは、子供達だ。それなら、同じ阿頼耶識を使えるんだし、鉄華団の方が大人な分、戦いはやれると思わないか?」

 

 ある意味、俺が言ってるのはかなりの無茶だろう。

 ようは、鉄華団の方が年上だから、お前達が実戦に出ろと言ってるようなものなのだから。

 実際、オルガも今の俺の言葉を聞いて同じように思ったのだろう。

 不服そうにしながら口を開こうとし……

 

「ちなみに、俺とマーベルはMSで戦闘に出る。どのくらいの実力なのかは、昨夜の戦闘で見せただろう? それに俺の実力はクランクとの戦闘でも見せた筈だ」

 

 その言葉に、何かを言おうとしたオルガの動きが止まる。

 

「つまり、俺達を捨て駒にするつもりはないと?」

「そんな事を思っていたのか? いや、今のやり取りを考えると、そんな風に思われてもおかしくはないか。ただ、今も言ったように俺とマーベルも出る。そう考えれば、捨て駒にするとかそういう風には思わないだろう?」

「それは……まぁ」

 

 オルガは俺の言葉に完全に納得した様子ではなかったが、それでも先程の鋭い視線は消えている。

 俺とマーベルも戦場に出るという事で、自分達が捨て駒になる訳ではないと納得したのだろう。

 実際、俺は別に最初から鉄華団を捨て駒にするつもりはない。

 もっとも、敵はギャラルホルンだ。

 場合によっては、昌弘達も戦場に出すような事にならないとも限らないが。

 

「けど……それなら、何でそこまで俺達にしてくれるんです?」

「これも言ったと思うけど、俺にしてみればMSを渡すのはそこまで特別な事じゃない。その気になれば、MSを調達するのは不可能じゃないしな」

 

 それでも俺が侵入した基地についての話は、恐らく他の基地にも伝わっている筈だ。

 俺が侵入した基地の司令官が、不祥事を少しでも隠したいと考えて連絡をしていない可能性もあるが……それはそれで、難しいだろう。

 何しろ今は、革命の乙女たるクーデリアの存在によって火星全土で独立運動が活発に起こっている。

 ギャラルホルンにしてみれば、その独立運動が過激になった時には出撃する必要が出てくる。

 その時になって、実は出せるMSがありません。あるいはMSが少数しか出せませんという事になれば、どうなるか。

 それを考えれば、俺が侵入した基地の司令官もすぐに火星のギャラルホルンのトップであるコーラルに連絡するだろう。

 ……まぁ、クランクの話によれば、そのコーラルという人物も現在地球からやって来た監査員達により監査されているので、それに対処するのは難しいかもしれないが。

 

「俺がどうやってMSを入手してるのかについては、さっき言ったと思うけど、今は話せない。地球に向かうようになったら、話せるかもしれないが」

「……その、詳しいことは分かりませんが、MSの件についてはすぐに返事が出来ません。皆と相談させて貰っていいですか?」

「ああ、別にそれでも構わないぞ。この件については無理にとは言えないし。それに……こうして勧めておいてなんだが、グレイズを堂々と使っていれば、当然ながらギャラルホルンには今以上に目を付けられるだろう」

「そうでしょうね。ただ、もう俺は決めたので。ミカを……いや、皆と一緒にどこまでも進むって。ここで止まっていたら、それは意味がない。今は行けるところまでとにかく行くって」

 

 オルガのその言葉は、強い決意が込められていた。

 こういうオルガだからこそ、鉄華団の面々は慕っているんだろう。

 

「そうか。それがお前達のやりたい事なら好きにすればいい。とにかく、今は地球に行く準備を進める必要が……」

「ごはん、出来ましたよー!」

 

 俺の言葉の途中で、不意に格納庫にそんな声が響く。

 その声は女の声。

 鉄華団の中で聞くのは非常に珍しい声だ。

 というか、俺が知ってる限りだと鉄華団……というか、CGSの時から女はいなかった筈だ。

 どこから出て来たんだ?

 そう思いながら、女の方を見る。

 そこにいたのは、小柄な女。

 少し離れた場所には、何故かクーデリアとフミタンの姿もあった。

 ……応接室での話が終わった後で格納庫に来なかったと思ったら、どうやら料理をしていたらしい。

 ただ、フミタンはともかく、クーデリアは料理が出来るのか?

 お嬢様育ちのクーデリアだけに、料理とかは……うーん、あるいは教育の一環として料理をしている可能性もない訳じゃないのか?

 もっとも、自信なさげにしているクーデリアを見れば、料理が得意な訳ではないというのは何となく理解出来るが。

 

「オルガ、あの女は?」

「え? ああ、アトラですか。あいつはCGSの時から食料を持ってきてくれてる奴です。一応今朝からいたんですが……アクセルさんとは会わなかったんですか?」

「俺は初めて見るな」

 

 まぁ、昨夜はギャラルホルンの襲撃、午後からはグレイズのコックピットの換装の件であったり、クランクとの決闘、鵬法璽によってクランクが俺に絶対服従となり、それからギャラルホルンの内情について色々と聞いたりしていた。

 これ以上ないくらいに、忙しかったのだ。

 あの女……アトラがいても、俺と会うようなことはなかったのだろう。

 

「そうですか。じゃあ、後で紹介しますね。今は色々と忙しいので、料理とか手伝って貰ってるんですよ」

 

 そう言うオルガに頷き……三日月に嬉しそうに声を掛けている光景を見て、何となくそういう事だろうと理解するのだった。

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