転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3887話

「その……どうですか?」

 

 クーデリアがそっと聞いてくる。

 

「美味しい? 美味しい?」

「クーデリア、初めて料理をしたんだよ。美味しいって言ってやりなよ」

 

 そしてクーデリアの横には、これまた初めて見る2人の女……というか、少女? 子供?

 そっくりなのは、双子だかららしい。

 そして、何とあのビスケットの妹なんだとか。

 ビスケットは太っているので、あまり似ている印象がないが……だからといって、別にここで俺に嘘を吐く必要もないしな。

 ともあれ、この双子は食堂でアトラと一緒に料理の手伝いをしていたらしい。

 その時、フミタンとも仲良くなったのだろう。

 ……この2人の様子を見ると、友達というよりは師匠とかそんな感じに思えるけどな。

 

「あ、これクーデリアが切った奴だ!」

 

 スープの具材……ジャガイモと思しき野菜を見て、双子の片方が断言する。

 明らかに他の具材よりも大きく、不揃いなのを見れば、慣れていない者が切ったというのはそうおかしな話ではない。

 こういうスープとかに煮込み料理なら……いや、煮込み料理に限らず、料理をするのなら具材の大きさは均一にするのが一般的だ。

 火の通り具合を揃える事により、半生だとか、火が通りすぎるとか、そういうのをなくす為に。

 勿論、プロの料理人でもないのだから、あくまでも具材の大きさはある程度一緒というくらいだ。

 しかし、それを考えた上でもクーデリアが切ったというのは大きい。

 そのジャガイモを口に運び……

 

「うん。まぁ、食べ応えはあるな」

 

 幸い、しっかりと火が通っており、半生という事はない。

 一口で食べるのは難しいが、別にどうしても一口で食べないといけないって事はないんだし。

 料理の下手な奴の中には、何故か基礎が出来てもいないのに自分流で料理をするなんて者もいる。

 ペルソナ世界の山岸とかがそうだな。

 ……恋人の有里の胃が無事なのは、ある意味これも原作主人公の実力なのかもしれないな。

 ふとそんな風に思う。

 ちなみに、山岸だけではなく、マヨナカテレビの件で俺が関わった面々も……うん。まぁ、色々と酷いらしい。

 幸いなことに俺は特に問題なかったが、何でもカレーを作る筈がダークマターを作ったとか何とか。

 花村達はご愁傷様だな。

 普通なら、雪子とかのような美人の手料理というのは食べたいと思う者も多いのだろうが。

 

「クーデリア、美味しいって」

「美味しいって、クーデリア」

 

 双子が揃ってクーデリアにそう言う。

 クーデリアも嬉しそうに笑っている。

 この様子だと、もしかしたら料理がクーデリアの趣味になるのかもしれないな。

 それはそれで悪くはないと思うけど。

 というか、今のクーデリアは革命の乙女として非常に人気が高い。

 そんなクーデリアが作った料理となると、それこそ食べたいと思う者は多いかもしれない。

 

「アクセルさん、ちょっといいですか? お嬢さんも」

 

 料理を食べていると、不意にオルガがそう声を掛けてくる。

 どこか困った様子なのは……もしかして何かあったか?

 

「どうした?」

「その……ここだとちょっと」

 

 オルガが言いにくそうにしているのを見て、俺はクーデリアに視線を向ける。

 するとクーデリアもオルガに何かあったのではないかと理解し、俺の言葉に頷くのだった。

 

 

 

 

 

「それで? 何があったんだ?」

 

 一応ということで、応接室に移動した俺とオルガ、クーデリア、フミタン。

 フミタンは別に呼ばれていなかったのだが、メイドとしてクーデリアを1人にする訳にはいかないと判断したのだろう。

 

「トドから、地球までの案内をオルクス商会に頼んでみたらどうかって話があって。他にも、地球に向かう際に色々と必要なサポートも整えると言ってます」

「……どういう事だ? 地球までの案内人はクランクがいるだろう?」

 

 そもそも俺が鵬法璽を使ってまでクランクを味方に引き込んだのは、地球までの案内役であったり、地球に到着してからも色々と便宜を図って貰おうと思っての事だ。

 なのに、何でいきなりそんな事になる?

 トドというのは、確かあの小悪党の名前だった筈だ。

 俺を見ると即座に逃げ出すような奴が、何故わざわざ俺に逆らうような事をする?

 

「すいません、こっちの管理不行き届きです。ただ……トドが言うには、地球までの案内人も、1人では何が起きるか分からないから、複数用意しておくに越した事はないと。それに案内人をシャドウミラーに出して貰うとなると、借りが増えるって言っていて」

「……それ、本気で信じたのか?」

「え? どういう事ですか?」

 

 クーデリアは理解出来ていない様子で、そう尋ねてくる。

 フミタンに視線を向けると、その視線を受けたフミタンはクーデリアの耳元で何かを囁く。

 それを確認すると、俺はオルガとの話を続ける。

 

「それで? あのトドって奴が言ってる内容だ。正直なところ、俺達を嵌めて自分が利益を得ようとしているようにしか、俺には思えないんだが?」

「そうですね。正直なところ俺達も同じです。ただ……トドは自分から鉄華団に残った以上、証拠もなしにどうにかする訳にはいきません」

 

 この辺、オルガの固いところでもある。

 もしこれが海賊だったら、それこそ疑わしきは罰するという事で、そのまま追放したり、もしくは最悪殺したりしてもおかしくはない。

 しかし、オルガの場合はトドが怪しいのは間違いないが、それでもこうして鉄華団に残った以上、怪しいからといって首にする事は出来ない。

 ……それが退職という意味での首なのか、物理的な意味での首なのかはともかく。

 というか、もし俺がトドの立場ならここまで露骨に怪しい行動は見せず、それこそ鉄華団の情報を継続的に外……この場合はギャラルホルンだろうが、そこに流して金を手に入れると思う。

 もしくは、バルバトスを……いや、あれは阿頼耶識対応のコックピットだから、阿頼耶識の手術をしていないトドには使えないか。

 そうなると、もしバルバトスを盗むにしても、自分で操縦するのではなく、誰か子供を言いくるめて運び出すか、あるいはMS用のトレーラーとかそういうのを使って運び出す必要があるが……トドの性格を考えると、そういう事はわざわざする必要がないか。

 

「とにかく、今回の件でトドがこっちを嵌めようとしたら、それを理由に首にしようという訳か?」

「はい、話の流れからすると、シャドウミラーも思い切り巻き込むような事になると思うんですが」

「そうなったらそうなったで仕方がないだろう。こっちは構わない。獅子身中の虫がいる状態で地球に向かうような事になるのは、それはそれで面倒だしな」

 

 いつ裏切るのか分からない以上、常に注意を割いておく必要がある。

 量産型Wやコバッタがいれば、ある程度は対処出来るのだが、今はそれもいない。

 となると、炎獣で見張っておくとか?

 ただ、炎獣の身体は白炎で出来ている以上、どうしても目立つ。

 トドも、炎獣を見ればそれが何なのかと疑問に思うだろう。

 

「ありがとうございます。なら、取りあえず話に乗った振りをして……という事で」

「そうだな。トドがこのまま鉄華団の中にいるよりは、出来るだけ早く処分した方がいい」

 

 俺の言葉にオルガも頷く。

 オルガにとっても、トドは出来るだけ早く追い出しておきたい相手なのだろう。

 寧ろ、早めに尻尾を出してくれてラッキーといった感じか。

 今はどうでもいいが、地球に近くなってから、あるいは地球に降りてから何か問題を起こされたら、それはそれで面倒だし。

 

「じゃあ、そういう事で。この話はこれで終わりだな。他に何かあるか?」

「いえ、トドの件でアクセルさんの了解を貰えれば、それで問題はありません」

 

 食堂で話すのではなく、こうしてわざわざここに連れてきて話したのは、万が一にもトドに聞かれないようにする為だったのだろう。

 

「どういう風に処分をするのかは分からないが、出来るだけ態度には出さないようにな。あのトドってのは、小悪党だけに自分の危機には敏感っぽい。もし自分が嵌められそうになってると知れば、即座に逃げ出してもおかしくはないぞ」

「気を付けるつもりですが、そうなったらそうなったで、トドがいなくなるので構いませんよ」

 

 そう言うオルガは、トドについては本当にどうでもいいと思っているらしい。

 

「話は分かりました。ですが、そのトドという人は三人だけ残ってくれた大人の1人なのでしょう? 裏切るとは思いたくないのですが」

 

 フミタンから諸々の事情を聞いたクーデリアが、そう言う。

 シーラから色々と習っている筈だが、まだ甘いな。

 まぁ、この甘さ……優しさではなく甘さが、ある意味クーデリアの特徴らしいのだが。

 

「お嬢さんの言いたい事は分かるが、普段の……CGS時代のトドを知ってると、そういう風には思えないんだよな」

「そう、なのですか?」

 

 この辺は、話では聞いていても実際にどういう風に参番組が扱われていたのかをあまり見ていないクーデリアだからこそなのかもしれないな。

 

「火星の現状を変えたいのなら、もっと色々と見た方がいい」

「あ、そう言えば、うちにビスケットがいますよね? その婆さんが農場をやってるので、明日にでも見に行ったらどうです?」

 

 オルガが思いついたといった様子でそう言ってくる。

 農場……農場か。

 この辺はオルフェンズ世界の技術力の凄いところだよな。

 マクロス世界程とまではいかないが、かなり高いテラフォーミング技術を持っている。

 もっとも、火星に移住がされていたのは厄祭戦の前らしいので、テラフォーミング技術が今もまだ残っているのかどうかは、ちょっと分からないが。

 ともあれ、テラフォーミングによって火星でも普通に農業をやれているというのは、他の世界を知っているだけに、普通に凄い。

 

「アクセル、どうしますか? 出来れば農場も見たいのですが」

「俺も見たいから、異論はない」

 

 火星にやって来てからそれなりに経つが、火星で行われている農業というのは俺も見た事がない。

 それならちょっと見てみたいと思うのは、そうおかしな話ではないだろう。

 

「ちょうどビスケットや三日月達も明日は農場に行くと言ってましたので」

「……三日月も?」

 

 ビスケットが農場に行くのは分かる。

 その農場は、ビスケットの祖母がやっているというのだから。

 だが、何故三日月も農場に行くのか。

 それを疑問に思っていると、オルガは嬉しそうに……それはもう、まるで自分の息子か弟の自慢をするかのような笑みを浮かべ、口を開く。

 

「三日月の奴、農業に興味があるみたいなんですよ。以前からそれなりに農場に顔を出していましたから。丁度トウモロコシの収穫がそろそろなので、それの手伝いに行きたいんでしょう」

「トウモロコシか。……その割には、あまりクリュセでトウモロコシとかを売ってるのを見たことがないけど」

 

 トウモロコシは、そのまま食べてもいいし、粉にして小麦粉のような感じで使う事も出来る。

 採れたのトウモロコシは、それこそ生で食べても美味いらしい。

 クリュセにはそれなりに行くが、そういうのを売ってるのを見た事はない。

 あるいは単純に俺の探し方が悪いだけかもしれないが。

 そう思っていると、数秒前の笑みを消し、オルガは真剣な表情で首を横に振る。

 

「いえ、その……桜農場で作っているトウモロコシの殆どはバイオ燃料の原料として買い叩かれるので、食用ではないんです」

 

 買い叩かれる、か。

 オルガがそういう風に言うという事は、恐らく本来の値段よりもかなり安く買われているのだろう。

 食料として売らないのか?

 そう思ったが、そう出来るのなら最初からしているだろう。

 そうしていないのは、何らかの理由があっての事の筈だ。

 具体的にそれがどのような理由なのかは、生憎と俺にも分からないが。

 火星の食料は決して豊富という訳ではない。

 そう考えると、食用のトウモロコシとかがあってもいいような気がするが。

 

「それでも、ビスケットの婆さんは農場を続けている訳だ」

 

 どの世界で……というか、結構な世界の日本での話だったが、農業をしてもそこまで儲けは出ないので、半ば趣味でやってる者もいるとか、そういうのを聞いた事があるな。

 ビスケットの婆さんも、そういう意味で半ば趣味といった感じなのか。

 

「ええ。ビスケットの妹達を、少しでもいい学校に入れてやりたいって」

「火星だと、その辺は大きいのかもしれないな」

 

 今のままだと、こう言っては何だが貧乏農家でしかない。

 あの双子に少しでも裕福な生活をさせる為には、少しでも良い学校を卒業して、そして良い場所に就職する必要があると、そう考えたのだろう。

 実際、その考えはそう間違ってはいない。

 今の火星……植民地という火星においては、まともな生活をするというのは相応に難易度は高いのだ。

 だからこそ、ビスケットの婆さんは……あるいはビスケットも、妹の為に少しでも金を貯めておきたいと思っている……のかもしれない。

 そんな風に思いつつ、俺はオルガから話を聞くのだった。

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