転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3897話

「これ……美味いですね」

 

 オルガがハンバーガーを食べながら、素直にそう感想を口にする。

 他の面々……ビスケット、ユージン、昭弘の3人も、マーベルとクーデリアが作ったハンバーガーを美味そうに食べている。

 こちら側の人員は、俺とクランク、マーベル、シーラ。

 そこに今回の依頼主であるクーデリアとフミタンの姿があった。

 現在俺達がいるのは、イサリビのブリッジだ。

 つまり、他にもブリッジクルーとして働いている面々もいるのだが、そっちの連中は自分の仕事に集中している。

 これからの事についての話をしているのが、ここにいる面々だった。

 

「マーベルの国の料理だ」

「ふーん。……これが」

 

 そんな風にやり取りをしていると、クランクが微妙な表情でハンバーガーを見ていた。

 オルガとかならともかく、クランクはギャラルホルンの出身だ。

 それだけに、ハンバーガーがどこの料理かというのは容易に想像出来るのだろう。

 もっとも、以前何かで見た感じだと、ハンバーガーの起源はアメリカじゃないらしいけど。

 ドイツであったり、中東であったり、ちょっと珍しい意見としてはロシアが起源という説もある。

 とはいえ、一般的なイメージとしては、ハンバーガーといえばアメリカだろう。

 他にもピッツァじゃなくてピザ……土台の部分が薄いのではなく、食べ応えのあるしっかりとしたパン生地の奴とか、そういうのもアメリカを思い浮かべる。

 

「出来れば、全員の分を作りたかったのですが……」

 

 申し訳なさそうなクーデリア。

 時間もないし、材料もそこまで多くはなかったので、仕方がない。

 とはいえ、だからといってイサリビの他の面々には何もない訳ではなく、アトラの作った料理……というか、弁当パック? そんなのを配って回っている。

 そっちもアトラが作っただけあって、相応に美味いのは間違いなかった。

 

「アトラの弁当を食べてるんだから、大丈夫だろう。それより……トドとオルクス商会の件は取りあえずこれでいいとしてだ。まず向かうのは高密度デブリ帯だな。そこでガランとジャコバと一旦合流して、戦力を整える必要がある」

「そうですね。地球までの案内人は、アクセルさんの部下になったその男が分かるでしょうし」

 

 オルガがそう言ってクランクを見る。

 その言葉からは、クランクに決して好意を持っている訳ではないのは明らかだ。

 ……いやまぁ、当然か。

 クランクはCGSを襲撃したのだから。

 その戦いで、最終的にはCGSを乗っ取って鉄華団を作ったが、あの襲撃で何人かの死人も出ている。

 オルガにしてみれば、そう簡単にクランクを許せる筈もなかった。

 それはユージンやシノ、昭弘も同様なのだろうが、オルガに任せているのか、何も言う必要はない。

 実際、クランクは俺に忠誠を誓ったという事で、俺の預かりになってはいる。

 なってはいるが……うん。まぁ、この辺は慣れていくしかないだろう。

 幸いにも、クランクはあのアインという奴を見れば分かるように、面倒見はいい。

 地球までの旅で鉄華団の面々を鍛えたりすれば、それによって多少は友好的な関係になれる……といいな。

 

「そうだな。クランク、大丈夫か?」

「はい。幸いにも高密度デブリ帯での移動については問題ないと聞いていますので。地球に近付いてからは任せて下さい」

 

 クランクは元ギャラルホルン。

 それだけに、アリアドネを使った航路は知ってるだろうが、裏道とでも呼ぶべき高密度デブリ帯での移動についての知識はない。

 いや、完全にない訳ではないのだろうが、それでも決して地球に案内出来るまでのものではない。

 だが……シャドウミラーは、元ブルワーズだ。

 そしてブルワーズというのは、高密度デブリ帯での行動を主にしていた海賊。

 つまり、高密度デブリ帯についての知識はきちんとある。

 だからこそ、俺はガランとジャコバを派遣してエイハブ・リアクターの収集を命じていたんだし。

 そういう意味で、地球の近くまで移動するのは元ブルワーズの面々が。

 地球近くまで移動したら、クランクが案内役となる。

 そういう意味では、全く問題はない。

 

「そんな訳で、いつまでもこの辺にいないで、もうそろそろ地球に向かわないか?」

 

 ちなみに現在、グランもイサリビも既に方舟から出港している。

 ただし、こうして打ち合わせがあるので現在は宇宙空間で待機した状態な訳だ。

 ……そういう打ち合わせは、本来なら出港する前にやるべきなのだろう。

 だが、方舟側に出来るだけ早く出港して欲しいと言われれば、断る訳にもいかない。

 方舟の従業員にしても、ここで下手に俺達を匿うとギャラルホルンと敵対をするという事になりかねないのが分かっているからこその行動だろう。

 俺達は既にギャラルホルンと明確に敵対しているので今更の話だが、方舟の者達の場合はそういう訳にもいかない。

 ちなみに、いつの間にか三日月とシノもブリッジに姿を現していたが……ハンバーガーは既にないんだよな。

 

「そうだな。それで……」

「ん? ちょ、オルガ。こっちに近付いてくる船を発見した! 停止するように言ってきている!」

 

 ブリッジクルーのうち、レーダーを担当していた男がそう叫ぶ。

 

「ギャラルホルンじゃねえのかっ!?」

 

 ユージンがそう叫ぶが……どうだろうな。

 さっきの戦闘で、ギャラルホルンは結構な被害を受けた。

 それを思えば、ここでわざわざまたギャラルホルンが出てくるとはちょっと思えない。

 いや、アインならその可能性はあるのか?

 クランクを殺した――と思い込んでいる――俺を許せないとか。

 とはいえ、クランクの話によればアインは末端も末端だ。

 そもそも地球人で構成されているギャラルホルンだが、アインはギャラルホルンの士官の父親と、火星の女の間に出来た子供だ。

 その火星の女というのが、具体的にどういう相手なのかは分からない。

 娼婦の類なのか、それとも一般人なのか、もしくは火星の中でもそれなりに地位の高い家の女なのか。

 その辺は俺にもちょっと分からない。

 だが、とにかくアインはギャラルホルンの中でも底辺に近い存在だったのは間違いないだろう。

 ……だからこそ、自分に親身になってくれたクランクにここまで心酔したのかもしれないが。

 とにかくアインがギャラルホルンにおいてそのような立場である以上、独断で追撃をしたりといった事はまず不可能だろう。

 となると、ギャラルホルン側で追撃を決めた?

 とはいえ、待ち伏せていた時であっても俺達に勝つ事は出来ず、結構な数の損失を出したのだ。

 ここで何の策もなく追撃をしてくるという事があるか?

 

「えっと、これがこうで……あれ? えっと……」

「代わって下さい。私がやります。お嬢様、構いませんか?」

 

 イサリビのブリッジに入ったばかりで、まだ慣れていないのだろう。

 鉄華団の男が戸惑っていると、フミタンがそう声を掛ける。

 続けてクーデリアに許可を求めるのはフミタンらしいが、クーデリアも素直にその言葉に頷く。

 この辺は、シャドウミラーと鉄華団の大きな違いだよな。

 シャドウミラーはブルワーズ時代に強襲装甲艦を操縦していた者達の多くが残っているので、全く問題なく操縦出来ている。

 だが、鉄華団の面々はイサリビ――当時はウィル・オー・ザ・ウィスプだったか――の存在は知っていても、ろくに操縦はしたことがなかったのだろう。

 だからこそ、こうして操縦を始めたばかりではまだ慣れていない。

 暫く操縦をしていれば、やがて慣れるとは思うんだが。

 

「それは……オルガ?」

「構わねえ。そっちの人が出来るのなら、やって貰え」

 

 オルガの指示に従って男が席を譲ると、フミタンがそこに座る。

 そして素早く機器を操作して情報を確認していく。

 代わって欲しいと言うだけあって、その仕草はかなり手慣れたものだった。

 クーデリアのお付きというのは、こういう能力も必要なのか?

 あるいはバーンシュタイン家のメイドは最低限こういう技能を持っていないと駄目とか、そういう感じなのかもしれないな。

 そんな風に思っていると……

 

『ガキ共よぉ……俺の船を返せぇっ!』

 

 次の瞬間、映像モニタに表示されたのはマルバの顔だった。

 それこそ、額に青筋を浮かべて怒り狂っているといった様子で船を返せと叫び、それからも不満を次々に口にするマルバ。

 俺やマーベル、シーラ、クランク、クーデリア、フミタンといった鉄華団……いや、マルバにしてみれば参番組の部外者がイサリビのブリッジにいるのにも、全く気が付いた様子はない。

 俺はそんなマルバの顔を見て、懐かしく……思う訳もない。

 何しろオルガ達がCGSを乗っ取ってから、まだそんなに時間は経っていない。

 その前に……それこそ、クーデリアを地球に運ぶ依頼の件で会ってから、そこまで時間は経っていないという事を意味している。

 とはいえ……疑問もある。

 俺がオルガから聞いた話によると、一応マルバは納得してオルガにCGSを譲り渡した筈だ。

 勿論それが本当に心の底から納得しての言葉ではないのだろうが、それでもオルガに会社を譲り渡したのは事実。

 そうである以上、こうして改めて会社の資産であるイサリビを返せと言ってくるのは、どうなんだ?

 そもそも、マルバが乗っている船はどこから入手したんだ?

 イサリビ以外に、別名義でマルバが船を持っていたのか?

 マルバの性格を考えると、そういう事をしていてもおかしくはない。

 だがそうなると、次はその船を動かす者達をどこから用意したのかという疑問がある。

 すぐに思いつくのは、元CGSのメンバー……具体的には壱番組や弐番組の面々といったところか。

 

『この泥棒ネズミどもが! 俺のウィル・オー・ザ・ウィスプを、今すぐに返せ! アクセル、てめえもだ! この恩知らずが!』

 

 画面にアップになったマルバの顔を見たオルガは、フミタンに向かって視線を向ける。

 するとフミタンはその視線の意味をすぐに理解したのだろう。

 即座に通信を切る。

 いや、正確にはメインスクリーンからサブスクリーンに移したといった感じだ。

 そこで何故かユージンがマルバと言い争いを始めていた。

 というか、恩知らずって……俺は何かマルバに恩を感じるような事があったか?

 合同訓練とか? いや、けどあれはノブリスからの手回しでやった事だし。

 

「すいません、アクセルさん。その……まさか、マルバの奴が……」

 

 オルガがそう言い、頭を下げてくる。

 オルガにしてみれば、まさかここでマルバが出てくるとは思っていなかったのだろう。

 それを言うのなら、俺もまたここでマルバが出てくるとは思っていなかったが。

 とはいえ、ギャラルホルンの追撃かと思っていただけに、そういう意味ではマルバで助かったと言うべきか。

 

「この件についてはそこまで気にしなくてもいい。まさか、マルバにこれ以外の船があるというのは、かなり予想外だったし」

 

 オルガ達がCGSを乗っ取るのに、穏便な手段を使った訳ではないのは、俺も予想していた。

 いや、この場合は予想ではなく確信と表現すべきか?

 それだけに、CGSを乗っ取られた追い出されたマルバが素直に納得している訳ではないのは俺にも理解出来ている。

 そういう意味では、この件は仕方がないのだろう。

 

「こちら、通信を送ってきた船の座標です」

 

 フミタンがメインスクリーンに通信を送ってきた船の位置を示した映像を出す。

 それは……

 

「完全に後を取られてますな」

 

 映像を見たクランクが、冷静にそう言う。

 この状況……明らかに俺達と敵対している者達が、イサリビやグランの後ろにいるのだ。

 これは普通に考えれば、かなりのピンチだろう。

 そんな風に考えていると、不意にサブスクリーンに映し出されていたマルバの顔が無理矢理移動させられる。

 

『ちょっと下がってな、おっさん』

 

 その言葉と共に映し出されたのは、スーツ姿の男だ。

 船の中にいるのに帽子を被っているのは……拘りのお洒落という奴なのだろう。

 黒の長髪が似合っており、見た感じ切れ者といったところか。

 マルバはそんな男の様子に、小さく謝る。

 そんな態度を見れば、どっちが主導権を握っているのかは明らかだった。

 

『さっきから全然話が進んでねえ。欠伸が出るぜ。……なぁ?』

 

 そう言い、男は映像の向こうにいる俺とオルガ、他にも集まっている面々に声を掛ける。

 俺を見た瞬間に少しだけ眉を動かしたのを見ると、恐らく俺……というか、シャドウミラーについては知っているのだろう。

 火星で行われたMWの模擬戦の大会で優勝したというのは、かなり知られている。

 この男が火星の住人なら……あるいは住人ではなくても、火星で情報収集をすれば、俺の事はすぐに分かるだろう。

 そんな男の様子を見ていると、オルガがこちらに視線を向けてくる。

 俺とオルガ、どちらが話すかと視線で尋ねているのだろう。

 これは難しいところだ。

 シャドウミラーと鉄華団では、シャドウミラーの方が立場や実力は上となる。

 所有しているMSや船の数で考えても当然だろう。

 だが、マルバの関係者はオルガだし、そしてこのイサリビは鉄華団の船だ。

 そんな訳で任せると視線を向けると、オルガは頷いて口を開く。

 

「あんたは?」

『俺か? 俺は名瀬・タービンだ』

 

 男……名瀬は、被っていた帽子を手に取ると、そう自己紹介するのだった。

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