転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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番外編144話 ルナ・ジオン軍の艦艇

 UC世界にあるルナ・ジオンの本拠地である月。

 その月には幾つかの国営企業がある。

 そんな中にはニュータイプ研究所のアルテミスといった特殊な企業……いや、研究所もあるが、そんな中でも一番大きな企業となると、それは軍事企業のディアナとなる。

 ルナ・ジオン建国の時に、ジオン公国にあるジオニック社、ツィマット社、MIP社といった企業から優秀な技術者を引き抜き、出来たのがディアナだ。

 実際にはルナ・ジオン建国前から協力をしている技術者がいたり、ルナ・ジオン建国後にディアナがまだ出来る前から所属していた技術者がいたり、1年戦争が終わった後でルナ・ジオンに逃げて来た技術者がいたり。

 また、他にも連邦を嫌い、かといってジオン公国にも行きたくないと思っていた技術者がやって来たりと、何だかんだとディアナはかなりの大企業となったのは間違いない。

 そんな大企業のディアナは様々な研究や開発が進められている。

 一番の花形は、当然のように新型MSやMAの開発や研究をしている部署だろう。

 それ以外にもMSやMAに関する諸々の研究や開発が行われている。

 少し変わったところでは、連邦軍で開発されたマグネットコーティングについて研究をしていたり、現在ルナ・ジオンのMSで採用されている全天周囲モニタについての研究をしていたり、装甲材や各種システムについて、あるいはビームライフルやビームサーベル、実弾の銃火器やヒートサーベルといった各種武器の開発や研究もしている。

 そんなディアナの中で、あまり活気のない部署は……

 

「なぁ、戦艦についてはこれでいいとして、その下の巡洋艦とか、そういうのはどうするんだ? いつまでも引き延ばすって訳にはいかないだろ」

 

 部屋の中にいる男の1人が、苦々しげな様子で言う。

 部屋の中にいる多くの者達はその言葉に何も言えない。

 ここは、MSを運用する為の軍艦を開発する部署。

 だが、この部署はMSを開発する部署と違って現在これといった明確な結果を出せていない。

 MSとそれを運用する軍艦ではコストが違う。

 MSは数年程度で新型が開発されるものの、MSの運用艦を1隻辺り作るのに必要なコストや資源を考えると、MSと同様のサイクルで開発をするという訳にはいかない。

 それどころか、10年、20年、30年……といった長期的に使えるのがベストとなる。

 もっとも、それはあくまでも理想でしかなく、実際にはMSより長くても、精々が10年単位だろうというのが、この部署にいる者達の予想だったが。

 そんな訳で、ルナ・ジオン軍で運用される軍艦の設計や開発がこの部署の仕事だった。

 一応戦艦については、ジオン軍の開発したグワジン級をベースに改修した物を使うという事で、決定している。

 これはグワジン級が非常に優れた設計で、更にはルナ・ジオン軍では資源について気にする必要がない事から、高コストのグワジン級が選ばれたのだ。

 他にも、グワジン級はある意味で旧ジオン軍の象徴的な存在だったが故に、ルナ・ジオンがそのグワジン級を使う事で、ルナ・ジオンの偉容を見せつけるという目的もあった。

 なお、この件についてはルナ・ジオンと友好関係にあるジオン共和国からもきちんと許可を貰っている。

 寧ろジオン共和国にしてみれば、まだ世界中に存在するジオン軍の残党の敵意を連邦軍や自分達だけではなく、ルナ・ジオン軍に向けるという意味もあった。

 他にも、グワジン級の設計図や開発データが連邦軍に接収されたので、それに対する意趣返しという面もあるのだろう。

 ともあれ、そんな訳でグワジン級の改修については現在ルナ・ジオン軍でも進んでいる。

 だが……この部署にいる者達が悩んでいるのは、戦艦であるグワジン級の下、巡洋艦のような……マゼラン級に対するサラミス級のような存在だった。

 

「やっぱりムサイ級を発展させるような形だと駄目なのか?」

 

 部屋の中にいる1人がそう口に出す。

 だが、すぐにそれを他の者達が否定する。

 

「ムサイ級の件はもう却下されただろう。色々と問題の多い設計だけに、仕方がない」

 

 ムサイ級の問題。

 それは幾つもあるが、大雑把には主砲メガ粒子砲の射角が限定されているという事や、MSを射出する時にカタパルトがない事であったり、防御力が著しく弱い事。他にもMS運用艦なのにMS搭載数が少ない事といったようなものがある。

 また、巡航速度が決して速くはないのも影響していた。

 他にも欠点は幾つもあるが、大雑把にはこんなところだろう。

 もっとも、これはある意味で仕方のない事でもある。

 何しろジオン軍……旧ジオン軍がMSを開発してから、まだそこまで時間は経っていないのだから。

 MSの運用ノウハウもない中、試行錯誤の上で開発されたのがムサイ級だ。

 また、30対1、あるいは100対1、もしくはそれ以上と言われる、ジオンと連邦の国力差を考えれば、グワジン級のような戦艦ならともかく、大量に運用されるムサイ級の建設は出来るだけコストを下げる必要があった。

 それら諸々の状況を考えると、ムサイ級は寧ろ当時のジオン軍としては随分と先進的な設計だったのは間違いない。

 だが……それは当時の、だ。

 1年戦争が終わり、MSが主力となったこのUC世界においては、ムサイ級をベースに新型艦を設計するというのは無理があった。

 非常に完成の高いグワジン級と比べるのが、そもそも無理な話だろうが。

 

「チベ級を改修……は無理か」

 

 部屋の中にいた1人が、最後まで言わずに自分で自分の意見を却下する。

 グワジン級が完成するまでは戦艦という扱いだったチベ級だが、何しろその開発は古い。

 現在は輸送艦として使われているパプワ級と同時期に開発されたのがチベ級なのだ。

 当然ながらMS運用能力もない。

 ……いや、正確には1年戦争中にチベ級を改修してMSを運用出来るようにした艦もある。

 だが、それはあくまでもその場しのぎのものでしかない。

 元々がMSの運用を考えて作られなかったチベ級に、無理矢理MSの運用能力を付け足したのだから、どうしても無理が出てくる。

 この場にいる他の者達も、それは十分に分かっていた。

 分かってはいたが、それでも何かの手掛かりにはならないかと、そう思ってチベ級について口にしたのだろう。

 

「カトンボとかヤンマだっけ? あの2種類が高性能すぎるから、厄介なんだよな」

「それな」

 

 1人が悔しそうに、忌々しそうに、妬ましそうに、悲しそうに……様々な感情と共に呟くと、それを聞いた1人が声に出して同意し、他の者達も声には出さずとも頷いて同意する。

 ルナ・ジオン軍がシャドウミラーから借りている、カトンボとヤンマ。

 これは性能が高く、何よりも無人機だというのが大きい。

 ムサイ級が1隻撃破されれば、100人単位で死人が出る。

 その100人を軍人として育てる為に使ったコストを考えると、それこそ大赤字としか言いようがない。

 勿論、コバッタやバッタ、量産型Wが破壊される以上、カトンボやヤンマが破壊されても全く被害がない訳でもない。

 だが、100人の軍人を育てるコストを思えば、それらはそこまで問題ではなかった。

 しかし……そんな非常に便利なカトンボとヤンマだったが、それはあくまでもシャドウミラーから貸し出されているだけなのだ。

 今はまだいいが、将来的にどうなるか分からない以上、カトンボとヤンマに頼る訳にいかないのも事実。

 だからこそ、何とか新しい軍艦……それも戦艦ではなく、その下に位置する巡洋艦のような軍艦が必要だった。

 だが、それでいい案が出ない。

 幾つかの案はあったのだが、それでも難しいのは良い案が出て来ない事だ。

 これは別にこの部署の人員が無能だという訳ではなく、単純に求められるレベルが高いからだ。

 そうして迷っていると……

 

「ちょっといいかい?」

 

 不意に部屋の中にそんな声が響く。

 その声に、部屋の中にいた者達の視線が向けられると、全員の表情が驚愕に変わる。

 何故なら、そこにいたのは女王アルテイシアとは違う、象徴の1人……宇宙の蜉蝣の異名を持つ、シーマ・ガラハウだったからだ。

 

「シーマ様!? 何故このような場所に!」

 

 思わず様付けしつつ、それでも驚きと同等に……いや、それ以上に嬉しそうに叫んだのは、シーマのファンの1人なのだろう。

 そんな自分のファンを少し困った様子で一瞥すると、シーマはこの部署の責任者の前に行く。

 その責任者は、シーマのような人物を前に緊張しつつも、口を開く。

 

「それで、シーマさん。何の御用でしょうか?」

「この部署でちょっと苦戦していると聞いてね。てこ入れだよ」

「てこ入れ……?」

 

 一瞬、自分が何を言われたのか分からず、改めて責任者の男はシーマに視線を向ける。

 匂い立つような色気に目を、意識を奪われそうになるが、その前にシーマは持っていたディスクを男の前に置く。

 

「これは……?」

 

 無理矢理シーマから目を離し、尋ねる男。

 シーマはそんな男の様子には気が付きつつも、意図的に流して口を開く。

 

「ディアナにいるのなら知ってると思うけど、MAを開発している部署ではSEED世界にある兵器メーカーと協力して新型のMAを開発している」

 

 その言葉に、男は顔を上げる。

 先程までと違い、シーマに目を奪われつつも、その言葉に頷く。

 ディアナの中でも、その話は有名だったからだ。

 異世界の兵器メーカーとの合同事業というのは、それだけ特別な事だった。

 

「知っています」

「なら、これは知ってるかい? SEED世界において、その合同会社は連合……この世界で例えるのなら、連邦か。そこに所属している。そうなると、当然ながらこちらの世界でジオンに当たる勢力もある」

「……コーディネイターでしたか」

「正確にはザフト、もしくはプラントだね。シャドウミラーと同盟関係にあるオーブとしては、連合だけに利益をもたらすのは不味いという事で、少し問題になっていたんだ。それでこれだよ」

「……え? その、今回の件で何がどう?」

 

 話の流れが理解出来ないといった様子の男だったが、シーマは笑みを浮かべて机の上のディスクに視線を向ける。

 

「ここは軍艦を開発する部署だろう? それも今は戦艦じゃなくて巡洋艦のような感じの物を設計するだけの。そしてこの中には、それに相応しい設計データが入っている」

 

 シーマのその言葉に、男は……そして部屋の中にいた他の面々もそのディスクに視線を向ける。

 

「ただし、この世界で使うには色々と改修する必要があるから、注意するんだね。特に動力炉は絶対に変える必要がある」

「……まずは見てみたいと思います」

 

 そう言い、男はディスクをコンピュータに読み込ませる。

 するとそこにはザフトで使用されているナスカ級の姿が映し出される。

 高速MS駆逐艦、あるいは高速巡洋艦とされるナスカ級は、高速という名前がつくようにその速度が特徴だ。

 SEED世界においてアクセルが乗った新鋭艦アークエンジェル。

 そのアークエンジェルに匹敵するだけの速度を持つ。

 また、MSの搭載数も標準で6機で、電磁カタパルトによってMSの射出機構もある。

 武装は対空砲のCIWSに、ミサイル発射管、レールガン、エネルギー収束砲……といったように、多数ある。

 ムサイ級の欠点を補うには十分な性能。

 それは、この部署にいる者全員が求めていた物だった。

 

「これは……」

 

 データを見た男の口から出た言葉はそれだけだった。

 そして部屋の中にいた他の面々も、そんな男の様子を見て、データを見に来る。

 その中にはシーマを様付けで呼んだファンの姿もあったが、今はさすがに仕事の方を重要視しているのか、集中してデータを見ている。

 そのまま10分程が経過し、部屋にいた者達が一通りデータを見終わったところでシーマが口を開く。

 

「どうだい? 悪くはないと思うけど」

「そうですね。スペック的には問題ないかと。特に大きな意味を持つのは、このナスカ級というのは実際にそのSEED世界で使われているんですよね? つまり、実戦証明がされているという事です」

 

 実戦証明がされているというのは、兵器にとって大きなメリットだった。

 勿論、ナスカ級をUC世界でそのまま使う訳ではない以上、シーマが言ったように色々と改修する必要がある。

 それでも各種データを見たところ、明らかにムサイ級よりも優れている以上、これをベースに改修していくというのはこの場にいる者達にとって非常に大きな意味を持っていた。

 やる気に満ちたその言葉に、シーマは満足そうに笑みを浮かべる。

 

「そうかい。じゃあ、頑張りな。あんた達の作る軍艦には、アクセルも期待してるんだ。それを忘れないでしっかりやるんだよ」

 

 アクセルという名前を出したところで、少しだけ寂しそうな顔をするシーマ。

 狛治からの連絡をホワイトスター経由で聞いており、アクセルが無事なのはシーマにも分かっている。

 分かっているが、それでも愛する男の事だけに心配なのは間違いなかった。

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