転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3905話

 ハンマーヘッド、イサリビ、グラン。

 この3隻が現在木星に向かって進んでいた。

 最初は色々と問題もあったが、その問題も時間が経つに連れてなくなっていく。

 ……もしここにハエダ率いる壱番組や弐番組といった連中がいれば、タービンズに余計なちょっかいを出して、それによって騒動が起きたりしていただろう。

 しかし、幸いな事に現在のシャドウミラーや鉄華団に余計な騒動を起こすような者はいない。

 そんな訳で、特に問題らしい問題はなく進んでいた。

 だからこそ、この機会にという事で……俺はイサリビにいた。

 本来ならシーラやマーベルが一緒に来てもよかったのだが、シーラはグランの艦長としての仕事があるし、マーベルは最初の戦いの時に何か思うところでもあったのか、クランクとシミュレータを使った模擬戦を繰り返していた。

 ちなみに時々昭弘がその模擬戦に参加していたりするのだが、今日はイサリビに残って貰っている。

 そんな訳で、俺がイサリビの食堂に入ると……

 

「アクセルさん、よく来てくれました。それで話というのは?」

 

 オルガがそう言って俺に視線を向けてくる。

 ちなみに食堂ではアトラが働いている筈だが、今回は重要な話をするという事で、遠慮して貰っている。

 そして食堂にいるのは、オルガ、三日月、ビスケット、ユージン、シノ、昭弘といった主要な面々。

 本来ならここにメカニックから雪之丞が入ってもいいのだが、その雪之丞は現在グランにいるメカニック達からMSの整備とかそういうのについて教えて貰っており、ここにはいない。

 

「以前何度かそれっぽい話をしたが……いや、そうだな。お前達に分かりやすく言えば、火星の地上でギャラルホルンが襲撃してきた時、俺とマーベルがMSに乗って援軍に来ただろう? その件についてだ」

 

 そう言うと、オルガを含めて食堂に集まっていた面々の視線が真剣なものになる。

 まぁ、無理もないか。

 鉄華団――当時はCGS――の拠点がギャラルホルンによる奇襲を受けた中で、いきなり俺とマーベルがMSに乗って現れたのだから。

 シャドウミラーと鉄華団の拠点が隣だとはいえ、歩いて数十秒といったような隣ではない。

 例えるのなら、北海道の田舎にあるような意味での隣。

 もしくは、それのもっと大規模な奴。

 そうである以上、そのような状況で俺達がMSに乗って援軍に来るというのは、普通なら不可能なのだ。

 だが、俺達はそれをやった。

 それがどうやって行われたのか、鉄華団の面々にしてみれば気になるのは当然だろう。

 

「聞かせて下さい。一体どんな手段を使ったんです?」

 

 皆を代表してオルガが尋ねてくる。

 他の面々も、言葉には出さないものの、興味津々といった視線を俺に向けてくる。

 

「そうだな。ここで勿体ぶったりしても、意味はない。なら、素直に俺の秘密を話そう。……あれは魔法だ」

「……魔法?」

 

 俺の言葉を繰り返す用に、オルガが言う。

 

「そうだ。魔法。……ちなみに聞くけど、魔法というのを知らない奴はいるか?」

 

 そうして聞くが、一応全員が俺の言ってる意味……魔法の言葉の意味は分かるらしい。

 スラム街出身の少年兵であったり、ヒューマンデブリであったり。

 そういう者達が大半である以上、もしかしたら魔法という言葉そのものを知らない者がいるのではないかと思ったが、そんな心配はいらなかったらしい。

 

「それは、その……冗談か何かで? 何かの例えとか?」

 

 ああ、なるほど。そういう風に認識するか。

 実際に何かに優れている者を、魔法使いだとか魔術師だとか、そういう風に表現する事はそれなりにある。

 オルガにしてみれば、本当の意味の魔法使いであるというよりも、そういう意味での魔法使いなのだろうと思ったのだろう。

 そんなオルガを見ながら、パチンと指を鳴らす。

 次の瞬間、指を鳴らした右手が白炎となり、その白炎からリスの炎獣が生み出される。

 尻尾がかなりの大きさを持つリスの炎獣は、テーブルの上で周囲の様子をじっと確認していた。

 

「これは……」

「嘘だろ!?」

「マジか」

 

 オルガ、ユージン、シノがそれぞれ驚きの声を出す。

 ビスケットや昭弘は、声も出せない状態で炎獣を見ている。

 三日月は……意外な事に、特に興味らしい興味を炎獣に向けていない。

 炎獣を見てもそこまで驚かないのは、普通に凄いな。

 あるいは、これが植物型の何かなら畑に興味のある三日月だけに、もう少し興味を持ったかもしれないが。

 

「これは炎獣。その名の通り、炎で出来た獣だ」

「いや。でもその……炎が白いってのは?」

「俺の炎は普通の炎と違って白いんだよ。まぁ、そういうものだと認識してくれとしか言えない」

 

 そう言うと、オルガや他の面々は俺が生みだした炎獣をじっと見る。

 

「な、なぁ、アクセル。この炎獣? って言ったか? こうしてテーブルの上にいるけど、燃えたりしないのか? 炎で出来てるんだろ?」

 

 炎獣に興味津々といった様子のシノが聞いてくる。

 その目には強い好奇心があった。

 

「問題ない。それどころか、人が触れても問題はないぞ。敵を相手にしたら話は別だけど」

「マジか? ……じゃあ、ちょっと触ってもいいか?」

「構わない」

 

 俺がそう許可を出すと、シノは炎獣にそっと手を伸ばす。

 リスの炎獣も、シノが自分に対して敵対的な行動を取るとは思っていないのか、じっとしている。

 ……まぁ、もし何かを勘違いしてシノに攻撃しようとしたら、俺が止めるが。

 

「うわ……何だこの感触。炎? これが炎にこうして触れているって感じなのか?」

 

 そう言うシノの言葉は、驚きに満ちていた。

 無理もないか。

 普通なら人が炎に直接触れるといった事は出来ない。

 いやまぁ、触れても火傷するだけだし当然だろうが。

 もしくは、耐熱性のグローブとかを使えば炎に触れられるだろうが、自分の手で直接炎に触れている訳ではない以上、炎獣のように炎に触れる感触なんてものはないだろう。

 

「ちょっ、おい、シノ。俺にもちょっと触らせてくれよ」

 

 シノの言葉に、ユージンも好奇心を刺激させられたのだろう。

 シノに撫でられているリスの炎獣にそっと手を伸ばす。

 

「ほら、炎獣に興味津々なのはいいが、その辺にしておけ。話はまだ終わってないぞ」

 

 手を叩きながら、そう言う。

 俺の言葉に、先を争うようにリスの炎獣を撫でていたシノとユージンは、すぐに手を離す。

 

「こんな訳で、俺は魔法使いだ。ギャラルホルンが襲撃してきた時は、これとは違う影のゲートという転移魔法……つまり、一瞬にして遠く離れている場所に移動出来る魔法を使ってクーデリア達をシャドウミラーの基地に移動させて、そこからMSでまた転移してきた訳だ」

「……転移、ですか? 離れた場所に行けるとなると、地球にも行けたりするんですか?」

 

 オルガの言葉に首を横に振る。

 

「影のゲートって言っただろう? その名の通り、影の繋がっている場所じゃないと転移は出来ないし、何より転移する距離によって消費する魔力も多くなる」

 

 不幸中の幸いと言うべきか、解呪の為に貯まっていたPPを全てSPに突っ込んだので、俺の魔力はかなり増えた。

 ……もっとも、そのお陰で召喚魔法の契約を結ぶのはかなり難しくなったが。

 何しろ召喚魔法の契約を結ぶ際には、俺の血を1滴ではあるが飲ませないといけない。

 そして俺の血には、俺の魔力が濃縮されている。

 今よりもまだ大分魔力が低かった頃ですら、俺の血を1滴飲んだエヴァがとんでもない事になったくらいだ。

 オルフェンズ世界において一気に魔力が高まった今の俺の血をエヴァが飲んだら、一体どうなるか。

 とはいえ、俺の血がエヴァにとって大きな意味があるのは間違いのない事実だ。

 原液――という表現が相応しいかどうかは微妙だが――のまま血を飲むのは問題であっても、それを薄めたり、魔法的な意味で手を加えたりすれば、エヴァにとってこれ以上ない程の魔力回復薬となるのも事実なのだが。

 ただ、召喚魔法の契約においては血に手を加えたりとかそういうのは出来ず、血を原液のまま使う必要がある。

 そうである以上、やはり召喚の契約を結べるのかは……どうだろうな。

 勿論、隠された才能を持ってるとか、そういう相手ならどうにかなるかもしれないが、その辺のモンスターと契約しようとすれば、それこそ俺の血の魔力に耐えられず、破裂するだろう。

 

「それでは地球から火星に転移するのは無理だと?」

「そうなるな」

 

 もっとも、影のゲートでの転移は無理だが、ニーズヘッグが使えるのならシステムXNで転移出来るんだが。

 そのニーズヘッグも、呪われている今の状況ではどうにもならない。

 

「そうですか。……それにしても魔法……その、魔法って奴は、俺達でも使えるようになるものなんですか?」

 

 オルガの言葉に、何人かが視線をこちらに向けてくる。

 魔法について、それだけ興味を抱いているという事だろう。

 

「基本的には問題ない筈だ。一定以上の、それこそさっき言った影のゲートとかを使うにはかなりの才能が必要になるが、一定のラインまでなら誰でも使える。……普通なら」

 

 俺がここでそう口にしたのは、鉄華団の面々の首の後ろにある物……阿頼耶識だ。

 阿頼耶識がただの手術でそういう機械を身体に埋め込んだのなら、多分問題はないと思う。

 だが、実際には阿頼耶識というのはナノマシンを使った技術だ。

 そのナノマシンが身体にどう影響を与えるのかが分からない。

 ホワイトスターと自由に行き来が出来るのなら、レモンによってその辺りについて調べたりも出来るのだろうが……生憎と、今のところそれは無理だ。

 

「普通なら?」

「ああ。魔法がナノマシンにどう反応するか分からないからな」

「えー? 魔法とか使えたら凄いのに、無理なのかよ」

 

 俺の言葉に、シノが心の底からがっかりした様子で言う。

 どうやらシノにとって魔法はかなり魅力的に思えたらしい。

 

「ちなみに、もし魔法に阿頼耶識が関係ないとしても、まずは魔力を感じるといったよう修行から始めるから、かなり地味だぞ」

 

 これが魔法球のように、周囲に多くの魔力のある場所でなら、魔力も感じやすいだろう。

 だが、それがないと一体魔力を感じるまでどれだけ掛かるのやら。

 

「地味なのか。それはちょっと面白くないな」

 

 シノの性格を思えば、そう言ってくるのはおかしな話じゃないだろう。

 

「そんな訳で、魔法についてはそんな感じだ」

「その……これを聞くのはどうかと思うんですけど、アクセルさんは一体何者なんです?」

 

 ビスケットのその問いは、その性格を考えればそうおかしなものではない。

 ビスケットにとって、俺の存在は色々な意味で受け入れるのに時間が掛かるのだろう。

 

「魔法使いだという意味じゃなくてか?」

「はい。魔法というのは……その、架空の存在として知ってはいました。ですが、それがこの世界に実在した以上、アクセルさんは一体どういう存在なのか、気になります」

「それが気になるのは分かるが……そうだな。魔法の件は話せたけど、それでも俺の秘密全てを話せた訳じゃない。悪いが、その辺については触れないでいてくれると助かる」

 

 ゲートが正常に動作しており、ホワイトスターと自由に行き来出来るのなら、俺、マーベル、シーラが異世界の存在であると話してもいいとは思う。

 だが、呪いによってゲートは使えない。

 そんな状況で、実は俺は異世界の存在ですと言ったところで、信じられるとは思わない。

 冗談か何かだと思われる程度ならまだいい。

 しかし、最悪の場合狂っていると思われてもおかしくはないのだ。

 そんな風に思われるのは遠慮したい。

 もしそうなったら、お互いに決して好ましい事にはならないだろうし。

 それこそ最悪、現在の友好関係が解消される可能性もあった。

 だからこそ、そんな事がないように俺達の正体については誤魔化しておく必要があった。

 

「とはいえ、いつまでもそれについて黙っている訳にもいかないし……そうだな。今はちょっと難しいが、とある問題が解消されたら俺達について教えるよ」

 

 ゲートが起動出来ないので、俺達の正体を口にしてもそれを信じて貰えないのなら、それはつまりゲートが起動出来るようになれば俺達の正体を信じさせられるという事でもある。

 

「……分かりました。正直なところアクセルさん達が何を隠しているのかは分かりませんが、それは今は気にしない事にしておきます」

「悪いな、オルガ」

 

 オルガも、本当ならもっと俺の話の詳細を聞きたいだろう。

 だが、俺が聞いて欲しくないというのを察して、オルガはこのように口にしたのだ。

 ビスケットやユージンは、もっと詳細に俺に聞いた方がいいんじゃないかと、そんな表情を浮かべていたが。

 ただ、オルガがそう言ったのならとそれ以上の事について詳しく聞いてくる様子はない。

 

「いえ。……今は無理でも、後で教えてくれるんですよね?」

「ああ。それがいつになるのかはちょっと分からないが、約束しよう」

 

 俺の言葉に、オルガはそれなら……と納得したのだった。

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