転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3906話

 木星に向かってから10日程。

 ようやく木星にあるテイワズの本拠地……歳星と呼ばれる巨大な宇宙船が見えてきた。

 火星の場合は元々が地球に近い環境という事もあり、テラフォーミングによって現在は人が普通に生活出来る環境になっている。

 それに対して、木星はテラフォーミングが全く行われていなかった。

 元々木星の環境が火星よりも過酷だから最初からテラフォーミングをする予定はなかったのか、それとも厄祭戦によって人の技術が大きく後退し、テラフォーミング技術もそれと同じく後退して木星のテラフォーミングが出来なくなったのか。

 ともあれ、テイワズの拠点は大きな宇宙船な訳だ。

 もっとも、コロニーとかそういう風に考えればそんなにおかしな事ではないと思うが。

 

「あれが歳星か。……随分と大きいな」

「そうね。……宇宙がこうも身近にあると、何だか妙な感じがするけど」

「今更だと思うけどな」

 

 俺の隣で歳星の映像を見ているマーベルがそう呟く。

 マーベルの出身世界におけるダンバイン世界においては、まだ時代的に宇宙開発が進んでいない。

 ……オーラマシンが全面的に取り入れられていれば、もしかしたら俺が予想していたのとは違う方向性で宇宙開発が進められていた可能性もあるが。

 もっとも、オーラマシンの材料はバイストン・ウェルでなければ入手出来ないので、地上でオーラマシンを開発するのは……まぁ、地上の技術力なら代替品をどうにか用意出来るか?

 そんな風に考える。

 ただ、俺が口にしたように、今更の話でもある。

 何しろマーベルはシーラや俺と共にこのオルフェンズ世界に転移したのだが、その時に俺達が姿を現したのは宇宙海賊のブルワーズの旗艦だったのだから。

 そう考えれば、やはり今更の話だろう。

 その後もブルワーズを乗っ取って地球から火星の間にある高密度デブリ帯で活動していたりしていたんだから。

 

「そう言えば、MSの訓練の方はもういいのか?」

「ええ、問題ないわ。タービンズの方も今日は忙しいし」

 

 この10日程の間、マーベルや昭弘、ラフタといった面々はハンマーヘッドで頻繁に模擬戦を行っていた。

 マーベルの勝率はトップだったが、それでも何度かラフタに負けたらしい。

 ……ラフタと言えば……いや、ラフタに限らず、ハンマーヘッドに乗っているのは女が多いと思っていたが、名瀬から詳しい話を聞いたところによると、ハンマーヘッドは名瀬のハーレムらしい。

 いや、実際にはハンマーヘッド以外にもタービンズの本拠地があり、そこにも名瀬の恋人……いや、妻がいるらしい。

 それを聞いた時、もの凄く驚いたのを覚えている。

 俺もこう言ってはなんだがハーレムを持つ身だ。

 生き別れ――という表現が正しいのかどうかは分からないが――となっていたマーベルとシーラと合流した事もあり、ホワイトスターに戻れば……UC世界にいるモニク達も含めると、全部で20人以上の恋人を持つ。

 勿論、恋人の数が多いからといってそれが凄いという訳ではない。

 ……とはいえ、俺の場合は混沌精霊であったりPPを使った身体能力の強化や、転生特典とか、諸々のお陰で夜の生活……性活? も問題はないが、名瀬はあくまでも一般人だ。

 腹上死とかしないといいんだが。

 今の考えを見れば分かるように、俺と名瀬の関係は当初に比べれば大分良好になっている。

 これは戦いに負けたこちらの要望を、名瀬が全面的に受け入れたというのも大きい。

 もっとも、新型MSを開発したらその度に5機寄越せというのについては、名瀬だけで判断は出来ないという事で、親父……テイワズを率いるマクマード・バリストンに図らないといけないという事になったが。

 それについても、掛け値なしに全力でこちらの要望を叶えると言っている。

 言ってみれば、格付けが出来たのだ。

 勿論、それはそこまで厳重なものではない。

 例えば、俺はやるつもりはないが、以前JPTトラストとの取引にやってきた男が言っていたように、アミダを1晩貸せとか、もしくはマクマードを殺せといったような事を言えば、それを引き受けるような事は絶対にないだろう。

 ただ、そういう……絶対に名瀬が受け入れられないような事でなければ、素直にこちらの指示に従うだろう。

 俺が何らかの手段――精神コマンド――によってナノラミネートアーマーを無効化出来る手段を持ってるというのが、その大きな理由だろう。

 あるいは、俺だけでテイワズを壊滅させられるというのを信じたからか。

 そんな風に特殊な経緯はあれど、俺と名瀬の関係は現在は友好的だった。

 ちなみにオルガと名瀬は……どうだろうな。

 悪いとは言わないが、良くもない感じか。

 何しろオルガにしてみれば、名瀬はマルバの味方をした相手だ。

 そのマルバは現在軟禁中で、歳星に戻ったらどこぞの鉱山に放り込まれるという事になっているが、それでも色々と思うところがあるのだろう。

 あるいはもし俺が介入していなければ……多分だが、地球に行く案内人という事で、タービンズと友好的な関係を築いたかもしれない。

 名瀬はそれなりに面倒見のいい奴だし。

 そういう意味では、もしかしたら俺が名瀬の立ち位置を奪ってしまった形なのか?

 

「タービンズが忙しい、か。まぁ、本拠地に戻ってきたんだから忙しいのは当然か」

「誰かさんのせいでもあるのよ?」

 

 マーベルの言葉に、そっと視線を逸らす。

 実際、タービンズが歳星に戻ってやるべき事は多い。

 特に俺達に負けた条件で出来ることを可能な限り叶えられるように動くとか、大破した百錬の代替機を用意するとか、俺が持ち込んだ未知のフレームについてどのくらい解析が進んでいるのかを確認するとか。

 後は、それこそマクマードに挨拶をしたり、他にも顔見知りに挨拶をしたり。

 そんな諸々の行動を可能な限り素早く、効率的に行う為には、前もってしっかりと準備をしておく必要がある。

 マーベルが言っている、タービンズが忙しいというのは、その準備だろう。

 となると、多分昭弘も今日はハンマーヘッドに行ってないんだろうな。

 

「当初の予定とは違って、随分と遠回りする事になったな」

 

 そう話を逸らす。

 とはいえ、それは決して間違ってはいない。

 火星から木星まで10日ちょっとで到着するというのは、普通なら凄いのだろう。

 だが、木星があるのは地球と正反対の方向だ。

 そうである以上、地球に到着するのは当初の予想よりも遅くなる事を意味している。

 これでニーズヘッグが使えるのなら、ある程度はどうにかなったと思うんだが。

 それが出来ない以上、こちらとしてもそういうのを考えた上で行動する必要があった。

 これ、原作だとどうなんだろうな?

 ふとそんな事を思うが、原作は原作だろう。

 全く気にならないかと言えば嘘になるが。

 

「詳細な日時は決まっていないんでしょう? なら、そこまで気にしなくてもいいと思うけど」

「だと、いいんだけどな」

 

 火星や木星にいると、地球の情報というのは滅多に入ってこない。

 それこそ数日遅れどころか、数十日……場合によっては数ヶ月単位で遅れた情報が入ってきたりもするくらいだ。

 クーデリアが交渉をするという人物が、それこそ植民地の住人と交渉をするという事で、疎まれてしまったりしかねない。

 その場合はどうなるんだろうな。

 そんな風に思いながら、俺達は歳星に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「は? 俺が? 何でまた?」

 

 歳星に到着したが、俺達は特にやるべき事はない。

 敢えてやる事を考えるとすれば、それこそ俺が預けた未知のフレームの件でどうなっているのかを見に行くくらいだとばかり思っていたんだが……

 

『すまねえ、アクセル。ただ、親父がどうしてもアクセルに会ってみたいって言ってるんだ。その代わり、アクセルに会ったら例の条件は問題ないって事らしい』

 

 名瀬が俺とマクマードを会わせたいと言ってきたのだ。

 それもマクマードが俺と会いたいと言ってくるような感じで。

 

「前提条件が違わないか?」

『あー……その、だな。アクセルのグシオンと三日月のバルバトスの整備とかもきちんとしてくれるらしい』

 

 どうやらそれが追加の条件らしいな。

 グシオンはともかく、バルバトスはずっと地下にあっただけに、まだ色々と不完全な状態だ。

 テイワズとのやり取りを終えて地球に向かう時、バルバトスが強化されているというのは決して悪い話ではない。

 グシオンも、正直なところ今のような装甲全振りといった機体よりも機動性や運動性、そして何より燃費を上げて欲しい。

 グシオンはガンダム・フレームのMSなので強力なのは間違いないが、その重量から燃費がかなり悪い。

 あの分厚い装甲を削るだけで、かなりの性能を発揮出来るようになるのも事実。

 生憎と、シャドウミラーのメカニック達はそういう事が出来なかったが。

 これが同じシャドウミラーでも、ホワイトスターに本拠地を持っている方のシャドウミラーなら、技術班がいるのでどうとでもなると思う。

 だが、元ブルワーズのメカニック達にはそういうのが難しい。

 

「分かった。追加でその条件を守るのなら引き受けよう。……ただし、俺達を騙そうとした場合、どうなるかは分かっているな?」

『ああ、分かってるよ。テイワズを敵に回しても勝利出来るだけの実力があるって言うんだろ?』

「そうだ。もっとも、お前が親父と慕っている男だから妙な事はしないと思うがな。……JPTトラストの連中がいるから、絶対とは言えないが」

『それについては、俺からも親父に報告させて貰った。……多分、親父がアクセルに会いたいってのは、その件についてもあるんだろうよ』

 

 ノブリスの仲介によって、行われた取引。

 その取引でJPTトラスト側から出て来た人物は最初からこちらを見下していて、シーラを貸せとか言ってくるような奴だった。

 JPTトラストのトップが何を思ってあんな奴を寄越したのかは分からない。

 だが、それによって俺のテイワズに対する印象がかなり悪くなったのも事実。

 俺がタービンズに対して喧嘩腰だったのは、その辺の理由も大きかった。

 

「分かった。じゃあ、行くのは俺だけでいいのか?」

『いや、三日月とクーデリアもって事だ』

「……なるほど。分かった」

 

 三日月は恐らくバルバトスの件についての何かだろう。

 クーデリアは……火星に対する投資の件か?

 マクマードが何を考えているのかは分からないが、こっちから会いに行くだけで詫びの品を増やしてくれるのなら、行かない手はない。

 

「じゃあ、三日月……というか、鉄華団とクーデリアには俺の方から連絡をしておく」

『分かった。一応言っておくけど、親父は圏外圏一怖い男だからな』

「それは楽しみだ」

『……アクセルならそう言うと思ったよ』

 

 そう言い、通信が切れる。

 俺が言うならって何だよ。

 あるいは、俺とマクマードがぶつかるのを楽しみにしていたとか?

 まぁ、それはそれで構わない。

 どういう結果になるのかは分からないが、テイワズについてはJPTトラストの件もあって、色々と思うところもあるし。

 

「クーデリアを呼んできてくれ。それとイサリビに通信を頼む」

 

 俺の指示にブリッジクルーが即座に反応する。

 

「アクセル、大丈夫なのですね?」

「何がだ?」

 

 イサリビとの通信が繋がるまでの間、シーラと短く話す。

 

「アクセルの事なので、本当にテイワズを滅ぼしてもおかしくはないかと」

「……まぁ、それは否定しない。とはいえ、向こうが特に問題がないようなら、俺もそういう事はしないけど」

 

 俺がそう言うのと、ブリッジクルーが口を開くのはほぼ同時だった。

 

「通信、繋がりました」

『アクセルさん、どうしました?』

 

 映像モニタに表示されたオルガが、そう聞いてくる。

 恐らく鉄華団の方でも、歳星に入港する上で色々とやるべき事はあるのだろう。

 補給物資とかそういうのも、購入したり。

 少しだけ心配なのは、鉄華団に所属する者達の多くが子供だという事だ。

 歳星で妙なトラブルに巻き込まれたりしないといいんだが。

 もしそういう事になったら、それはそれでこっちで何とかする必要があるだろう。

 あるいはいっそ、シャドウミラーから何人かお目付役を派遣してもいい。

 

「名瀬から連絡があってな。テイワズのトップ……マクマードが、俺とクーデリア、そして三日月に会いたいらしい」

『ミカに? ……何でです?』

「多分、ガンダム・フレームを使ってるからだろうな。テイワズにしても、ガンダム・フレームというのは非常に珍しいんだろうから、色々と話を聞きたいんだろう」

 

 ガンダム・フレームというのは、このオルフェンズ世界においてもかなり希少だ。

 それを使ってる者がいるのだから、テイワズを率いる身として興味を抱くなという方が無理だろう。

 

『それは……もしかして、バルバトスを寄越せとか、そういう事を言ってきたりはしないですよね?』

「どうだろうな。もしかしたら提案くらいはするかもしれないが、その時はその時でそれなりに対応すればいい」

 

 そんな俺の言葉に、オルガは少し考えてから頷くのだった。

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