転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3908話

「は?」

 

 いきなり名瀬の口から出た言葉に、俺はそんな声を出す。

 当然だろう。俺がマクマードと話していたところで、いきなり名瀬が俺と兄弟分の杯を交わしたいと口にしたのだから。

 一体何を考えていきなりそうなったのか。

 そう疑問に思うのは当然の話だった。

 

「名瀬……本気か?」

「はい、親父。それが一番いいと思います。アクセルを敵に回すのがどれだけ危険なのかは、今回の一件で分かって貰えたと思います。そうなると、アクセルを敵に回さない方法を考える必要があるでしょう。そして現在アクセルと友好的な関係を築いているのは、俺です。他の幹部の方々の性格を考えると、アクセルと上手くやる事は出来ないでしょう」

「ジャスレイはもってのほかって訳か」

「ええ。以前の取引の時に、もっと慎重な相手を派遣していればよかったんですが……」

「後で、ジャスレイの奴には釘を刺しておくよ」

 

 マクマードが苦虫を噛み潰したように言うが……

 

「いや、俺の意見も聞かないで、勝手に話を進めないで欲しいんだが」

 

 ここで漸く俺は口を挟む。

 

「そう言ってもな……アクセルも面倒なことになるよりは、穏便にすませた方がいいだろう? 幾らテイワズを倒すことが出来ると言っても、実際にそれをやるのは大変だろうし」

「……まぁ、それは否定しない」

 

 俺が1人でテイワズを滅ぼすことが出来ると思っているのは事実だし、実際にやろうと思えば可能なのも間違いない。

 だが、実際にそれをやるとなると、かなり面倒に思えるのも事実。

 完全に敵対したら、その手段を選んでもいいが、そうでないのならテイワズを滅ぼすには時間が掛かりすぎるというのも間違いはない。

 

「だろう? 俺もテイワズを率いる立場としては、アクセルのような厄介な相手を敵にしたくはない」

「それで兄弟分の杯か? それだと俺がテイワズの組織に入るという事になると思うが?」

「いやいや、そんなつもりはないって。兄弟分の杯って言っただろ? 勿論、この場合の兄貴分はアクセルで、弟分が俺だ」

 

 名瀬の言葉に、なるほどと頷く。

 兄弟分の杯と言っていただけに、てっきり俺を弟分にしようとしてるのかと思ったが、違ったらしい。とはいえ……

 

「もしそれをやっても、俺が名瀬の兄貴分になったからといって、テイワズの配下になるという感じになるんじゃないか? それは遠慮したいんだが」

「勿論、アクセルをそういう風に使おうとは思っていない。名瀬の兄貴分という事になってもテイワズとは別組織……友好組織という扱いにしてもいい。それならどうだ?」

「急にそう言われてもな」

 

 ただ、友好組織か。

 ギャラルホルンと敵対している以上、現在の俺達にとって後ろ盾は大きい方がいい。

 今のシャドウミラーはノブリスが後ろ盾となっているものの、そのノブリスがどこまで信用出来るのかと言われると……微妙なところだろう。

 ノブリスはあくまでも自分の利益になるからこそ、俺達の後ろ盾になっているのだ。

 もし俺達が利益にならないと判断すれば、即座に切り捨てるだろう。

 マクマードも、基本的にはノブリスと同じ感じなのは間違いない。

 だが、その利益というのは……いや、より正確には俺を敵に回す事で起きる不利益を回避する為に、ここまで譲歩してるのだろう。

 正直なところ、異なる組織で兄弟分の杯を交わすというのが、どれだけの譲歩なのかは分からないが。

 マフィア……いや、テイワズの在り方がすると、ヤクザや極道といった感じか?

 そちらの方面は、あまり詳しくないんだよな。

 もっとも、マフィアやギャングについて詳しいのかと言われれば、否と答えるが。

 詳しいとするのなら、それこそどこに武器や宝石、金塊、現金……そんなのを隠しているのかを見つけるのにはそれなりに詳しい。

 そういう、もし盗んでも警察に届け出る事が出来ないお宝は、色々な世界に転移している俺にしてみれば、かなり優良なお宝だ。

 ……まぁ、それはともかく。

 後ろ盾という点では、あくまでも個人であり、自分の利益が最優先のノブリスと、古き良きヤクザや極道らしいテイワズのどちらが好ましいかと言われれば、やっぱりテイワズだろう。

 それは分かる。分かるんだが……

 

「幾つか問題がある」

「聞こう」

 

 マクマードが即座に聞いてくる。

 この様子だと、本気で俺と名瀬を兄弟分にしたいと考えてるんだろうな。

 

「まず第1に……さっきも言ったと思うが、俺がテイワズ……いや、正確にはJPTトラストか。そこに嫌悪感を持っているという事だな。JPTトラストというのは、テイワズのNo.2が率いる組織なんだろう? それだけに、今回の件を知ればこっちに何か仕掛けて来てもおかしくはない。そして俺と敵対した場合……どうなるかは、名瀬が分かってるだろう?」

 

 その言葉に、名瀬は困った様子で頭を両手で覆う。

 俺と敵対した時、どれだけの被害が出るのかを実際に体験しているからこその態度だろう。

 俺達がタービンズと戦った時も、名瀬が降伏するのがもう少し……それこそ1分どころか数十秒遅ければ、アミダ達は死んでいたのだ。

 それを実際に体験しているからこそ、こうした態度を取っているのだろう。

 

「ジャスレイとの相性は悪そうか?」

「……ええ。アクセルの性格を思えば、喧嘩を売られればすぐに買うでしょう。しかも悪い事に、アクセルの強さは本物だ。何しろ本人がテイワズと戦って勝てると断言してるくらいですし」

 

 兄弟の杯を交わして弟分になりたいって言ってる割には、随分と言うな。

 もっとも、その言葉は決して間違いという訳でもないので、俺からも何とも言えないが。

 

「……」

 

 黙って話を聞いていたクーデリアが、俺を呆れの視線で見ている。

 これ、どう反応すればいいんだろうな。

 

「アクセル、その辺はどうだ?」

 

 俺がクーデリアの視線について考えていると、マクマードがそう聞いてくる。

 

「向こうが喧嘩を売ってくる、あるいは挑発してくるのなら受けて立つだろうな。シャドウミラーはPMCだ。まだ小さいが……いや、小さいからこそ、他の相手に侮られる訳にはいかない」

 

 PMCをしている者が侮られたら、一体どうなるか。

 それは予想するのも難しくはない。

 足下を見られたり、あるいは使い捨てにさせられたりといったような事をしても問題のない相手と認識されてしまうのだ。

 そうなっても俺が生き延びる事は出来るだろう。

 だが、他の者はどうか。

 それに俺が生き延びられるとしても、わざわざ面倒な事をしたくはない。

 そうならないようにするのが優先だろう。

 

「……そうか。そうなると、俺の方でどうにか抑えるしかねえか」

「親父、一度アクセルの力を見せてはどうです? そうすれば、敵対する危険性を知って貰えるかと。他の幹部達にも」

「なるほどな。……どうだ?」

 

 名瀬の言葉に、マクマードがこちらに視線を向けて聞いてくる。

 

「そう言われてもな。正直なところ微妙だという思いの方が強い」

「……テイワズが後ろ盾になるというのは、アクセルにとっても悪くないと思うが?」

「だろうな。それは俺もそう思う。けど、賭けてもいいが、もしここで俺の実力を見せつけても、間違いなく名瀬以外のテイワズの幹部は俺にちょっかいを出してくるぞ?」

 

 名瀬がテイワズの幹部かどうかは、正直なところしっかりと聞いてはいない。

 だが、こうしてマクマードと会える以上、幹部という認識で間違いはない筈だ。

 

「そっちは俺の方で何とかする。それに……テイワズとシャドウミラーが同格の存在という扱いでも構わねえ」

 

 そう言い、マクマードがじっと俺に視線を向けてくる。

 

「何でだ? いや、俺達……というか、俺の力がお前達にとって脅威なのは分かる。だが、それでもそこまでして俺を味方に……もしくは身内にする必要はないと思うが?」

 

 テイワズという名前は決して軽いものではない。

 ギャラルホルンに比べればNo.2であるのは間違いないが、それでも1枚も2枚も落ちる組織なのは間違いない。

 だが……それでもこのオルフェンズ世界において、No.2であるのは間違いない事実。

 それだけではなく、独自にMSのフレームを作れるだけの技術も持っている。

 これは正直、かなりの快挙と言ってもいい。

 エイハブ・リアクターはまだ無理だが、それでもギャラルホルンは例外として、テイワズ以外にMSのフレームを作れる組織は存在しない。

 そんなテイワズが、自分達と同格の存在としてシャドウミラーを認めるというのは、もし何も知らない者がそれを聞いたら、最初は冗談だろうと笑い、次に何かの間違いだろうと考え、最後には信じられないと大きな衝撃を受ける筈だ。

 マクマードが口にしているのは、それだけ異常な事だ。

 

「そうだな。……俺もこの世界を生きてきて長い。だからだろうな。勘……って言えばいいのか? そういうのがある。勿論、それが絶対に当たるって事はねえ。だが、それでも俺の目から見れば、アクセルとは決して敵対してはいけねえって思いがある。さっき感じた……あれは何だ? 殺気って言うのか? あれを感じただけで、アクセルは信じられないような、とてもではないが手を出してはいけねえ存在だと、認識したんだよ」

「勘……か。そう言われると、俺も反論は出来ないな」

 

 俺も勘というか念動力に大きな信頼を寄せているだけに、マクマードが勘……それもテイワズを率いる立場としての勘だと言われれば、反対は出来ない。

 

「なら、頼めるか?」

「繰り返すようだが、模擬戦をして俺が圧倒的な勝利をしても、それで他の幹部が納得するとは限らないし、それが気に食わないと喧嘩を売ってきた場合は、こっちも相応の対応をするぞ?」

「それで構わん」

 

 シャドウミラーをテイワズと同格の組織と認め、幹部が絡んできた場合は相応の態度……つまり俺が力を振るっても構わない。

 こうまで俺達に配慮をしている以上、これを断るのはちょっとな。

 それに、テイワズと同格の関係という事になっておけば、いつノブリスに切り捨てられても問題ない。

 勿論、ノブリスに切り捨てられて被害が全くない訳ではないが、テイワズとの関係の有無というのは大きい。

 

「正直なところ、そこまで配慮をするのなら受けてもいいとは思っている。だが……問題がまだある」

「まだ何かあるのか?」

「ああ。杯を交わすという事は、当然ながら酒だろう?」

「そりゃまあそうだが……何だ、もしかして苦手なのか?」

「そうだな。いや、正確には違うか。俺が酒に弱いのは事実だが、酒を飲むと記憶がなくなる。そうなった後で一体どういう騒動になっているのかは、全く分からない」

 

 今までも俺が酒を飲んで大きな問題になった事は何度かある。

 一番多かったのは、酒の勢いで女を……その時、気になっていた女を抱くという事か。

 そして一番酷かったのは、気が付いたら他の世界にいたという事だろう。

 具体的にはマクロス世界だな。

 もっとも、最終的にはシェリルと会ったし、マクロス世界の技術も入手出来たので、そういう意味では大きな利益となった。

 だが……何が起きるのか分からない以上、それこそ最悪杯を交わす儀式を行った場所が……いや、歳星そのものが滅んでいても、おかしくはない。

 

「そりゃあ……具体的には?」

「そうだな。最悪この歳星が消滅していても俺は驚かないな」

「……冗談だろう?」

 

 俺の言葉を聞いた名瀬が聞いてくるが、俺はそれに対して首を横に振る。

 

「生憎と本当だ。実際に今まで似たような事は起きている」

 

 実際には直接的な被害をもたらした事はないのだが、それでも一応念の為にそう言っておく。

 何しろ、俺が個人で持っている力であっても莫大だ。

 不幸中の幸いなのは、今は呪いによってニーズヘッグを使えない事だろう。

 ニーズヘッグが使えた場合は、それこそ歳星どころか、火星や地球までもが滅んでいても驚かない。

 ただし、ニーズヘッグの件を抜きにしても俺には混沌精霊という力がある。

 その力が発揮されれば、それこそ歳星が滅びるとか、そういう事になってもおかしくはないだろう。

 

「そんな訳で、杯の際に酒を飲むのは不味い。もしやるのなら、それを承知の上で……それこそ、最悪歳星が滅んでもいいのなら酒を出せばいい。……まぁ、そうなったら兄弟分の杯云々なんて話じゃなくなると思うけどな」

「じゃあ、どうしろってんだ?」

「水だな。それなら問題はない。もっとも、それをお前達が許すならだが」

 

 何故か和風の文化が広がっているテイワズだ。

 兄弟分の杯を交わすのに、酒……この場合は日本酒か? いや、厄祭戦があって国の数が少なくなってしまったこのオルフェンズ世界でも日本酒と呼ぶのかどうかは分からないが。

 ただ、とにかく酒を使うのは間違いないだろう。

 

「どうする?」

「……しょうがねえな。じゃあ、水でやるか」

「親父!?」

 

 名瀬のその言葉を聞けば、マクマードの言ってる事が信じられないと思っているのは間違いない。

 ここでもマクマードが俺に譲歩したという事だろう。

 俺にとってはそこまで気になる事ではなくても、テイワズの人間にとっては非常に気になるところといったところか。

 

「その……その杯ってのは、俺もやらせて貰えないでしょうか?」

 

 不意に今まで黙って話を聞いていたオルガがそう言うのだった。

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