転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3916話

 模擬戦が終わってから数日……名瀬から時々連絡は入るものの、それでも今は少しでも早く俺と名瀬、オルガが兄弟の杯を交わし、更にはシャドウミラーをテイワズと同格の組織であると認めさせるといった事をする為に忙しく、そちらの方に集中していた。

 マクマードから連絡が入らないのは、それこそ忙しく動いている為だろう。

 ……ちなみに、予想通りではあるが、マクマードや名瀬の動きに対し、No.2のジャスレイが気が付き、妨害工作に動いているらしい。

 とはいえ、俺の模擬戦が終わってからまだそれ程経っていないので、俺を敵に回さないようにという事は多くの者が納得しているらしい。

 ジャスレイやそれに近い組織の者達は反対しているが、テイワズ全体で見た場合は当然だがこっちが有利らしい。

 ともあれ、俺は今はやるべき事がないので……

 

「これが百里か。そっちの百錬は俺の奴とそう違いは見えないけど」

 

 そんな訳で、当初の予定通り百里と百錬がグランの格納庫に運ばれているのを眺めていた。

 百錬は俺が模擬戦で使ったシングルナンバーの奴があるのだが、どうやら普通に量産型の百錬も渡してくれたらしい。

 

「アクセルさん、その……そろそろ格納庫が狭くなってきたので、新しく来た2機はアクセルさんがしまってくれませんか?」

 

 メカニックの1人が、俺に向かってそう言ってくる。

 まぁ……元々グレイズやマン・ロディがそれなりにあったしな。

 グシオンは現在歳星に運ばれて全面的な改修やら整備やらを受けているのでここにはないが、代わりに俺の赤い百里があるし。

 そう考えると、MSの数が限界なのは間違いないのか。

 

「けど、名瀬達が見に来たらどうする?」

「その時は、どこか見えない場所に置いておいたという事にしては? とにかく今の状況だと格納庫がかなり厳しいのは間違いないので」

 

 メカニックにそう言われると、俺もそのままにする訳にはいかない。

 格納庫が狭くなっている為にメカニック達が仕事をしにくいとなれば……MSというのは整備が必須だ。

 それによってMSが万全の状態で動かせないとなると、それはかなり困る。

 だからこそ、ここでは問題がないように万全の状態にしておく必要があった。

 

「分かった。なら、百里と百錬は俺が空間倉庫に収納しておく」

 

 そう言い、歳星から運ばれてきた百里と百錬を空間倉庫に収納する。

 グランまで運ばれてきたばかりなのに、いきなり空間倉庫行きとなったのは……まぁ、仕方がないか。

 

「ありがとうございます」

 

 メカニックは頭を下げると、そのまま自分の仕事に戻っていく。

 さて、こうして特にやるべき事がなくなった俺は一体どうしたものか。

 歳星に遊びに行くのは……見つかると絶対騒動になるしな。

 気配遮断を使っても、カメラとかそういうので認識されると意味はないし。

 なら、いっそ変装……変装か。

 俺の場合は変装というか変身という手段もある。

 今の俺は20代だが、10代半ばと10歳くらいに外見を変えられるのだ。

 ただし、歳星で10歳くらいの子供がいるのは……大人と一緒ならともかく、1人だけで行動しているとかなり目立つ。それも悪目立ちという表現が相応しい。

 かといって、10代半ばの姿だと20代の俺とかなり似ている。

 それこそ弟か何かではないかと思われるくらいには。

 アクセル・アルマーに接触したいと思っている者達にしてみれば、アクセルに繋がる相手として、その弟と思しき相手でも構わないだろう。

 ……結果的に、外見年齢を変えるだけというのは却下な訳だ。

 

「アクセルさん、その……少しいいですか?」

 

 俺にそう声を掛けてきたのは、大人組の1人だ。

 

「どうした? 今は特に何もやる事がないから、構わないぞ」

「じゃあ、ちょっとシミュレータの相手をして貰いたいんですが、構いませんか?」

 

 大人組のその言葉は、少し意外だった。

 いやまぁ、大人組もMSの操縦訓練をしてる者はそれなりにいるので、考えてみればおかしくはないのだが。

 ただ、子供組が全員阿頼耶識があるのに対して、大人組はMSを普通に操縦している。

 これは何気に結構なハンデなのは間違いない。

 ……あるいは、だからこそ子供組に負けていられないと思ってこうしてシミュレータの相手をして欲しいと頼んできたのかもしれないが。

 もっとも、俺にとってこの反応は好ましいものだ。

 こうして切磋琢磨する事により、子供組も負けていられないとやる気になってくれれば。

 

「分かった。じゃあ、やるか。どうせなら他にも何人か連れてきたらどうだ?」

「え? いいんですか? それは嬉しいですけど」

「構わない。お前達が強くなるのは、俺にとっても悪い事じゃないしな」

 

 そんな訳で、その後俺は数時間程、大人組の希望者とシミュレータを使った模擬戦を行うのだった。

 

 

 

 

 

『悪いな、アクセル。随分と待たせてしまった』

 

 映像モニタに表示されたマクマードが、そう言ってくる。

 その背後には盆栽が映っているのを考えると、以前俺がマクマードと会った部屋だろう。

 

「大袈裟に言えば、テイワズという組織の大きな変革とでも呼ぶべき行動だ。それを思えば、少しくらい時間が必要なのは無理もないだろ」

 

 本当にこれは大袈裟な言葉かもしれないが、今までテイワズは自分の下部組織という扱いは有していたし、あるいは取引相手という意味での組織もあった。

 ……まぁ、ギャラルホルンという、色々な意味で特殊な立ち位置にいる組織はいたが、それはそれとして置いておく。

 そんなテイワズが、別に取引相手という訳でもないのに……ましてや、出来てから1年どころか数ヶ月程度の、それも決して大きくはないシャドウミラーという組織を自分達と同等の存在と認めるのだ。

 普通に考えれば、マクマードが錯乱したのかと思われてもおかしくはない。

 もっとも、それがおかしくはない……それだけの力をシャドウミラーは見せたのだから。

 

『そう言って貰えると助かる』

「それで、こうして連絡をしてきたという事は、話は大分纏まったのか? 今まではかなり急がしかったんだろう?」

『ああ。問題なくな。2日後だ。2日後に、アクセルと名瀬、オルガの兄弟の杯を交わす』

「随分と早いな」

 

 話が纏まったのは嬉しかったが、まさか2日後とは……これについてはちょっと予想外だった。

 

『この前の模擬戦で、テイワズの者達が多く集まっていたからな。そのお陰で、杯を交わす儀式をやる際にわざわざ人を集める必要がないのは大きい』

「儀式って表現はちょっと大袈裟だな。……ただ、その儀式とやらをするのに人を集める必要があるのか?」

『これが例えば、テイワズという組織にそこまで影響がないのなら……それこそ、アクセルと名瀬、オルガの個人的なものなら、見届け人はそこまで必要じゃない。だが、今回は違うだろう?』

 

 マクマードが改めてそう言うと、そういうものかと納得する。

 実際にテイワズにとって大きく影響を与える儀式なのは間違いないのだから。

 

「それで、見届け人が大勢必要な訳か。……ジャスレイはどうしてる? 色々と裏で動いているって話は聞いてるが」

 

 ジャスレイという人物に、俺が直接会った事はない。

 ないが、名瀬であったり、歳星にいる者達から軽く話を聞く限りでも、どのような人物なのかは十分に理解出来る。

 そうして聞いた噂が事実なら、ここでジャスレイが動かないという選択肢はない。

 

『ああ、勿論積極的に動いてるようだな。自分の派閥の連中は勿論、そこまで親しくない相手にもかなり積極的に声を掛けているらしい』

 

 派閥か。

 テイワズのNo.2であるのを考えると、独自の派閥を持っているのはそうおかしな話ではない。

 そんな自分の派閥に所属する者達は勿論、他の……自分の派閥以外の者にも声を掛けているとなると、現状についてかなり危険だという認識を持っているのだろう。

 実際、その判断はそう間違っている訳ではない。

 もしマクマードや名瀬の考えている計画が成功すれば、俺という存在はジャスレイにとって間違いなく厄介な存在になるのだから。

 以前、ノブリスの仲介で行われた取引が無事に終わっていれば、ジャスレイもここまで慌てる必要はなかったんだがな。

 結局あの件で百錬のシングルナンバーを俺に奪われ、その性能を存分に発揮してJPTトラストが集めた30機のMSを相手に模擬戦で圧勝……いや、完勝したのだ。

 向こうにとって、顔に泥を塗られたといった程度ではすまない程のものだろう。

 

「向こうにとっても色々と忙しそうなのは間違いないな。……それで、2日後まで俺は何をしてればいいんだ?」

『取りあえず好きにしていてくれて構わん。もっとも歳星に来ると面倒に巻き込まれるかもしれないが』

「それはつまり、歳星に行かないでグランでじっとしていろって事か?」

『アクセルなら、何があってもどうとでもなるだろう』

 

 そう告げたマクマードは、俺の放つ殺気を感じたからこそ、何があってもどうとでも出来ると判断したのだろう。

 実際、マクマードのその考えは間違っていない。

 もしジャスレイが何らかの攻撃……それこそテロ攻撃をしてきても、それが魔力や気のない攻撃である以上、俺には効果がない。

 待てよ? この状況でそういう行動を誘発するような行動を許容するような事を言ってくる?

 それはつまり、ジャスレイにはそういう行動をさせて、今回の一件に反対をさせないようにするとか考えているのか?

 あるいは……ジャスレイを切り捨てる決断をしたのか?

 とはいえ、俺にとってジャスレイは厄介な存在ではあるし、手抜かりもあるものの、テイワズのNo.2にいるというのを思えば決して無能という訳ではない。

 つまり、今までのテイワズの成長に少なからず貢献してきたという事を意味している。

 マクマードとしては、テイワズを率いる身として、そんなジャスレイをあっさり切り捨てるといった事は出来ないだろう。

 考えられるとすれば、ジャスレイに釘を刺すといった感じか。

 

「どうとでもなるが、今この状況では騒動は起きない方がいいんじゃないか?」

『どうだろうな。どちらでも構わないというのが正直なところだ。つまり、アクセルがやりたいようにやってくれればいい』

 

 やりたいようにか。

 とはいえ、それはそれでどう行動したらいいのか迷うな。

 それこそ俺が迂闊に歳星に出てジャスレイが暴走するような事になったら……うん。間違いなく歳星に大きなダメージがあったりするかもしれない。

 とはいえ、俺がグランに引き籠もっていれば、ジャスレイが手を回してグランに、もしくはイサリビに攻撃を仕掛けるという可能性もあるのだ。

 そうなると、それはそれで不味い。

 

「分かった。明日は歳星に出る。グランやイサリビが攻撃されるよりは、俺が狙われた方が対処はしやすいし」

『……分かった』

 

 俺の言葉に沈黙した後で、マクマードがそう言ってくる。

 マクマードにしてみれば、俺の行動はどちらでもいいと思っていたのは間違いないだろう。

 だが、それでも俺が歳星に出るというのはマクマードにとっても助かる出来事だったらしい。

 そうしてその後で少し話をして、通信が終わる。

 終わったが、それから数分程度で再び通信が入った。

 またマクマードか?

 そう思ったが、今度出たのは名瀬だった。

 

『アクセル、明日歳星に行くって親父から聞いたんだけど、本気か?』

「ああ、そのつもりだ。ここで下手に俺が船の中に引き籠もっていると、ジャスレイがグランや……場合によっては、イサリビに手を出しそうな感じがするし」

『けど、それでアクセルが狙われたら、どうしようもないだろう?』

「安心しろ。俺は生身でも強いから」

『いや、けど……あー、くそ。分かったよ。アミダを護衛につけるから、それでいいだろ?』

「本気か?」

 

 アミダは名瀬の……そう、心の底から愛し合っている女だ。

 そんなアミダを俺の護衛に回すというのは、かなり危険な行為なのは間違いない。

 混沌精霊としての力を使えば、何かがあってもアミダを守る事は可能だろう。

 だが、名瀬は俺が混沌精霊だというのを……いや、それ以前に魔法を使えるという事も、まだ知らない。

 そのような状況でこうしてアミダを派遣するというのは、それだけこっちを気遣っているのだろう。

 そこには、マクマードと一緒に進めている計画の件もあるのだろう。

 だが、その計画を進めるだけなら、別にわざわざアミダを派遣しなくてもいい。

 ハンマーヘッドに乗っているのは全てが名瀬の妻だが、名瀬の立場なら男の護衛をどこかから調達するような事も難しくはないだろう。

 それでもこうしてアミダを護衛として派遣するのは……

 

『仮にもアクセルは俺の兄貴分になるんだ。そうである以上、弟分としてこのくらいはやる必要があるだろう』

 

 そう言うのだった。

 元々、2日後に行われる兄弟分の杯というのは名瀬が俺を兄貴分と慕っているからではない。

 俺という存在をテイワズの敵に回さない為に行われるものだ。

 それでもこうして気を遣ってくるのは……そう悪い気分でもなかった。

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