転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3922話

 兄弟分の杯の儀式も終わり、俺達がここでやるべきことも終わった。

 ……いや、正確には終わってはいないか。

 

「で? グシオンとバルバトスはまだなのか?」

 

 俺がいるのは、歳星にある極大格納庫。

 そこではテイワズのメカニック達が必死になって作業をしていた。

 ……無理もないか。

 シャドウミラーはテイワズと五分の関係になったし、鉄華団もシャドウミラーやタービンズの兄弟組織とでも呼ぶべき存在になっている。

 それだけに、テイワズのメカニック達が以前よりも必死になるのはおかしな話ではない。もっとも……

 

「ふおおおおおっ!」

 

 奇声を発している整備長の様子を見る限りでは、そういうのを関係なく張り切っている者達もいるのだが。

 元々ガンダム・フレームに強い興味を抱いていた整備長や、その仲間達だ。

 バルバトスは部品が足りずに色々と酷い状況だし、グシオンにいたっては元の状態が想像出来ない程のダルマとでも呼ぶべき姿になっている。

 ……バルバトスはともかく、厄祭戦の時のグシオンも実はこういう装甲で着膨れた姿だったとか、そういうことはないよな?

 もしそうだったら、地球でグシオンに乗るのは絶対に避けたい。

 ちなみに他にも、ヴァルキュリア・フレームの件がある。

 こっちは正直なところ、ガンダム・フレーム以上に難しい。

 何しろガンダム・フレームと対抗して負けたのだから、作られた数も非常に少ない。

 それでも整備長は何か心当たりがあるような事を言っていたので、今すぐには無理でも後で何とかなるとは思いたい。

 実際のところ、純粋に戦力として使えるガンダム・フレームの方を優先して欲しいし。

 ヴァルキュリア・フレームを戦力とするには、まだかなり時間が掛かる筈だ。

 そうならないようにする為には、やはりガンダム・フレームを優先して貰った方がいい。

 

「整備長、ちょっといいか?」

「ん? おや、アクセル。どうしたのかね?」

 

 奇声を上げていた整備長だったが、俺の声で我に返ったのかそう聞いてくる。

 

「グシオンとバルバトスだけど、後どのくらい掛かりそうだ?」

「そう言われてもねぇ……出来るだけ急いではいるけど、それでもそう簡単にはいかないよ。それなりに時間は掛かると思って欲しい」

「……具体的には?」

「1週間か、10日か……大体そんなところだとは思うよ」

「それは……ちょっと時間が掛かりすぎるな」

 

 これが1日、2日といった程度なら待ってもいい。

 だが、1週間や10日、しかもそれ以上に延びるかもしれないと考えると、時間が掛かりすぎるのも事実。

 最悪の場合、1週間や10日で本当に完成するのなら、それを待つという手段もある。

 しかしそれだけ待っても結局まだ出来ませんでしたといったことになったら、目も当てられない。

 

「となると、ガンダム・フレームは置いていった方がいいのか?」

「それは困るな。……いや、ガンダム・フレームを思う存分弄れるのは望むところだけど、だからといってMSをここに置いていくのは色々と問題がある。スペース的にも」

「これだけ広い格納庫なのにか?」

「そうだよ。考えてみて欲しい。ここではテイワズやそこに所属する他の組織のMSの修理や補給、場合によっては改修をしたりもするんだ。勿論、テイワズが持っている格納庫はここだけじゃない。他にも幾つか小さい場所はあるけど、それでもここが一番大きな格納庫である以上、ここに持ち込まれるのが多いんだよ」

「なら、グシオンとバルバトスを修理……改修? とにかくそれをやったら、その小さい格納庫に保管しておくとか?」

「折角元の姿に戻したのに、それを使わないなんて勿体ない。それに君も、どうせなら性能の高いMSの方がいいだろう?」

「それはまぁ、否定しない。ただ、その性能の高いMSを使えるようになるまで無駄に時間を使うのなら、こっちで持ってきたグレイズを使った方がいい」

 

 グレイズはガンダムよりも性能は低い。

 低いのだが、全体的なバランスとして考えれば、決してガンダムには劣らない。

 まぁ、エイハブ・リアクターの数が少ないから、近接攻撃とかではパワー負けする。

 けど、それは戦い方次第だろう。

 相手の攻撃を真っ向から受け止めるのではなく、回避したり受け流したりすれば十分に問題はないし、そもそもの話ガンダム・フレームの希少性を考えれば、ガンダムと戦う機会そのものが少ないだろう。

 そう考えれば、ギャラルホルンの最新鋭MSであるグレイズを使うのはそんなに悪い話ではない……と思う。

 もっとも、そうなったらギャラルホルンから目の敵にされるというデメリットもあるが。

 考えてみれば、このデメリットはちょっと大きすぎるか?

 何しろギャラルホルンにしてみれば、グレイズは自分達の主力量産MS……象徴というのは少し大袈裟かもしれないが、それでも大きな意味を持ってるのは間違いない。

 

「グレイズか。あれもいい機体ではあるんだけどね。やはり君達にはガンダムがあるのだから、ガンダムを使って欲しいね」

「時間の問題をどうする? さっきも言ったように、俺達はいつまでもここにいる事は出来ない。出来るだけ早く地球に向かう必要がある」

「……では、こうしたらどうだろう。テイワズには君達が使っている船よりも速い船がある。早さを重視しているから、積載量はかなり少ない。それでもMSを2機程度なら搭載出来る」

 

 整備長のその言葉に、なるほどと頷く。

 グランとイサリビ、ハンマーヘッドは先に向かわせて、MSは改修してから送ってくる。

 そして地球に行くまでの間に追いついてMSを受け取る。……つまり、そういう事か。

 

「分かった。なら、誰を残すかだが……」

「何を言っている? アクセルと三日月の2人に決まってるじゃないか」

 

 そう言ってくる整備長は、俺と三日月が必ずここに残ると判断しているようだった。

 いやまぁ、俺の乗っていたグシオンと、三日月の乗っていたバルバトスだ。

 普通に考えれば、それも分からないではない。

 分からないではないのだが……

 

「三日月はともかく、俺は駄目だな」

 

 そう返す。

 実際、三日月はエースではあるが、それでもMSのパイロットという立場である以上、歳星に残っても問題がないだろう。

 だが、俺はMSのパイロットもやっているが、それ以外にシャドウミラーを率いる立場にある。

 また、こう言うのは何だが、地球に向かう者達の中で最大戦力でもある。

 だからこそ、歳星に俺が残るというのは無理だった。

 

「だが、君の機体だろう?」

「そうだが、俺はシャドウミラーを率いる立場なんだ。そうである以上、歳星に残る訳にはいかない」

「……だが……」

 

 整備長は不満そうな様子を見せる。

 俺がここに残る事が出来ないのは、理解しているのだろう。

 だが、理解は出来るが納得は出来ないといったところか。

 

「誰か代わりに残すから、そのつもりでいてくれ」

「しかし、折角改修するんだ。そうである以上、どうせならグシオンをアクセルが乗るように細かい設定を弄った方がいいと思うんだが」

 

 それは整備長にとって、切り札……というのはちょっとどうかと思うが、とにかくそんな感じのものだったのだろう。

 だが、俺はその言葉に首を横に振る。

 

「その辺の細かい設定なら、シャドウミラーのメカニック達でも出来る。なら、そっちに任せる。ここの連中と比べると腕が落ちるが、それでもそれなりの技術は持ってるし」

 

 これは事実だ。

 シャドウミラーのメカニックは、元ブルワーズの面々でマン・ロディやグシオンの整備にはそれなりの経験を持っている。

 ただ、テイワズという巨大組織のメカニック達と比べると、どうしてもその技量は落ちるが。

 それでも俺用に調整をするのは、出来ない訳ではない。

 ここにいる連中と比べると、その調整に時間が掛かるのは間違いなかったが。

 ……もっとも、ガンダム・フレームのMSとはいえ、結局俺の反応速度についてこられない以上、調整についてもそこまで厳密にする必要はないのだが。

 基本的に俺の全力……反応速度を含めた、混沌精霊としての全力に対応出来るのは、T-LINKシステムを使ったニーズヘッグだけなのだから。

 あるいは……本当にあるいはの話だが、阿頼耶識があれば俺の全力にも機体が対応出来たかもしれない。

 ただ人間ではなく混沌精霊の俺に阿頼耶識の手術は出来ないし、そもそも阿頼耶識は俺が好まないナノマシン系の技術なんだよな。

 そう考えると、ギャラルホルンではないが、俺にとって阿頼耶識があまり好ましいシステムではないのも事実。

 

「うーん……どうしても駄目かい?」

「駄目だな。こっちの譲歩策としてはさっき言ったように誰かを置いていくだけだ。……ああ、あるいは整備長や他のメカニック達が一緒に地球に行って、その道中で改修や調整を行うというのもあるな。幸い、タービンズも一緒だし、地球から戻る時はハンマーヘッドに乗って戻ってもいい」

 

 整備長は俺の言葉に首を横に振る。

 

「いや、それは難しい。ここで行っている整備はこのガンダム・フレームの2機だけじゃない。他にも多数のMSの整備をする必要がある。さすがにそれを放り出す訳にはいかないよ。……本心を言えば、その勧誘には惹かれるものがあるんだけどね」

 

 最後だけは残念そうに……心の底から残念そうに言う。

 整備長にしてみれば、本当に残念に思うことだったのだろう。

 

「そうか。なら、やっぱり送って貰うしかないな。それで構わないだろう?」

「それは……いや、そうだな。それしかないか。分かった。じゃあ、そういう感じで話を進めておくよ。歳星に残すのは誰にするんだい?」

「どうだろうな。正直なところまだ決めていない。鉄華団の方でも誰か残す必要があるし、そっちと相談して決めるよ」

「分かった。では、早めに頼むよ」

 

 そう言い、俺は整備長との会話を終えるのだった。

 

 

 

 

 

「え? うーん……それはちょっと困りますね」

 

 俺の言葉に、オルガが頭を掻きながら言う。

 少し具合が悪そうなのは、昨日ぱあっと宴会をやったからだろう。

 それによって二日酔いになっているのは1人や2人ではない。

 イサリビのブリッジに来るまでに何人かの鉄華団の連中と遭遇したが、その中でも子供組は特に問題なかったが、大人組……というよりも、この場合は年長組か? そっちの連中は何人もが調子が悪そうにしていたし。

 近いうちに歳星を出発するという事だったり、兄弟分の杯を交わして鉄華団はシャドウミラーやタービンズ、そしてテイワズと友好的な関係になったのを祝してといったところか。

 もっとも、シノを始めとした何人かは、二次会として娼館に行ったらしいが。

 ユージンは……うん、そこで初めてを経験してきたらしい。

 ともあれ、そんな訳で現在の鉄華団は色々な意味で動けない状況になっていた。

 まぁ、今日にもすぐに出発するという訳でもないし、鉄華団の面々にしてみればこれまでの鬱憤を晴らすという場も必要だったのだろう。

 そんな中でも、オルガは二日酔いに苦しみつつも一応仕事を行っていた。

 

「まぁ、戦力的な意味ならシャドウミラーとタービンズがいるから、何かあっても対処は出来ると思う。鉄華団にも1機グレイズを貸してるだろう?」

 

 阿頼耶識対応のコックピットに換装したグレイズのうち1機を昭弘に貸している。

 その機体は今もイサリビにあるのだ。

 勿論、その性能はバルバトスと比べれば劣るし、三日月と昭弘の技量差もある。

 昭弘はMSの操縦技術では鉄華団の中でNo.2だが、三日月はNo.1なのだ。

 そう考えれば、やはり戦力ダウンなのは間違いない。

 

「そう、ですね。……それで、三日月を歳星に残すのはいいですけど、兄貴の方はどうするんです?」

「そうだな。取りあえず……」

 

 大人組でも。

 そう言おうとしたところで、噂をすればなんとやら。

 昭弘がブリッジに入ってくる。

 

「オルガ、ちょっと……アクセルさん?」

 

 昭弘はどうやら二日酔いではないらしい。

 オルガに何か用事があってブリッジにやって来たのだろうが、そこに俺がいたことに驚いている様子だ。

 

「ちょっとオルガに用事があってな」

「そうなんですか? その……昌弘が迷惑を掛けてませんか?」

 

 兄らしく、こうして弟を心配してくる。

 連絡をしようと思えばいつでも連絡が出来るんだが、それでもこうして俺に聞いてくるのは……それだけ昌弘が心配だからなのだろう。

 もっとも、俺にしてみれば兄弟らしいと思うが。

 何しろ、昌弘もよく昭弘について聞いてきたりするし。

 

「心配するな。昌弘はMSのパイロットとしても優秀だから、十分役に立ってるよ」

 

 そう言い、オルガに視線を向ける。

 昭弘と話すのもいいが、まずは誰か残さないといけないので、その辺について話をする積もりだったのだが……

 

「それでグシオンの担当として歳星に残る奴についてだが……」

 

 そんな俺の言葉を聞いて、昭弘が口を開くのだった。

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