転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3923話

 俺はグランのブリッジで遠くなっていく歳星の姿を眺めていた。

 そんな俺の横では、昌弘が申し訳なさそうにしている。

 

「昌弘、別に昭弘の行動は迷惑って訳じゃないんだから、気にするな」

「でも、兄貴が……その、すいません」

 

 俺がグシオンの担当として、誰を残すのかをオルガと話した時、それを聞いていた昭弘は自分が残ると言った。

 最初、俺は色々な理由でそれを却下した。

 最大の問題として、俺が歳星に残すグシオンは阿頼耶識対応型のコックピットではなく、普通のパイロットが使う為のコックピットだ。

 これが阿頼耶識対応型のコックピットなら、昭弘が残るのも理解は出来る。

 だが、普通のコックピットのグシオンなのに、そこに阿頼耶識を使っている昭弘が残ってどんな意味があるのか。

 昭弘にもそう言ったのだが、シミュレータでは阿頼耶識が使えないので、普通のコックピットでも操縦は出来ると言う。

 ……それが事実なのは間違いなかった。

 ラフタとかに話を聞いたところ、実際阿頼耶識を使えないシミュレータでも昭弘はそれなりにMSを動かせるらしい。

 他の理由としては、ただでさえ三日月とバルバトスがいなくなるのに、それに追加して昭弘もいなくなるというのは鉄華団的に大きなマイナスとなる。

 シャドウミラーとタービンズがいるが、それでもいつ何があるか分からないのがこのオルフェンズ世界だ。

 ましてや、俺達……シャドウミラーと鉄華団はギャラルホルンと正面から敵対している。

 名瀬は俺やオルガと兄弟分の杯を交わしたが、タービンズを率いる立場であると同時にテイワズの一員でもある以上、容易にギャラルホルンと戦う事も出来ない。

 つまり、ギャラルホルンと敵対した時の戦力は、シャドウミラーと鉄華団なのだ。

 最悪、敵に通信させずに全滅させるという方法もあるが、それも絶対じゃないしな。

 もっとも、こちらについてもシノがパイロットに立候補した事で、多少は回復した。

 個人的にはシノには重要な仕事を任せたくはないのだが、これについてはそこまで重要でもない……何かあっても俺達がすぐにフォロー出来るので、という事で納得してしまう。

 後は、俺のグシオンである以上、歳星に残るのはシャドウミラーのメンバーでもいいだろうという思いもあったが、それについては恩返しをさせて欲しいと言われると……うん。さすがに断る事が出来なかった。

 昭弘がそこまで俺に恩を感じているというのは、ちょっと意外……でもないか? 今までにもそういう片鱗はあったし。

 だが、それでも自分が歳星に残るというのは、予想外だった。

 

「昭弘は責任感が強いしな、その辺は任せておけばいいだろ。お前は自分の仕事をしっかりとしていればいい」

「ありがとうございます」

 

 そう言い、昌弘はブリッジから出て格納庫に向かう。

 多分、何かあったら即座に出撃出来るようにしてるんだろう。

 グランだけではなく、昭弘の代わりにイサリビも守れるように。

 

「優しいのですね」

「……そう見えたか?」

「ええ。アクセルの事なので、一体どうするのかと思いましたが」

「お前は一体俺を何だと思ってるんだ」

 

 呆れの視線を笑っているクーデリアに向ける。

 

「アクセルだと思ってますが?」

「そういう事じゃなくて……まぁ、それはいいけど、火星に対する投資の件は上手く纏まったのか?」

 

 俺達が歳星を出発する前の晩まで、クーデリアは頻繁にマクマードと会って火星の投資に関する話をしていた。

 マクマードにしてみれば、クーデリアとの話は自分達に利益をもたらすという意味で、非常に大きい意味を持っていただろう。

 それなりに真剣にクーデリアとの話をしていたらしい。

 ……とはいえ、マクマードも現在は非常に忙しい。

 俺の一件が理由である以上、特に突っ込むような事は出来なかったが。

 ともあれ、そんな忙しい中でマクマードはクーデリアと何度も会っていたのを考えると、クーデリアの事を気に入ったのだろう。

 勿論、その気に入ったというのは女として気に入ったという訳ではないだろう。……いやまぁ、クーデリアが魅力的だというのは否定しないが。

 だからといって、マクマードの年齢を考えれば、さすがに無理はしないと思う。

 そんな訳で、クーデリアを気に入ったのは純粋に人間性を気に入ったという事だ。

 あるいは火星に投資していく上で、その責任者……あるいはパイプ役のクーデリアには相応の知識が必要だと思って鍛えたのか。

 とにかく色々とクーデリアが忙しかったのは間違いない。

 

「そうですね。正直なところかなり疲れました」

 

 そう言うクーデリアだったが、その顔に疲れの色はない。

 疲れはしたが、十分に休んである程度の体力や気力は回復したといったところか。

 

「それは何よりだ。……で?」

 

 短い言葉だったが、それでもクーデリアは俺が何を言いたいのかを理解し、少し考えてから口を開く。

 

「取りあえず今回の交渉が失敗したとしても、火星が詰む……という事はなくなったと思います」

「へぇ……それは意外だったな」

 

 それはつまり、マクマードとの投資に関する交渉が俺の予想を超えてクーデリア側に有利な形で纏まったということになる。

 俺としては、てっきりハーフメタルの交渉で上手くいく事でようやく火星はどうにかなる……といったような事になると思っていたのだが。

 

「もっとも、交渉が上手くいって投資して貰う以上、相応の利益をテイワズに返さないといけないのも事実です」

「だろうな」

 

 投資というのは、投資する方にも利益があるからこそ行うのだ。

 何も利益がないのに投資をするというのは……それはもう投資ではなく、寄付とでも言うべきだろう。

 テイワズを率いるマクマードが、そんな事をする筈もない。

 いや、JPTトラストやタービンズとの一件を盾に無理をすれば、寄付であっても受け入れたかもしれない。

 だが、当然ながらそうなるとリターンを期待出来る投資の時と比べて、どうしても小規模なものになるだろう。

 個人としてはその金額でも十分な大金だろうが、火星に対する投資……これからの火星を延命させるといった金額で考えれば、どうしてもその金額は足りない。

 いやまぁ、今回のテイワズの投資で火星が完全に生き延びられるようになったのかと言われれば、それは否なのだが。

 

「出来れば他の相手にも投資をして貰えば助かるのですが。……この場合、やはりギャラルホルンでしょうか?」

「無理を言うな、無理を。……いやまぁ、実際にそれが出来れば最善なのは間違いないけどな。だが、普通に考えてそれは無理だと思うぞ? 何しろ、俺達はギャラルホルンに対して思い切り正面から敵対してるのだから」

 

 正直なところ、火星にあるシャドウミラーや鉄華団の拠点はある程度の防衛戦力を置いてきたのは間違いないものの、それで本当に大丈夫かと言われれば、微妙なところだろう。

 一応近くにあった――それでもかなりの距離があったが――ギャラルホルンの基地からはグレイズやMWを大量に盗み出した。

 だが、ギャラルホルン程の規模の組織……実質的に地球を支配している組織である事を考えれば、1つの基地からグレイズやMWがなくなった程度であれば容易に補充出来るだろう。

 そうなると、やはり火星にある拠点が心配なのは間違いない。

 

「そうなると、地球にある国からでしょうか。難しそうですが」

「だろうな」

 

 そもそも、火星を植民地としたのは、その地球にある国だ。

 そうである以上、その国から投資を引き出そうとするのは……不可能ではないが、かなり難しいとも思う。

 クーデリアが交渉の達人とかなら、何とかなると思うが。

 あるいは……俺が混沌精霊としての力を使えば何とかなるか?

 とはいえ、そうなったらそうなったで問題があるのも事実なんだよな。

 何しろ俺の力を使うというのは、実質的には脅迫とかそれに近いやり方なのだから。

 具体的には、眠っている相手の枕元にナイフを刺しておいて、そこにクーデリアとの交渉を成立させるようにメモを残しておくとか。

 そして1日ずつナイフの位置が枕に近付いてくるとか、そんな感じで。

 ……うん。自分で言うのもなんだが、やられた方はちょっと過激だよな。

 

「取りあえず、頑張れ。俺の方でも何か出来ることがあったら助けるから」

「ありがとうございます。じゃあ……何かあったらお願いしますね」

「そういうのはない方がいいんだけどな」

 

 出来ればクーデリアの力だけで交渉を終わらせた方がいいのは事実だ。

 それはクーデリアも分かっているらしく、その言葉に素直に頷く。

 

「そうですね。私もそうしたいですし、出来るところまではやってみせます。……私の為に、ここまでしてくれた皆の……アクセルの為にも」

 

 決意を込めた目でそう言うクーデリアだったが、俺にしてみればこれは仕事だからこそやってる事でしかない。

 何しろこの仕事が終われば、報酬としてハーフメタルの利権に絡めるようになるのだ。

 このオルフェンズ世界特有の物質だけに、可能な限り確保はしておきたい。

 いつホワイトスターに戻れるのかは分からないが。

 それにシャドウミラーを運営する上での資金源としても、ハーフメタルの件は大きいだろう。

 何しろMSやMWが大量にある組織だ。

 当然ながら、それらの維持には相応の金が必要となる。

 ギャラルホルンと敵対している今なら、ギャラルホルンから金を盗んだり、宝石や金塊といった換金性の高い物を盗んだり……といった事で稼げるし、表沙汰に出来ない金を持つ者達、それこそマフィアやギャング、テロリストといった者達から金や換金性の高い物を奪ったりで会社を運営してもいいが、ずっとそれを続けるのは厳しい。

 だからこそ、俺としてはハーフメタルの利権は何としても欲しかった。

 

「そう言ってくれると、俺としても助かるよ。……それにしても、ここまで何もない旅路というのはちょっと意外だったな」

「そうですか? 私はその方が楽でいいですけど」

「それは否定しないけど、それでもギャラルホルンや海賊が襲ってくるものだとばかり思っていたんだよな」

 

 この世界の原作については俺も分からないが、歳星から地球、あるいは火星から地球に向かうのだ。

 その途中でギャラルホルンなり海賊なりの襲撃があってもおかしくはない。

 いや、一応火星から出た時にギャラルホルンの襲撃はあったか。

 だが、あれは本当に火星に近い場所。それもオルクス商会の手引きによるものだ。

 そうなると地球までの道筋での襲撃というのはあってもいいんだが……それがないのが疑問だった。

 夜明けの地平線団辺りが……うん? いや、待て。

 もしかしたら、原作だとブルワーズが鉄華団を襲っていたのか?

 話の盛り上がり的にも、昭弘の弟が敵にいて、それを助け出すというのはそうおかしな事ではないと思うし。

 だが、そのブルワーズは俺が乗っ取ってしまった。

 その為、こうして地球に向かう途中であっても全く襲撃がないという可能性は十分にある。

 まぁ、それならそれで無駄な戦闘がなくなったということで、悪くない結果ではあったが。

 

「このまま無事に何もなく、地球に到着すればいいんだけどな」

「あら、でも一度コロニーに寄るんですよね?」

「……ああ、そう言えばその件があったな」

 

 月の周辺……いや、この場合は地球の周辺と表現すべきか?

 そこには結構な数のコロニーがある。

 マクマードからの依頼によって、そのコロニーに物資を届けるという事になっていた。

 ちなみにこの依頼の報酬が、ガンダム2機の整備や改修、補給といった諸々が終わったら、速度重視の船でこっちに合流するという事になっていた。

 整備長は自信ありげに任せろとか言っていたんだが……まぁ、テイワズという組織の利益を考えると、そのくらいのことはした方がいいのだろう。

 俺にとっても、一方的に借りを作るのは面白くないし。

 それに、コロニーも火星程ではないにしろ、かなり厳しい状況に置かれているらしいし、クーデリアが地球に行く前にコロニーを見るというのも悪くはない事だと思う。

 

「コロニーがどのような場所なのか……それを見る事は、私にとって勉強になるでしょう」

 

 どうやらクーデリアも俺と同じようなことを考えていたらしい。

 多分だけど、地球に行くまで……いや、コロニーに行くまでの間に誰にも襲われないということになった場合、間違いなくコロニーで何らかの騒動がありそうなんだよな。

 原作については知らないが、話の流れ的に何となくそんな感じだと思う。

 問題なのは、それが具体的にどのような騒動かだろう。

 可能性として高いのは、海賊がコロニーを襲うという辺りか?

 いや、けどコロニーがあるのは地球や月から離れていない場所だ。

 そんな場所で海賊が行動していれば、それこそすぐにでもギャラルホルンの中でも最精鋭と呼ばれているアリアンロッド艦隊がやって来るだろう。

 海賊とはいえ……いや、海賊だからこそ、そういう無謀な行為をする可能性は低い以上、何か別の騒動なのは間違いなかった。

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