転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3925話

 シャドウミラー、鉄華団、タービンズの3つの勢力は、現在高密度デブリ帯の中を進んでいた。

 今のところ、敵……具体的には海賊と遭遇はしていない。

 夜明けの地平線団辺りが出てくるのかと思ったが、それもない。

 もっとも、夜明けの地平線団は基本的に高密度デブリ帯以外の場所でも活動している。

 ブルワーズは高密度デブリ帯の中だけで活動していたが、夜明けの地平線団のような大きな組織になれば、そういう事も出来るのだろう。

 もっとも、それはそれでギャラルホルンに目を付けられる事になるので、決してメリットばかりではないのだが。

 何だかんだと、ギャラルホルンは強力だ。

 俺やマーベル、三日月、アミダといったエース級なら対処も出来るだろうが、夜明けの地平線団は大きいものの、エース級がいるという話は聞かない。

 いやまぁ、実際にはそれなりに腕の立つ者達はいるのだろうが、それでもエース級には及ばないと思うが。

 ともあれ、そんな訳で現在俺達は順調に高密度デブリ帯の中を進んでいたのだが……

 

「暇だな」

 

 グランの食堂で、そう呟く。

 その視線の先では、昌弘を始めとした他の面々……中にはガランやジャコバから来た子供組、鉄華団からやって来た子供組もいて、クーデリアやフミタンから文字を習っている。

 

「暇だというのなら、こちらを少し手伝ってくれてもいいんですよ?」

 

 そう言ったのは、そのクーデリアだ。

 無理もないか。

 最初は子供達の人数も少なかったから、クーデリアやフミタンだけで十分に教師役が出来た。

 だが、こうしてシャドウミラーと鉄華団の子供達が集まってくると、どうしても教師役が足りなくなるのだ。

 

「そうは言ってもな。俺よりもお前達に教えて貰える方が、子供達は嬉しそうだぞ?」

 

 これは事実だ。

 俺のように、恐怖の象徴……というのは少し大袈裟かもしれないが、そんな俺よりも優しいクーデリアやフミタンから習いたいと思うのは、子供としてそうおかしな事ではない。

 クーデリアはそれを聞いて嬉しそうな様子を見せるものの、だからといって教えるのが大変なのは間違いない。

 ……マーベル辺りを連れてくるか?

 シーラは艦長として忙しいので、連れてくる事は出来ない。

 だが、マーベルならそこまで忙しくはないので、連れてこられるだろう。

 もっとも、マーベルは優しく教えるのではなく厳しく教えるタイプだが。

 ベッドの中だと可愛らしいんだが。

 

「それはそうだけど、それでも教えないよりは誰かが教えた方がいいでしょう?」

「……しょうがないな」

 

 クーデリアの様子を見る限り、意地でも俺に教師役をやらせようとしているように思える。

 となると、ここで俺が何を言ってもクーデリアは退かないだろう。

 そんな訳で、俺も渋々と教師の真似事をする。

 教師……教師か。

 俺の中で教師として印象深いのは、ネギとかか?

 他にもペルソナ世界で高校に通っていた時の女の担任もいたが……やはり一番印象深いのはネギだった。

 ネギにとって教師というのは本職という訳ではなく、魔法学校を卒業してからの課題だった筈だ。

 そうなると、今頃は何をしてるんだろうな。

 ふとそんな事を思い浮かべつつ……

 

「違う。そこはMだ。Nじゃない」

 

 タブレットを使って文字を練習している子供達に教えていく。

 MとNは間違えやすいから、間違うのは理解出来る。理解出来るのだが……

 

「なんでVとBを間違える? そこはVだ」

 

 文字を習った事のない者達である以上、当然ながら普通なら間違わないところで間違ったりしてしまう。

 

「す、すいません、アクセルさん」

「あー……うん。気にするな」

 

 クーデリアやフミタンに見せるのとは違う反応。

 俺を怖がっているという訳ではなく、俺に失望されるのを怖がるといった感じの態度。

 ……まぁ、仕方がないんだけどな。

 これが鉄華団の子供達ならともかく、俺が教えているのはシャドウミラーに所属する子供達だ。

 つまり、ブルワーズでヒューマンデブリとして使い捨てられそうだったところを、俺やマーベル、シーラに助けられた子供達。

 それを理解しているからこそ、俺に対する感謝の気持ちが強い。

 昌弘達のように、俺と接する機会が多ければ俺がそこまで過剰に感謝されるのを好まないというのは分かると思うんだが……うん。まぁ、こうして接していればいずれその辺も理解するだろう。

 そう考えると、こうして文字の読み書きを教えるというのも悪い事じゃないのかもしれないな。

 そんな風に考えながら文字を教えていると……

 ヴィー、ヴィー、ヴィーという警報音が食堂に響く。

 何だ? 海賊でも出たか?

 俺は勉強を教えるのを中断し、ブリッジに連絡をする。

 グランに所属している子供達は自分の持ち場に戻り、ガランやジャコバ、イサリビに所属している者達は食堂で何が起きてもいいように対処をする。

 

「ブリッジ、アクセルだ。何があった?」

『アクセル様、海賊です』

「分かった。すぐに出る」

 

 グシオンはないが、グレイズはある。

 グレイズを操縦しての戦いは、ギャラルホルンを相手に行っている。

 そうである以上、海賊を相手に戦う程度の事は難しくはない。

 ……寧ろ、MSを追加で入手出来るいい機会ですらあった。

 

『ちょっと待って下さい!』

 

 通信機を切って格納庫に向かおうとしたのだが、通信をしていたブリッジクルーがそんな風に言ってくる。

 

「何だ?」

『その……海賊なのは間違いないですが、一定距離からこっちに近付いてくる様子はありません』

「……何?」

 

 ブリッジクルーから聞かされたその言葉は、俺にとっても完全に予想外だった。

 海賊であれば、獲物を見つけたら即座に襲撃してくる筈だ。

 なのに、何故そんな事を?

 そう思ったが、すぐに納得する。

 何しろ現在こちらは5隻で移動中なのだ。

 3隻の船を持っていたブルワーズですら、この高密度デブリ帯では相応の実力を持っていた。

 それがほぼ倍。

 普通に考えれば、弱小の海賊団ならこっちにちょっかいを出したりはしないだろう。

 それこそ襲っても自分達が負けるだけだというのは、十分に承知しているのだから。

 ……とはいえ、それなら勝ち目がないと思ってすぐに逃げ出してもおかしくはない。

 だが、ブリッジからの報告だと……

 

「敵は逃げないでどうしている? こっちを追っているのか?」

『はい。併走している感じです』

「となると……敵の数は?」

『1隻です』

「となると、他にも敵がいる可能性があるな。向こうは応援が来るのを待っていると考えてもいい」

 

 これはあくまでも予想であって、それこそ最悪の展開ではある。

 だが、海賊というのは自分に勝ち目がなければ……それこそブルワーズのような武闘派でもない限り、すぐに逃げ出す筈だ。

 そうならないというのは、俺達に勝つ何らかの目算があっての事だろう。

 だとすれば……うん。やっぱりその何かに対処出来る準備はしておいた方がいい。

 

『……シーラ艦長から、アクセル様は格納庫で待機しているようにと』

「分かった」

 

 俺の疑問をシーラに聞き、それでシーラがそう判断したのだろう。

 であれば、それに否とは言わない。

 いやまぁ、立場的には俺の方が上なのだが。

 ただ、このグランにおいては艦長のシーラの方が正確に情報を把握しているだろうし。

 なら、わざわざそれに逆らう必要はない。

 そんな訳で、俺は格納庫に向かう……前に、食堂にいるクーデリアに声を掛ける。

 

「聞こえていたな? 恐らく敵は海賊で、何かを企んでいるのは間違いない。お前はここで待っていろ。ここなら何かあっても、すぐに対処は出来る筈だ」

「分かりました。……アクセルも気を付けて」

 

 そんな声を掛けてくるクーデリアに頷くと、俺は今度こそ食堂を出る。

 そうして向かうのは、格納庫。

 格納庫では既に大勢が集まっている。

 

「グレイズの用意は出来ているな?」

「はい。向こうになります。……標準機ですが」

「まぁ、それは仕方がない」

 

 シングルナンバーの百錬に乗るのもいいかもしれないとも思ったのだが、グレイズの方が壊れてもいいMSという意味で使いやすいんだよな。

 シングルナンバーの百錬、通常の百錬と百里。

 この3機は当然なら少数ずつしかない。

 一応マクマードとの交渉の結果としてそれぞれ複数機貰ってはいるが、それでもグレイズの方が大量にあるのも事実。

 それにグレイズはギャラルホルンの最新鋭のMSなのは間違いないが、だからといって出来たばかりという訳ではない。

 実際には完成してからそれなりに経っている。

 それと比べると、百錬と百里は……ある程度量産されているのは間違いないが、それでも完成してからの期間はグレイズよりも短い。

 何より、ギャラルホルンとテイワズの組織の力の差が大きい。

 このオルフェンズ世界において、組織力という意味では1位と2位のギャラルホルンとテイワズだったが、その1位と2位の間にある差は圧倒的だ。

 その辺の状況を考えれば、当然ながらテイワズの方が作れるMSの数は少ない。

 そうなると、レア度とでも評すべきか……ともあれ、テイワズ系列のMSを入手するのはかなり難しいのだ。

 だからこそ、俺にとっては出来れば百錬や百里を使いたくないという思いがあった。

 もっとも、今はの話だ。

 このまま時間が経過し、百錬や百里を新たに入手出来たのなら、また話は別だが。

 あるいは相手に俺達とテイワズが協力しているというのを気が付かせる訳にもいかない以上、その辺は仕方がないのかもしれないが。

 ……ギャラルホルンを相手にグレイズを使うのも、挑発的な意味からどうかと思わないでもなかったが。

 そんな風に思いつつ、俺は用意されたグレイズに乗り込み、待機する。

 さて、一体具体的に何があるのかと考えながら。

 ブリッジクルーとの通信で思ったように、向こうが何かを企んでいるのは恐らく明らかだ。

 まさか、偶然俺達と遭遇しただけという事はないだろう。

 いや、そうなる可能性も否定は出来ないものの、それでももしそうなったら即座に離れていく。

 だとすれば、やはりこれは何かを企んでいると考えた方が正確だろう。

 ……問題なのは、それが何か正確には分からない事か。

 幾つか予想は出来るものの、言ってみれば予想は予想でしかない。

 であれば、今は向こうの出方を見るだけだ。

 もしくは、いっそこっちから敵を攻撃するか。

 向こうが海賊である可能性が高い以上、先制攻撃をするというのは決して悪い選択肢ではない。

 万が一にも、実は海賊ではなくアリアドネを使えない……いわゆる密輸業者の類であったりした場合、その時はその時でまた何とかする必要が……そう思っていると、通信が入る。

 

『アクセル、出撃をして下さい』

 

 映像モニタに表示されたのは、シーラ。

 ブリッジからの通信らしいが、こうして通信を送ってきてとなると、何か動きでも合ったのか?

 

「構わないが、敵はさっきの海賊か?」

『いえ。もう1隻別方向から現れたわ。……さっきの海賊かと言われたら、恐らくそうなのでしょうけど』

「なるほど、こっちを挟み撃ちにするつもりか。あるいは、挟み撃ちではなくてもっと多方向から攻撃してくる可能性もあるか。……その場合は、夜明けの地平線団の可能性が高いけど」

 

 多数の船を持っている海賊というのは、そんなに多くない。

 武闘派として名高かったブルワーズですら、3隻……しかも、そのうちの1隻は輸送艦なのだから。

 そう考えると、こちらの5隻を包囲するといった場合はかなりの船の数が必要となる。

 そのような事が出来るのは、夜明けの地平線団だけだろう。

 あるいは、他の海賊が協力して襲ってくるといった可能性も否定は出来ないが、海賊同士がそうして手を組むのは……可能性はないとは言えないが、それでもかなり低いと思う。

 

『ええ、その可能性が高いわ。だから、アクセルには先行して相手の機先を制して欲しいのです』

 

 なるほど、俺という戦力を使えば敵を一方的に蹂躙出来る。

 何しろ、ナノラミネートアーマーを無効化出来るのだから。

 ……精神コマンドの直撃を使う以外にも、関節に攻撃を命中させるという手段もある。

 そして俺なら万が一……本当に万が一だがグレイズを撃破されても、それが物理攻撃である以上は全く何の問題もなく宇宙空間を移動してグランまで戻ってくる事が出来るのだ。

 だからこそ、シーラの指示は納得出来た。

 普通に考えれば、組織のトップを単機で敵に突っ込ませるといった事はしない。

 それはまさに自殺行為でしかないのだから。

 だが、それが出来るのが俺で、そしてそれが出来るのがシャドウミラーの強みでもある。

 俺が単機で敵に向かうのなら、マーベル率いるシャドウミラーのMS隊、鉄華団、タービンのMS隊もあるので、母艦の護衛も安全だ。

 

「分かった。なら、俺が敵に突っ込む。……まずないだろうが、もし向こうが海賊とは関係のない一般の船なら見逃すぞ? まぁ、一般の船がこの高密度デブリ帯を通ってるとは思えないから、密輸業者とかそういうのだとは思うけど」

『構いません、アクセルのいいように』

 

 シーラの言葉に頷き、俺は出撃することを外部スピーカーで格納庫にいる面々に告げるのだった。

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