転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3930話

 夜明けの地平線団の一件は恐らくギャラルホルンの仕業。

 そう判断するも、この状況で俺が何かを出来る筈もない。

 出来るとすれば……アリアドネの影響範囲に入り、そこでギャラルホルンを誘き寄せて倒すか、もしくはとっとと高密度デブリ帯を抜け出し、ギャラルホルンの予定を完全に狂わせるといった感じか。

 そんな訳で、俺達が選んだのは……

 

「アクセル様、高密度デブリ帯を脱出します」

 

 何故かブリッジクルーとしてその場にいたクランクがそう言ってくる。

 まぁ、ブリッジクルーとしての訓練をやりたいと言われれば、そういうものかとこっちも納得するしかないのだが。

 ちなみに、使っていない阿頼耶識対応のグレイズをイサリビに持っていくというのは、既に終わっている。

 小さな問題は色々とあったらしいが……最終的には感謝の言葉を口にされたので、結果としては悪くなかったというところだろう。

 

「そうか。一応周辺に注意をしておけ。高密度デブリ帯の脱出は、恐らく夜明けの地平線団やギャラルホルンにとっても予想外に早かった筈だが、それでも前もって待ち受けている可能性は否定出来ない」

 

 当初の予定よりも、素早く高密度デブリ帯を脱出出来たのはシャドウミラー……というか、元ブルワーズの面々がいた為だ。

 高密度デブリ帯での活動を主にしていたので、かなり詳しい。

 もっとも、高密度デブリ帯となっている理由は複数存在しているエイハブ・リアクターによって生み出された重力場だ。

 それが多数のデブリを引き寄せて高密度デブリ帯を形成している。

 ただ、俺達はそんな高密度デブリ帯の中で複数のエイハブ・リアクターを回収している。

 それによって高密度デブリ帯の航路も以前とは違ってきている。

 そういう意味では、俺達の影響で以前の高密度デブリ帯とは違ってきているのは間違いないだろう。

 

「分かりました。何があっても即座に対処出来るようにします」

 

 クランクがそう言い、それぞれに指示を出す。

 ……そんな様子を眺めていた俺は、ふと気になってシーラの方を見る。

 シーラはこのグランの艦長という扱いだ。

 なのに、クランクはそんなシーラに指示を仰ぐ事なく、ブリッジクルーに指示を出したのだ。

 もしかしたら、それがシーラにとって面白くないかもしれないと思ったのだが……

 

「どうかしましたか?」

 

 シーラは特に怒った様子もなく、俺にそう聞いてくる。

 てっきり怒っているのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。

 ……いや、満足そうな笑みすら浮かべている。

 

「いや、クランクが勝手に指示をしたことに怒ってるのかと思ったんだが」

「そんな事はありません。自分で何をやるべきなのか……それを考えるのは、ブリッジにいる者として決して悪くはないでしょう」

 

 そういうものか?

 そう思ったが、その辺については恐らく人それぞれといったところなのだろうと思っておく。

 決して自分の思い通りに動かせないことに不満を抱く者もいれば、ブリッジクルーが自分が何か言うよりも前にこうして動く事に満足する者もいる。

 シーラがそう思ってるのなら、別にいいか。

 後は、どこだったか……コロニーに寄って工業機械を下ろして、それから地球だな。

 そんな風に思っていると、不意にブリッジクルーの1人がこちらに視線を向けてくる。

 

「アクセルさん、ハンマーヘッドから通信が入ってます」

「ハンマーヘッドから? 分かった、繋げ」

 

 そう言うと通信が繋がり、映像モニタに名瀬の姿が映し出される。

 

「名瀬、どうした?」

『あー……ああ。実はちょっとその……話しておきたい事があってな』

「話しておきたい事? 何だ? 別に今はそこまで忙しくないし、構わないぞ」

『いや、出来れば兄貴にはハンマーヘッドまで来て欲しいんだ。あまり人には聞かせたくないから』

 

 そう言われると、俺も何を話したいのかが気になる。

 俺に向けてそう言ってくるという事は、多分何かがあるんだろう。

 こうして通信で話せないのが何なのか。

 気になるのは当然のことだった。

 

「分かった。なら、今からハンマーヘッドに行く。それでいいんだな?」

『ああ、頼むよ』

 

 そうして話が決まると、俺はすぐにハンマーヘッドに向かうのだった。

 

 

 

 

 

「悪いな、兄貴。こっちまで呼び寄せて。本来ならこういう時は、俺が兄貴に会いに行くべきなんだが」

「まぁ、その辺はしょうがない」

 

 名瀬はタービンズを率いているのと同時に、ハンマーヘッドの艦長でもある。

 そうである以上、名瀬がハンマーヘッドを離れた時に何かが起こるという事を考えると、容易にグランに来るといったことは出来ない。

 勿論、アミダも臨時の艦長のような事は出来るだろうが……それでも、アミダは結局のところMSパイロットなのだ。

 これは鉄華団にも言える。

 オルガが鉄華団を率いると同時に、イサリビの艦長でもある。

 ……あ、でもそう言えば歳星から女が1人乗ったとか言ってたから、もしかしたらその女が艦長代行を出来たりするのか?

 ともあれ、鉄華団もそんな形だ。

 それに対して、シャドウミラーは俺が率いているが、艦長はシーラだ。

 何かあっても、問題なく対処出来る。

 それにマーベルもいるし。

 

「で? 話ってのは?」

「あー……うん。実は、ちょっと……いや、ここじゃなんだな。客室まで来てくれ」

 

 言いにくそうな様子からすると、何か悪い事でも起きたのか?

 特に何かがあったという情報は聞いていないが。

 とはいえ、その割には名瀬が焦っている様子がないのは疑問だ。

 アミダは……まぁ、艦長代理としてブリッジにいてもおかしくはないが、ラフタとかが一緒にいないのも疑問だった。

 

「分かった。なら、客室に行くか」

 

 そう言い、俺は名瀬と共に移動し……やがて客室に到着する。

 客室の中には誰もおらず、俺と名瀬はそれぞれソファに座る。

 

「本来なら何か飲み物を出すところだが……」

「そう出来ない理由があるんだろう?」

「……ああ。実はついさっき親父から連絡があった」

「マクマードから?」

 

 一応、アリアドネを使えば歳星からここまでリアルタイムでの通信も可能だ。

 あるいはリアルタイムの通信ではなく、メールのような形で連絡を送る事も可能だった。

 今回の件がどちらなのかは具体的には分からない。

 だが、その件についてはわざわざここで聞く必要もないだろう。

 この場合、問題なのはマクマードから連絡があったという事であり、その内容なのだから。

 

「ああ。歳星を出る時、イサリビに荷物を積み込んだのは知ってるよな?」

「知っている。他にもテイワズから女を1人派遣したって話だったが」

「あー……そっちの件もあったか。まぁ、鉄華団は色々と特殊だからな。いわゆる、常識を知らない者も多い。そういう連中に常識を教える必要もあるんだよ」

 

 そう言われると、納得するしかない。

 鉄華団の中で常識を持っていると断言出来るのは……雪之丞とビスケットくらいか?

 火星に残してきた事務員の男も常識は知ってそうだが、ここにはいないしな。

 ただ、雪之丞もビスケットも、あくまでも他の者達に比べたらマシというだけであって、大きな範囲での常識となると……うん。問題があるのは間違いない。

 そういう意味では、歳星から女が1人派遣されたというのは納得出来る。

 納得出来るが……何で女?

 鉄華団はただでさえ男所帯だ。

 一応アトラがいるけど、アトラは三日月だけしか見えてないし。

 クーデリアやフミタンは、グランに乗っている。

 そんな中に女……それも大人の女を放り込むというのは、狼の群れに羊を1匹差し出すような行為に思える。

 もっとも、オルガがいれば実際に妙な事はしないとは思うが。

 

「常識か。それは必要だろうな」

 

 この世界で暮らす上で、常識というのはどうしても必要になる。

 例えば、MSの動力炉であるエイハブ・リアクターだ。

 これはハーフメタルを使っていない機械の類に影響を与えるので、基本的にMSは市街地に入る事が禁止されている。

 もし俺がそれを知らなければ、恐らく普通にMSで街中に入って大きな問題になっていただろう。

 そういう意味でも、常識というのは重要だった。

 

「だろう? オルガ達が育ってきた環境を考えると、その辺はどうにかする必要があるからな」

「だろうな。……で、そろそろ本題に入ってくれ。何でわざわざこんな風に誰にも知られないようにして、話をする必要があるんだ?」

「……そうだな。いつまでも世間話をしている訳にはいかないか。けど、これだけは覚えておいてくれ。これから話すのは、俺達……テイワズにとっても予想外の話だ。だが、これは決してシャドウミラーや鉄華団を敵にするつもりはないのを理解して欲しい」

 

 名瀬のその言葉を聞いた俺が最初に思い浮かんだのは、やはり夜明けの地平線団はジャスレイが仕掛けた罠だったのかという事だ。

 その話が出た時、名瀬はジャスレイはマクマードの手の者が見張っているから、違うと言った。

 だが、実際にはジャスレイの仕業だった事が判明したのではないか。

 そのように思い、尋ねる。

 

「夜明けの地平線団の件はやっぱりジャスレイの仕業だったって事か?」

「……は? いや、違う」

「違う? その件で今の事を言ったんじゃないのか?」

 

 今の話の流れから、恐らくそうだと思っての言葉だったのだが、名瀬は数秒自分が何を言われたのか分からないといった様子で沈黙した後、慌ててそれを否定する。

 

「違うよ。その辺は親父が監視させてるから大丈夫だって言っただろう?」

「実はそのマクマードの監視の目をすり抜けて、ジャスレイが夜明けの地平線団に情報を流しているのが分かったんじゃないかと思ったんだが。……違ったのか」

「ああ、その件じゃない」

「なら、何だ?」

「そうだな。……こうなったらはっきりと言った方がいいか。とはいえ、この件には兄貴も多少は関わってるんだぜ?」

「は? 俺がか? 一体何がだ?」

 

 名瀬が何を言いたいのか、正直なところ全く分からない。

 そもそも今の話の流れでどう俺が関係しているのかが分からない。

 

「その……兄貴はノブリスって奴と親しいんだろう?」

 

 あー……そっちか。

 何となく、本当に何となくだが、名瀬が何を言いたいのかを理解出来てしまった。

 

「親しいというのは少し違うが、繋がりがあるのは事実だな」

 

 ノブリスが俺達に色々と手を貸してくれたのは、俺達がいれば自分の利益になると分かっているからだろう。

 実際、ノブリスの仲介で行ったテイワズ……JPTトラストとの取引では、ノブリスもかなり儲けたらしいし。

 だが、それはつまり俺達が負債になると判断すればあっさりと俺達を切り捨てるという事を意味してもいた。

 

「そのノブリスの件でちょっとな」

「具体的には?」

「実はノブリスが鉄華団を運び屋にしている」

「……運び屋……おい、まさか」

 

 名瀬の口から出た運び屋という言葉、そして鉄華団の名前に、その言葉の意味に気が付く。

 以前ちょっと聞いた話によると、イサリビにはテイワズ経由でノブリスから頼まれた荷物が載っていた筈だ。

 名目上は工作機械とかだった筈だし、俺もすっかりその言葉を信じていた。

 だが……名瀬の今の言葉を信じる限り、それが工作機械でないのは明らかだ。

 なら、何か。

 そう考えると、ノブリスの本業であったり、わざわざ工作機械と誤魔化していたのを理解すると、それはつまり武器以外の何物でもないだろう。

 

「兄貴が予想している通りだ。親父から連絡が入ったが、色々と調べた結果そういう事らしい」

 

 そう言い、名瀬は俺の反応を確認する。

 普通に考えれば、知らず知らずのうちに俺達が……正確にはシャドウミラーではなく、鉄華団がだが、武器の運搬に知らないうちに関わらされていたのだ。

 俺とテイワズの関係を考えると、この件で苛立ち混じりにテイワズに何かをしてもおかしくはない。

 名瀬としては、それを心配しているのだろう。

 確かに今回の一件は不愉快だ。それは間違いないが、だからといってまずは事情をしっかりと聞いてから、俺がどう反応するべきなのかを決めるべきだろう。

 

「ノブリスがテイワズを経由して鉄華団に武器を運ばせたという事だったが、それは前もって分からなかったのか? ノブリスも馬鹿じゃない。実際に武器を運ばせる鉄華団はともかく、テイワズには前もって説明しておくのが普通だと思うが」

 

 ノブリスにしてみれば、テイワズというのは自分よりも格上の存在だ。

 武器商人として、火星を含めた圏外圏で大きな影響力を持つノブリスだが、それでもテイワズには及ばない。

 そんなテイワズを騙すような形になれば、色々と面倒な事になるだろう。

 

「その、だな。兄貴がうちとエイハブ・リアクターや未知のフレーム……ヴァルキュリア・フレームだったか? それの取引をしただろう? あの取引はうちとしてもかなり大掛かりな取引だったんだ」

「……つまり、その取引を一度挟んだから、騙された形になったと?」

 

 そう言う俺の言葉に、名瀬は頷くのだった。

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