転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3931話

「んな……それは本当ですか?」

 

 苦虫を噛み潰したような表情でオルガが言ってくる。

 ハンマーヘッドで名瀬との話を終えると、俺と名瀬は揃ってイサリビにやって来ていた。

 本来なら艦長の名瀬をハンマーヘッドから引き離すのは問題だったのだが、今起きている問題はそれよりも大きな問題であった以上、仕方がない。

 

「テイワズからの情報だとな。……そんな訳で、悪いが積み荷を確認させてくれ」

 

 オルガは俺の言葉にたっぷりと数分程沈黙した後で頷く。

 

「分かりました。確認してみましょう」

 

 そう言い、俺達は……オルガ以外に俺と名瀬で荷物の積まれている場所に向かう。

 その途中……

 

「オルガ? え? 3人揃って一体何を?」

「ちょっと、ユージン。邪魔しちゃ駄目だって」

 

 何やら話をしながら歩いて来たユージンとビスケットと遭遇する。

 

「あー……どうします?」

 

 オルガもまさかここでこの2人と会うとは思っていなかったのか、少し戸惑った様子で聞いてくる。

 名瀬に視線を向けると、俺に任せるといったように小さく頷く。

 

「一緒に連れていくか。この2人なら、今回の件は知られても問題ないだろうし」

「え? え?」

 

 俺の言葉に、ビスケットが戸惑った様子で声を上げる。

 ビスケットやユージンにしてみれば、いきなり俺達と遭遇したらついてこいと言われているのだから、このように戸惑っても無理はない。

 

「ちょっと俺達が運んでいる荷物の件でな。……悪いが、お前達にも一緒に来て欲しい」

「え? まぁ、いいけど……ビスケット、取りあえず行ってみようぜ」

「分かった」

「あ、ちょっと待った。メリビットを呼んできてくれないか? この件については、メリビットも知っておいた方がいい」

 

 名瀬の言葉にユージンの顔が赤くなる。

 ……赤く? 何でまた?

 そう疑問に思ったが、ユージンにしてみればメリビットという女は好みなのだろう。

 あるいは単純に女として魅力的に思えたのか。

 

「じゃあ、俺が呼んでくる。えっと、行くのは荷物のある場所でいいんですよね?」

「ああ、それでいい」

 

 名瀬が頷くと、ユージンは俺達の前から走り去る。

 メリビットの名前が出た事でオルガが微妙に嫌そうな? いや、困ったような? ともあれ、複雑な表情を浮かべていた。

 この様子を見ると、オルガはメリビットという女に対して苦手意識を持っているらしい。

 

「じゃあ、行くか。……オルガ、どうした?」

「いえ、何でもありません。……こっちです。ビスケット、お前も」

「うん、分かったよ」

 

 そうして俺達は荷物のある場所に向かう。

 

「ねぇ、オルガ。一体何があったのさ?」

「俺達は騙されたかもしれねえ」

「……え」

 

 そんな会話をしながら歩いていると、やがてユージンが戻ってくる。

 そんなユージンの側には1人の女。

 なるほど、この女がメリビットか。

 顔立ちは整っており、大人の女と称するのに相応しい。

 知的美人といった感じか。

 そのメリビットは、俺と名瀬の前に立つと俺に向かって頭を下げる。

 

「初めまして、アクセルさん。メリビット・ステープルトンといいます」

「ああ。もう知ってるみたいだが、アクセル・アルマーだ。よろしく頼む」

「兄貴、このメリビットは書類仕事という点で俺が太鼓判を押す。それだけ優秀な奴だ」

 

 名瀬がそう言ってくる。

 この様子を見ると、どうやら名瀬もメリビットの事は知ってるらしい。

 もっとも、どちらもテイワズに所属している身だ。

 お互いに面識があってもおかしくはない。

 

「ありがとうございます、名瀬さん。名瀬さんにそのように言われると、身が引き締まる思いです。……それで、荷物に何か問題があるという話でしたが?」

 

 メリビットのその言葉に、名瀬とオルガが苦々しい表情を浮かべる。

 名瀬にしてみれば、テイワズがノブリスに騙されたという事になるし、オルガにしてみればノブリスにいいように使われているという事になる。

 そして俺は……まぁ、ノブリスがどういう性格なのかは分かっていたので、利用しようとしたと言われてもそういうものだろうという思いがあるので、特に表情は変わっていない。

 勿論、こういう風に利用された以上、面白くないという思いがあるのは間違いなかったが。

 

「色々と説明したいが、直接見た方が手っ取り早い。……オルガ、案内を頼む」

 

 名瀬の言葉にオルガは頷き、俺達はそのまま荷物のある場所に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「これです」

 

 オルガがそう言ったのは、複数のコンテナだ。

 その数は10や20ではない。

 それぞれにかなりの大きさがあり……そういう意味では、この多数のコンテナがイサリビの収納スペースを埋めている。

 

「それで、こうしてコンテナの前に来ましたけど、一体何があったのですか?」

 

 メリビットが表情を変えず、そう聞いてくる。

 メリビットにしてみれば、一体何があったのかという思いがそこにはあるのだろう。

 

「実は、このコンテナだが、中身は工作機械って事になってるらしいが、実は武器らしい」

「……え?」

 

 俺の言葉に、メリビットは最初何を言ってるのか分からない様子だったが、数秒の沈黙の後でそんな声を漏らす。

 メリビットにしてみれば、このコンテナが……それも全てが武器だというのは、完全に予想外だったのだろう。

 

「ちょ……アクセルさん!? 一体何で……」

 

 驚いたのは、ビスケットも同様だ。

 ユージンも理解出来ないといった様子で俺の方を見てくる。

 

「取りあえず最後まで聞け。この荷物を送ったのは、ノブリスだ。そしてノブリスは武器の入ったコンテナを工作機械という事にしたらしい。つまり、テイワズを騙した訳だな」

「マジか」

 

 思わずといった様子でそう呟いたのは、ユージン。

 ビスケットも声には出さないが驚いている。

 ユージンやビスケットは、実際に歳星に行ってテイワズがどれだけの力があるのかをその目で見ている。

 それだけに、ノブリスの行為を信じられなかったのだろう。

 

「とにかく、そんな訳でこの荷物を下ろす先……ドルトコロニーでは、間違いなくきな臭い事が起きる」

「それは、本当ですか!?」

 

 俺の言葉に、何故かビスケットが大きな声を上げる。

 何だ? 騙された云々というのとは全く違う意味で、驚いているように思えるんだが。

 

「このコンテナの中身が武器である場合は間違いなくな。……さて、そんな訳で色々と確認する為にも、コンテナを最低でもどれか1つは開けたいところだが」

 

 コンテナに視線を向け、そう言う。

 当然の事だが、本来なら荷物を運搬中にその荷物を開けるといったようなことをするのは厳禁だ。

 それこそ最悪、契約違反という扱いになるかもしれない。

 とはいえ、俺の場合はやろうと思えば出来る。

 具体的には、影のゲートを使えばコンテナの中に入る事も出来るだろう。

 コンテナは当然ながら開かないようにしっかりと閉められているが、世の中には完全というものはない。

 微かな……それこそ、髪の毛の1本すら入らないような隙間であっても、それがあれば影のゲートを使って中に入れる。

 とはいえ、当然ながらここでそんな事をすれば、名瀬やメリビットといった魔法について知らない者達に魔法が知られてしまう。

 名瀬やメリビットに魔法について知られれば、それは当然ながらテイワズにも知られるだろう。

 そうなると、間違いなく面倒な事になってしまう。

 そうならないようにする為には、もっと別の方法で……あ、そうだな。

 

「オルガ、夜明けの地平線団による襲撃で、イサリビはそれなりに揺れたよな?」

「……え?」

 

 いきなり何を言い出したのかと不思議そうな視線を向けてくる。

 だが、名瀬はすぐに俺が何を言いたいのか理解したのか、わざとらしく大きな声で言う。

 

「そうそう、大変だったよな。あの戦いでイサリビは結構な被害を受けたんだ。その衝撃でこのコンテナ同士がぶつかって扉が開いても、仕方がないよな」

 

 名瀬のその言葉で、ようやくオルガも俺が何を言いたいのか分かったのか、頷く。

 

「ああ、なるほど。……そう言えばそうでしたね。あの戦いでイサリビが受けた衝撃は大きかったですね」

「だろう? だから……まぁ……こうなっても仕方がない訳だ」

 

 コンテナの扉にそっと手を伸ばす。

 本来なら、このコンテナにパスワードを入力したり、あるいは専用の鍵……具体的にはカードとか、そういうのを使わなければ開けることが出来ない。

 あるいは俺の知らない何か別の方法か。

 だが……それはあくまでも普通の方法が。

 手を伸ばし、金属に触れるとそこにゆっくりと力を込めていく。

 するとコンテナの扉は俺の指の形に曲がっていき……あっさりと中を覗けるようになる。

 

『……』

 

 それを見ていた名瀬、オルガ、ユージン、ビスケット、メリビットの5人は、何も喋る事が出来ないまま、目を見開き、口を開いて俺の方を見ていた。

 オルガを始めとして魔法を知ってる面々にしてみれば、魔法はともかく、生身でこのくらいの力を発揮出来るとは思ってもいなかったのだろう。

 また、俺がマクマードと会った時にその場にいた名瀬だが、あの時に放った殺気はあくまでもマクマードに向けていたものだったし、何よりも殺気と今の力では全く方向性が違いすぎるので、驚くのも当然か。

 そしてメリビットにしてみれば、それこそ俺の能力については全く何も知らない、それこそ普通の人……いや、テイワズ所属という事は模擬戦については知っているので凄腕のパイロットであるというのは知っていたかもしれないが、俺が生身でこれだけの力を発揮出来るとは思ってもいなかったのだろう。

 そんな訳で、全員が全員驚いて何も言えなくなっているのを見た俺が、取りあえず……という事でコンテナの中身を見る。

 

「ビンゴ」

 

 コンテナの中に入っているのは、MWだ。

 それだけではなく、銃や弾薬も結構な数がある。

 これが工業用の機械と言われて、信じる者が一体どのくらいいるのやら。

 俺の力に何も言えなくなっていた者達も、今の俺の言葉で我に返ったのか、こっちに近付いてくる。

 場所を譲って中身を確認すると、それを見た全員が真剣な表情になる。

 俺と同じ物を見て、色々と思うところがあったのだろう。

 

「くそ……ノブリスの野郎、俺達を利用しやがって……」

 

 最初に口を開いたのは、ユージン。

 その表情には、ノブリスが自分達を……鉄華団を利用した事に対する怒りがある。

 まぁ、その気持ちは分からないでもない。

 例えば旅行に行った知り合いの鞄にこっそりと麻薬やら宝石やら金塊やらを紛れ込ませて、それを日本に持って帰らせるというような、そんな行為に近いのだから。

 ……運んでいるのがMWや武器だから、それよりもっと質が悪い。

 

「マクマードからの情報通りだな」

 

 そう言いつつ、他の面々に視線を向ける。

 その言葉にその場にいた者達は俺に視線を向けてくる。

 それらの視線を受けながら、俺は口を開く。

 

「それで、問題なのはこの兵器の入ったコンテナをどうするかという事なんだが」

「僕はこのコンテナをドルトコロニーに持ち込むのは反対です!」

 

 真っ先にそう言ったのは、ビスケット。

 そう言えばさっきもちょっと様子が変だったが……

 

「ビスケット、お前はもしかしてドルトコロニーに何か思うところでもあるのか?」

「思うところというか、僕と妹達は火星に行く前はドルトコロニーにいたんです」

「あー……なるほど」

 

 ビスケットが他の者達と比べて妙に常識を持っていると思ったが、その辺が理由だったらしい。

 コロニーで生活をしていたのなら、相応の常識を知っているのはおかしな話ではない。

 そんな過去があれば、ビスケットも自分の故郷とも呼ぶべき場所に戦乱を巻き起こす武器や兵器の輸送に反対するのは当然だった。

 とはいえ、ビスケットが反対をしたから届けないという訳にもいかない。

 荷物の中身は誤魔化されていたとはいえ、それでも鉄華団がドルトコロニーまで荷物の運搬を依頼されたのは事実で、それを受けたのも鉄華団なのだ。

 この状況で荷物を届けないような事をすれば、理由はどうあれ鉄華団にとっての信用問題となるのも事実。

 だからこそ、ここはどうするのかをしっかりと考える必要があった。

 

「そもそもの話だが、ドルトコロニーでこのMWとか武器の入ったコンテナを受け取るのは誰だ? 例えば犯罪者とか、テロ組織とかなら引き渡しをしなくてもいいと思うんだが」

 

 その言葉に、ビスケットが何かを言おうとし……動きが固まる。

 ビスケットは誰にこのコンテナを引き渡せばいいのか、それを理解していたらしい。

 そしてビスケットの様子を見る限り、それは俺が口にした犯罪者やテロ組織ではなく、きちんとした立場……それこそ、表向きだけなのかもしれないが、荷物を受け取るのに何の問題もない、そんな相手だったらしい。

 

「ビスケット、誰が荷物を受け取るんだ?」

 

 オルガのその言葉に、ビスケットは何かを言おうとし……そして数秒黙り込んでから、再び口を開く。

 

「ドルトの従業員達だよ」

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