転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3932話

 取りあえず、荷物についてはドルトコロニーに持っていく事になった。

 ビスケットとしては、決してやりたくなかったみたいだったが、それでも今の状況を考えると、荷物を全て渡さないという訳にはいかないからだ。

 ……もしどうしても荷物を渡したくないのなら、その時はそれこそイサリビを破壊するといったような事をする必要がある。

 荷物を積んでいるイサリビが破壊されれば、積んでいた荷物も当然ながら破壊される。

 それは事実だが、だからといってオルガが……いや、鉄華団の面々がそれを受け入れる筈もない。

 何しろ鉄華団にとってイサリビというのは、唯一の強襲装甲艦なのだから。

 これがなければ、宇宙での移動が出来ない。

 いやまぁ、夜明けの地平線団の襲撃があった時に、海賊船を奪っていればまた話も違ったのかもしれないが。

 ともあれ、今のこの状況ではそのような手段は採れない。

 そうなると、ひとまずは向こうの様子見をするという事になった。

 

「いっそ、アクセルが空間倉庫でしたっけ? それを使えばいいのではないですか?」

 

 グランの食堂で、事情を知ったクーデリアがそう言ってくる。

 クーデリアにしてみれば、自分が地球に行くまでの一件で余計な騒動に巻き込まれたくないという思いがあるのだろう。

 

「それも考えないではなかったけど、結局依頼を引き受けたという事実がある以上、コンテナを渡さないといけないのは間違いないだろ」

「そうですね。……ですが、ノブリスさんも一体何を考えているのかしら? フミタンはどう思う?」

「え? 私ですか? その、私のような者があの方が何を考えているのかを予想するような事は出来ません。恐らく何らかの理由があるのだと思いますが」

 

 フミタンが戸惑った様子でクーデリアにそう言う。

 以前から思っていたが、フミタンは何だか妙にノブリスに遠慮するところがあるよな。

 まぁ、主であるクーデリアの行動の資金援助をしているのだから、仕方がないのかもしれないが。

 

「そうか。クーデリアやフミタンは俺達よりもノブリスと接する機会が多いから、何か分かるかと思ったんだがな」

「そこまで接する機会はありませんよ?」

 

 俺の言葉に、クーデリアがそう言う。

 とはいえ、本人がそう思っていても、実際には違ってもおかしくはないのだが。

 そう思っていると、不意に食堂に放送が流れる。

 

『こちら、ブリッジ。現在、映像モニタにてドルトコロニー群と、地球を確認した。その映像を流すので、気になる者は見てもいいとシーラ艦長からの連絡だ』

 

 その言葉に、俺達も食堂にある映像モニタを起動する。

 するとそこには、多数のコロニーと……大分離れた場所に、小さく地球の姿。

 ようやくここまで来たな。

 その光景を見ると、そんな風に思う。

 

「あれが……地球……」

 

 映像モニタを見たクーデリアの口から、そんな声が漏れる。

 クーデリアは火星で生まれ育った身だ。

 いわゆる、上流階級であっても、地球を直接自分の目で見るのはこれが初めてなのだろう。

 映像モニタ越しの光景を自分の目でと表現するのもどうかと思うが。

 クーデリアが感動している以上、野暮な事を言う必要もないだろうが。

 なお、クーデリアは一目で分かる程に地球を見て感動していたものの、フミタンの方はそこまで感動した様子はない。

 というか、いつも通りの無表情だ。

 

「フミタンは地球を見るのは初めてじゃないのか?」

「いえ、私は火星で生まれ育ったので。こうして実際に地球を見るのは初めてです」

「その割には、あまり感動していないように見えるんだが」

「申し訳ありません。私は感情が顔に出にくいので」

 

 そう言い、頭を下げるフミタン。

 俺はそんなフミタンに対し、慌てて声を掛ける。

 

「別に責めてる訳じゃないんだから、気にするな。ただ、ちょっと感動しているようには見えなかっただけだから」

「次からは気を付けます」

 

 頭を上げてそう言うフミタンだったが、その表情は相変わらず変わらない。

 フミタンも顔立ちは整っている。

 笑えば人気が出る……いや、だから笑わないのか?

 こう言っては何だが、フミタンの身体付きはかなり女らしい。

 もしフミタンが笑みを浮かべる……つまり接しやすい性格だと思われれば、そんなフミタンを口説こうとする者が多くなってもおかしくはない。

 特にシャドウミラーでは、大人の男も多いのだから。

 これがタービンズなら、男は名瀬だけでそれ以外は全員女だから、その手の心配はない。

 鉄華団も……まぁ、何人かは女好きがいるものの、それでも子供達が多い分、女を口説いたりするのは難しい。

 だが、シャドウミラーでは、子供組も多いものの、大人の男が多いのだ。

 そんな訳で、フミタンが自己防衛としてとっつきにくい性格をしているというように見せるのは、悪い話ではなかった。

 ……もっとも本人がきちんとそこまで考えてやっているのかどうかまでは分からないが。

 何しろ俺が初めてフミタンに会った時から、こんな感じだったし。

 

「本当よね。アクセルも言ってやってちょうだい。フミタンったら、自分の感情を素直に表に出すのが苦手なのよ」

 

 俺とフミタンの会話を聞いていたクーデリアが、映像モニタから視線を外すとそう言ってくる。

 クーデリアにとっても、フミタンが無表情なのは気になっていたのだろう。

 フミタンはクーデリアにとってメイドであると同時に、姉のような存在でもある。

 だからこそ、フミタンの無表情が気になっていたのだろう。

 

「それを言うのであれば、お嬢様も自分の感情を素直に表した方がいいのでは?」

 

 そう言うフミタン。

 クーデリアはそんなフミタンの言葉に何か思うところでもあったのか、何故か俺に視線を向け、顔を赤くして叫ぶ。

 

「フミタン!」

「おや。お嬢様が私に言ったことと、そう違いはないと思いますが。それに、お嬢様は幸せになるべきなのです。革命の乙女として名前が広まってしまった以上、お嬢様にとってこの先は大変な事になるでしょう。ですから……」

「フミタン、いいの。今はいいの」

「……」

 

 クーデリアの言葉に、フミタンは黙り込む。

 そんな2人の様子を見ていたのだが、2人の間に流れた少しだけ重い雰囲気はすぐに消える。

 

「それにしても、いよいよ地球ですね」

「ああ。……じゃなくて、その前にドルトコロニーの一件があるのを忘れるな」

「そう言えばそうでした。地球を直接見たので、つい。……あ、でもドルトコロニーで買い物は出来るでしょうか?」

「買い物?」

「はい。グランに乗っていて不便は感じていませんでしたが、これから先の事を考えると、少しくらいぱあっと買い物をしておきたいと思いまして。……その、アクセルも一緒にどうですか?」

「買い物か。まぁ、悪くないかもしれないな」

 

 火星において、クーデリアは先程フミタンが言ったように革命の乙女として知られている、かなりの有名人だ。

 それだけに気軽に買い物をするといった事も難しい。

 だが、このドルトコロニーならどうか。

 恐らくクーデリアについての情報はここまで流れてきていない筈だから、ゆっくりと買い物が出来るだろう。

 もしクーデリアについての情報が流れてきていたら……その時はその時だ。

 変装なりなんなりすればいい。

 もし情報が流れてきていても、どうしても火星で流れている情報と比べると曖昧になっている筈だ。

 情報が劣化していると言ってもいい。

 それだけに、多分買い物くらいは問題なく出来ると思う。

 それに……買い物という意味では、グランやガラン、特に補給船のジャコバ辺りは物資をそれなりに買っておいた方がいいだろうし。

 

「あら、じゃあアクセルも一緒に買い物に行く?」

「……え?」

 

 まさかクーデリアからそんな風に誘われるとは思っていなかったので、驚く。

 もっとも、クーデリアにとっては荷物持ちが欲しいだけなのかもしれないが。

 俺の魔法について知っているクーデリアだ。

 空間倉庫を使えば、それこそどれだけ買い物をしても持つのに困るという事はない。

 

「場合によるな。荷物の受け渡しをどうするのかというのもあるし」

 

 MWや兵器の類の入ったコンテナの件だ。

 取りあえず、何も知らない振りをして、コンテナを引き渡すといった事はまず不可能だろう。

 そうなると、具体的にどのような形になるのかは分からないが、コンテナを渡す現場に俺達がいた方がいいのも事実。

 ……とはいえ、クーデリアの重要性を考えると、護衛を用意した方がいいのも事実なんだよな。

 そしてシャドウミラー、鉄華団、タービンズの中で生身の戦いが最も得意なのが誰なのかと言えば、それはやはり俺だろう。

 それも僅差で俺が強いという訳ではなく、圧倒的なまでの差で俺だ。

 だからこそ、クーデリアの護衛となると一番向いているのは俺なんだよな。

 けど、そうなるとコンテナの方は無理な訳で……いっそ炎獣でも使うか?

 そう思わないでもなかったが、名瀬を始めとして俺の魔法を知らない者達をどう誤魔化すかという問題もある。

 そんな諸々について考えると、やっぱり俺が護衛をした方が一番真っ当な訳で……コンテナの方は、オルガだけでは難しいかもしれないから、名瀬辺りに行って貰うか?

 その辺については、後で名瀬に相談してみるか。

 

「買い物は行けるかもしれないな」

「……え? 本当に?」

 

 何故か驚きの表情を浮かべるクーデリア。

 もしかして、自分から買い物に行こうと誘ってきたのに、実は買い物に行くとは思っていなかったのか?

 

「絶対とは言えないけどな。コンテナの件は名瀬やオルガに任せておけばどうとでもなるし。……それに、元々俺達が受けた依頼はクーデリアを無事に地球まで連れていく事だ。そう考えれば、ここで護衛をするというのは別におかしな話じゃないと思うが」

「それはそうかもしれませんが、ですが本当にいいのですか? 今回の一件は下手をすればかなり大きな問題になるのでしょう? そうなると、やはりここは……」

「いや、そもそもクーデリアが買い物に行こうと言ってきたんだろう? なのに、何でクーデリアがそういう事を言うんだ?」

「さっきは別に、そう出来たらいいなと思っていただけです。……まさか、本当に一緒に買い物に行ってくれるとは思わなかったので」

「今の俺はお前の護衛だ。お前を守るのを最優先に考えている。そういう意味では、俺がクーデリアと一緒にいるというのはおかしな話じゃない」

「……アクセル……」

「こほん」

「っ!? ……な、何? どうしたのかしら、フミタン?」

「いえ、話が決まったようで何よりですと思ったので」

「……なのに、何故咳払いをしたのかしら?」

「いえ、話が決まったようで何よりですと思ったので」

「フミタン?」

「いえ、話が決まったようで何よりですと思ったので」

 

 古き良きRPGでこういうのがあったな。

 はいかいいえ。それを選択するまで、延々と同じ言葉を口にするというのが。

 というか、フミタンはそれをどこで知ったんだ?

 もしかして、歳星辺りで何か古いゲームを購入したとか、そういう事だったりしないよな?

 そんな風に考えている間にも、クーデリアとフミタンの会話は続いていた。

 結局何がどうなったのかは分からないが、特に問題ないままで話はついたようだった。

 

「では、アクセル。買い物についてはよろしくお願いします」

 

 そういう事になるのだった。

 

 

 

 

 

『分かった、コンテナの件はこっちに任せて兄貴はお嬢さんの護衛をしてくれ』

 

 名瀬は俺の言葉にあっさりとそう言う。

 映像モニタに映し出された名瀬は、アミダと手を繋ぎながら笑みを浮かべていた。

 そんな様子を見て、俺も何となく立っている俺の隣にある艦長席に座っているシーラの肩に手を伸ばすが……ペシン、と軽く叩かれる。

 どうやらアミダと違って、人前ではイチャつかせてくれないらいし。

 これがマーベルなら、もしかしたら肩を抱き寄せるくらいの事はさせてくれたかもしれないが。

 ……ただ、人前では駄目だが、最近のシーラは夜に積極的なんだよな。

 昨夜のシーラとマーベルとの行為を思い出しながらも、それを表情に出さないようにして名瀬との会話を続ける。

 

「悪いな、そっちでは間違いなく何かあるんだろうけど……」

『うーん、その可能性は高いと思う。ただ、それでも俺達に喧嘩を売ってくるような事はしないと思う。もしそうなったら、それこそ自殺行為でしかないだろうし。それくらいは向こう……コンテナを受け取る側も分かってるだろう。それに今回の一件はテイワズとしても色々と対処する必要がある事態なのも間違いはないんだ。そうなると、やはりここは俺が前に出るべきだろうし』

 

 名瀬は別に俺に気を遣ってこういう風に言ってる訳ではない。

 本人が言ってるように、今回の一件ではテイワズも知らなかったのに、関与してしまった事から、思うところもあるのだろう。

 ……そう言えば、今回の件を仕組んだのだろうノブリス、テイワズから刺客を送られたりはしてないだろうな。

 いやまぁ、そうなったらそうなったで仕方がないとは思うが。

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