転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3936話

 サヴァランが俺の提案を受け入れた事で、取りあえず事務仕事の出来る人材……それもちょっとやそっとではなく、かなり優秀な事務員を入手出来た事は、俺にとっても嬉しかった。

 MSやMWに乗って戦う、あるいは歩兵として生身で戦う戦闘員なら、シャドウミラーにはそれなりに多い。

 だが、事務員となるとどうしても少ないんだよな。

 それでもブルワーズに所属していた者の中にはそれなりに事務仕事が出来る者がいたので、鉄華団よりはマシだが。

 あ、でも鉄華団もメリビットが来たから多少はマシになったのかもしれないな。

 名瀬から聞いた話だと、メリビットはかなり優秀な人物らしいし。

 それでいながら、事務仕事以外にも色々と才能豊かな……まさに才色兼備という表現が相応しい人物らしい。

 そういう人物でもなければ、鉄華団でやっていけるとも思えないが。

 

「さて、俺達に協力をするなら、色々と話して貰う必要があるな。特にギャラルホルンについてとか……うん?」

 

 話している途中でこちらに近付いてくる気配を感じ、振り向く。

 俺に反応するように他の者達も俺の見ている方を見て……

 

「何?」

 

 視線の先にいる者達を見て、俺の口からそんな言葉が出る。

 三日月とアトラがいるのはいい。

 それは俺にも十分に理解出来る事だ。

 ……デートをしているのではなかったのか?

 そんな2人がここにいるのは、3人目……仮面を被った人物が理由なのは間違いなかった。

 俺以外の面々は……それこそサヴァランであっても、驚きの視線をその仮面の人物に向けているものの、俺にしてみればそんなに驚くような事ではない。

 SEED世界のクルーゼ、W世界のゼクス、UC世界のシャア。

 ガンダム世界には、どういう訳か仮面を被った人物がいるのがお約束なのだから。

 恐らく俺が知らない……いや、原作知識がなくなってしまったガンダム系の世界においても、恐らくは仮面を被った人物がいるのだろう。

 そういう意味では、このオルフェンズ世界においても仮面を被った者がいるのはそう驚く事ではない。

 そして三日月がここにやってきたのは、この仮面を被った相手……顔は仮面で分からないが、身体付きから男なのだろう相手と遭遇したからに他ならなかった。

 三日月とアトラが、仮面の男と遭遇してデートを中断したのは分かるものの、それで何でここ……サヴァランを尋問していた、建物の陰になった場所に来たのかは分からなかったが。

 

「やぁ、イザーク。また会ったね」

「……また?」

 

 その言葉に他の面々の視線が俺に集まるものの、俺はこの仮面の男と会った事は……

 

「アクセル、チョコの人だよ」

 

 戸惑った俺に、三日月がそう行ってくる。

 チョコの人? と疑問に思ったものの、この世界において……あるいは火星においてか? とにかく、チョコというのはそれなりに貴重だ。

 俺の場合は空間倉庫に大量にチョコとかそういうのが入ってるので実感はないが。

 そして三日月が言うチョコの人と言われ、先程の聞き覚えのある声、そして何より俺をイザークと呼んでいる事から思い浮かべたのは……

 

「マクギリス?」

 

 その名前を口に出す。

 火星において遭遇した人物。

 何をどう思ったのか、俺をギャラルホルンの創設者でもあるアグニカ・カイエルと呼んだ人物。

 正直なところ、何がどうなってそんな風に言ったのかは俺にも分からない。

 分からないが、その件もあってか俺に好意的……もしくは好奇心を抱いているのは間違いなかった。

 もっとも、その割には火星を出た後で襲ってきたが。

 そのマクギリスは、笑みを浮かべて再びその名前を口にする。

 

「君はイザークと名乗っていた筈だと思うんだが、アクセルというのは?」

 

 そう聞いてくるマクギリスだったが、そこに疑問の色はない。

 全てを知った上で、俺をアクセルではなくイザークと呼んだのは間違いない事実だ。

 とはいえ、それは別に不思議な事ではない。

 それこそ名瀬ですら、オルガ達がCGSを乗っ取って鉄華団を作ったのを容易に調べられたのだ。

 だとすれば、ギャラルホルンの……それもセブンスターズのファリド家の後継者であるマクギリスが、シャドウミラーについて調べるのもそう難しい話ではないだろう。

 そしてシャドウミラーの中にはイザークという名前がなく、代わりにアクセルという名前があってもおかしくはない。

 ……寧ろ、火星を出て襲撃してきた時に俺の名前をまだイザークだと思っていた事の方が驚きだ。

 あるいは、ノブリスが手を回して簡単にはその辺を調べられないようにしていたのか。

 それでも今はこうして俺の名前を理解している以上、わざわざ偽名を使う必要はないか。

 

「もう分かってると思うが、俺の名前がアクセル・アルマーだ。ギャラルホルンと敵対しているPMCのシャドウミラーを率いてる。……さて、それでそんな俺の前に、ギャラルホルンの、しかもお偉いさんが一体どんな用件で現れたんだ?」

 

 そう言う俺の言葉に、アジーが鋭い視線をマクギリスに向ける。

 マクギリスがギャラルホルンの者だというのは、今までの話の流れから分かってはいただろう。

 だが、これが例えばギャラルホルンの中でも下っ端、あるいはそこまで下ではなくても、部隊長とかそういう感じの者であれば、アジーもそこまで警戒しなかった筈だ。

 しかし、マクギリス・ファリドというセブンスターズの一員ともなれば、話は変わってくるのだろう。

 

「まず誤解を解いておこう。今の私はマクギリス・ファリドではない。モンターク商会の会長、モンタークだと」

「モンターク商会……?」

 

 マクギリスの口から出たその名前は、俺にとってもどこか聞き覚えのあるものだった。

 何だったか……どこで聞いたのかは、ちょっと思い出せない。

 ただ、間違いなくどこかで聞いた覚えのある名前なのは間違いない。

 

「アクセル? どうしかしたのですか?」

 

 モンターク商会の名前に俺が迷っていると、それを見たクーデリアがそう聞いてくる。

 そんなクーデリアの言葉に首を横に振り、何でもないと返す。

 

「いや、何でもない。ただ、モンターク商会というのはちょっと聞き覚えがあると思ってな」

「ほう? まぁ、モンターク商会はそれなりに名前が知られているからな。そういう意味でも、アクセルが知っていてもおかしくはないだろう」

「そういうものか? まぁ、その辺はいい。それで? この状況で俺達の前に……しかも正体を隠して出て来たのは、何か意味があっての事なんだろう?」

 

 その言葉に、マクギリス……いや、今は仮面を被っているし、モンタークと呼んだ方がいいか。何しろマクギリス・ファリドの名前は少し有名すぎるし。

 

「ああ。勿論だよ。君達にとっておきの情報を持ってきたんだ。……君もそれを聞きたいだろう?」

「……?」

 

 仮面をしてるので正確には誰を見ているのかは分からない。

 だが、その視線は俺ではなくもっと別の人物……クーデリアやフミタンに向けられているのが分かった。

 何だ? クーデリアに何かあったのか?

 そう思ったが、どうやらモンタークが見ていたのはクーデリアではなかったらしい。

 それを示すように、フミタンが身体を震わせている。

 

「……モンターク、一体何をした?」

「私は別に何もしていないよ。ただ、彼女に何か思うところがあったのではないかな? ……実際、彼女に接触しようとしている者達もいるようだし」

「何?」

 

 意味ありげなモンタークの言葉。

 普段なら、スルーしていてもおかしくはないだろう。

 だが、フミタンが実際に震えているのを見れば、そしていつもは無表情の顔に恐怖を浮かべているのを見れば、何かがあるのは間違いないだろう。

 

「ともあれ、いつまでもここにいては目立つ。部屋を用意してあるから、そこで話をしよう。それでいいかい?」

「言っておくが、俺をどうこう出来ると思ったら間違いだぞ?」

「分かっているさ。アグニカのような君をどうにか出来るとは思っていない」

「そう言えば、その件もあったな。何で俺の事をギャラルホルンを作った者の名で呼ぶのか、それについても聞かせて欲しいものだ」

「それを話すには少し時間が必要だと思うが……そうだな、時間に余裕があればそうしよう。来たまえ、部屋に案内しよう」

 

 そう言い、モンタークはさっさと進み始める。

 

「どうするんだい?」

「行くしかないだろ。向こうが何を考えているのかは分からないが、現在このドルトコロニーにおいて起こっている……あるいは行われようとしている事についての情報は欲しい。サヴァランもそれでいいな?」

 

 アジーにそう返し、サヴァランに尋ねる。

 サヴァランはそんな俺の言葉に素直に頷く。

 サヴァランにとっても、自分の知り合い……ナボナとかいう人物の命が懸かっている以上、ここで俺達と一緒に行動しないという選択肢はない。

 そうなると、最後の問題は……

 

「クーデリア、フミタンの様子は?」

 

 先程……モンタークが見た事で急に震え始め、恐怖を感じた様子のフミタン。

 そんなフミタンを、姉と慕っているクーデリアだ。

 抱きしめ、その震えを押さえようとしている。

 とはいえ、見たところではまだ落ち着いた様子はないが。

 

「いえ……」

 

 首を横に振るクーデリア。

 そんなクーデリアを見ながら、フミタンをどうすればいいのか迷う。

 一緒に連れていくのは、フミタンの様子から無理だろう。

 だが、現在のこのドルトコロニーの状況で、クーデリアとフミタンが別行動をするのも不味い。

 

「いえ……お嬢様。私は大丈夫です」

 

 フミタンがクーデリアに向かってそう言う。

 ただ、無表情な事が多いフミタンが少し辛そうな……ショックを受けている様子を見せているのだから、それで本当に大丈夫かと言われても素直に信じる事は出来ない。

 クーデリアも、フミタンのその言葉は全く信じていない様子を見せていた。

 

「お嬢様、今はまずあの人から情報を聞くのが先決でしょう。それに……いえ、あの人からの話を聞けば分かる事です」

「ちょっと、フミタン? 一体どういう事?」

「皆さん、行きましょう。今はまず、このドルトコロニーで起きている件をどうにかする方が先かと思います」

 

 フミタンのその言葉は、無理をしているのは明らかだった。

 だが、それでもフミタンの持つ迫力に押されるかのように俺達はモンタークを追う。

 幸い、モンタークは少し行った場所でこちらを待っていたので、見失うという事はなかった。

 ……にしても、モンタークはよくあの仮面を付けたまま、普通に街中を歩けるな。

 いやまぁ、マクギリス・ファリドではないと思わせる為と考えれば、そんなに悪い選択肢ではないのかもしれないが。

 常識的に考えて、あんな仮面を付けている者がギャラルホルンのセブンスターズの一員たるファリド家の次期当主だと思うか?

 普通は思わない。

 寧ろそう思う者がいたとしたら、それはそれでおかしい。

 とはいえ、モンタークは仮面姿のままで行動するのに慣れているのだろう。

 通行人がぎょっとした視線を向けても、特に気にしていない。

 ……これ、驚くだけならいいんだが、警察とか、場合によっては怪しい奴としてギャラルホルンとかに連絡をされたら一体どうするんだろうな。

 ふとそんな疑問を抱く。

 警察であれば、モンターク商会の名前でどうにか出来るかもしれない。

 だが、相手がギャラルホルンとなると、そうもいかないだろう。

 そんな風に思いつつ、モンタークを追う。

 

「ねぇ、結局何がどうなってるの?」

 

 俺の隣に来た三日月が、事情を全く理解出来ないといった様子で聞いてくる。

 無理もないか。

 モンタークと会うまでは、アトラとデートをしていたのだから。

 そうなると、何も理解出来ないままでモンタークと遭遇し、俺達のいる場所まで連れてきたという事か。

 

「そうだな。簡単に言えば、イサリビに積まれていたコンテナの中身が武器なのは知ってるか?」

「うん。オルガに聞いた」

「その武器を使って、このドルトコロニーで暴動を起こそうとしている奴がいる。そしてついでにクーデリアを殺して火星の者達に敵意を抱かせ、戦乱を広げて、大勢に武器を売って儲けるといった事を考えている奴がな」

「それって……ノブリスとかいう奴?」

 

 どうやら三日月もノブリスについては知っていたらしい。

 オルガ辺りからコンテナの件も含めて聞いたといったところか。

 

「そうだ。で、そんな暴動を起こしたくないからという事で、サヴァラン……あそこにいる男に協力を依頼された訳だ。ちなみにあのサヴァランってビスケットの実の兄らしいぞ」

「へぇ……」

 

 興味深そうな様子で、アジーの側にいるサヴァランを見る三日月。

 三日月にしてみれば、仲間のビスケットの兄という事で興味深いのだろう。

 

「もっとも、協力する見返りとしてサヴァランにはシャドウミラーに協力して貰う事になっているが」

「え? そうなの? うーん……でも、ビスケットの兄さんなんだから鉄華団の方がよくない?」

「鉄華団もそうだが、こっちも人員が不足してるんだよ。それにシャドウミラーと鉄華団の拠点は近いだろう? なら、問題はないと思う」

 

 そんな俺の言葉に、三日月は納得したのかしてないのか、ともあれ頷くのだった。

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