転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3951話

 地球外縁軌道統制統合艦隊。

 名瀬の口から出たその言葉は、最初ちょっと分かりにくかった。

 というか、舌を噛みそうな名前を、よく問題なく言えたなというのが俺の正直な気持ちだ。

 

「地球外縁軌道統制統合艦隊……おお、言えたな。まぁ、それはともかく、それはどういう連中なんだ? 名前からして、アリアンロッド艦隊のようなギャラルホルンに所属する戦力といった感じだが」

「その通りだ、兄貴。地球外縁軌道統制統合艦隊というのは、言ってみれば地球の門番的な存在だな。……もっとも、近くにフットワークの軽いアリアンロッド艦隊があるから、何かあればアリアンロッド艦隊が出てどうにかするんだが」

 

 名瀬がどんな風に言えばいいのか分からないといった、難しい表情を浮かべている。

 一体何がどうなっているのやら。

 

「つまりね、地球外縁軌道統制統合艦隊というのは士気は高いし、MSの操縦技術も高いけど、その操縦技術は式典の時に行われるアクロバット飛行とか、そういう意味での技術の高さなんだよ」

 

 名瀬を見かねたのか、アミダがそう言う。

 

「えっと、つまりはそれはどういう事だ? 強いのか、弱いのか?」

「強い事は強いけど、実戦経験が皆無だと言えば分かりやすいかい」

「ああ、そういう事か」

 

 アミダの説明ですぐに納得した。

 言わば、シミュレータでしか戦闘経験がなく、実際の戦闘は行った事がない連中って訳か。

 幾ら操縦技術が高くても、実戦経験の有無というのは非常に大きい。

 実戦ではシミュレータとかでは出来ないような事をしたり、相手の予想外の行動によって虚を突いたりといった事も普通に起きる。

 この世界の分かりやすい例だと、阿頼耶識だろう。

 シミュレータでは阿頼耶識が使えないので、シミュレータでしか戦った事がない者が阿頼耶識で操縦している相手と戦った場合、かなり面食らうらしい。

 そういう意味では、操縦技術が高いという意味で決して侮ってはいい相手ではないものの、それでもアリアンロッド艦隊と戦うよりは大分マシだろう。

 あるいは火星支部の連中とか。

 実際、クランクが地球外縁軌道統制統合艦隊のMS隊と戦ったら、話を聞く限りだとクランクが勝ちそうだし。

 

「敵が弱いのなら、そこまで気にしなくてもいいんじゃないか? それこそ、攻撃してきたら倒してしまえばいいんだし」

「いや、それが……地球外縁軌道統制統合艦隊というのは、ギャラルホルンの中でもお偉いさんが結構いるらしくて。もしその相手を全滅させるような事をしたら、地球での行動はかなりしにくくなると思うぜ、兄貴」

「……そうなるのか」

 

 マクギリスから聞いた話だと、アリアンロッド艦隊のトップもセブンスターズの一員、それもマクギリスのように次期当主ではなく、現当主のラスタル・エリオンとかいう男らしいし。

 そういう意味では、俺が個人でアリアンロッド艦隊を全滅させるというのは、治安云々もそうだが、セブンスターズの当主を殺す的な意味でも止めておいた方がいいな。

 地球での行動がしにくくなるのは、クーデリアの目的を考えれば駄目だろうし。

 

「アクセルの兄貴なら、何があっても大丈夫でしょうが……」

 

 名瀬が言いにくそうにクーデリアを見る。

 その気持ちは分からないではない。

 クーデリアはその性格とかカリスマ性とかはとにかく、純粋な身体能力として考えれば一般人でしかない。

 多少運動の得意苦手があっても、結局のところ普通の枠を超えたりはしない。

 そんな状況を考えると、何かあった時にすぐに対応出来るのかというのがある。

 あるいは、この場にいる全員に俺が魔法を使うというのを知らせた以上、炎獣をボディーガードとしてもいいかもしれないな。

 X世界でティファの護衛として派遣したように。

 

「そうだな。そうなると、やっぱりアリアンロッド艦隊にしろ、地球外縁軌道統制統合艦隊にしろ、トップを殺すというのはなしか。スルーが最善だな」

 

 アリアンロッド艦隊の方は恐らくこっちに来ない可能性が高い。

 だが、地球外縁軌道統制統合艦隊の方はまだ俺達と戦っていない以上、地球に降下しようとしている時に攻撃をしてくる可能性は十分以上にあった。

 

「けど、兄貴。向こうが攻撃をしてくるのに、それを無視して地球に降下するとなると、こっちにも被害が出る可能性がありますよ?」

 

 そうオルガが言うのは、やはり地球に降下するのが鉄華団を中心としたメンバーだからというのが大きいのだろう。

 自分や仲間の命が懸かっているだけに、ここで自分から危険な目に遭うというの絶対にごめんだというところか。

 

「別にスルーと言ったって、本当に向こうの攻撃を無視する訳じゃない。殺すのが駄目なのは、結局のところ地球外縁軌道統制統合艦隊を率いている人物だ。お偉いさんならMSに乗って最前線に出て来るような事はないと思う」

 

 シャドウミラーという組織を率いている俺が真っ先にMSに乗って最前線で戦っているのは……うん。まぁ、それについては気にしないようにして。

 俺の場合は自分の操縦技術に自信があって、何よりも混沌精霊だからこそというのが大きい。

 単純に俺が最大戦力だからというのもあるが。

 とはいえ、タービンズやテイワズでも名瀬やマクマードが自分でMSに乗って最前線に出るという事はないんだよな。

 オルガの場合は前線で指揮を執ったりするので、MSではなくMWに乗って前線に出たりするが。

 それでもMSではないし、本当の意味での最前線は三日月に任せている。

 そう考えると、やっぱり組織を率いる身で最前線に出ていくのは、色々とおかしいんだろうな。

 もっとも、PMCではなくホワイトスターにあるシャドウミラーでも俺は普通に最前線で戦っていたが。

 

「なら、地球外縁軌道統制統合艦隊のMS隊だけを潰していくという感じでどうです、兄貴?」

「MSを破壊して、MSのパイロットを殺せば、地球に行った俺達を追ってはこれないか。あるいは追ってきても、その戦力は宇宙で戦った時よりも間違いなく少ない」

 

 そんな俺の言葉に、部屋の中にいる何人かは納得の表情を浮かべ、何人かはマジかといった視線を向けてくる。

 前者はともかく、後者は何だ?

 これからの行動を思えば、決して悪くない選択肢だと思うんだが。

 

「とにかく地球に降下すると、ギャラルホルンは当然俺達に対処をしようと行動する筈だ。それを思えば、ここで敵の戦力を少しでも減らしておいた方がいいのは間違いない。それに……地球外縁軌道統制統合艦隊のMSパイロットは、実戦経験はないが純粋な操縦技術は高いんだろう? なら、わざわざ実戦経験を積ませた上で生き残らせるといった事をすれば、むざむざ敵を強化させるだけになりかねないから、それは避けたい」

 

 改めてこう言われると、どうやら話を聞いていた者達も納得したらしい。

 

「兄貴がそう言うのなら、そういう方針で構わないかと。ただ……さっきも言ったように、地球外縁軌道統制統合艦隊を率いているのはギャラルホルンの中でもお偉いさんです。そのお偉いさんの顔を潰したとなれば、かなり恨みを買いますよ」

 

 ここでもお偉いさんが足を引っ張るのか。

 お偉いさんを殺せば、それこそギャラルホルンが仇討ちとばかりに大量の戦力を出してくる。

 お偉いさん以外のMSパイロットを倒せば、お偉いさんが面子を潰されたという事でその報復に動いてくる。

 どっちにしても面倒極まりないような。

 

「マクギリスに何とかして貰うか?」

 

 ふと思いついたのは、それ。

 マクギリスは何故か俺達に協力的だ。

 そうである以上、地球外縁軌道統制統合艦隊の方にも手を回して、今の問題をどうにかして貰えるのではないか。

 そう思ったのだが、マーベルがそれについて反対する。

 

「アクセルの言いたい事は分かるけど、マクギリスも自分の正体を知られたくないからこそ、モンタークとしてこっちに接触してきたんでしょう? だとすれば、地球外縁軌道統制統合艦隊を率いている人物を何とかして欲しいと言っても……難しいんじゃない?」

 

 なるほど。マーベルの言葉にも納得出来るところがあるな。

 マーベルの言うように、マクギリスは自分が表立って行動出来ない為にモンタークとして動いているというのは十分に有り得る話なのだから。

 そんなモンタークに地球外縁軌道統制統合艦隊を率いている人物をどうにかしろと言っても……恐らく、それは無理だと言われてあっさりと断られるだろう。

 そのような事が出来るのなら、変装をして俺達に接触するような事はしていないか。

 あるいは、マクギリスの目的はギャラルホルンの不正を正す事とか言っていたから、地球外縁軌道統制統合艦隊を率いる人物はその不正とは全く無関係という可能性もある。

 

「結局は俺達で何とかするしかないという事か」

 

 そういう事になるのだった。

 

 

 

 

 

「あ、その……アクセルさん」

 

 会議が終わった後、降下船に諸々を運び込む用意が始まった。

 実際にはまだ降下船は来ていないのだが、皆がその前に出来る事はやっておこうとなったのだろう。

 そんな中、俺は早速MSを空間倉庫に収納しておこうとグランの格納庫にやって来たのだが、そこにはサヴァランとアインの姿があった。

 サヴァランは俺を見て慌てて頭を下げてくるものの、アインは不満そうな様子で視線を逸らすだけ。

 アインの境遇を思えば、今の態度は仕方がない事なのかもしれないが。

 

「格納庫に来てたのか。……もうグランの見学は大体終わったんじゃないか?」

「あー……はい。その、アインが自分の乗っていたMSを見たいと」

 

 そう言い、サヴァランはシュヴァルベ・グレイズに視線を向ける。

 その青いMSは、当然ながらアインがクランクに捕らえられた時のままだ。

 つまり、壊れた状態。

 ドルトコロニーの一件からまだそんなに時間が経っていないし、メカニック達も出撃したMSの修理や整備、補給で精一杯だったのだろう。

 その為、シュヴァルベ・グレイズはまだあのままの状態という事らしい。

 いやまぁ、シュヴァルベ・グレイズの被害は結構大きいので、それを修理するとなると結構な時間が必要となるのも事実。

 今の状況でそっちに手を出すような余裕はないのだろう。

 何しろこれから俺達は地球に降下するのだから。

 その時に持っていくMSの準備とかもある。

 

「そうか。それは構わないが、妙な事はしないようにな。もし何か妙な事をしたら、クランクは残念がるぞ」

「……ふん、そんなつもりはない」

 

 俺の言葉に、アインは不満そうな様子でそう言ってくる。

 実際、クランクに心酔しているアインとしては、クランクを今のままに脱出したりとか、そういう事をするつもりはないのだろう。

 アインがクランクを見捨てるというような事はまずないだろうし。

 

「そうか。なら、いい。……それとこれも言っておくが、あのシュヴァルベ・グレイズは既にシャドウミラーの物になっている。もし修理をしても、アインが使うという事ははまずないぞ。もしアインがMSを使うのなら、グレイズになるだろうな。あるいはマン・ロディかガルム・ロディか」

「何で、俺がこの組織の戦力としてMSに乗る事になってるんだよ」

「今はまだ無理かもしれないが、将来的にはそうなってもおかしくはないだろう? それとも、シャドウミラーにいても、無駄飯ぐらいになるつもりか?」

「ぐ……」

 

 俺の言葉に、アインが悔しそうにしながらも言葉に詰まる。

 クランクを今のままには出来ない以上、シャドウミラーから離れて生活をしつつ、クランクの様子を見に来るといった事はまず出来ない。

 そもそも、現在のシャドウミラーはギャラルホルンと敵対しているのだから、捕虜となったアインがそう簡単に働いたり出来ないのも事実。

 そうなるとクランクの件も合わさり、シャドウミラーから離れる事は出来なくなる訳で……そうなると、何もしないでいればただ飯ぐらいになってしまう。

 これでアインの性格がもっと自堕落なものであれば、あるいはそれもいいと割り切っていたかもしれない。

 もっとも、そう割り切ったからといってこっちがそれに応じる必要はないのだが。

 ともあれ、アインの性格からするとそういう事は出来ない。

 シャドウミラーにいる以上、仕事をする必要がある。

 だがこの場合に問題なのは、アインにどのような仕事が出来るかという事だろう。

 書類仕事とかはギャラルホルンにいた以上、ある程度は出来るだろう。

 だが、アインがシャドウミラーにいる理由を考えると、迂闊に書類仕事をさせる訳にいかないのも事実。

 だとすれば、グランの掃除とか? あるいは食事を作るのは……こっちもこっちで、ちょっとやらせる訳にはいかないか。

 毒とかそういうのを考えると。

 結局出来るのは、MSのパイロットくらいなんだよな。

 もっとも、MSのパイロットでもシャドウミラーに被害を与えたりは出来るから、しっかりと見張りとかそういうのが必要だろうが。

 そんな風に思いつつ、俺はサヴァランとアインに視線を向けるのだった。

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