転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3954話

『前方にエイハブ・ウェーブの反応。恐らく話にあった地球外縁軌道統制統合艦隊と思われます!』

 

 グシオンのコックピットにそんな通信が入る。

 現在グシオンは、降下船の格納庫にいた。

 俺以外にはバルバトスやグレイズが2機……三日月、昭弘、シノの4機だけだ。

 それ以外のMSやら補充部品やらは、全て空間倉庫に収納されている。

 MSパイロットや交渉の人員、それ以外にも地球に下りる人員は全員降下船に乗り込んでいた。

 

『ねぇ、アクセル。どうするの?』

 

 三日月からの通信。

 敵の数が具体的にどのくらいなのかは分からないが、特に緊張している様子はない。

 ……いやまぁ、別に敵が誰であろうとも、三日月なら緊張するといった事は基本的にないと思うんだが。

 

「どうするも何も、俺達も出撃するしかないだろ。後はグランとガランに残ったMS隊と、グラン、ガラン、イサリビの艦砲射撃に期待といったところか」

 

 タービンズは表向き俺達に協力していない事になっているので、露骨に戦力を出す事は出来ない。

 そういう訳で、ハンマーヘッドはこの戦いに参加出来なかった。

 アミダが乗る百里とか、ちょっと見てみたい気持ちがない訳でもなかったのだが。

 

『え? ちょっ、アクセル!? 俺達が出撃したら、地球に下りる時どうするんだよ! 置いていかれるぜ!?』

 

 シノが慌てたように言ってくる。

 まぁ、普通に考えればそうだろう。

 というか、単純に俺がこういう時の戦闘に慣れているのがおかしいのか。

 そんな風に思いつつも、俺はシノを落ち着かせる。

 

「落ち着け。地球まではまだ結構な距離がある。戦っていても、そうすぐに置いていかれる事はない。それに、もし置いていかれるような事になっても、そうなったらそうなったで宇宙に残った味方に拾って貰えばいいだけだ」

 

 最悪の場合は、MSのまま地球に落ちる事になるんだが……そう言えばオルフェンズ世界のMSはその辺どうなんだろうな。

 一瞬そう疑問に思うものの、それを実際に口に出したりはしない。

 もしそのような事をすれば、それがフラグになりかねないのだから。

 

『いや、けどよ……』

「なら、別にシノはここにいてもいいぞ。どうしても出撃して欲しいって訳じゃないんだから」

『ぐ……それは……』

 

 シノが俺の言葉を聞き、悔しそうにする。

 元々負けん気の強いシノだ。

 こういう風に言われれば、言われっぱなしという事にはならない。

 

「三日月、昭弘、いざとなったら俺達だけで出るぞ。降下船は何としても守り抜く。敵の撃破よりも、そちらを最優先にしろ」

『えっと、それだとアクセルさんはどうするんです?』

 

 昭弘が慌てたように尋ねてくる。

 まぁ、その気持ちも分からないではない。

 昭弘にしてみれば、俺は昌弘の……弟の命の恩人なのだから。

 昭弘は基本的に誰に対してもぶっきらぼうな言葉遣いだが、俺に対しては慣れない敬語を使ってくる。

 これは、それだけ俺に感謝をしているということなのだろう。

 とはいえ、感謝をしているからといって、そこまで心配されるのはあまり好ましくはない。

 

「俺の事は気にするな。アリアンロッド艦隊との戦いでも俺は1人で敵に突っ込んでも全く問題はなかっただろう? なら、そのアリアンロッド艦隊よりも弱い地球外縁軌道統制統合艦隊を相手にしても、特に問題はない」

『それは……でも、あの時はサラマンダー? とかいう機体だったでしょう。今回はそれを使う訳にもいかないんでしょう?』

 

 鋭いな。

 昭弘の性格的に、その辺についてはそこまで気にするとは思わなかった。

 実際、ここでサラマンダーを使ったらほぼ間違いなくアリアンロッド艦隊が出て来そうな気がする。

 それは俺にも分かっているし、だからこそそのつもりはない。

 ……あるいはいっそ、堂々とサラマンダーを使ってアリアンロッド艦隊の戦力も誘き寄せて、地球外縁軌道統制統合艦隊と一緒に纏めて倒してしまうという手もあるのだが。

 とはいえ、そうなればそうなったで色々と不味いのも事実。

 ドルトコロニーでやらかしたとはいえ、アリアンロッド艦隊がギャラルホルンの中で最精鋭なのは間違いなく、そのアリアンロッド艦隊がいるからこそ、地球周辺では宇宙海賊とかが活発に行動していない一面もあるのだ。

 もしアリアンロッド艦隊がいなくなれば……ついでに地球外縁軌道統制統合艦隊もいなくなれば、この辺りの治安は加速度的に悪化するだろう。

 火星に拠点を持つ俺達にしてみれば、そうなったら火星の周辺にいる海賊達が全部とはいわずとも、ある程度の数が地球に向かって、それによって火星の周辺は多少なりとも平穏になるかもしれないが……クーデリアの性格を考えれば、それは好まないだろう。

 それに折角ハーフメタルの件で交渉が出来るのに、地球周辺の治安が悪くなると、それが途中で打ち切られる可能性も否定は出来ない。

 そうなったら、火星も今のままとなる。

 ……あるいは地球の混乱に乗じて火星が独立するといった手段もあるかもしれないが、それはそれでかなりのリスクが伴うだろう。

 だからこそ、アリアンロッド艦隊も地球外縁軌道統制統合艦隊も、ある程度の戦力を減らすのはいいが、それはあくまでもある程度だけで壊滅的な被害を与えるのは却下だ。

 

「そうだな。だが、グシオンだって以前と違って随分と使いやすくなっている。それに俺なら、サラマンダーではなくてもナノラミネートアーマーを破壊出来るしな」

 

 サラマンダーがアリアンロッド艦隊にとって脅威と認識されたのは、やはりナノラミネートアーマーを無効化する攻撃だろう。

 実際にはサラマンダーの場合は重力波砲で、それ以外の場合は精神コマンドの直撃を使っているのだが、アリアンロッド艦隊にしてみればその違いは理解出来ないだろう。

 サラマンダーの時も、そしてMSに乗ってる時も、アリアンロッド艦隊にしてみれば同じ方法で破壊されていると思ってもおかしくはない。

 あ、もしかしたらそういう意味では俺がグシオンでナノラミネートアーマーを無効化して倒したら、サラマンダーのパイロットだと認識されてしまいかねなかったりするのか?

 ……まぁ、そうなったらそうなったで、こっちとしては対処のしようは色々とある。

 

「そんな訳で、俺が敵に突っ込む。そうすれば敵の攻撃は俺に集中するから、その隙を突くような形で敵を攻撃してくれ。あくまでも船を守るのを優先してな」

 

 そう言うと、映像モニタに映った昭弘が不満そうな様子を見せる。

 三日月はそこまで気にした様子はなく、いつものように平然としてるが。

 シノは何かを言いたいが、それを実際に口には出せないようにしている……といったところか。

 

「心配するな。俺は強い。それに……まずないとは思うが、万が一、本当に万が一にもグシオンが撃破されるような事があっても、俺は魔法でどうにかなる」

 

 そう言っても、素直に納得する様子はない。

 いやまぁ、それはそれで仕方がないか。

 この世界の常識で考えた場合、MSが撃墜されても死なないというのは、一体どういう事だと、そう思ってもおかしくはないのだから。

 いや、寧ろそれが普通とすら言ってもいい。

 だからこそ、素直に俺の言葉を信じる事が出来ないのだろうが……

 

「俺を信じろ。実際に今まで、俺は敵の攻撃を食らった事はない」

 

 これは半分嘘で半分真実だ。

 具体的には、俺がこのオルフェンズ世界においてダメージを受けた事がないというのは事実。

 だが同時に、他の世界での戦いでダメージを受けた事があるのは事実だった。

 とはいえ、今の状況ではこのオルフェンズ世界での件だけで話をしておいた方がいいだろう。

 

『……分かりました。アクセルさんがそう言うのなら、その言葉を信じます。ただし、それはあくまで今の時点ではです。もしアクセルさんが地球外縁軌道統制統合艦隊との戦いで危険になったら、すぐにでもこっちに退避してきて下さい。その時はこっちもしっかりと援護しますから』

 

 最終的に、昭弘はそう言って納得する。

 そして昭弘が納得すれば、三日月もシノも特に何も言わない。

 というか、シノはともかく三日月は俺が囮をやるのなら、ふーんといった感じで特に何も思った様子はなかったが。

 

「分かった、それでいい。……三日月とシノもそれで構わないな?」

 

 そう尋ねると、2人揃って頷く。

 三日月はともかく、シノは色々と言いたい事があったようだが、取りあえず俺の言葉に従う事にしたらしい。

 これも、ドルトコロニーでアリアンロッド艦隊を相手に一方的な蹂躙を見せたからだな。

 あるいはそれを抜きにしても、それまで……火星を出発してから、多くの戦いで実力を見せつけてきたからといった感じか。

 

「じゃあ、作戦は決まったし……早速出撃するぞ。ブリッジ、こちら格納庫だ。作戦については聞いていたな? 問題はないと思うが、どうだ?」

『どうだって……そんなのは、作戦とは言えません!』

 

 おう……?

 映像モニタに表示されたのは、鉄華団のメンバー……ではなく、女。

 テイワズから派遣されたメリビットだった。

 何故か憤懣やるかたないといった様子で俺を睨み付けてくる。

 

『アクセル代表、貴方は自殺するおつもりですか?』

「いや、そんなつもりは全くない。そもそもの話、俺を相手にどうにか出来るだけの戦力はないしな」

『1人で敵に突っ込むという無茶な事をしようとしておいて、説得力がありません!』

「そう言われてもな。……俺の力については聞いてないのか? というか、歳星で俺が30機のMSを相手に模擬戦をやって勝利したのを知らないのか?」

 

 メリビットがテイワズの所属である以上、歳星で行われた俺とJPTトラストの模擬戦については耳に入っている筈だ。

 あの模擬戦はマクマードや名瀬が意図的に情報を広めていたしな。

 勿論それは、俺の実力を1人でも多くの相手に見せつける必要があるというのが大きい。

 俺の実力を何も知らないまま、設立されてから数ヶ月のシャドウミラーをテイワズと同等の組織と認めると言ったら……うん、間違いなく反対される。

 本気かと聞かれるのならまだいい方で、場合によっては正気かと疑われてもおかしくはない。

 そんな状況にならない為に、マクマードや名瀬は大々的に俺の模擬戦の一件について説明したのだ。

 メリビットも当時歳星にいた以上、それを知ってる筈だ。

 

『それは知ってますが、これは模擬戦ではなく実戦です。撃墜されれば死ぬんですよ?』

 

 心配してくれるのは嬉しいんだが、だからといって今の状況ではそれを素直に受け入れる事が出来ないのも事実。

 メリビットは決して悪人ではないのだろう。

 それこそ善人なのは間違いない。

 だが……問題なのは、善人ではあっても、その善意が独善……というのは少し大袈裟だが、自分の中にある善意から来ている事か。

 自分の善意こそが正しいと思っているから、自分の理解出来ない事には納得出来ず、反対する。

 しかも頑固な性格をしているのも関係してか、そう簡単に退くような事はない。

 

「心配ない。俺の実力は自分で言うのもなんだが、エース級だからな。ましてや、俺達の進行方向で待ち構えている地球外縁軌道統制統合艦隊は、練度は高いかもしれないが、アマチュアだ。そんな相手に俺が負ける筈もない」

『……何故、そのように断言出来るのですか?』

 

 地球外縁軌道統制統合艦隊をアマチュアと表現したのを疑問に思ったのか、メリビットが不思議そうに聞いてくる。

 今はそうして聞いてくるよりも前に、まずは俺を出撃させろと言いたいが……今はメリビットを納得させる方が先か。

 

「この状況でも、まだ攻撃をしてくる様子がないからだよ」

 

 ギャラルホルンの中でも高性能な兵器を与えられている筈の、地球外縁軌道統制統合艦隊。

 その地球外縁軌道統制統合艦隊が有する軍艦……特に戦艦の類なら、艦砲射撃の射程範囲に入っていてもおかしくはない。

 あるいは艦砲射撃も別にビームの類ではなく、実弾による攻撃だ。

 つまり射程外であっても攻撃した砲弾の類は消えない。

 放たれる一撃は、結果として射程の外でも普通に飛んでいくという事を意味している。

 つまり、本来なら牽制を込めて既に撃ってきてもおかしくはないのだ。

 勿論、これは絶対という訳ではない。

 主砲の類を撃てば、そこから得られる情報は多い。

 ましてや、こっちは地球外縁軌道統制統合艦隊についての情報を殆ど持っていないも同然なのだ。

 必中出来る自信があるのなら、少しでもこちらに情報を与えない為にまだこっちに攻撃をしない……そんな可能性もない訳ではなかったが、それでも今の状況を考えると、疑問が残る。

 

『それは……でも、それはアクセル代表の予想でしょう?』

「そうだな。幾つもの修羅場を潜り抜けてきた俺の予想だ」

 

 そう言うと、メリビットもすぐには反論出来なくなる。

 そしてその機会を逃さないように、俺は言葉を続ける。

 

「そんな訳で、俺が敵に突っ込むのは問題ない。……オルガ、クーデリア」

『分かりました、兄貴。ご武運を』

『アクセル、信じています』

 

 責任者2人の了解を取り付けてから、俺はグシオンで出撃するのだった。

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