転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3959話

 俺が地球外縁軌道統制統合艦隊の司令官に会うというのが決まると、マクギリスは早速グランにシャトルを寄越してきた。

 行動に移るのが早いのは、さすがと言うべきか。

 マクギリスは気楽に今回の一件を提案したが、実際にはそこまで簡単なことではなかったという事なのだろう。

 そんな訳で、俺は早速そのシャトルに乗って地球外縁軌道統制統合艦隊の旗艦に向かうことになる。

 シャドウミラーの面々は、俺の行動に色々と思うところがあるようだった。

 特に昌弘なんかは、通信ですぐにでもグランに合流して護衛として一緒に行かせて欲しいとまで言ってきた。

 俺に絶対服従のクランクも護衛は自分にと言ってきたし、他にも何人も同じような事を言う奴がいたが、俺はその全てを断った。

 ぶっちゃけ、何かあったとしてもその時は俺が1人の方が逃げやすいのだ。

 ……いや、その場合は逃げるんじゃなくて向こうが全滅する事になるだろうが。

 とにかく、そんな訳で俺が1人の方が安全なのは間違いない。

 マーベルやシーラもダンバイン世界の経験からそれを理解しているので、俺が1人でも問題ないと、そう言ったのだろう。

 

「それにしても、仮面のままでいいのか?」

 

 俺の前に座っているマクギリスは、モンタークとしての仮面を被ったままだ。

 俺はモンタークの正体がマクギリスだと知っているので問題はないものの、このまま地球外縁軌道統制統合艦隊に行ったりしたら、いかにも怪しげなその様子に、それこそ問答無用で捕らえられてもおかしくはない。

 

「ああ、構わないよ。皆の前で顔を出すつもりはないけど、彼女の前でなら顔を出しても問題ないしね」

「……彼女? 地球外縁軌道統制統合艦隊を率いているのは女なのか?」

 

 少しだけ驚くも、改めて考えてみればそんなにおかしな事でもないのか。

 ギャラルホルンというのは、血筋を重要視している。

 それこそ一種の貴族のような存在だ。

 つまりそのような血筋の者なら、若い女であっても高い地位につけるのだろう。

 ましてや、地球外縁軌道統制統合艦隊はアリアンロッド艦隊と違って式典とかに参加するような者達だ。

 式典に参加する以上、高い操縦技術とかは必要だろうが、実戦の時のように命懸けではない。

 それはつまり、アリアンロッド艦隊を率いる人物程に有能でなくてもいいということを意味している。

 つまり、お飾り……というのは少し違うかもしれないが、似たような感じなのだろう。

 

「ああ、私の幼馴染み……と言ってもいいかな。ガエリオと同じような相手だよ」

 

 そういう相手を、下手をしたら殺していたかもしれないと、理解しての言葉か?

 地球外縁軌道統制統合艦隊と俺達との戦い。

 俺は少しでも多く地球外縁軌道統制統合艦隊の……いや、ギャラルホルンのMSパイロットの戦力を減らす事に集中していたので、地球外縁軌道統制統合艦隊の戦艦にはちょっかいを出さなかった。

 だがそれは、あくまでも俺の気分によるものだ。

 もし俺がMSはどうでもいいから、とにかく戦艦を撃墜する事に拘っていた場合、マクギリスの幼馴染みは死んでいた可能性がある。

 そういう意味では、そのマクギリスの幼馴染みが生き残っているのは幸運でしかないのは、間違いのない事実。

 

「お前、どこまで見えていた?」

「どこまで……とは?」

「さっきの戦い、もし俺がその気になっていれば、これから会うお前の幼馴染みは死んでいた。そうなるかもしれないとは思わなかったのか?」

「そうだね。最悪の結果としてそういうのも考えてはいたよ。しかし、それでもアクセルの性格を考えれば大丈夫だと思っていたし……もし本当にどうしようもなかった場合。その時はその時で仕方がないと思っていた」

 

 そう言うマクギリスは、悲壮な表情……ではなく、笑みすら浮かべていた。

 その笑みがマクギリスの言葉が真実であると、そう示している。

 少し……いや、大分危ういな。

 何となくだが、このままにしておけば自分の望みすら忘れて暴走するような未来が見える。

 あくまでもこれは俺が思った事なので、実際には違うかもしれないな。

 

「それなら、偶然にしろなんにしろ、生き残ってよかったな」

「そうだね。お陰で私のこの先の展望は決して悪くはないんだから」

 

 そうして会話をしている間にもシャトルは進み、やがて地球外縁軌道統制統合艦隊の旗艦に到着する。

 なお、当然の話だがシャトルが旗艦に近付くと、周囲にはMSが……グレイズリッターだったか? が集まってくる。

 これは勿論このシャトルを護衛する為に……などという訳ではなく、シャトルに乗っている俺達が妙な真似をしないようにという監視が目的なのだろう。

 

「随分と厳重だな」

「アクセルがそれを言うのか? ここまで厳重になってるのは、アクセルがいるからだと思うが。向こうにしてみれば、いつこのシャトルからMSが……それもアクセルの乗っているMS、グシオンだったか? それが出てくるのか警戒しているんだろう」

「俺がこのシャトルに乗ってるって、向こうは知ってるのか?」

「当然だろう? これから会うのはカルタ・イシュー……ギャラルホルンのセブンスターズの中でも第1席のイシュー家の者なのだから」

 

 マクギリスの言葉に納得する。

 地球外縁軌道統制統合艦隊を率いているのはギャラルホルンのお偉いさんだと予想はしていたが、見事にその予想が当たった形だ。

 もっとも、予想はしていたものの、予想以上の人物ではあったが。

 マクギリスの言葉を聞く限りでは、カルタ・イシューという人物はイシュー家の者らしい。

 言ってみれば、ギャラルホルンの姫といった感じか。

 とはいえ、それで納得出来る点があるのも事実だったが。

 

「それはまた、随分とお偉いさんだな。そうなると、この警戒も仕方がないという事か」

「そうなるね」

「……この状況で、寧ろ攻撃されない方が不思議だが」

 

 カルタという女にしてみれば、俺は自分の部下を大勢殺した憎むべき相手だ。

 それだけに、憎んであまりある存在だろう。

 ましてや、その部下……現在シャトルの周囲にいる者達にしてみれば、自分達の仲間を殺されたのだ。

 そんな相手がシャトルに乗っていると分かっている以上、それこそ手にしたライフルでいつシャトルを撃ってきてもおかしくはない。

 ……もしそのような事になっても、混沌精霊の俺にとっては無意味だが。

 ただ、俺は無理でもマクギリスを殺すといったことは可能だろう。

 そうなると、カルタがどのように思うか。

 まぁ、仲間を殺されて頭に血が上っている者達にしてみれば、そういうのを考えるよりも前に、俺を殺すのを優先してもおかしくはないが。

 ただ、カルタも……あるいは護衛兼監視を選抜した者もその辺については十分に理解した上で、こうしてMSを派遣しているのを考えると、その辺の心配はあまり必要ないか?

 

「カルタなら大丈夫だろう。ガエリオもいるだろうし」

「……お前がそこまで信頼してるのなら、取りあえず俺からは何も言わない。何かあったら、その時はその時で対処すればいいだけだし」

 

 俺はガエリオについては知っているが、カルタという相手については知らない。

 もっとも、先程の戦いの一件を考えれば、多少は理解出来そうだったが。

 とはいえ、それもカルタという女の一端でしかない。

 また、ガエリオについて知っているとはいえ、それはあくまでも顔を知っているといった程度だ。

 火星で会った時の一件だけしか、俺には分からないのだから。

 ……寧ろガエリオについて詳しいのは、何度もガエリオと戦っている三日月の方だろう。

 もっとも三日月はその辺はあまり気にしないので、三日月にガエリオってどういう奴だと聞いても、返ってくる答えは何となく予想出来るのだが。

 

「さて……旗艦だ。アクセル、一応言っておくが妙な真似はしないでくれよ」

「いや、それを言うのなら向こうじゃないか? 俺が何かをするよりも、向こうが何かをする可能性の方が高いだろうし」

「その辺については、前もって連絡をしてあるから問題ないさ」

「だと、いいんだけどな」

 

 その割には、シャトルを護衛しているMSが殺意……とまではいかないが、敵意が感じられる。

 あるいは殺意じゃないだけ、マシなのか?

 もっとも、仲間の仇である俺がいるのだ。

 それこそいつ敵意が殺意になっても、俺は驚かない。

 驚かないが……もしそうなった場合、混沌精霊の俺は特に何の問題もないが、普通の人間のマクギリスは間違いなく死ぬだろう。

 なのに、それについては全く気にした様子がないのは疑問だ。

 死ぬなら死んでもいいと達観してるのか?

 そう思ったが、結局シャトルは特にグレイズリッターに攻撃される事なく旗艦に到着する。

 

「さて、では行こうか」

 

 マクギリスが軽い口調で言う。

 いやまぁ、実際に今この状況で出来るのはそれだけなんだから、仕方がないのだが。

 影のゲートを使えば逃げたりも出来るが、別にわざわざそのような事をする必要はないしな。

 そうして俺とマクギリスはシャトルから下りたのだが……

 

「俺はともかく、お前も見られているな」

 

 シャトルの外には出迎えの――より正確には監視が目的なのだろうが――兵士達がいた。

 しかし、その兵士達の視線の多くはマクギリスに……いや、モンタークに向けられている。

 俺の正体については、恐らくマクギリスを通してカルタとかいう女から知らされているのだろうが、それでもマクギリスに視線を向けている者が多かった。

 その理由は、やはり仮面だろう。

 オルフェンズ世界についてそこまで詳しい訳ではないが、この世界において仮面というのは……それを日常的に付けているのは、かなり珍しい。

 阿頼耶識や義手、義足……そういうのを厭うのがこのオルフェンズ世界だ。

 そういう意味では仮面も同様に好まれないのかもしれないな。

 もしくは、祭りとかがあればお面を売ってる店とかはあるかもしれないし……いやまぁ、今はその辺について考えたりしなくてもいいか。

 今の状況で必要なのは……

 

「静まりなさい!」

 

 周囲にそんな声が響くと同時に、ざわめいていた兵士達が静まる。

 そして兵士達が姿勢を改めると、やがて1人の女が姿を現す。

 多分、これがマクギリスの言っていたカルタ・イシューなんだろうが……俺の第一印象は、麻呂眉だった。

 確かこういうのを麻呂眉と言うんだよな?

 というか、顔立ちそのものは整っていて、美人と呼んでも間違いない。

 なのに、何で眉がこんな感じになってるんだ?

 そう思ったが、これがギャラルホルンの内部では流行ってるのかもしれないし、もしくはイシュー家に伝わる伝統とか、そういうのの可能性もある。

 そう考えれば、ここで突っ込んだりはしない方がいいだろう。

 それに……今の俺やマクギリスの状況を考えると、迂闊な事を言ってカルタを怒らせたりしない方がいいだろうし。

 

「お前!」

 

 と、不意に響く声。

 その声の主は、カルタの後ろにいた男だ。

 その男が誰なのかは、俺も知っている。

 何故なら、火星で会っているのだから。

 何度かこっちに攻撃を仕掛けてきたものの、その対応は何故か三日月がやっていたしな。

 三日月にしてみれば、何で自分がとか、そんな風に思っていたのかもしれないが。

 そんなガエリオは俺を睨み付けながら口を開く。

 

「アインをどうした!」

「うん?」

 

 まさかそんな言葉が出てくるとは思わなかったので、少し驚く。

 とはいえ、アインがガエリオのシュヴァルベ・グレイズを使っていたのを思えば、2人の間に繋がりがあるのはそうおかしな話ではない。

 だからこそ、アインはどうしたと聞いてきたのだろう。

 仮面をしているとはいえマクギリスに気が付かず、俺にアインについて聞いてくるのはどうかと思うが。

 マクギリスも仮面を被っているものの、呆れたり、残念そうだったりといったような雰囲気を放っていた。

 

「安心しろ。特に怪我もなく捕虜になってるよ」

「……そうか。生きてるのならいい。後は取り返すだけだからな」

 

 取り返せるとでも?

 そう突っ込みたくなったが、それを言うとガエリオを怒らせそうな気がするんだよな。

 

「そうか、楽しみにしている。……さて、カルタ・イシューだったな。こうして会うのは初めましてと言っておこう。シャドウミラーの代表、アクセル・アルマーだ」

「……そうね。初めましてと言っておきましょうか。色々と言いたい事はあるけど」

 

 カルタにしてみれば、あの戦いで受けた被害については本当に色々と言いたい事があるのは当然だろう。

 何しろこっちにはろくな被害がなかったのに対し、地球外縁軌道統制統合艦隊の受けた被害はとんでもないのだから。

 とはいえ、カルタは俺とのやり取りをそこで止め、視線をマクギリスに向ける。

 

「それで、貴方はあの男の……金髪のあの男とどういう……あら……あの……え?」

 

 カルタが話している途中でふと何かに気が付いた様子で、次第にその顔には驚愕の色が浮かんでいくのだった。

 あ、これ……モンタークがマクギリスだと見抜かれたな。

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