転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3962話

 俺の言葉を聞いたマクギリスは、笑みを浮かべる。

 ……カルタがそんなマクギリスに何度も視線を向けては顔を逸らすといった行為をしているが、本人はこれでマクギリスや周囲の者達が気が付いていないとか思っていたりしないよな?

 

「ギャラルホルンを革命する上で、一番厄介なのはやはりアリアンロッド艦隊だ。ドルトコロニーの一件で結構な被害を与えたとはいえ、それでもまだ戦力は十分に残っている。また、実戦経験も豊富だ」

 

 マクギリスの言葉にカルタが微かに麻呂眉を顰める。

 実際、純粋な操縦技術という点ではアリアンロッド艦隊と地球外縁軌道統制統合艦隊は同じくらい……あるいはアリアンロッド艦隊の方が勝っていても、それは誤差といった程度だ。

 これについては実際に戦った俺の感覚なので、間違いない。

 

「しかし、アリアンロッド艦隊が受けた被害は結局のところ全体から見れば一部でしかない。そして残りのアリアンロッド艦隊を率いているのが、セブンスターズの中でも一番注意すべき相手……ラスタル・エリオンとなる」

 

 そうマクギリスが口にした瞬間、カルタとガエリオが一瞬緊張した様子を見せる。

 ラスタル・エリオンというのは、ギャラルホルンの中でもそれだけの人物という事なのだろう。

 

「マクギリス、ラスタル公をこちらに引き込むという訳にはいかないのか?」

 

 ガエリオのその言葉には、ラスタルという人物を敵に回したくないといった様子が見て取れる。

 また、そのような強者なだけに、味方にすれば頼もしいといったところか。

 だがマクギリスはガエリオのそんな言葉に首を横に振る。

 

「いや、ラスタル・エリオンは現在のギャラルホルンを良しとする者だ。現状維持をする為に、こちらに協力するとは思えない」

 

 その言葉のどこまでが真実なのかは、俺には分からない。

 そのラスタルという人物は話を聞く限り影響力が高いようなので、そのような人物を味方にすると、自分の影響力が下がる……最悪の場合、派閥を乗っ取られるかもしれない思っての行動であってもおかしくはない。

 もっとも、その辺はあくまでもギャラルホルン同士のやり取りである以上、俺がそれに興味を持ったりという事はまずないが。

 

「だが……相手はあのラスタル公だぞ? 敵に回したら厳しすぎる」

「ガエリオの心配はもっともだが、だからこそ私はアクセルに声を掛けたのだ」

 

 その言葉に俺に視線が集まる。

 なるほど、俺達の戦力をアリアンロッド艦隊に向けて使うのが目的だった訳か。

 とはいえ……

 

「別に俺はお前の味方になった訳じゃないぞ? それでも雇いたいのなら、俺達はPMCだ。相応の資金とかを用意してくれ」

 

 そんな俺の言葉に、カルタとガエリオは不満そうな様子を見せる。

 この2人にしてみれば、ギャラルホルンを正すという高潔な目的に向かって走り出そうとしている時に、金で雇えといったような事を言うのだから不満な様子を見せてもおかしくはないのだろう。

 しかしそんな2人の様子とは裏腹に、マクギリスは特に不満そうな様子もなく頷く。

 

「勿論報酬もなしにアクセルを使おうとは思っていないよ。まずは……そうだな。火星の独立を認めるという事でどうかな」

 

 なるほど、上手いな。

 マクギリスが最初からこの提案を考えていたのかどうかは分からない。

 降下船の交渉の時は、ハーフメタル利権に組み込ませて欲しいと、つまりは寧ろ自分から火星に関わってきたいと、そう言っていたと思うんだが。

 なのに、今は火星の独立を認めるという。

 あるいは、ハーフメタル利権はモンターク商会としての意見で、火星の独立はマクギリスとしての意見なのか?

 どちらにしろ、マクギリス的にどんな手段を使ってでも俺を……より正確にはシャドウミラー、可能であれば鉄華団も戦力として組み込みたいといったところなのだろう。

 

「すぐにどうこうとは言えないな。そもそも、革命は最後の手段なんだろう? だとすれば、すぐに俺達の戦力が必要という訳でもない筈だ。まずはしっかりと派閥を作って他のセブンスターズの面々に自分達の主張をするべきじゃないか?」

「そうしたいところだけど、そこまで堂々とやると間違いなく潰されるだろうな。何しろ後ろ暗いところの多い者がこれでもかといるのだから」

 

 マクギリスの言葉を信じる限りだと、どうやらセブンスターズにも不正は蔓延っているらしい。

 マクギリスの義父のイズナリオだけではなく、他にもいるのか。

 いやまぁ、ギャラルホルンの成立過程を考えれば自分達は選ばれた者の血筋だと、そんな風に思う者がいてもおかしくはないだろうけど。

 少し譲って、ギャラルホルンを作った時にいた者達なら、選ばれた血筋ではなく選ばれた者だという風に言うのは納得出来る。

 実際に厄祭戦を終わらせるという快挙を成し遂げているのだから。

 だが、それはあくまでもギャラルホルンを作った者達だけだ。

 それ以外だと……こちらもせいぜい戦いに参加したのだろう、その兄弟や子供達といった例だけか?

 今のように300年程が経っている者達ではない。

 

「なら、水面下で派閥を増やしていくとかか?」

「アクセルの言う通りだ。もっとも、既に動いてはいるのだがね」

 

 だろうな。

 マクギリスの性格を考えると、既に動いているのはおかしな事ではない。

 モンターク商会とかそういうのも、その為に作ったものなのだろうし。

 

「具体的には?」

「ギャラルホルンに所属しつつも、現在の状況に不満を持っている者は多い」

 

 その言葉に俺が思い浮かべたのは、アインだった。

 父親はギャラルホルンの人間……つまり地球出身者だったものの、母親は火星の人間だった事から、父親の力でギャラルホルンに所属は出来たものの、常に差別されてきたらしい。

 俺にしてみれば馬鹿らしいことだが、それがこのオルフェンズ世界においては珍しくもないことなのだ。

 このような差別の類も、ギャラルホルンの腐敗と言われれば多分そうなのだろう。

 

「アイン」

 

 ガエリオが小さくアインの名前を呟く。

 ……ギャラルホルンの中で差別されていたアインだったが、そのギャラルホルンの象徴とも言うべきセブンスターズを構成する家の次期当主がアインに対して親しみを覚えているのはちょっと違和感がある。

 

「その辺については俺からは何も言わない。あくまでも俺達はPMCだ。荒事があった時に呼んでくれればいい」

「……待ちなさい」

 

 ギャラルホルン内部の騒乱に積極的に関わるつもりはない。

 そう態度で示したのだが、そんな俺に待ったを掛けたのはカルタだった。

 

「何だ?」

 

 もしかしたら、部下を殺した恨み言でも言うのか。

 カルタにしてみれば、自分の部下が死んだのは殆ど意味のない事だったと思ってもおかしくはない。

 そうなるように仕組んだのは、俺じゃなくてマクギリスなんだが。

 ただ、カルタにとってマクギリスがどのような存在かを思えば、マクギリスではなく俺を憎んでもおかしくはなかった。

 それに……状況を作ったのはマクギリスかもしれないが、実際に手を下したのが俺なのは間違いないし。

 そう考えると、やはりここは俺が恨まれるのも仕方がないか。

 そう思ったのだが……

 

「蒔苗東護ノ介の一件にはイズナリオ・ファリドが関わっているという話は先程聞いたでしょう? もし貴方達が蒔苗東護ノ介に会うのなら、恐らくイズナリオ・ファリドは貴方達の邪魔をするでしょう。……いえ、より正確には、貴方達の邪魔をするように見せて蒔苗東護ノ介を殺そうとするでしょう」

 

 カルタの口から出たのは、アドバイスだった。

 意外だな。

 ……いや、仕事に私情を持ち込まないという意味では間違っていないのだが。

 マクギリスやガエリオとのやり取りを見る限りだと、結構感情に流される性格のように思えたのだから。

 あるいは、マクギリスの仲間となるから、俺達の戦力を減らさないようにするとか、そんな感じか?

 

「義父はギャラルホルンにおける地球本部司令官……つまり、セブンスターズの者達を込みでもトップに近い存在だ。それだけに、自由になる戦力は大きい。アクセルが時苗東護ノ介に会うのなら、これ幸いとその戦力を派遣してきてもおかしくはない。……その場合、最有力候補は地球外縁軌道統制統合艦隊かもしれないが」

「そうかもしれないけど、受けようとは思わないわ。イズナリオ公の不正を知らなければ、その通りにしたかもしれないけど」

 

 カルタは既にマクギリスに協力をすると決めているので、イズナリオから命令が下ってもそれを受ける気はないのだろう。

 ガエリオの方は、こっちは渋々といった様子だったが、それでもマクギリスに協力する気になっている。

 もっとも、地球外縁軌道統制統合艦隊の司令官であるカルタと違い、ガエリオは自分独自の戦力を持ってはいない。

 いやまぁ、家の力を使えばどうにかなるかもしれないが。

 

「そうなると、向こうが出せる戦力としては何がある?」

「地球外縁軌道統制統合艦隊が断る以上、アリアンロッド艦隊を出してくる可能性はあるだろう。……特にアリアンロッド艦隊はアクセルに興味津々といった様子だし」

 

 それはサラマンダーの件であったり、精神コマンドの直撃の件であったりするのだろう。

 そう考えると、ある意味自業自得なのか?

 とはいえ、まさかこういう流れになるとは思っていなかったしな。

 

「アリアンロッド艦隊が来るのは厄介だが、ドルトコロニーの一件で受けたダメージを考えると、そう簡単にはできないと思うけどな」

「確かに、艦隊の一部とはいえ、受けた被害は大きい。だが……それ以上にアクセルに興味を持っているのだろうね」

 

 アリアンロッド艦隊のような相手に興味を持たれても、正直好ましくはない。

 俺にとってアリアンロッド艦隊というのは、厄介な敵という認識なのだから。

 とはいえ、向こうにしてみれば俺を……より正確にはナノラミネートアーマーを無効化する件について解明しない訳にはいかないといったところか。

 サラマンダーの件は……まぁ、サラマンダーも重力波砲を使ってナノラミネートアーマーを無効化していたので、同じような技術を使ってるのではないかと疑問に思ってもおかしくはない。

 もっとも、生き残りが撮影した戦闘の光景とかを確認すれば、俺がグシオンに乗って使っている射撃武器はグレイズの120mmライフルを改造したものだとすぐに分かるだろう。

 また、放たれた弾丸もサラマンダーの重力波砲とは違う。

 ……あ、いや。でも地球外縁軌道統制統合艦隊の戦闘データがアリアンロッド艦隊に渡っているとは限らないのか。

 そうなると……サラマンダーの件を含めて、同一人物と考えられていてもおかしくはないのか?

 あるいはそれ以前にギャラルホルンと戦った戦闘データ……もしくは恐らくギャラルホルンが仕組んだのだろう、夜明けの地平線団が攻めてきた時の戦闘データとか、そういうのはあるだろうけど。

 

「熱烈なアプローチを貰っても、それに応える事はないだろうな」

「そうであってくれれば、私としても助かるよ。……ともあれ、カルタが言ったようにアリアンロッド艦隊がアクセルを狙う可能性は十分にある。あるいは、アリアンロッド艦隊ではなくても、アクセル達が蒔苗に会うのは義父にとって都合が悪い以上、アリアンロッド艦隊以外の部隊を使った妨害してくる可能性は十分にあるから注意してくれ」

「分かった。もっとも、アリアンロッド艦隊がギャラルホルンの最精鋭なんだろう? それ以外の戦力はつまりそれ以下の戦力でしかない訳だ。なら、問題ない」

 

 純粋な戦力だけなら、俺とグシオンがいれば問題はない。

 そこにプラスされて、シャドウミラー以外に鉄華団の面々やラフタやアジーもいるのだ。

 能力的にそこまでではない相手であれば、それこそ幾らいても問題はなかった。

 もっとも、サラマンダーと違ってこの世界のMSは推進剤とか予備弾倉とか、そういうのが必要だというのがある。

 そうなると、操縦技術やMSの性能で負けていなくても、推進剤不足や弾薬不足で戦闘不能になるという可能性は十分にあった。

 一応空間倉庫の中には火星にあるギャラルホルンの基地から奪ってきた推進剤とか弾薬とかが大量に入ってはいるものの、それも結局のところ大量の相手に対して戦い続けられるかと言えば……微妙なところだ。

 あるいはパイロットの精神的な消耗もある。

 その辺の諸々について考えれば、やっぱり物量というのは恐ろしい。

 それこそ最悪の場合、グシオンではなくサラマンダーを使うしかないのだろう。

 

「アクセルがそう言うのなら、信じておくよ。ただ……そうだな。もしアクセル達が危険になったら、私も戦力を出そう。もっとも、マクギリスではなくモンタークとしてだが」

「……そういうのは多分いらないと思うが、万が一を考えれば助かると言っておく。で、ちなみにだが俺達はカルタによってここに連れてこられた訳だが、そうなるとこの部屋から出た後の事はどうなる?」

 

 そう尋ねると、マクギリスとガエリオがカルタに視線を向けるのだった。

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