転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3964話

 シーラとカルタの交渉……と表現してもいいのかどうかは分からないが、とにかくグランで預かっていたMSパイロットの怪我人の運搬については、すぐに話が纏まった。

 多分だが、カルタにとってもシャドウミラーや鉄華団に対して思うところのある者達の憎悪を和らげるという意味では、今回の件は渡りに船といった感じだったのだろう。

 だからといって、その件について完全に問題なく終わったかと言えば、それもまた微妙なところだが。

 ともあれ、地球外縁軌道統制統合艦隊と敵対しなくてもよくなった俺達は、早速地球に降下する準備に入る。

 地球に下りる面々は降下船に向かう。

 そして宇宙に残る面々は、アリアンロッド艦隊やイズナリオの手の者が襲ってきた時に対処しやすいように。

 残念なのは、もしアリアンロッド艦隊やイズナリオの手の者に襲われても、地球外縁軌道統制統合艦隊が俺達を助けるという選択肢がない事だろう。

 カルタやガエリオがマクギリスに協力をする気になったからといって、それはまだ秘密裏なものだ。

 そのレベルですらそれなのに、そこにいざという時はシャドウミラーがPMCとして雇われるといった話は、どう考えても表沙汰に出来るものではなかった。

 今の時点でもシャドウミラーや鉄華団はギャラルホルンに目を付けられているのだから。

 特にイズナリオにしてみれば、蒔苗を追い払って自分の傀儡をアーブラウで高い地位に就けようとしているのに、そこで俺達が出て来たら蒔苗が復活する可能性も否定は出来ない。

 それを思えば、どんな手段を使ってでもこっちの行動を邪魔しようとするだろう。

 だからこそ、こっちも準備はしっかりとする必要があった。

 

「とはいえ……MSの数が実際の数と降下船に搭載されているのがここまで違うのは、正直どうかと思うんだが」

 

 降下船の格納庫で、俺はそこに積まれているMSを見ながらそう呟く。

 降下船に積まれているのは、俺のグシオン、三日月のバルバトス、そして残りはグレイズが数機にMWとか。

 だが実際にはグレイズが結構な数、そしてテイワズから漏影が2機といった具合に、結構な戦力がある。

 

「ねぇ、ちょっといい?」

「ん?」

 

 格納庫を見ていると、不意にそんな声を掛けられる。

 

「お前は……確か、エーコだったか?」

 

 確か以前ハンマーヘッドの格納庫にいた女だ。

 メカニックであると同時に、ブリッジクルーでもあるという……ある意味で有能な人物。

 

「うん、そうよ。それでちょっと聞きたいんだけど……」

「その前に、ハンマーヘッドに戻らなくてもいいのか?」

「は? ……あれ、もしかして聞いてない? 私も地球に下りるんだけど」

「そうなのか?」

 

 エーコの口から出た言葉は、俺にとっても少し意外だった。

 そんな俺の様子を見て、エーコは呆れたように口を開く。

 

「そうよ。鉄華団のメカニックはあのおじさんも含めて、基本的にMSについてはあまり詳しくないでしょう?」

「……まぁ、それは仕方がない」

 

 雪之丞が鉄華団のメカニックを率いているが、鉄華団はCGSだった時から基本的にMWしか使っていなかった。

 バルバトスはあったが、それは戦闘に使うのではなく動力源として使われていたしな。

 それでも何とかやりくりしてるのを考えると……何気に雪之丞って才能とかは凄いんだと思う。

 ただ、それでもやっぱりMSについて詳しくないのは間違いないんだよな。

 

「元々MWだけしか使ってなかったからな」

「知ってるわよ。歳星で格納庫に来て色々と勉強していたし。……けど、MSについてはそう簡単に覚えられるものじゃないのも事実よ。ましてや、今回はテイワズで開発された百錬……いえ、偽装したから漏影だけど、その漏影の整備とかそういうのもする必要があるのよ? それにシャドウミラーのMSもあると考えると、さすがに無理でしょ。だから、私が協力する事になった訳」

 

 エーコの言葉には強い説得力がある。

 ちなみに雪之丞がMSについて勉強をしている件については、シャドウミラーのメカニック達からも色々と教えて貰っているのを知ってる。

 ただ、シャドウミラーのメカニックもある程度の能力があるとはいえ、それでも結局元ブルワーズの面々だけに、マン・ロディとかの扱い慣れたMSについてはともかく、テイワズが作った百錬や漏影をとなると難しいだろう。

 そういう意味では、こうしてエーコ達が来てくれたのが助かるのは間違いないな。

 

「そうか。なら、助かる」

「分かってくれればいいのよ。それで、漏影だけど……その、大丈夫?」

「大丈夫? 何がだ?」

 

 エーコが一体何を聞いてきたのか分からず、そう返す。

 しかし、そのエーコは真剣な表情で言葉を続ける。

 

「だから、その……何だっけ? 空間倉庫? そこに入れておいて、何か漏影に悪影響がない? って事なんだけど」

 

 ある訳がないだろ。

 そう突っ込みたくなった俺だったが、考えてみればエーコは空間倉庫にとかについて詳しい話を知らず、MSが空間倉庫に収納された光景を見ていただけだ。

 だとすれば、空間倉庫が危険かもしれないと思うのはそんなにおかしな話ではないのだろう。

 

「安心しろ。空間倉庫に収納してあっても、特に問題はない。……ほら」

 

 そう言い、俺は空間倉庫の中からどら焼きを取り出すと、エーコに渡す。

 

「え……? これ、どら焼き? え? え?」

 

 一体何がどうなったのか、全く理解出来ない様子のエーコ。

 ちなみにもしかしたらどら焼きが何か分からないかもしれないと思っていたが、タービンズ……もしくはテイワズではその辺について十分に理解されていたらしい。

 まぁ、テイワズはギャングやマフィアというよりは、ヤクザ、極道、任侠といった、日本系の色を持っている。

 そう思えば、日本の甘味であるどら焼きについて知っていてもおかしくはない……のか?

 偶然エーコだけがどら焼きを知っているという可能性も否定はできないのだが。

 

「このどら焼きは……そうだな。いつ買った奴だったか」

 

 どら焼きだとは分かっているが、これが具体的にいつどこで買ったのかは分からない。

 賞味期限を見ても……あ、これはちょっと不味いか?

 どらやきに限らず、賞味期限というのは年号がついている事もある。

 もしこのどら焼きに平成とか、もしくは西暦がついていたら……そう思い、エーコに悟られないようそっと賞味期限を確認するが、幸いそこに書かれているのは月日だけだ。

 そのことに安堵すると同時に、納得もする。

 これが例えば年単位で保存が可能な物……甲板とかドライフルーツとか、そういうのだったら、年単位ということで賞味期限に何年何月何日までといったように書かれていてもおかしくはない。

 だが、どら焼きはそれこそ普通なら賞味期限は1週間どころか、数日程度の賞味期限だろう。

 勿論真空パックや冷凍保存といったような方法でならもっと長期間の保存は出来るかもしれないが。

 ただ、このどら焼きはスーパーかコンビニで買った奴だ。

 包装紙を見る限り、多分和菓子店のような本格的な店で買った物ではないと思う。

 

「結構前に買ったどら焼きだけど……食べてみろ」

「え? ……その、大丈夫なの?」

「問題ない」

 

 そう断言するが、俺は空間倉庫について詳しく知っている。

 他にも最初は空間倉庫について知らなくても、そこから出した物が何も問題ないと一度経験してしまえば、その辺りは全く問題はないだろう。

 だが、エーコは初めて空間倉庫から出したどら焼きを食べるのだから、慎重になっても仕方がないのだろう。

 

「本当に?」

「ああ。何なら俺が食べるか?」

「私が食べる」

 

 即座に、それこそ俺の気が変わらないうちにといった様子で言ってくるエーコ。

 女の甘味に対する執念を甘く見た感じか?

 もっとも、食べる気になってくれたのは嬉しいが。

 どら焼きを受け取ったエーコは、包装紙を剥いで、最初は臭いを嗅ぐ。

 腐っていないかどうか、まずは臭いで確認しようというのだろう。

 だが、それでも特に問題ないと判断したのか、恐る恐るとだが、少しだけ、本当に少しだけどら焼きを囓る。

 それを見て、もしかしたらどら焼きを出したのは失敗だったか? と思う。

 日本では普通に食べられているどら焼きだが、その中の餡子は豆を甘く煮たものだ。

 世界的に見て、豆というのは基本的に塩気と共に食べるという認識の者が多く、豆を甘く煮るというのは日本だけ……とは限らないが、それでも決して多くはない。

 だからこそ、餡子を好まない、固定観念から駄目だと思う者は多いと聞く。

 俺の場合はそういうのは全く関係ないが、エーコもそうだとは限らない。

 もっとも、エーコという名前通り日本人の血を引いていてもおかしくはないし、そもそもテイワズが和風を好むところがある。

 

「美味しいわね」

 

 幸いな事に、エーコはどら焼きを食べても普通に美味いと感じたらしい。

 

「だろう? 空間倉庫に入れておけば、時間は流れない。つまり漏影も空間倉庫の中に入っている限りでは全く問題はない。何なら一度出してもいいけど」

「うーん……ううん。これを食べたら納得出来たから、いいわ。皆、アクセルの事を信頼しているようだし」

 

 本当に安堵したのか、それともそこまで深く疑問を抱いていた訳ではなかったのか。

 ともあれ、漏影についてはそこまで気にする必要はないと判断した以上、俺はこれ以上何かを言うつもりはなかった。

 そうして俺は周囲の様子を眺めているのだった。

 

 

 

 

 

「え? いいのか?」

「ええ。地球外縁軌道統制統合艦隊からの感謝の品だという事です。どうやらモンターク……マクギリスからアクセルの趣味を知らされたのでしょう」

 

 シーラの言葉に、マクギリスの性格を考えるとそれもおかしくはないかと納得する。

 マクギリスは俺が色々なMSを集めているのを知っている。

 もっとも、マクギリスはそれを観賞用だったり、単純に趣味で集めていると思っているのだが。

 実際にはこのオルフェンズ世界のMSという事で、ホワイトスターに戻った時のお土産用という点が大きい。

 ただ、その辺の状況については何も知らない以上、勘違いしてもおかしくはないのだが。

 そんな訳で、負傷したパイロットを地球外縁軌道統制統合艦隊まで連れていったところ、その感謝の品として新品のグレイズリッター1機とMSの滑空用グライダーが複数個送られてきた。

 グレイズリッターについては、地球外縁軌道統制統合艦隊で予備としていたMSなのだろう。

 ちなみに俺達が地上に行くからという事もあってか、大腿部にホバーユニットを装備した地上仕様になっている。

 まぁ、そっちについては通常のグレイズも地上仕様では同じ感じなので、そこまで驚く事はない。

 だが、今回の件で重要なのは、滑空用グライダーだ。

 これは驚きというか、何というか……グライダーという名称ではあるが、外見的にはシールドを大型にしたようなもので、これに乗った状態で大気圏に突入出来るという優れ物だ。

 いや、これは素直に驚きだな。

 大気圏突入というのは、どのような世界であってもそれなりに大変だ。

 それは技術の進んでいるマクロス世界でもそう違いはない。

 だが、この滑空用グライダーはその上に乗ってそのまま地球に降下出来る。

 勿論地球で使える以上、火星でも使えるだろう。

 また、サーフィンのような状態で地球に降下する以上、当然ながら地上にいる者達からはその姿が丸見えだ。

 あるいは単純に対空用の兵装を使えば攻撃出来るだろう。

 だが、滑空用グライダーは頑丈な盾でもあり、生半可な攻撃では破壊する事は出来ない。

 これはかなり使い勝手のいい兵器だろう。……いや、兵器か? まぁ、取りあえず兵器という事にしておくか。

 シャドウミラー……ホワイトスターの方のシャドウミラーの場合は、転移があるので宇宙から地上に降りるのは全く問題ない。

 いやまぁ、フォールドの場合は惑星とかの影響を諸に受けるので惑星近くでフォールドしたり、あるいは惑星の地表にフォールドするのはかなり難しいようだったが。

 それこそ、全く予想外の場所にフォールドしたり、最悪の場合はそれによって死ぬといった可能性も十分にあった。

 なので、惑星に直接転移するとなると、フォールドではなくシステムXNを使う必要がある。

 システムXNを使えば、次の瞬間には地表に転移してるので、直接大気圏に突入とかする必要はない。

 つまり、地上から対空攻撃をされても、基本的には安全に大気圏突入することが出来る訳だ。

 勿論、何の問題もない訳ではない。

 グライダーに乗っている時にMSのバランスを崩せば……それが大気圏に突入した後ならいいが、その前の場合はMSの中で蒸し焼きになって死ぬだろう。

 あるいは滑空用グライダーが攻撃された衝撃でバランスを崩した場合、そのまま落ちて対空攻撃に晒されるという可能性も十分にある。

 そうならないようにするには、相応の技量を必要とするだろう。

 実際に使う場合は前もってそれなりに練習するのが必須の筈だったが、それでも面白い道具を入手出来た事に、俺は笑みを浮かべるのだった。

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