転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3974話

 アンカレッジに行ってラスカーと会った日から数日……

 

「うわはははは、見ろよこれ! このでっかい貝! 俺が獲ったんだぜ!」

「ふんっ、なら俺はこのタコだ! 見ろこの巨大なタコを! これを茹でて食うとどれだけ美味いか分かるか!?」

 

 シノが巨大なサザエ……いや、夜光貝だったか? とにかく大きな巻き貝を手に喜んでおり、少し離れた場所では昭弘が大きなタコを手にシノに対抗している。

 

「随分と魚介類に慣れたな」

「そうですね」

 

 俺の言葉に、隣にいたオルガが冷たいお茶を飲みながら頷く。

 周囲をよく見ると、他にも多くの者達が海で遊んでいた。

 ……いや、正確には遊んでいるのではなく、食料調達の一環なのだが。

 シノや昭弘が獲った夜光貝やタコ、それに向こうでは銛を手に魚を狙っているユージンの姿もある。

 最初、俺達がこの島にやって来た日に蒔苗の秘書から渡された魚介類を見た時、鉄華団の多く……後はシャドウミラーからも昌弘とかが、その外見から到底受け入れられないような感じだった。

 ちなみに魚介類が苦手なのは、鉄華団の料理を得意とするアトラもだったのだが、マーベルやフミタンといった面々から料理の仕方を教えて貰ってきちんと美味い料理になった。

 そうして教えてもらいながら料理を作ったのがよかったのか、最初は魚介類が苦手な面々だったが、食ってみたら意外と美味いとなり、そして美味ければ外見はそこまで気にしない。

 いやまぁ、中にはそれでも外見が駄目という三日月みたいな奴もいたが。

 ……三日月の為に料理を頑張っているアトラにしてみれば、ちょっと可哀想だよな。

 まぁ、それはともかくとして、最初に魚介類が美味いものだと理解すれば、周囲は海だ。

 降下船が着陸したのは砂浜だったが、魚介類が豊富な岩の場所もあり、俺達はこっちで現在こうして遊び兼食料調達をしていた。

 ちなみに砂浜の方でもアインやサヴァラン、他にも鉄華団から何人か釣りをやっている。

 ちなみに竿については、俺が影のゲートを使って買いに行ってきた。

 蒔苗の秘書が魚介類を差し入れしたのを見れば分かるように、このオルフェンズ世界においても魚介類を食べるのは変わらず、そうなると当然のように竿は売っていた。

 折角だから銛とかも含めてその手の品を一通り買ってきたのだ。

 ちなみに金の出所は……うん。一応デートでもあったので、マーベルとシーラの美貌に惹かれて俺にちょっかいを出してきたチンピラ達がいたとだけ。

 いっそテロリストの情報とか、裏の組織の情報とかがあれば、もう少し多くを買えたんだが。

 いっそ、ギャラルホルンの基地……いや、本拠地に行ってイズナリオの金庫から金を盗むとかしてもいいのかもしれないけどな。

 

「ただ、ウニは美味いんですけど、取り出すのが面倒なんですよね」

 

 オルガの好物は、ウニだ。

 蒔苗の秘書から貰ったのを食べさせたんだが、あの時に食べたウニがそれだけ美味かったらしい。

 ちなみに普通なら漁業権とかそういうのがあるんだが、この島は蒔苗の所有物という事になっているので、その辺の心配はいらなかったりする。

 これがこのような島でなければ、漁業権の問題とかもあったんだろうが。

 そういう意味では、蒔苗が隠れ住んでいたのがここで助かったといったところか。

 

「ウニは1匹から取れる身も少ないしな」

「そうなんですよね。しかも美味いから好きな奴は結構いますし」

「……最初の頃は、かなり嫌がっていたんだけどな」

 

 何しろ、ウニはあの見た目だ。

 トゲが生えており、しかもそのトゲが動く。

 見た目はとてもではないが食べられるとは思わないんだよな。

 オルガが食べたのも、兄貴分の俺が半ば無理矢理勧めたといった感じでだし。

 そういう意味では、俺が勧めた訳でもないのにウニが人気になった理由は少し疑問だった。

 幸いなことに、この辺りには結構なウニが棲息してるから獲るのに困らないしな。

 

「そうでしたね。……ウニ以外も嫌だと、食べたくないと騒いでいた連中が、今だとああですし。まぁ、それでもこうしてあいつらが楽しそうにしてるのを見るのは悪くない気分ですよ」

「だろうな」

 

 オルガにしてみれば、鉄華団の面々がこうして楽しんで食料を確保しているのを見るのは、嬉しいのだろう。

 とはいえ……残念ながらいつまでもこのままって訳にはいかないが。

 俺達が現在こうしていられるのは、転移魔法を使って蒔苗を全体会議の行う場所にいつでも連れていけるからだ。

 正確には、こうして島でこれ見よがしに遊んでいるのを見れば……

 

「あの連中がずっと見張りに徹してくれていればいいんだけどな」

 

 沖の方……混沌精霊の俺でなくても分かる場所には、それなりの数の軍艦が浮かんでいるのが見える。

 それがどこの所属なのかは、考えるまでもないだろう。

 ギャラルホルンだ。

 イズナリオの手の者なのだろう軍艦がやって来たのは、俺がラスカーと会った2日後くらいだった。

 イズナリオにしてみれば、動きが随分と早い。

 それだけイズナリオにとって、俺達の行動は脅威と判断されたのだろう。

 

「そうですね。あのままにしてくれれば、こっちも楽が出来るんですが。……それにしても、俺達を相手にあそこまで警戒する必要があるんですかね? いえ、アクセルの兄貴がいるのを考えれば、それも当然かもしれませんが」

 

 オルガのその言葉に、俺もだろうなと頷く。

 アリアンロッド艦隊との戦いで使ったサラマンダーの件はともかくとして、地球外縁軌道統制統合艦隊との戦いではグシオンを使ってその実力を見せつけた。

 カルタもイズナリオからの要請に戦力を出せない理由として、その戦闘映像を提出するくらいはしている筈だ。

 カルタとしては地球外縁軌道統制統合艦隊の戦力を減らしたくない……マクギリスが行うギャラルホルンの改革、あるいは革命の時の為に戦力を温存しようとしているだろうが、イズナリオにしてみればそれだけの強者との戦いであると認識している筈だ。

 だからこそ、イズナリオは迂闊な行動が出来ないというのも事実だったりする。

 もっとも、そのような力を持つ俺を、あるいはそれだけの力を発揮するグシオンを出来れば手に入れたいと思っていてもおかしくはないので、攻めてくる可能性も十分にあるのだが。

 ただ、もしそうなればアリアンロッド艦隊に続いてギャラルホルンの戦力を減らすチャンスでもある。

 マクギリス達が行動を起こす際、ギャラルホルンの戦力は少なければ少ない程にいいのだから。

 ……かといって、戦力を削りすぎると、今度は海賊とかに対処出来なくなったりするのだが。

 そういう意味では、やりすぎもよくない訳だ。

 

「まぁ、今はこうしてこっちを見てるだけなんだ。それならそれで、こっちも気にしないでゆっくりとしていればいい。……何かあった時はすぐに動けるようになっているんだろう?」

「ええ。タービンズの方でも、漏影の調整はもう終わったようですし」

 

 俺が空間倉庫に収納して持ってきた、漏影。

 その漏影は既に宇宙で完成していたものの、実際に地球に降りてみないと各種の細かな調整が出来なかったのも事実。

 そしてオルガの言葉を聞く限り、その調整は既に終わっているらしい。

 もしギャラルホルンが出て来ても、すぐに出せるという訳だ。

 

「あ」

 

 オルガと話をしながら海を見ると、丁度そこでは魚を獲るのに夢中になっている昭弘に近付いていくオレンジ色の水着の姿があった。

 噂をすればなんとやら。

 ラフタが昭弘を驚かそうとして近付いているらしい。

 銛を手にしているのを見ると、ちょっと危ないと思うんだが……まぁ、その辺はラフタも分かっている筈だ。

 そして十分に近付くと……

 

「わぁっ!」

 

 そんな声を上げ、昭弘を驚かす。

 これで昭弘が海中に潜っていれば声は聞こえなかったかもしれないが、上半身を海上に出していたので、ラフタの声にまともに驚く。

 

「って、危ないな」

 

 泳いでいる中でいきなり後ろから声を掛けられたのもあってか、昭弘がバランスを崩して海中に沈む。

 それを見た俺は助けようかと思ったものの……さすが昭弘と言うべきか、あっさりと海中で体勢を立て直す。

 

「おいっ!」

「あ、あははは、ごめんごめん。でも、ほら。折角海で遊んでいるんだし、このくらいはいいでしょう?」

「お前は……」

 

 昭弘の運動神経はかなりいい。

 それを最大限に使い、咄嗟のことでも今のように何とか体勢を立て直したのだろう。

 

「というか、あの2人……いい雰囲気だな」

「え? そうですか?」

 

 俺の視線を追ったオルガが、そんな風に呟く。

 

「ああ、昭弘はどう思っているのか分からないが、ラフタの方は何となくそういう感じがしないか? ……というか、ラフタの性格から考えて気に入っていたり、気になってる相手でもなければ、ああして後ろから抱きついたりはしないだろうし」

 

 ラフタの水着はワンピースタイプだ。

 ……ラフタの性格を思えば、ビキニとかそういうのでもいいと思うんだが。

 ともあれ、水着で後ろから抱きつくというのは、相応に好感度が高い事を意味している。

 ラフタにとって、昭弘はそういう相手なのだろう。

 

「はぁ、そういうものなんですか」

「そういうものなんだよ。……俺が言うのもなんだが、オルガも鉄華団を背負っていくんだ。身を固めるとか、考えた方がいいんじゃないか?」

「え? 俺ですか? それは、その……」

 

 戸惑ったように……いや、困ったようにか? そんな様子のオルガ。

 

「何だ? 女に興味はないのか?」

「いやまぁ……そういう訳じゃないですけど。ただ、俺は兄貴が言うように、鉄華団の皆を引っ張っていく身です。皆が落ち着いた後ならともかく、今のままでは……」

「そういうのは、寧ろお前が実際に落ち着いて見せるのが、鉄華団の他の連中にとってもいいことだと思うんだが。俺や名瀬と兄弟分の杯を交わしてるのに、お前だけ女っ気がないというのは……ちょっとな」

「そういうのは関係ないと思うんですけど。それにそれを言うのなら、兄貴だって名瀬の兄貴よりも女が少ないじゃないですか」

「まぁ、それは否定しない」

 

 俺の恋人は、マーベルとシーラの2人だけ。

 ホワイトスターに戻れれば他にも恋人達がいるが、それにしたって100人単位でいる名瀬の妻達よりは少ない。

 もっとも、恋人や妻の数を競うというのが、そもそも間違っているのだが。

 

「けど、1と2、1と0では大きく違う。……この件が終わったら、オルガも本格的に恋人なり、妻なりを作った方がいいな」

「そう言っても……俺みたいな奴が、そう簡単に……」

 

 オルガの近くにいる女となると、アトラか?

 ただ、アトラは三日月一筋だし……そうなると……

 

「メリビットはどうだ?」

「は?」

 

 俺の口から出た言葉は完全に予想外だったらしい。

 俺が何を言ってるのか理解出来ないといった視線を俺に向けてくる。

 

「えっと、兄貴?」

「いや、だからメリビットだよ。テイワズの所属だとかそういうのを抜きにしても、間違いなく優良物件だと思うぞ?」

 

 年上の美人で、能力も間違いなく有能。

 これが普通なら、自分の恋人や妻が有能なのは嫌だと言う者もいるのだろうが、オルガの場合はその辺についてはあまり気にする様子はない。

 寧ろ、自分が鉄華団の皆を背負わなければならないと思っているオルガにしてみれば、甘える相手がいてもいいだろう。

 そういう意味で、メリビットは悪くない相手だと思う。

 勿論、これは俺がそう思っているだけであって、お互いに相手をそういう相手として見られないのなら、意味はないが。

 ただ、イサリビに行った時にオルガとメリビットが何度か話している光景を見た事があったのだが、お互いの雰囲気はそんなに悪くないように思えた。

 悪くない雰囲気がそのまま男女関係になるかと言われれば、それは否だ。

 しかし、それでもお互いの相性がそう悪くないように思えたのだから、もしかしたら? と思ってしまう。

 

「どうだ?」

「いやぁ……その、俺はあの人が苦手なんですよね」

「そうなのか? 話している時はそんなに悪くなさそうだと思ったんだが」

 

 オルガの口から出たのは、俺にとっても少し……いや、かなり意外な言葉だった。

 俺にしてみれば、恐らく問題はないだろうと、そう思っていただけに。

 ……とはいえ、人の恋路にちょっかいを出すのも、それはそれで不味い気がするので、これ以上は突っ込まないが。

 

「俺からはこれ以上は何も言わない。ただ、お前にも寄りかかる相手、安息を感じる相手というのが必要だというのは覚えておけ」

 

 そう言うとオルガは頷くが……何となく、本当に何となくだが、オルガは自分のそういう相手は三日月だとか思ってそうなんだよな。

 勿論、それも決して間違いという訳ではないと思うが。

 だが、それが正しいかと言われれば、決してそんな訳がある筈もなく。

 

「分かりました。……一応、考えてみます」

 

 俺の言葉に、オルガは渋々といった様子だったがそう言うのだった。

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