転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3977話

 島に攻撃があった日の夜、俺達は主要な面々が集まって相談をしていた。

 

「ふむ、ではやはりそろそろ動いた方がいいじゃろう。指名選挙は2日後じゃし、そういう意味では丁度いい頃合いじゃろう」

 

 蒔苗のその言葉に、話を聞いていた他の面々も同意する。

 その中には勿論俺の姿もある。

 

「そうだな。島にいればてっきりギャラルホルンは何もしてこないと思ったんだが……まさか今日のような行動に出るとは思わなかった。向こうにしてみれば、単純に手柄を求めての事かもしれないが」

「ギャラルホルンと一括りにしても、中には色々な人がいますからな」

 

 ギャラルホルンにいたクランクがそう言うと、これ以上ない程の説得力がある。

 実際、火星支部の上層部が不正を働いているのを間近で見ていただけに、余計に。

 

「問題なのは、そうした独断専行をする奴が上層部にいるって事だよな」

「恐らく、上昇志向の強い者なのでしょう。あるいは、セブンスターズに連なる者か」

 

 世襲というのもちょっとな。

 まぁ、そうは言ってもこの世界ではそういう事になっている以上、そういうものだと認識するしかないのだが。

 

「となると、明日はまだアクセルの兄貴達は島にいるんですか?」

 

 オルガの問いに、俺は蒔苗に視線を向ける。

 今回のゴールはあくまでも蒔苗を指名選挙で勝たせる事だ。

 そうである以上、蒔苗がどう動きたいのかによって俺の行動は変わってくる。

 

「ふむ、そうじゃな。指名選挙が明後日という事は、明日はまだ余裕がある。そうなると……出来れば、儂が直接動きたいところじゃが……どうかな?」

「そう言われても、蒔苗が動けばギャラルホルンの方でも動きがあると思うぞ?」

 

 ギャラルホルンにしてみれば、何としても蒔苗をこの島に閉じ込めておいて、会議には出したくない。

 ……まぁ、攻めてきた一件もあるし、もしかしたらどこかで考えが変わったのかもしれないが。

 ともあれ、今の状況を考えると蒔苗が全体会議を行う場所で誰かに見られるのは不味い。

 それは蒔苗も分かってる筈だが……

 そう思っていると、俺が何を考えているのか理解したかのように蒔苗は頷く。

 

「アクセルが何を考えておるのかは分かる。じゃから、儂が会おうと思っているのは儂の派閥の者、そして儂とアンリのどちらに投票するのかをまだ迷っている者じゃ」

「前者はともかく、後者は場合によっては蒔苗が全体会議をやる場所に来ている件をアンリ側に流すかもしれないぞ?」

 

 全体会議を行うのは、カナダにあるエドモントンだったか。

 厄祭戦の後も復興して今はそれなりに繁栄しているらしいので、隠れる場所は相応にあるだろう。

 だが、そのような場所でも……いや、そのような場所だからこそ、ギャラルホルンにしてみれば動きやすい場所であるのも事実。

 まぁ、最悪……本当に最悪、サラマンダーを使うという手段があるけど。

 MSが街中で使えないのは、あくまでもエイハブ・リアクターによって電子機器に影響が出る為だ。

 なら、エイハブ・リアクターを使っていないサラマンダーなら……いや、サラマンダーはアリアンロッド艦隊の件もあるし、使わない方がいいか?

 この場合、使うのならミロンガ改だろう。

 相手がMSならナノラミネートアーマーがあるので精神コマンドの直撃を使う必要があるが、街中ではギャラルホルンもMSは使えない。

 使えても、精々がMWだ。

 なら、精神コマンドの直撃を使わなくても、ミロンガ改の武器で普通に撃破出来る。

 勿論、ミロンガ改を使うのは本当に最後の最後……どうしようもなくなってからの話だが。

 

「その危険はあるじゃろう。しかし、リスクを恐れていては、大きなリターンも存在はしない。それに……会う相手はこちらで決める。向こうに儂を売るような者には最初から声は掛けんよ」

 

 そう言う蒔苗だったが、結局のところ蒔苗の人物鑑定眼とでも呼ぶべき能力がどこまで信じられるかになってくる。

 とはいえ、180歳の蒔苗だ。

 そのうちの多くを政治家として生きてきたのを考えれば、人物鑑定眼にも相応に信用出来るだろう。

 寧ろ人物鑑定眼という意味では俺よりも蒔苗の方がうえだろう。

 

「分かった。ただ、安全第一だ。蒔苗が大丈夫と言おうとしても、相手が妙な動きをしそうになったりした場合、こっちも相応の対応をする。場合によってはそれによって相手が死ぬ事もある。それを分かった上での行動なら構わない」

「むぅ……」

 

 俺の言葉に蒔苗はそんな声を上げる。

 恐らくだが、蒔苗は本来ならそれなりに危ない相手……アンリと蒔苗のどちらに付くのか分からない相手にも接触するつもりだったのだろう。

 それこそ何かあっても、俺の転移魔法があればどうとでも対処出来ると思ってもおかしくはないのだから。

 しかし、今の俺の言葉でそういう訳にはいかなくなった。

 下手に危ない相手に接触をしたりした場合、俺が殺すという選択も考えなければならなくなったのだから。

 とはいえ、今の俺の言葉を聞いて本気だと思ったのは大したものだ。

 こういう時、普通なら俺が何気なく言ってるように思えた事で本気で言ってるようには思えず、だからこそ脅し的な意味で言ってると、そのように思ってもおかしくはないのだから。

 

「分かった。会う相手にはくれぐれも用心しよう。ラスカーもおるから、会う相手の選別には困らない筈じゃ」

「だといいんだけどな。何かミスって、後で後悔しても俺にはどうしようもないからな。そのつもりでいてくれ」

 

 念押しをすると、蒔苗は素直に頷く。

 これでいい。

 

「他に何かあるか?」

「アクセル達がエドモントンに行ってる間、私達は今日までと同じく島で待機していればいいのね?」

 

 マーベルの問いは、疑問に思って尋ねるというよりは念の為に聞いているといったようなものだった。

 

「ああ、そうしてくれ。もし敵が攻めてきたら……今日の一件を考えるとあまり心配しなくてもいいとは思うが、その時は今日と同様に迎撃してくれればいい。ただ、今日は俺がちょっと目立ちすぎてしまったからな。そんな俺を見つけ出す為に、艦砲射撃をしてくる可能性もある」

 

 俺を相手にMSを派遣しても、何も出来ず一方的にやられるというのは島を封鎖している艦隊も今日の戦闘で十分に思い知っただろう。

 そうである以上、もし敵が俺の存在をどこかに引き付けたいと思ったら、その場所に向かって艦砲射撃をするという可能性は十分以上にあった。

 

「けど、こっちも被害を受けたけど向こうは俺達以上に大きな被害を受けたんだ。戦力の補充をするにももっとかかるんじゃない?」

 

 三日月の言う事にも一理ある。

 実際、オセアニア連邦にあるこの島までMSを運搬してくるとなるとそれなりに時間は必要だろう。

 移動時間そのものは輸送機とかを使えばなんとかなるが、MSだってなくなりました、はいじゃあ追加でこれを持っていって下さいとはならない。

 ギャラルホルンであっても、書類による手続きは必要になる筈だった。

 その辺りを考えると、それこそ1日2日というのは難しいかもしれない。

 しれないが……

 

「それはあくまでも普通の時ならではの話だな。今の状況はイズナリオにとってチャンスでもあり、ピンチでもある」

 

 俺達が来なければ、蒔苗が代表指名選挙に出るという可能性は万が一にもなかっただろう。

 だが、俺達が来てしまった。

 そして俺達が強いのは、地球外縁軌道統制統合艦隊との戦いで十分に知ってる筈だ。

 あるいは地球外縁軌道統制統合艦隊はお飾りと見られている一面もあるらしいので、もしかしたら侮っている可能性もあるが……いや、イズナリオが有能な人物なのは間違いない。

 だとすれば、俺達を甘く見るような事はしないだろう。

 火星での戦いの情報もあるだろうし。

 そんな訳で、このまま時間切れまで蒔苗をこの島に閉じ込めておきたいイズナリオにしてみれば、戦力の補給は行う筈だ。

 もっとも、それも今日の攻撃がこの艦隊の独断だったかどうかで大きく変わってくるが。

 もし今日の攻撃が独断だった場合、イズナリオにMSの補給は要請するのは難しいだろう。

 独断で攻撃を仕掛けた結果、MS戦力を大量に失いました。

 これでは、イズナリオにどのように判断されるのか分かったものではない。

 ……いや、予想は出来るものの、その内容は決して好ましいものではないだろう。

 だからこそ、自分の保身を思えば連絡するのは難しいのだ。

 その辺りに事情について説明すると、何人かは分かったような表情を浮かべ、もう何人かは理解出来ないといった表情を浮かべている。

 

「そこまで勝手な事をやるかぁ?」

 

 シノのその言葉に、他の何人かが同意するように頷く。

 だが、そんなシノに対し、クランクが口を開く。

 

「そのような事がまかり通るのがギャラルホルンなのだ」

 

 そう言うクランクの言葉は、元ギャラルホルンだからこその説得力があり、シノ達を納得させるには十分だった。

 

 

 

 

 

 翌日、俺は前日の約束通りエドモントンに蒔苗と共に来ていた。

 

「ここがエドモントンですか。火星と比べても発展していますね」

 

 何故かそこにはクーデリアの姿もあったが。

 正直なところ、明日行われる全体会議については半ば押し切られる形でクーデリアを連れていくのを受け入れたものの、今日は別にクーデリアが一緒に来る必要はなかったと思う。

 思うのだが、そんな俺の言葉に異を唱えたのは当然ながらクーデリア。

 明日の一件において、エドモントンの議事堂で道に迷ったりしないようにと、

 そう言われると俺としても検討する必要がある訳で……

 だが、そこで更に追撃をしてきたのは、蒔苗だった。

 蒔苗が言うには、明日クーデリアが演説をするに辺り、根回しと顔合わせをしておいた方がいいと言う。

 それが重要なのは俺も理解しているので、反対も出来ず……結局クーデリアもエドモントンに連れてくる事になったのだった。

 

「お嬢様、騒ぐと人に見つかるかもしれませんので、気を付けて下さい」

 

 そしてクーデリアが行くのであれば、当然ながらクーデリアのメイドのフミタンも一緒に来ると主張するのは当然であり、フミタンもここにいる。

 結局本来なら俺と蒔苗だけで来る筈が、そこにクーデリアとフミタンも追加された形だ。

 その2人が行くのなら自分もと主張する者が他にも何人かいたのだが、さすがにこれ以上は規模が大きくなるという事で拒否しておいた。

 島の方を手薄にする訳にはいかなかったし。

 昨日の戦闘であそこまで目立った俺がいないというだけで、もし島に攻撃があれば色々と問題にはなるんだが。

 とはいえ、それはそれで仕方がない一面もあるし、戦力の補充的な意味で恐らく大丈夫だろうという事で、こうしてエドモントンに来ているのだが。

 

「それで、これからどうする?」

「ラスカーの部屋に向かおう。アクセル、頼めるかね?」

「任せろ。……クーデリアとフミタンも近くに来てくれ。もう1度転移をする」

 

 そう言う俺の言葉に、エドモントンの街並みを見ていたクーデリアとフミタンが近付いてくる。

 蒔苗も近付いて来たのを確認し、俺は再び影のゲートを使うのだった。

 

 

 

 

 

 ラスカーの執務室……いや、控え室と呼んだ方がいいのか?

 ともあれ、そこに姿を現すと……

 

「っ!?」

 

 部屋の中にいた護衛の男が、いきなり拳銃を向けてくる。

 無理もない。

 護衛の男にしてみれば、俺達以上に怪しい存在はないのだろうから。

 だが……だからといって、俺も素直にその銃撃を受ける訳にはいかないので、床を蹴って近付き、その拳銃を取り上げる。

 これが敵であれば拳銃を持っている腕を切断するとか、砕くとかしてもいいのだが……この男はラスカーの護衛としてやるべき事をやっただけだしな。

 そうである以上、この男にそこまで危害を加える訳にはいかなかった。

 

「落ち着け、蒔苗だ」

「……え?」

 

 護衛の男は自分の持っていた拳銃がいきなり奪われたことに戸惑いの声を上げつつ、俺と一緒に影のゲートから出て来た蒔苗に視線を向ける。

 そして蒔苗の姿を発見すると、その目が大きく見開かれた。

 

「あ……」

 

 自分が誰に銃口を向けようとしたのか、気が付いたのだろう。

 護衛の男はとんでもない事をしてしまったといった様子を見せる。

 ラスカーの護衛である以上、蒔苗がどのような存在なのかは十分に知っているのだろう。

 

「ふぉふぉふぉ。気にするでない。こうして影から姿を現すというのは、普通ならとてもではないが信じられないじゃろうしのう」

「そうですな。私も実際に経験していなければ、とてもではないが気が付かなかったでしょう」

 

 執務机で何かの書類を読んでいたラスカーが、面白そうに笑いながらそう言う。

 

「あ……」

 

 そんなラスカーの言葉に、護衛の男が視線を向ける。

 ラスカーはそんな相手を落ち着かせるように笑みを浮かべ、頷く。

 

「貴方は自分のやるべき仕事をしました。気にすることはありません」

 

 その言葉に、護衛は何とか救われたといった様子を見せるのだった。

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