転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3983話

「じゃあ、島は頼むぞ」

「はい、任せて下さい。兄貴もお気を付けて」

 

 オルガとそう短く言葉を交わすと、俺は蒔苗とクーデリア……そして蒔苗の秘書とフミタンと共に影のゲートを使う。

 当初は蒔苗の秘書とフミタンは一緒に行かない予定だったのだが、エドモントンでは蒔苗が動く際に秘書がいた方が色々と便利だろうという事や、フミタンもクーデリアのメイドという事で何かあった時には対処出来るだろうと、一緒にエドモントンに行く事になったのだ。

 ……まぁ、恐らくこれから島では戦いが行われる。

 そこに秘書やメイドがいても、あまり役には立たない。

 もっともフミタンは何だかんだで才色兼備だ。

 怪我の治療とか、そういうのは出来るかもしれないが。

 秘書は……それこそいても何の役にも立たないので、エドモントンに来た方がいい。

 代わりにという訳ではないが、蒔苗の護衛をしていた黒服の男達は島に残る。

 相応の戦闘訓練を受けているので、これから行われる戦闘でも足手纏いにはならないのだろう。

 もっとも、これから島で行われるのはあくまでもMS戦だ。

 MWの出番もあるかどうか分からず……そうなると、生身での戦闘が起きるかどうかは微妙なところだろう。

 とはいえ、MSやMWで派手に戦いながら蒔苗を仕留めるべく生身の特殊部隊がやってくる可能性は否定出来なかったが。

 もっとも、もし特殊部隊の類が来ても既にこの島に蒔苗はいない。

 エドモントンにある全体会議をやる場所にいる。

 そういう意味では無駄足でしかないのだが、そのような特殊部隊は何気に厄介なので、ここで叩き潰せるのならそうしておいた方がいいだろう。

 そんな風に思いながら、俺達は転移に成功し……

 

「蒔苗先生、お待ちしておりました」

 

 部屋にいたラスカーが、笑みを浮かべてそう言う。

 本来ならこの議事堂には蒔苗の部屋もある。

 あるのだが、当然ながらそのような部屋を使えばそこに蒔苗がいると多くの者に知られてしまう。

 そうなれば、まだ会議が始まっていない時間だけに、アンリが手を回してギャラルホルンに襲撃させる可能性もあった。

 勿論、そうなっても俺がいれば何の問題もないが……会議が始まる前に騒動が起これば、最悪会議は……代表指名選挙はまた後日という事にもなりかねない。

 そうなると、こっちとしては困る。

 魔法を使って転移するという方法までは分からないだろうが、それでも何らかの方法によって移動をしているとアンリやイズナリオに見破られると、それはかなり問題なのだから。

 だからこそ、今日ここで終わらせたい。

 ……まぁ、考えようによっては、蒔苗を殺しにきたり、あるいは捕らえに来たりしたギャラルホルンの兵士を捕らえて、それを証拠としてアンリを拘束するなり、最悪殺すなりしてもいいのではないかと思わないでもない。

 とはいえ、蒔苗がそれを選択しないという事は、相応の理由があるのだろう。

 この現状をどうにかするのは、あくまでも俺ではなく蒔苗だ。

 そして蒔苗の応援をするのは、クーデリア。

 俺がやるべきなのは、それを邪魔しようとする者がいた場合、それを止める事だろう。

 

「ちょっといいか?」

 

 蒔苗やクーデリアがラスカーと早速色々と打ち合わせをしているのを見ながら、近くに待機しているラスカーの護衛に声を掛ける。

 

「は、はい。何でしょう!?」

 

 黒服にサングラスと、見た目だけなら強面と言ってもいい男だったが、俺が声を掛けるとビクリとする。

 別にそんなに怖がらなくてもいいんだが……一体俺の事をどう聞かされているんだろうな。

 そう思うが、今はその事に突っ込んでいる余裕はない。

 

「この議事堂の周辺にはギャラルホルンの兵士達がいるのか?」

「はい。議事堂の前で警備をしています」

「……なるほど」

 

 それはつまり、アンリの手駒という事だ。

 蒔苗が選挙で勝利した場合、アンリの……いや、イズナリオの命令に従って、こっちに攻撃をしてくる可能性がある。

 そうなると、ここで倒してしまった方がいいのか?

 

「蒔苗、ちょっといいか?」

「どうしたのかの?」

 

 ラスカーやクーデリアとの話を一旦止め、俺の方にやって来る。

 ラスカーの護衛の黒服が緊張した様子を見せるが……これは俺がいるからか、それとも蒔苗がいるからか。

 ともあれ、今はギャラルホルンの兵士の件だ。

 

「この建物の警備を、ギャラルホルンの兵士がしてるのは知ってるな?」

「うむ。……いや、そうか。お主が何を心配してるのか、分かった」

 

 この辺の判断力の高さは、さすが長年政治家としてやって来ただけの事はあるよな。

 

「説明がいらないようで何よりだ。それで……どうする? 今のうちに纏めて殺すなり、気絶をさせるなりしてくるか?」

 

 ギャラルホルンの兵士を殺すと口にしたところで、話を聞いていた黒服の護衛がビクリとする。

 何気に肝が小さいよな。

 いやまぁ、俺にしてみればギャラルホルンを敵に回すのは今更だし、人を殺すなり、気絶させるなりというのもこれまでの経験から慣れている。

 そういう意味では、俺が特殊な存在なのだろう。

 しかし、蒔苗は俺の言葉に首を横に振る。

 

「いや、今この状況でそのような騒動が起きれば、それこそ代表指名選挙が延期になる可能性が高い」

「なら、止めるか?」

 

 そう尋ねるも、蒔苗はこれにも首を横に振る。

 

「いや。その戦力をアンリが自由に使うのは問題じゃろう」

「やっぱり蒔苗が代表になったら動くと思うか?」

「そう簡単に諦めるのであれば、儂も今のような状況になってはおらんよ。それに……これはもしもの話じゃが、エドモントンの周囲にシャドウミラーや鉄華団がいて、そこでギャラルホルンと戦っている……そのような状況になっておれば、あるいは動かんかもしれん」

「……なるほど。俺が影のゲートを使えなければ、そういう事になっていただろうな」

 

 今回は俺の影のゲートがあったからこそ、相手の意表を突いてこういう流れに出来た。

 だが、もし俺が影のゲートを使えなかったら、どうなっていたか。

 普通に考えれば、MSとかの戦力を引き連れて蒔苗をエドモントンまで連れて来ただろう。

 そうなると、当然ながらエドモントンに俺達を入れさせない為にイズナリオが用意したギャラルホルンの戦力と戦う事になり、それによって双方共に被害を受けた筈だ。

 こっちの戦力は充実しているので、MSには被害が出ないだろうが、街中という事でMWには大きな被害が出ただろう。

 そうなれば、街中にいる……議事堂を守っているギャラルホルンの部隊も前線に出る必要があり、議事堂を直接守るのは難しくなる筈だ。

 勿論、護衛を1人も残さずに全員を前線に出すといったような事はしないだろうが、それでも代表指名選挙で蒔苗が勝利した後にアンリがそれを引っ繰り返そうとギャラルホルンの兵士を使うというのは不可能だろう。

 もっとも、俺が影のゲートで転移をしてきた以上、その想定は既に無意味だが。

 

「となると、代表指名選挙が始まってからなら?」

「いや、全体会議が始まったら問題はない。しかし、後々の遺恨を残さぬ為にも出来るだけ殺さぬように気絶で頼む」

「分かった」

 

 俺にしてみれば、気絶でも殺すのでもどちらでもいい。

 ……いや、呪いの解呪を考えると、魔力……ステータスではSPだが、それを上げる為に殺した方が手っ取り早かったりはするのだが。

 とはいえ、どうしても必要という訳でもなく、あればラッキー程度の感じだ。

 それに、ここで倒さなくてもマクギリスの起こすギャラルホルンの革命で絶対多数のMSと戦う事になるだろうし。

 だからこそ、俺としてはそこまで無理をする必要はないと判断し、殺さずに気絶させるという案に頷いたのだ。

 残念なのは、全体会議が始まったら行動に移るということは、それはつまりクーデリアがやる筈の演説を聴く事は出来ないという事か。

 まぁ、それはそれで仕方がない。

 今は何よりも代表指名選挙を無事に終わらせる方が先なのだから。

 

「どうしました?」

 

 俺と蒔苗の様子に気が付いたのか、クーデリアが近付いてそう聞いてくる。

 ラスカーもまた、そんなクーデリアと共にこちらに視線を向けていた。

 別に隠す必要もないので、その点については素直に口を開く。

 

「代表指名選挙で蒔苗が勝利した後で、アンリが妙な真似をしないように議事堂の護衛をしているギャラルホルンの兵士達を気絶させようと思ってな」

「……そのような事をすると、大きな騒動になるのでは?」

「構わんよ」

 

 クーデリアのその疑問に即座にそう反応したのは、蒔苗。

 

「代表指名選挙が終わって儂が勝ったなら、儂はアンリを追及するじゃろう。その背後にいるイズナリオ・ファリドも含めてな」

「蒔苗先生、それは危険では?」

 

 ラスカーのそんな言葉にも、蒔苗は首を横に振る。

 その際に蒔苗の巨大な髭が揺れるが……うん。それは別に考えなくてもいいか。

 思わず目を奪われたのは事実だが。

 

「構わんよ。イズナリオ・ファリドが……ギャラルホルンがアーブラウに直接影響力を持とうと行動しておるのは間違いない。であれば、それははっきりとさせておいた方がいいじゃろう。……アクセルはどう思う?」

 

 これは……知ってるのか?

 マクギリスがギャラルホルンで革命を起こす為に一番邪魔なのはイズナリオだ。

 マクギリスはファリド家の次期当主だが、イズナリオは現当主なのだ。

 だからこそ、マクギリスがセブンスターズの者達を相手に動くのは、ファリド家当主の名目は必須となる。

 そんな訳で、イズナリオのスキャンダルや失脚は、マクギリス達にとって大きな力となる。

 何しろガエリオも次期当主という立場だし、唯一イシュー家の現当主であるカルタも、まだ若輩という事でイズナリオが後見人となっているのだ。

 つまりマクギリス以外にカルタにとってもイズナリオは邪魔な存在なのは間違いなかった。

 ……いっそ俺がイズナリオを殺すという手段もない訳ではないが、それは本当にどうしようもなくなった時の最後の手段だろう。

 イズナリオが暗殺されたとなれば、マクギリスも当然のように疑われるだろうし。

 やはりここは、蒔苗の案に乗るのが最善か。

 

「それで構わない。イズナリオが失脚するのは、俺にとっても好都合だし」

 

 こうして話は決まり、後は全体会議が始まるまでの時間を待つ事になる。

 

 

 

 

 

「では、行ってきます」

「ああ、頑張れよ。クーデリアの晴れ舞台を見られないのは残念だけど」

「そうですね。でも、アクセルが守ってくれると思っているからこそ、私は頑張れるのです」

「お嬢様」

「ああ、ごめんなさい。では行きましょうか」

 

 そう言い、クーデリアは俺の頬に軽くキスをする。

 ……それを見ていたラスカーやその秘書はそれが予想外の光景だったのか、目を見開いて驚く。

 蒔苗やその秘書は俺の演説を聞いていたので、特に驚いた様子もない。

 フミタンは特に表情を変えたりせず、ただ俺に向かって一礼だけする。

 

「では……行ってきます」

 

 自分でキスをしながら照れたのか、クーデリアは頬を赤くしながら部屋を出ていった。

 そうしてラスカーの部屋に残ったのは、俺だけ。

 ……本来ならここはラスカーの執務室なんだから、見知らぬ他人とは言わずとも、そこまで親しい訳ではない俺を残していくのはどうかと思う。

 もっとも、ラスカーにしてみればここには特に何か大事な物は置いていないし、何より蒔苗の協力者という事で、その辺については諦めているのかもしれない。

 もしくは本当に大事な物はここに置いていないとか。

 それなら何となく分かる。

 俺が魔法を使えるから、警戒しても意味がないと判断したとか、そういう事はないよな?

 ラスカーなら何となくそういう風に認識していてもおかしくはない。

 魔法について少し知った者についてはよくあることなんだが、魔法というのは何でも出来る……不可能な事はないと思っている者がいる。

 実際、普通では出来ない事が出来るのだからそのように思うのは分からないでもないが、しかしそれは決して正しくはない。

 そもそも転移とかにしても、シャドウミラーではシステムXNによって科学的に再現可能になってるしな。

 とはいえ、魔法というのはその言葉そのものに魅力があるのも事実。

 多分だが、後で魔法を習いたいと言ってくる者もいるだろうな。

 特に蒔苗なんかは、こうして実際に転移魔法のお陰で一発逆転のチャンスを掴んだのだから、自分は年齢を考えて無理でも、自分の部下に魔法を覚えさせたいと思ってもおかしくはない。

 おかしくはないのだが、魔法というのは才能が全てだ。

 正確には才能がなくても、努力次第である程度のところまで覚えられるのは間違いないが、俺が使っている転移魔法とかは才能のある者……そんな者達の中でもトップクラスの者達でようやく習得出来る魔法だ。

 俺の場合はスキル的な意味で問題はないが。

 ともあれ、いつまでもここにいる訳にもいかないし……全体会議もそろそろ始まるだろうから、俺も行動に移るとするか。

 そう判断し、俺は影のゲートに身体を沈めるのだった。

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