転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3990話

 オルガとの打ち合わせを終えると、俺達はすぐに行動に移る。

 具体的には、降伏したギャラルホルンのMS隊の扱いだ。

 降伏した者達は全員MSから降ろし、一ヶ所に集める。

 ちなみに当然ながら、ギャラルホルンのMS隊が使っていたMSは俺が空間倉庫に収納しておく。

 これは全てのMSを俺が貰う為……ではなく、降伏したパイロット達が妙な考えを起こしても、MSを使わせないようする為だ。

 ここで回収したMSは、シャドウミラー、鉄華団、タービンズでそれぞれ分けるつもりだった。

 グレイズ、それも地上用のグレイズだけに、使い勝手はいい機体だろう。

 特にタービンズ……より正確にはテイワズなら、テイワズ・フレームを使ったMSを開発する時に参考になるだろうし。

 ……もっとも、百錬のカモフラージュ用として作られた漏影だが、地上で使う分にはかなり性能のいい機体となっているのも事実なので、わざわざグレイズと似たような装備とかを作ってギャラルホルンに目を付けられるよりも、今のように独自路線で開発を進めた方がいいと思うけど。

 まぁ、それでも参考になる物はあった方がいいだろうし。

 そんな訳で、タービンズもグレイズは欲しい筈だ。

 それもあればあっただけいい。

 鉄華団の方は、単純にMS戦力を充実させるという意味でグレイズが欲しいだろう。

 地上用のグレイズは、当然ながら火星でも使える。

 そういう意味では、鉄華団的に大歓迎の筈だった。

 また、それはシャドウミラーでも同様だ。

 シャドウミラーには鉄華団よりもMSが多いものの、それらは当然のようにそこまで新しい機種ではない。

 それと比べると、グレイズは最新鋭――開発されてから実際にはそれなりに年月は経っているが――のMSだ。

 やはり操縦する者としては、最新鋭MSの方が使いやすい。

 もっとも、以前のMSに慣れているから、そっちの方がいいという者もいるから、これも絶対ではないが。

 ただ、俺としてはMSは多ければ多い程にいいと思う。

 MSを使うには予備部品やら何やらで結構な金が必要になるものの、幸いな事にこの依頼が終われば報酬としてハーフメタル利権が貰えるので、金に困るというような事は基本的にないだろうし。

 そういう訳で、結構な数のグレイズを確保出来たのは大きい訳だ。

 今回の収穫が大きかったので、嬉しく思いながら島の中を歩いていると……

 

「貴様ぁっ! 火星人如きが、態度を弁えろ!」

「きゃあっ!」

 

 聞こえてきたのは、怒声と悲鳴。

 これが怒声だけなら、プライドだけが高い奴が何か騒いでるなといった程度だったのだが、この場合は聞こえてきた悲鳴が問題だった。

 俺の聞き間違いじゃなければ、あれはアトラの悲鳴だった。

 食事でも持っていったか何かしたところで、プライドの高い捕虜には火星の人間からの施しなど受け付けられなかったのだろう。

 ちょっと不味い。

 そう思って足を踏み出そうとすると……

 パン、と。

 そんな銃声が聞こえてきた。

 その銃声に、更に嫌な予感がしたのでそちらに向かってみたのだが……

 

「ぎゃあああああっ!」

 

 近付くに連れて、そんな声が聞こえてくる。

 

「感謝してよね。アトラがいなければ頭を撃ち抜いていたんだから」

 

 人を撃ったというのに、全く動揺した様子もなく三日月がそう言う。

 ……いやまぁ、俺がそれを言うのはどうかと思うけど。

 何しろ人を殺したという意味では、俺の撃墜数は2000近い。

 それも今回島の周辺の軍艦を破壊しても撃墜数が1しか上がらなかったというのを考えると、船とかそういうのを撃破した数も考えると……その数はどれくらいになってるのやら。

 これまで多くの世界で数々の戦場を戦い抜いてきた事を思えば、それこそ俺の手は血に塗れてるってものじゃないだろう。

 今はそれよりもこの騒動をどうにかする方が先か。

 ちなみに泣き喚いている男だが、ここには他の捕虜達もいる。

 ただし、その捕虜達の多くは仲間が傷つけられたのに怒っている様子がなかった。

 捕虜という自分達の境遇を理解しているのだろう。

 そういう意味では、三日月に撃たれた男はその辺については全く何も理解していなかったらしい。

 もしかしたら、ギャラルホルンの中でも結構いい家の出なのかもしれないな。

 セブンスターズとは言わずとも、そこに所属している家と何らかの繋がりがあるといった感じの。

 とはいえ、ここでどんな血筋であるとか、そういうのは意味がない。

 ……いや、意味がないことはないのか?

 具体的には、捕虜となった者達の身代金的な意味で。

 とはいえ、身代金とかを受け取るとかなると、それなりに面倒な事になりそうではある。

 可能なら、マクギリス達に任せてしまえればいいんだが。

 あるいは蒔苗にか。

 

「三日月、取りあえず死なれたら困るし、ある程度の治療はしてやれ」

 

 見た感じ、太股を撃たれたらしい。

 それも動脈を。

 このままでは、出血多量で死んでしまいかねない。

 

「え……何で助けるの?」

 

 不服そうな様子の三日月。

 三日月にしてみれば、アトラに向かって怒鳴った男を助ける必要はないという判断なのだろう。

 まぁ、正直なところその気持ちは分からないでもない。

 だがそれでも、このままという訳にはいかないのも事実。

 

「このままだと死ぬぞ? いいのか?」

 

 そう言い、一瞬だけアトラに視線を向ける。

 そんな俺の視線を追った三日月は、面倒臭そうにしながらも騒いでいる男の腕を掴み引っ張っていく。

 

「ぎゃっ、は、離せ! 痛、痛、痛、痛いんだってばよぉっ!」

 

 先程、アトラに叫んだ時の偉そうな様子はどこにいったのか、そこには泣き叫ぶ男の姿だけがあった。

 太股を銃で貫かれたのに、強引に引っ張られる……というか、半ば引きずられているのだから、ああいう風になってもおかしくはないのかもしれないが。

 怪我をした場所を地面に擦ったまま引きずられる、あるいは太股を撃たれた状態でその足を使って無理に歩く。

 どちらにせよ、地獄の痛みではあるのだろう。

 これが鉄華団の面々なら、痛みで顔を顰めるとかはするかもしれないが、それでもここまで泣き叫びはしない筈だ。

 あるいは同じギャラルホルンということで、アインであれば痛みを我慢してもおかしくはないと思う。

 ……マクギリスはともかく、ガエリオやカルタなら泣き叫んでもおかしくはないような気がしないでもない……か?

 あの2人は何となくそんな我慢強さがないように思える。

 それでもマクギリスに協力しているのを思えば、いずれは銃で撃たれても痛みを我慢して……うーん、どうだろうな。

 三日月と、その三日月に引っ張られていくギャラルホルンの男を見ながら、そんな風に思い……今はそれよりもやるべき事があるのを思い出す。

 

「大丈夫か?」

「あ、はい。その……慣れてますから」

 

 俺の言葉に、アトラが困ったような笑みを浮かべてそう言う。

 慣れている、か。

 アトラと鉄華団の関係を見る限り、鉄華団の面々がそういう事をするとは思わない。

 となると、CGSだった時の経験か?

 それとも、アトラが鉄華団に入る前に働いていた場所でか?

 そんな風に考えていると、アトラは俺が何を考えているのか理解したのか、慌てて首を横に振る。

 

「あ、その。三日月達はそういう事はしませんよ!」

「じゃあ、鉄華団に入る前に働いていた場所とか?」

「違います! 女将さんは良くしてくれました! その……女将さんの前の場所がそういう感じだったので」

 

 そう言い、アトラはポツポツと事情を話していく。

 もっとも、それは火星ではありふれている話だ。

 アトラは物心ついた時から、娼館で働いていたらしい。

 あるいは、アトラの母親はそこで働いてる娼婦だったのかもしれないが……それについては深く聞かない方がいいだろう。

 本人も話したくないだろうし。

 寧ろそういうのを聞くのなら、それは俺じゃなくて三日月とかだろう。

 そんな風に思いつつ、俺は口を開く。

 

「つまり、鉄華団の前の前に働いていたところが、そういう場所だった訳か」

「はい、そうなります」

 

 こちらについては、予想した事もありあっさりと頷いた。

 アトラにとっては、その件については特に隠す必要がないのだろう。

 アトラもまた、スラム街で生きてきたのだ。

 そう思えば、その思いは分からないでもない。

 誰から聞いたのか、あるいは何かで見たのかはちょっと忘れたが、スラム街というのは基本的に女の方が生き残る可能性は高いらしいし。

 子供の時は男女で身体能力の差はない。

 そこから少し大きくなると、女の方が男よりも早く成長するので、その時点では身体能力差は寧ろ女の方が有利だ。

 だが……そこからもっと大きくなると、身体能力で男女差が逆転する。

 俺の感覚だと、小学校高学年から中学生くらいの時だ。

 この時が女は一番生き残りにくいとか。

 ただ、そこから更に数年……高校生くらいの年齢になれば、女は女の武器を使う事で生き残れる。

 具体的には、アトラがいたという娼館とかそういう場所で。

 勿論、それはあくまでも生き残れるというだけで、決して幸福な生活という訳ではない。

 また、娼婦という職業上、性病や妊娠のリスクもある。

 それでも、女という武器を使って生き残れるというのは、スラム街にいる者にとっては非常に大きな意味を持つ。

 アトラもまた、そのまま娼館で働いていれば恐らく娼婦となっていたのだろう。

 ……幸か不幸か、アトラは身体付きは小柄なものの、可愛い系の整った顔立ちをしている。

 恐らく娼婦となればそれなりに人気になっていただろう。

 それをアトラが好むかどうかは別として。

 結局アトラは娼館ではなく、食料品を扱っている店に就職し、それから今は鉄華団に就職している。

 そして三日月という好きな相手も出来た。

 そう考えると、今のアトラは幸福なのだろう。

 今回のように、捕虜に乱暴されるという事もあるようだが。

 

「ともあれ、もうこれからは今回のような事はないと思うけど、気を付けろよ」

 

 捕虜達にしてみれば、自分の目の前で仲間がいきなり銃で撃たれたのだ。

 これ以上アトラに何かをしようとは思わないだろう。

 とはいえ……アトラだけで行動するのは危険だな。

 

「誰か護衛を用意した方がいいんじゃないか?」

 

 幸いなことに、鉄華団の面々はMSやMWに乗らなくても、生身でも相応の戦闘力を持っている。

 ……これはCGSだった時の影響だが、そう考えるとCGSも悪い事だけじゃなかったのだろう。

 だからといって負の遺産の方が圧倒的に多いので、庇うつもりはないが。

 元CGSの連中、今頃一体何をしてるんだろうな。

 どこか他の警備会社に就職したか、あるいは他の仕事をしているか。もしくは海賊になっている可能性もある。

 

「えっと、何だか少し悪くて……皆、戦いが終わったばかりで忙しそうですし」

「それはそうだが、だからといってアトラが護衛もなしに捕虜の所に来るのは不味いだろ。今回は近くに三日月がいたから何とかなったが」

 

 もし三日月がいなければ、あの撃たれた男がアトラに何をしたのか分からない。

 捕虜になって自暴自棄になっているように見えただけに、アトラに襲い掛かった可能性も十分にあった。……暴力的な意味ではなく、性的な意味で。

 もしくは、アトラを人質にしてこの島から何とか脱出しようとするとか。

 それが上手くいくとは思えないが、それでもこのまま捕虜になってるよりはと、そんな事を考えてもおかしくはなかった。

 その辺の状況を考えれば、護衛は必須だろう。

 そう説明すると、アトラは申し訳なさそうに頷く。

 

「分かりました。次からは護衛を連れて来ます」

「そうしろ。……あるいは護衛をつけない代わりに、捕虜達に食事を持ってこないという選択肢もあるけど」

 

 そう言うと、捕虜達が絶望的な表情を浮かべる。

 捕虜に食事を与えないというのは南極条約……じゃないな。とにかく何らかの条約に違反したりしそうだが、俺達は国ではなくPMCだけに、そういう条約は関係ない。

 とはいえ、この先もPMCとして活動する事を考えると、そういう条約を守った方がいいのかもしれないが。

 今のように俺達が勝ってる時はいいが、場合によってはシャドウミラーのメンバーが捕虜になるという可能性もある。

 そういう時、今までそういう条約を無視していたのに、自分達の仲間が捕虜になった途端に条約を守れと言っても、説得力がなさすぎる。

 まぁ、その辺は後々だな。

 それにこの捕虜達にしても、いつまでも捕虜にしてる訳にもいかない。

 身代金云々の話もあるが、基本的にはマクギリスを通してやり取りする事になる可能性が高い。

 もっとも、そうなると俺達とマクギリスの関係が知られてしまうかもしれないので、その辺をどうするかだよな。

 個人的には、そこまで無理をする必要はないが、それでも出来る限り俺達の関係は隠しておきたいというのが正直なところだ。

 俺達の関係が表に出るのが遅くなればなる程、有利になるのだから。

 その辺の話をしないとなと思いつつ、取りあえずアトラを送るのだった。

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